2023年11月26日(日)17:10~
於 有楽町朝日ホール
於 有楽町朝日ホール
11月19日に開幕した第24回東京フィルメックス。最終日の11月26日に各賞の授賞式が行われました。
コンペティション部門の8作品の受賞作のほか、同時開催のタレンツ・トーキョーの各賞も発表されました。
★第24回東京フィルメックス 受賞結果★
最優秀作品賞
ファム・ティエン・アン『黄色い繭の殻の中』
審査員特別賞
アリ・アフマザデ『クリティカル・ゾーン』
ゾルジャルガル・プレブダシ『冬眠さえできれば』
観客賞
ゾルジャルガル・プレブダシ『冬眠さえできれば』
学生審査員賞
キム・テヤン『ミマン』
タレンツ・トーキョー
タレンツ・トーキョー・アワード2023
サイ・ナー・カム『Mangoes are Tasty There』
スペシャル・メンション
アンジェリーナ・マリリン・ボク『Free Admission』
オーツ・インチャオ『Water Has Another Dream』
◎授賞式
発表順にお届けします。
タレンツ・トーキョー
スペシャル・メンション
『Free Admission』(アンジェリーナ・マリリン・ボク(Angelina Marilyn BOK)/シンガポール)
『Water Has Another Dream』(オーツ・インチャオ(OATES Yinchao)/中国)
タレンツ・トーキョー・アワード2023
『Mangoes are Tasty There』
(サイ・ナー・カム(Sai Naw Kham)/ミャンマー)
授賞理由:
物語を読んで、聞いて、感じたここ数日間、美しさや、恐怖、希望や悲しみを織り交ぜた詩のような彼の視点から見る故郷の景色に私たちをこの受賞者は連れて行ってくれました。彼がこの東南アジアらしい物語を語る時、彼の個性や即興性、自信を見ることができ、私たちは、また少し彼の物語を知り、彼の物語を好きになります。この才能を発見できたことが喜ばしく、完成するのが楽しみな作品です。
<タレンツ・トーキョー2023 エキスパーツ(講師)>
モーリー・スリヤ(映画監督)、ビアンカ・バルブエナ(プロデューサー)、ポーリーン・ブーシェニー(ワールド・セールス)、フロリアン・ウェグホルン(ベルリン映画祭)
◆学生審査員賞
『ミマン』 Mimang
監督:キム・テヤン(KIM Taeyang)
韓国 / 2023 / 92分
授賞理由:
目の前で生きているかのような彼らの自然な会話から、物語が立ち上がっていく。
巧みな脚本と映像設計に魅了された。人々と共に描かれる街の変化と、その中でも変わらないもの。バスに揺られていくラストの余韻が心地好い。
開発が進み変わっていく街の中で、記憶を紡ぎ、覚えていることが、世の中に対する希望なのではないか。
学生審査員
中山響一( NAKAYAMA Kyoichi / 武蔵野美術大学 )、大権早耶佳(DAIGON Sayaka / ENBUゼミナール)、藤﨑諄(FUJISAKI Itaru / 明治大学)
キム・テヤン監督
「観客の皆さんにお会いするといつもわくわくします。知らない方ばかりなのになぜか親しみを覚えます。光栄な場所に立たせていただきましたので、私の映画仲間を皆様に紹介させて下さい」
客席にいた大勢のスタッフと出演者が立ち上がりました。大きな拍手が贈られました。
「映画学校時代に恩師に言われた言葉があります。映画はたくさんの人が関わって作り、公開されれば観客もその一員になる。それは本当にロマンチックで大切なこと。申し訳ない気持ちでなく、感謝の気持ちで撮りなさいと。これからも映画を撮り続けられるよう頑張ります。カムサムニダ」
◆観客賞
『冬眠さえできれば』
監督:ゾルジャルガル・プレブダシ
モンゴル、フランス、スイス、カタール
上映された全作品の中から来場者の投票で選ぶ観客賞は、コンペティション部門の『冬眠さえできれば』が受賞しました。
ゾルジャルガル・プレブダシ監督は、1週間前にご出産されたばかりで来日できず、モンゴルからビデオメッセージで喜びを語りました。
「たくさんの人の愛と支援の気持ち、たくさんの努力で出来た映画です。恵まれない環境で生活する子どもたちの声を映画で叫びたい、彼らにいい機会を与え笑顔にしたい、モンゴルや同じような環境のもとにいる子供たちに良い社会を与えることができるようにしたいという心から作った映画が、皆さんに届いて本当に嬉しいです」と日本語で語りました。
共同プロデューサーのバトヒシク・セデアユシジャブさんと、母親を演じたガンチメグ・サンダグドルさんが登壇し、観客賞の賞状を受け取りました。
◎コンペティション部門
ここで、コンペティション部門 8作品の紹介。
いよいよ各賞の発表です。
第24回東京フィルメックス コンペティション審査員の3人が登壇。
審査員特別賞 2作品に贈られました。
『冬眠さえできれば』(If Only I Could Hibernate)
監督:ゾルジャルガル・プレブダシ
モンゴル、フランス、スイス、カタール /2023 / 98分
授賞理由:
現代モンゴル社会の苦難を描いた珠玉の作品。的確な映画的表現と嘘のない観察で、苦闘する若者たちの姿に寄り添っている。
観客賞とダブル受賞となり、再びゾルジャルガル・プレブダシ監督がビデオメッセージで喜びを語りました。
「東京フィルメックスはとってもスペシャルなところです。2017年にタレンツ・トーキョーに参加してアワードをいただいたことが大きな励みになって、この作品を作りあげることができました。一緒に作ったフランス人プロデューサーのフレデリック・コルヴェさんともタレンツ・トーキョーで知り合いました。ですので、今回の授賞は何よりも嬉しいです」
共同プロデューサーのバトヒシク・セデアユシジャブさんと、母親を演じたガンチメグ・サンダグドルさんが再び登壇し、トロフィーと賞状を受け取りました。
ガンチメグ・サンダグドルさん:女優を志しましたが、この20年間はナレーションの仕事をしていました。この映画は初めての出演作です。監督から声をかけていただき、カンヌまで行き、世界を回って東京フィルメックスにまで来られたことを嬉しく思っています。
バトヒシク・セデアユシジャブさん:初めてプロデューサーを務めました。今までドキュメンタリーに関わってきましたが、モンゴルの教育がよくなり、子どもたちが平等な教育が受けられるようにというメッセージを込めた映画ですので、すぐに参加を決めました。
『クリティカル・ゾーン』Critical Zone
監督:アリ・アフマザデ、イラン・独
授賞理由:
この映画では、抑圧的な社会に生きる若者たちの生活を覗き見ることができる。制約の中で、この映画作家はユニークで説得力のある方法で、攻撃的な体制に立ち向かう力強い映画芸術作品を作り上げた。審査員特別賞は『クリティカル・ゾーン』に贈る。
アリ・アフマザデ監督は、イラン政府から出国許可が出ず、ビデオメッセージを寄せられました。
「インディペンデント映画やアンダーグラウンド映画に注目して下さったこと、そして、『クリティカル・ゾーン』のような作品を認めて下さったことに感謝します。ほんとに嬉しいです。いつかフィルメックスに参加できることを楽しみにしています
最優秀作品賞
『黄色い繭の殻の中』 Inside the Yellow Cocoon Shell
監督:ファム・ティエン・アン(PHAM Thien An)
ベトナム、シンガポール、フランス、スペイン / 2023 / 178分
授賞理由:
突然の死が訪れた後、映画は生きることの意味を考えさせ、主人公を取り巻く人々の喪失、過去、欲望、決断を振り返る時間を与えている。映画における永遠の探求を、野心的かつ愛おしげに描いている。
ファム・ティエン・アン監督
光栄です。上映の機会をくださった神谷さんにまずお礼申し上げます。賞をくださった審査員の皆さまにお礼申し上げます。そして、観客の皆さまにお礼申し上げます。インディペンデント映画を支持していただき感謝します。
この映画は、多くの人の支援がなければ作ることができませんでした。製作チームにも感謝します。プロではない役者さんたちにもすごく頑張っていただきました。受賞をたいへん誇りに思うとともに、この賞を彼らに捧げたいと思います。ほんとうにありがとうございました。
最後に、審査員長のワン・ビン監督より講評
今回フィルメックスに集まった映画は、アジアの若い力のある監督たちの素晴らしい作品の数々でした。アジアの状況がよくわかりました。残念ながら賞は3つしかあげられなかったのですが、皆、良い作品でした。アジアの国々の作品は、ほんとうにだんだんと良くなっていると思います。以前は限られた国や地域で作られた作品しか見られませんでしたが、今では、長年作品がなかった国でも映画が作られて、アジアの異なる地域、異なる言語の素晴らしい作品が各地から出てきました。これが最近の大きな特徴だと思います。
実は、私自身、東京フィルメックスの場に初めて参加しました。審査員全員が審査を非常に楽しみました。謝謝。
受賞者、審査員 全員で写真を撮ったあと、クロージング作品『命は安く、トイレットペーパーは安い』のウェイン・ワン監督が、上映前に挨拶に立ちました。
撮影:宮崎暁美 報告・一部撮影:景山咲子