『PS1 黄金の河』*インディアンムービーウィーク2023パート2

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©️Madras Talkies ©️Lyca Productions

『PS1 黄金の河』原題:Ponniyin Selvan: Part One
監督:マニ・ラトナム
出演:ヴィクラム、アイシュワリヤー・ラーイ、カールティ、トリシャー、ジェヤム・ラヴィ
2022年/タミル語/167分
10世紀末のタミル地方中部、チョーラ朝は最盛期を目前にしていたが、宮廷では王位簒奪の陰謀が進行していた。マルチスターの歴史絵巻。

10世紀末の南インド・タミル地方中部、最盛期を目前にしたチョーラ朝。スンドラ王には、二人の息子と一人の娘がいた。長男アーディタは北のラーシュトラクータ朝と戦い、次男アルンモリは南に向かいランカ島に上陸する。
王位継承者であるアーディタは、財務大臣パルヴェータが他の重鎮たちと共謀して、本来の王位継承者であるマドゥラーンタカンを担ぎ上げようとしていることに気づく。実は、24年前、前王が急死した時、王子であるマドゥラーンタカンが幼かった為、前王の甥であるスンドラが王位についたのだ。スンドラ王は、王子が成人しても王位を譲らず、自分の長男に王位を譲る気でいる。
謀反の動きを知ったスンドラ王の娘クンダヴァイ姫は、アルンモリを呼び戻そうと、ランカ島に伝令を送る。
謀反の中心人物パルヴェータの若い妻ナンディニーは、実は、かつてアーディタと恋仲だった。ナンディニーが孤児であることから、結婚を許されず、彼女は復讐しようと目論んでいた・・・

登場人物が多くて、しかも名前が長くて、なかなか覚えられません。
人間関係も複雑なのですが、上記のあらすじを頭に入れて観れば、なんとかわかるのではないかと思います。(私なりに整理してみました。)
よくわからないながらも、女性たちは綺麗だし、謀反を中心にした物語なので、いったい誰が次の王位につくのか、わくわくします。
本作は、Part1なので、まだまだ先が見えません。
原題のPonniyin Selvanとは、「カーヴェーリー河の息子」という意味。ラージャラージャ1世が子供の頃にカーヴェーリー河に落ちたところを、河の女神の助けによって助かったことから付けられた名前。後のラージャラージャ1世になるのは、さて誰なのでしょう。 原作があるので、答えはすぐにわかりますが、ここでは伏せておきます。
マニ・ラトナム監督をはじめ多くの映画でお馴染みのAR・ラフマーンが音楽を担当していて、安定感があります。 Part2が早く観たくなる歴史絵巻です。(咲)



★2024年5月17日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国順次公開 
 公式サイト:https://spaceboxjapan.jp/ps-movie/

◆後編『PS2 大いなる船出』(原題:Ponniyin Selvan Part Two)は2024年6月14日(金)から公開されます。


インディアンムービーウィーク2023パート2
2023年12月15日(金)~2024年1月11日(木)
会場:キネカ大森
★上映スケジュールは、こちらで!

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『後継者』 *インディアンムービーウィーク2023パート2

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©️Sri Venkateswara Creations ©️PVP Cinema

『後継者』 原題:Varisu  ★初上映
監督:ヴァムシー・パイディパッリ
出演:ヴィジャイ、ラシュミカー・マンダンナ、サラトクマール
2023年/タミル語/169分

大企業オーナー一族が住む屋敷に、当主と衝突して家を出ていた三男ヴィジャイが戻ってくる。彼は事業を引き継ぎバラバラの家族を結びつけようとする。ヴィジャイ(『マスター 先生が来る!』)主演、2023年1月公開のヒット作。

チェンナイを中心に鉱山採掘や港湾荷役などを行う実業家のラージェンドラン。65歳を目前にして、医師より膵臓癌で余命8~10ヶ月と告げられる。60歳の誕生日祝いは断ったラージェンドランだったが、妻スダーに65歳の誕生日祝いの会を開いてほしいと頼む。病気のことは誰にも打ち明けず、祝いの場で後継者を発表するつもりだ。
ラージェンドランには、3人の息子がいて、長男ジャイと次男アジャイは父の会社で働いているが、3男ヴィジャイは、7年前にハーヴァード大学を卒業するも入社を拒否し、父は勘当し追い出していた。
インド各地をバイクで駆け巡り、アプリの開発で人の役に立てればと活躍しているヴィジャイは、母から、父の65歳の誕生日会に出てほしいと懇願され、7年ぶりに家に帰ってくる。大邸宅に兄たち家族も暮らしているが、家族全員で食卓を囲むことがないことに驚く。皆、ばらばらに食事するのだ。
長男ジャイの妻アールティは、夫に愛人がいることを知っていて、そのせいで娘リヤーもぐれて、陰で煙草を吸っている。次男アジャイは投資家のムケーシュから多額の借金をしていた。
誕生日祝いの日、皆が踊っているところに、長男ジャイの愛人スミターが乗り込んでくる。さらに、ムケーシュが現れ、アジャイが借金を返済しない代わりに、入札の情報を流したと明かす。怒った父は、3男ヴィジャイに家も事業も継いでほしいと宣言するが、ヴィジャイは断って出ていく。ところがヴィジャイは、空港まで行ったところで戻ってくる。気が変わって、父の跡を継ぐ決意をしたのだ。出し抜かれた長男と次男は、父の事業のライバルであるJPと手を組み、ヴィジャイを社長の座から引きずり降ろそうとする・・・

大将(Thalapathy)ヴィジャイが、悪に立ち向かって大活躍する娯楽ムービー。
一方で、ヴィジャイは兄嫁アールティの妹ディヴィヤーと再会して、すっかり綺麗になった彼女に惚れてしまいます。大暴れする時とは打って変わって可愛いヴィジャイです。
インド映画お決まりともいえる群舞の場面もたっぷり。ヴィジャイの切れ味たっぷりのダンスが楽しめます。古典舞踊カタカリの化粧と衣装の人たち、ヒンドゥーのお祭りの山車、ヒンドゥーの神様なども登場する踊りの場面には南インドらしさもあります。
ヴァムスィ・パイディパリ監督はテルグ語映画界で活躍してきた方で、本作が初めてのタミル語映画とのこと。インド映画に詳しくない私には、テルグ語映画らしさ、タミル映画らしさの違いがわからないのですが、よく知っている方には、本作にどちらの要素がより多く感じられるのでしょうか・・・ (咲)




インディアンムービーウィーク2023パート2
2023年12月15日(金)~2024年1月11日(木)
会場:キネカ大森
★上映スケジュールは、こちらで!
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『ストリートダンサー』 *インディアンムービーウィーク2023パート2

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©️Remo D’Souza Entertainment ©️T-Series ©️UTV Motion Pictures

『ストリートダンサー』 原題:Street Dancer 3D   ★特別上映
監督:レモ・デソウザ
出演:ヴァルン・ダワン、シュラッダー・カプール、プラブ・デーヴァー
2020年/ヒンディー語/142分  (*ウルドゥー語も)

ロンドンを舞台に、インド系移民とパキスタン系移民の2つのダンスグループが、世界一のダンサーを決めるダンス大会「グラウンド・ゼロ」で、優勝を競う物語。

ロンドンで生まれ育ったインド人のサヘージ(ヴァルン・ダワン)は、インド系の仲間たちと「ストリート・ダンサー」というチームでダンスを踊っている。ダンスで膝を痛めた兄のインデル(プニト・パタク)が子どもたちにダンス指導ができるようにとダンススタジオを用意する。自分で踊れなくなったインデルにとって、弟サヘージがダンス大会「グラウンド・ゼロ」で優勝することが夢だ。
一方、パキスタン系移民の娘イナーヤト(シュラッダー・カプール)は、「ルール・ブレイカーズ」というグループを率いて踊っている。
超絶ダンサーのアンナー(プラブ・デーヴァー)がオーナーを務めるレストランで、二つのダンスグループは、インドとパキスタンのクリケットの試合を観戦しながら、喧嘩になる。「ここで喧嘩しないで、ダンス大会で競ってくれ」と仲介に入るアンナー。

ある日、イナーヤトは、アンナーがレストランの残り物を違法滞在している移民たちに配っていることを知る。違法移民の中には、国に帰りたくても帰れない人たちもいることを知ったイナーヤトは、ダンス大会の賞金10万ドルを彼らのために使いたいと、優勝を勝ち取ることを決意する・・・

イナーヤトは、ダンスをしている時には、はじけていて、服装もお腹が見えたりしているのですが、家に入る前には、そっとスカーフを被ります。パキスタン移民の家族が、ムスリムらしく暮らしている様子が垣間見れます。イナーヤトがダンスをしていることは、もちろん家族には秘密です。

サヘージは、両親の故郷であるインドのパンジャーブに行った時に、近所のシク教徒の青年4人からイギリスに行きたいとせがまれ、仲介業者からお金を貰って、自分のダンスの音楽隊だと偽って、イギリスに入国させます。けれども入国後は彼らと決別してしまいます。
その後、サヘージはライバルチームのイナーヤトが、アンナーを手伝って違法移民の人たちに食事を配っていることを知るのですが、その中に、自分が見捨てたシク教徒の4人がいて驚きます。彼らは仲介業者に言われた場所に行ったものの、仕事は得られず、パスポートも燃やし、髪の毛も切られていました。シク教徒にとって髪の毛を切ることはご法度。涙が出ます。

現在のイギリス首相リシ・スナク氏は、イギリスで初めてのアジア系首相。父方の祖父母は英領インド帝国パンジャーブ地方のグジュラーンワーラー出身のヒンズー教徒でケニアに移住。グジュラーンワーラーは、印パ分離独立後にはパキスタン領となっています。

二つのダンスチームが、クリケットの観戦をしている時、応援しているのがインドなのかパキスタンなのかで、それぞれのルーツがわかりますが、見た目ではほとんどどっちがどっちかわかりません。 パンジャーブ地方が、印パ分離独立でインド側とパキスタン側に二つに分かれたごとく、広いインド亜大陸。多様な人たちがどっちに属しているかは、歴史的背景があってのことだと感じます。

本作では、イギリスで恵まれない人たちに炊き出しを行っているシク教徒系の団体Nishkam SWAT(Sikh Welfare and Awareness Team)の活動がベースになっていて、最後に実際の彼らの活動が映し出されています。
シク教といえば、お寺でのランガル(パンジャーブ語で無料で食事を提供するという意味)が有名。『聖者たちの食卓』(フィリップ・ウィチュス監督、2011年)を思い出しました。>

さて、二つのチームは準決勝まで勝ち進み、いよいよ優勝を競うことになります。
結果は、映画をどうぞご覧ください。(咲)




インディアンムービーウィーク2023パート2
2023年12月15日(金)~2024年1月11日(木)
会場:キネカ大森
★上映スケジュールは、こちらで!
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