第一回Cinema at Sea 沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル授賞式

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 2023年11月29日(水)、沖縄県那覇市をメインにした新しい映画祭・第一回Cinema at Sea沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバルが閉幕しました。11月23日(木・祝)から一週間にわたった会期中は、コンペティション9作品のほか、特別上映、クリストファー・マコト・ヨギ監督特集(Director in focus)やマブイ特別賞受賞の高嶺剛監督(とキャスト・スタッフ)特集、Pacific Islands ショーケース、VRセレクション、野外上映など多くの映画が上映され、また、トークイベント等も多々催され、充実した映画祭となりました。
 11月29日のクロージングセレモニーでは、コンペティション部門とインダストリー部門各賞が発表されています。審査員長のアミール・ナデリ監督以下ベッキー・ストチェッティ氏(ハワイ国際映画祭エグゼクティブ・ディレクター)、仙頭武則氏(映画プロデューサー)、サブリナ・バラチェッティ氏(ウーディネ・ファーイースト映画祭代表)、伊藤歩氏(俳優)の計5名が審査員を務めました。授賞式冒頭、ナデリ監督は「私たちはたくさんの映画を観ました。たくさんの人たちに出会いました。私たちは家族のように親しい関係になっていたと思います。審査員もまた親交を深めながらベストを尽くしていきました。喧嘩をしながら心からの言葉を尽くして私たちは受賞作品を選んでいきました。素晴らしい役者、編集、すべての作品に賞を与えたいという思いがありましたが、私たちも限られた時間のなかでとても長い議論をして選びました」と審査過程について話され、白熱した会議であったことを明かしました。受賞結果は以下のとおりです。

【コンペティション部門】
最優秀映画賞『緑の模倣者』
The Mimicry/綠金龜的模仿犯 (監督:ジョン・ユーリン 鍾侑霖)

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ナデリ審査員長とジョン・ユーリン監督

受賞理由:シンプルで複雑で深い、そしてイマジネーションを掻き立てるような、カメラワークの正しい作品だった。(審査員長アミール・ナデリ氏談)
受賞コメント(ジョン・ユーリン監督):初めて沖縄に来ました。僕がこの作品で伝えたいことと沖縄は相通じるものがあります。違う民族が共存共生するなかで、皆が違う意見や違う眼差しを持っています。それをどうやって互いに受け入れていくかということがとても重要です。この関係性は人と人のみならず、人とモノ、人とあらゆる生物にも言えることだと思います。グローバリゼーションが進むなかで、この沖縄の島に皆がこうして集まったことはとても感動的です。
 補足:本作は、台湾の客家テレビ局のテレビ映画として製作されたもので、2023年の金鐘奬(放送メディアを対象にした賞)の最優秀テレビ映画賞受賞作。とある集合住宅に住む人々の日常を人間に擬態したコガネムシの視点で描いている。

観客賞『アバンとアディ』
Abang Adik/富都青年 (監督:ジン・オング 王礼霖)

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オング監督とプレゼンターの伊藤歩


 受賞コメント(ジン・オング監督):第一回のこの映画祭で『アバンとアディ』が観客賞を受賞したことをすごく嬉しく思います。2回の上映でのアフタートークで皆さんに涙を流させてしまって申し訳ない気持ちになりました。涙を流しながらこの作品をとても気に入っている、好きだという気持ちを伝えてくださいました。この作品をもって皆さんにお会いできたことを嬉しく思います。

主演俳優賞ウー・カンレン(呉慷仁)『アバンとアディ』

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ウー・カンレンの画像を背にオング監督とプレゼンターの仙頭氏


 受賞コメント(本人不在につきジン・オング監督が代理で登壇):先週(11/25)の金馬奬で最優秀主演男優賞を獲ったばかりのウー・カンレンが、まさかこの沖縄の映画祭でもこのような賞をいただけるとは本当に僕は夢にも思っていませんでした。俳優であれば、このような賞がいかに励みになるか、身に染みることでしょう。今日、彼はこの場にいないのですが、きっと彼にとって嬉しいニュースだと思います。心より感謝申し上げます。
 補足:コンペティションの応募要項に俳優についての賞の記載はなく、カタログにも「最優秀長編部門賞(最優秀映画賞)」と「観客賞」についての記述しかなかった。なお、本作でウー・カンレンは台湾の俳優であるが、このマレーシア映画では全編マレー語の手話を用いて演技をしている。

審査員賞①『アバンとアディ』
 受賞コメント(ジン・オング監督):このような席に3回連続で登壇するとは夢にも思いませんでした。まずは本当にありがとうございます。この賞は、映画に関わったすべてのクルーにとって、とても励みになる、サプライズな賞であると思います。この作品を手掛けてかれこれ3年が経ちますが、いろいろな地域でそれぞれに励ましの言葉をいただいています。本当に感謝申し上げます。

審査員賞②『クジラと英雄』
One with the Whole(監督:ジム・ウィケンズ監督&ピート・チェルコウスキー)

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ビデオメッセージよりウィケンズ監督

 受賞コメント(ジム・ウィケンズ監督よりビデオメッセージで):本当に嬉しく思っています。この映画を撮らせてくれたアラスカの先住民族の皆さんに心より感謝を伝えたいと思います。彼らがいなければこの映画は成り立ちませんし、彼らがこの映画を撮らせて世界に届けることを許してくれました。いま世界では、人々はなかなか感謝し合わずお互いに意見を聞かないということがあると思います。しかし、映画というコミュニケーションツールを通じて、それは人々が再び話をするきっかけとなって魔法のように人々をまたくっつけるように感じています。

【インダストリー部門】
Doc Edge賞「Magnetic Letters」デミ―・ダンフグラ監督
最優秀企画賞「沼影市民プール」
太田信吾監督、竹中香子プロデューサー


 映画祭期間中は、映画祭主催イベントのほか近隣会場での共催企画も開催されました。なかでも「沖縄映画製作者たち、大いに語る」と題したトークショーは会場に入りきれないほどの映画ファンや県外からの業界関係者が集結。映画祭アンバサダーの俳優・尚玄氏のほか、沖縄を拠点に作品を撮る岸本司監督、平一紘監督、東盛あいか監督が一堂に会し、沖縄で映画を撮るに際してのメリット・デメリット、沖縄をテーマにした作品作りについて、沖縄に映画文化を根付かせることの重要性などについて予定時間を超えて語り合いました。

取材&撮影 稲見公仁子

第36回東京国際映画祭(2023)観て歩き(暁)

宮崎暁美

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東京国際映画祭は2021年から六本木を離れ、日比谷、有楽町、銀座地区での開催になった。六本木からこちらに移って3年目、やっと映画祭の周り方にも慣れてきた。
あいにく2020年からコロナの影響で、海外からのゲストの来日は難しく、オープニングや授賞式も縮小の形で行われていたけど、今年(2023)は、4年ぶりに海外からもゲストが来日し、通常の形にもどった。オープニングのレッドカーペットもたくさんのゲストが参加するとのことだけど、撮影のためには何時間も立ち通しで現場に張り付いていないといけないようだったので、今年はクロージングにかけようと思っていたら、今年の取材は抽選になり、抽選に外れてしまった。1989年から約30年、ほとんどの年、クロージングの写真を撮ってきたのにとがっかり。長らく写真撮影をしてきたこととか全然考慮されず、ただ抽選というのもなあと思った。1媒体一人というようなことだったのかしら。
クロージングだけでなく、取材申請が通っていなかったり、抽選に外れたりとかみ合わず、今回はあまり写真が撮れなかったのが残念。特に顧暁剛(グー・シャオガン)監督の作品の舞台挨拶、Q&Aに参加できなかったのはとても残念だった。それでも黒澤明賞を受賞した「グー・シャオガン監督と山田洋次監督」「モーリー・スリヤ監督とヤン・ヨンヒ監督」の対談だけは取材することができた。それにしても撮影と作品鑑賞との兼ね合い、時間調整はなかなか難しい。
シネスイッチ銀座まで有楽町駅から歩いて20分くらいかかる私にとって、今年はシネスイッチ銀座でのプレス試写を少なくし、駅近くの会場で上映される作品を多く選んだ。また当日券が残っている作品については、有楽町駅前でチケットを買い、何本か観ることができ、結局、中華圏の作品を中心に15本の作品を観ることができた。去年はフィルメックスと重なっていたので、同じ15本でも、東京国際は7本しか観ることができなかったけど、今年は東京国際映画祭に集中できた。その中から数本紹介します。

ガラ・セレクション
『満江紅(マンジャンホン)』
原題:滿江紅 英題:Full River Red
監督:張芸謀(チャン・イーモウ)特別功労賞
出演
張大役:沈騰(シェン・トン)
副司令官:易烊千璽(イー・ヤンチェンシー)
宰相秦檜の部下:張毅(チャン・イー)
2023年中国 157分 カラー 北京語 日本語・英語字幕
ジャパン・プレミア
Poster_Full_River_Red「満江紅(マンジャンホン)」©2023 Huanxi Media Group Limited(Beijing) and Yixie(Qingdao)Pictures Co., Ltd. All Rights Reserved._R.jpg
Ⓒ2023 Huanxi Media Group Limited(Beijing) and Yixie(Qingdao) Pictures Co., Ltd. All Rights Reserved.

長年の映画界への貢献を評価し、特別功労賞が授与された張芸謀監督の最新作。今年(2023)、中国の旧正月に公開され、大ヒットを記録。
非業の死を遂げた南宋の武将・岳飛が残した詩「満江紅」をモチーフに、南宋朝廷内部に渦巻く謀略を描いた壮大なスケールの歴史劇。金国と会談する筈が、金の使者が殺害され密書が消えた。この謎を軸に騙し騙され、駆け引きと知恵比べ。謀略の数々!
コミカルでテンポよいコメディかと思いきや、少しづつ張られた伏線と、それが回収されるラストは圧巻。中国の歴史をよく知らない私でも、最後は感動した。
主人公は、宰相より消えた密書を夜明けまでに探し出すように命じられる。猶予は2時間。はたして見つけられるのか? はたまた、その密書とはどういうものだったのか…。廷内の石壁の通路を兵士たちが走ったり、歩きまわって探しまわる姿を上から撮ったり、横から撮ったり、前から撮ったりと、整然とした兵士たちの動きの様式美は、いかにも張芸謀監督らしい。また、渋い色の色合いは、一見、これまでの赤を基調とした派手な色使いの張芸謀調とはかけ離れているようで、色彩の美さという意味ではやはり張芸謀調ともいえるのでなないだろうか。そして音楽がまた意表をつく。京劇風の音楽をラップ調で演奏したりして、新しい試みだと思った。
「製作のきっかけは、『紅夢』の続編を撮ろうと6年前、山西省に撮影用の屋敷を建てたこと。その続編は脚本がうまくできず止まっていたら、現地の行政から映画を作ることを催促され、そこから始まった企画。『紅夢』と全く違う物語を撮ろうと思ったけど、脚本は4年かかった」と監督は語っていた。

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左 張芸謀監督 第36回東京国際映画祭にて 撮影:宮崎暁美


コンペティション
『雪豹』 東京グランプリ
原題:雪豹 英題:Snow Leopard
監督:萬瑪才旦(ペマ・ツェテン) 
出演
金巴(ジンパ)
熊梓淇(ション・ズーチー)
才丁扎西(ツェテン・タシ)
109分カラーチベット語、北京語日本語・英語字幕2023年中国

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チベット・ニューウェーブの先駆者であり、本年(2023)5月8日に53歳に急逝したチベット人監督ペマ・ツェテンの最後の作品のひとつ。舞台は白い豹が生息するチベットの山村。若いチベット僧と豹との向き合いをファンタジックな設定の中に描き、人間と動物の共生の可能性、地元の人にとっての保護獣の意味などを問う。
チベット自治区の隣、青海省から車を飛ばす地方局のレポーター(ション・ズーチー)とカメラマン。レポーターの友人のチベット僧(ツェテン・タシ)=ニックネーム“雪豹法師”から、山間の村にある雪豹法師の実家に保護動物として知られる雪豹が現れたという連絡を受け、それを撮影しようとしていた。現場に到着した彼らを“雪豹法師”の家族は出迎えてくれるが、羊の囲いの中には9頭の羊を殺めたという雪豹がいた。1000元を超える損害が出たから「雪豹」を殺すと激怒する僧侶の兄(ジンパ)、動物は逃したほうがいいという父親。それを傍観するメディア。そんな状態のなか、役人と警察までがそこに現れる。自然の中で暮らす人と、自然保護をかかげた人たちの思いのすれ違い。この地で生きる人たちよりも、自然保護動物への施策を優先させようとする人たちの言い分により激高する兄。そんな中、“雪豹法師”は雪豹に近づき、まるで会話をするように対峙する。双方の言い分を見事な会話劇と大自然の映像で魅せる。この地に生きる人々の思いに関係なく、自然保護を進めようという人たちへぶつけた作品ともいえる。

チベットの雄大な自然のなかで営まれる動物と人間の生きるためのたたかいは、切実なドラマを生み「満場一致」でグランプリになったという。他にも、監督の新作は、『陌生人~Stranger』(見知らぬ人)という作品があるらしい。こちらもぜひ観てみたい。
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2015東京フィルメックス 『タルロ』最優秀作品賞受賞時
ペマ・ツェテン監督 撮影:宮崎暁美

ペマ・ツェテン監督は、チベット人映画監督の先駆者的存在。これまでに国内外の映画祭でたくさんの賞を受賞している。東京フィルメックスでも何作品か上映され、『オールド・ドッグ』(11)、『タルロ』(15)、『羊飼いと風船』(19)で、東京フィルメックスグランプリを3度受賞している。
チベットの後進監督の育成にも力を入れ、2021年の第34回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品された久美成列(ジグメ・ティンレー)監督(子息)の長編デビュー作品『一人と四人』ではプロデューサーも務めた。
私は『オールド・ドッグ』(2011年)、『タルロ』(2015年)、『轢き殺された羊』(2018年)、『羊飼いと風船』(2019年)を観たことがある。
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2018東京フィルメックス 『轢き殺された羊』上映後のトーク
左 ペマ・ツェテン監督とジンパさん 撮影:宮崎暁美


コンペティション
『西湖畔に生きる』(原題:草木人間)
英題:Dwelling by the West Lake
監督・脚本:顧暁剛(グー・シャオガン)黒澤明賞受賞
脚本:郭爽(グオ・シュアン)
音楽:梅林茂
出演
目蓮役:吴磊(ウー・レイ)
呉苔花役:蒋勤勤(ジャン・チンチン)
董萬里役:閆楠(イエン・ナン
王社長役:王宏偉(ワン・ホンウェイ)
ワールド・プレミア

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©Hangzhou Enlightenment Films Co., Ltd.


2023年 中国 115分 カラー 北京語 日本語・英語字幕

2019年の東京フィルメックスで、審査員特別賞を受賞した顧暁剛(グー・シャオガン)のデビュー作『春江水暖〜しゅんこうすいだん』(19)を観て感動。まだ若いのに熟練の監督作のような映画を作った監督に感心した。フィルメックスでの上映の時、引き続き第二弾を作ると言っていたので新作に期待していた。その新作。

浙江省杭州の西湖畔。中国緑茶の産地として有名な西湖の沿岸に暮らす母と息子の関係を軸に、マルチ商法など経済環境の変化の中で揺れる家族の姿を美しい風景の中に描いた。
10年前に父が行方不明になり、母の苔花と生きて来た青年目蓮。父を探すためにこの地で進学。卒業を控えて、今は求職活動をしている。
息子と生活するため、ここ杭州にやって来た母の苔花は茶摘みで生計を立てていたが、茶商の錢と恋仲に。しかし、家族や仲間に知られてしまい、茶摘みの仕事ができなくなり、苔花は同郷の友人 金蘭に誘われ、彼女の弟が取り仕切るイベントに参加。マルチ商法に取り込まれ、詐欺まがいの仕事に参加するようになってしまった。この仕事にのめりこみ、お金を稼ぐようになった母は、自信を持つようになり、活発に。息子の目蓮は母に、だまされていると言うが、苔花は聞く耳を持たずだった。
1作目の『春江水暖〜しゅんこうすいだん』の表現方法とは違う方法で2作目を描いたが、「様々な変化を迎える中国社会の中で精いっぱいに生きる家族の変遷」という、最初の作品への思いはこの作品の中でも生きている。

監督はトークの中で原題について、「『草木人間(そうもくじんかん)』は“茶”という字を分解したもの(草と木の間に人が入ると茶という字になる)、この映画ではお茶は作品の重要な要素です」と語っている。そして「この作品を作っている時、人というのは天と地の間の草木のようだと感じました。路傍にはえている草、自分が育つところも選べない小さな草木のよう。そんな草木でも太陽の方を向き生命の意義を見出す。草木は生きとし生けるものの象徴。庶民にとっての生活や努力に対する希望の象徴です。山水画の雰囲気を残しつつ、マルチ商法のような社会の問題をどう描くかは挑戦でした」と語っていた。
中国には「目連救母」という言葉があります。地獄に落ちた母を息子目連が救い出そうとする話しです。その「目連救母」を題材に、地獄をマルチ商法に変え、人の世とどう結びつけるかを描いたそうです。

映画上映後のトークには参加できませんでしたが、黒澤明賞受賞記念として行われた「山田洋次&グー・シャオガン対談」に参加しました。その模様はこちら
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今回の映画祭、まだまだ観ていますが、この3本の作品を観ることができただけでも、有意義な映画祭でした。

難民映画祭パートナーズ上映会「困難への挑戦 ー 音楽とともに」(1/12,13)

「難民を支える自治体ネットワーク」にも署名している文京区主催で、難民映画祭パートナーズ上映会「困難への挑戦 ー 音楽とともに」が開催されます。

困難を乗り越える難民の力強さに焦点をあてた珠玉の音楽ドキュメンタリー3作品。
ベネスエラの世界的指揮者ドゥダメル、アフガニスタンの音楽と女性たち、アフリカの気候変動をテーマとしたもの。いずれも登場する人たちの強さと魅力が深く心に残る感動の映画です。
★詳細:https://www.japanforunhcr.org/news/2023/rffp-bunkyoku-20240112

【日時】
2024年1月12日(金)
14:00~16:00 「ビバ・マエストロ!指揮者ドゥダメルの挑戦」
18:30~20:25 「グレート・グリーン・ウォール」


2024年1月13日(土)
11:00~13:00 「ビバ・マエストロ!指揮者ドゥダメルの挑戦」
15:00~17:40 「私は歌う~アフガン女性たちの闘い~」 ※トークイベントあり


【会場】
 文京シビックホール・小ホール (東京都文京区春日1-16-21 文京シビックセンター2階)

・参加無料 / 事前申込制・先着順 / 定員280名

【お申込み】
下記のリンクからお願いします(イベントサイトのPeatixに遷移します)。
1月12日(金) 14:00~16:00 「ビバ・マエストロ!指揮者ドゥダメルの挑戦」
https://rffpbunkyo20240112a.peatix.com/
1月12日(金) 18:30~20:25 「グレート・グリーン・ウォール」 
https://rffpbunkyo20240112b.peatix.com/
1月13日(土) 11:00~13:00 「ビバ・マエストロ!指揮者ドゥダメルの挑戦」
https://rffpbunkyo20240113a.peatix.com/
1月13日(土) 15:00~17:40 「私は歌う~アフガン女性たちの闘い~」 ※トークイベントありhttps://rffpbunkyo20240113b.peatix.com/


【主催】文京区、国連UNHCR協会

東京国際映画祭コンペティション部門『ゴンドラ』Q&A報告 (咲) 

第 36 回東京国際映画祭 コンペティション部門
『ゴンドラ』Gondola
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監督:ファイト・ヘルマー
出演:マチルデ・イルマン、ニニ・ソセリア
2023年/ドイツ・ジョージア/82分/カラー/セリフなし字幕なし

*物語*
ゴンドラに棺が乗せられ、山の下に運ばれる。黒い喪服の女性が見送る。ゴンドラの車掌の男性が亡くなったのだ。村の人たちが皆、棺を見守る。
若い女性の車掌が着任する。すれ違うゴンドラのもう一人の女性の車掌との間に淡い恋心が芽生える・・・


◎10月25日 (水)10:20からの上映後のQ&A  @TOHOシネマズ シャンテ スクリーン1
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登壇ゲスト:ファイト・ヘルマー(監督/脚本/プロデューサー)、ニニ・ソセリア (俳優)ケイティ・カパナゼ(アシスタント・ディレクター)
司会:安田祐子

安田:午前中からとてもいい気持になれる映画でしたね。皆さんいかがでしたでしょうか?

監督:ようこそおいでくださいました。2~3年で作った映画で、どんな反応をされるか、観客にみせて初めて意義あるものかどうかがわかります。これまで1回上映しまして、とてもポジティブなリアクションがあって、東京国際映画祭でワールドプレミア出来て嬉しいです。

安田:やっとニニさんの声が聞けますね。

ニニ:ハロー。出来上がった映画をここで初めて観ました。大きな機会をありがとうございました。 すぐにでも東京に戻ってきたいほど東京が気に入りました。

ケイティ:東京に来られてほんとに嬉しいです。初めての東京です。3日になりますが、素晴らしい町で、観客も素晴らしい。食事も美味しくて、早くまた戻ってきたいです。

安田:事前に台詞がない映画とわかっていた方もいると思いますが、途中から台詞がないことに気づいた方も、台詞がないことが全く気にならなくなったのではないでしょうか?
監督は最初から台詞のない映画にしようと思っていたのでしょうか?

監督:できるだけ映画に言葉を使わない方針です。映画のエッセンスは、イメージ、音、映像です。会話があったとたん壁が出きてしまいます。字幕やアフレコが必要になります。イメージだけにすると、感じ取れます。観客の皆さんの気持ちがオープンでないとできないことです。受け入れられないという方もいると思います。OKな方とはお友達です。

安田:ニニさんに。オファーが来たときに、台詞がないという映画はいかがでしたか?

ニニ:脚本を渡された時に、台詞がないのは初めてでしたので、不思議だなと戸惑いました。撮影が開始されますと、指示がはっきりしていて難しさはなかったです。
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安田:女優二人がジョージアの方で、ロケーションもジョージア。ケイティさんはジョージアで撮影することで大変だったことは?

ケイティ:女性どうしの愛が描かれていますが、ジョージアでもほかの国でも受け入れてくれない人たちがいます。これからジョージアで公開される時に受け入れられるかどうか、受け入れてもらうために闘わないといけないと思っています。(大きな拍手)

◆会場から
―(女性)ロマンティックで素敵な映画で感動しました。日本ではジョージア映画祭がおこなれる位、人気です。ジョージアの映画で影響を受けたものやお気に入りの映画は?

監督:最初の長編映画『ツバルTUVALU』(1999)がジョージアで上映された時に、何人もの監督にお会いできました。オタル・イオセリアニと、ナナ・エクチミシヴィリには特に影響を受けました。大勢のジョージアのスタッフとも仕事をしています。
『ブラ!ブラ!ブラ!胸いっぱいの愛を』(2018)もジョージアとアゼルバイジャンで撮影しました。アゼルバイジャンで撮影していた時に、ジョージアの有名な俳優さんがレストランに入ってきて、皆が立ち上がってレスペクトしていました。ジョージアには映画を愛する人が多いと思いました。

ニニ:ジョージアの映画をたくさん観ています。数か月前に観た『Room of Mine』がとても気に入っています。

ケイティ:私もたくさん観ています。古い映画が特に好きです。ナナ・エクチミシヴィリ監督の『My happy family』も好きです。
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―(女性)ファンタスティックな映画をありがとうございます。ゴンドラから見える風景、主に建物ですが、羊が移動していくときに3人の女性が手を振っていたそばの小さな造形物がたくさん並んでいました。木を切っている家など、実際のジョージアの風景でしょうか?

監督:すべて実在するものです。少し変えたところもあります。ゴンドラの内部、家はフーロの町の伝統的なものです。大きな問題は、この村にはゴンドラが一つしかないことでした。
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クタイシには二つのゴンドラがあるのですが、黄色だったので、赤に塗り替えて、すごいロウアングルで2台のゴンドラを撮りました。(椅子に座ったまま、下から撮った時のポーズをしてくださいました)
家が遠くにあるのが問題でした。すぐそばに家があるマウリポリに撮りにいったのですが。そこのゴンドラは青だったので赤に塗りましたが、雨ではげて塗り直しました。
そこの住民には、すごく協力してもらいました。予算が少なかったので、ほんとに助かりました。
もう一つストーリーがあって、ロケ地に行ったら、トラックが来て、ゴンドラの駅を新しいものに変えると言われました。ヴィム・ベンダース監督も「とにかく早く撮らないと」とおっしゃっています。古いままの駅を撮りたかったので、とても急いで撮る必要がありました。

― ニニさんは多才ですね。鍵を開けることができるし、楽器は吹けるし、いろんなことができますね。どのエンターテイメントが大変でしたか?

ニニ:実は高所恐怖症でしたので、ゴンドラでの演技が大きなチャレンジでした。鳴れたらゴンドラが自分の家のようになりました。


フォトセッション
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「映画は気に入りましたか?」の監督の質問に大きな拍手が贈られました。
監督が皆さんの写真も撮りたいと、5秒だけマスクを外して立ち上がってくださいと声をかけました。

安田:皆さんも観客の作品の出演者になってしまいました。


イスラーム映画祭9 (2024年開催) 上映日程&作品が発表されました!

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イスラーム映画祭9
東京・渋谷ユーロライブ:2024年3月16日(土)~17日(日)、23日(土)~24日(日)*4日間 1日5回上映
  東京のチケット発売:3/13(水)深夜0時から会期中の4日分を一斉に販売

名古屋・ナゴヤキネマ・ノイ  期間未定

神戸・元町映画館:4月27日(土)~5月.3日(金) 1日2回上映

主催:イスラーム映画祭
公式サイト:http://islamicff.com/
X(旧:Twitter):http://twitter.com/islamicff
Facebook:http://www.facebook.com/islamicff

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藤本高之さん一人の手弁当で開催されているイスラーム映画祭。
来年は開けないかもしれないとの話もあったのですが、昨今の世界情勢も鑑みて、開催を決断されました。上映作品と、東京での上映やトークの詳細も決まりました。
ぜひ、皆さまご予定ください。

ここに、藤本さんの開催に向けての言葉をお届けします。

☆イスラーム映画祭主宰 藤本高之さんの言葉☆
2015年12月にスタートし、中東や北アフリカに広がる「イスラーム文化圏」の映画を紹介してまいりました本企画。
昨今の円安で次回の開催が危ぶまれておりましたが、継続を望む多くの声に支えられ、規模を縮小することにより第9回を開催することとなりました。

名古屋では、先日発表されました、本年7月に閉館した名古屋シネマテーク跡地に新たに誕生する、「ナゴヤキネマ・ノイ」にて開催する予定です。

今回は、10月7日に発生したパレスチナ・ガザ地区を拠点とするイスラム組織ハマスの越境攻撃と、その「報復」や「自衛」と呼ぶにはあまりに苛烈なイスラエルのガザ侵攻が続いている現状を鑑みまして、パレスチナ問題の原点である1948年のイスラエルによる民族浄化、“ナクバ”(アラビア語で“大災厄”)を少女の視点から描いた劇場未公開の傑作『ファルハ』を緊急上映いたします。(東京・神戸のみ)

また、緊迫するパレスチナ情勢の影で今なお民衆革命への弾圧が続いている隣国のシリア。
その独裁政権下で長年行われている人道犯罪、“強制失踪”の被害者家族を追ったドキュメンタリー映画、『アユニ/私の目、愛しい人』を日本初公開。

他にも、イスラーム映画祭7から続く北アフリカ・マグリブ諸国の女性監督を紹介するシリーズの決定打として、アルジェリア内戦中フランスへ亡命した俳優兼舞台演出家が、公衆浴場「ハマム」を舞台に抑圧下の女性たちを描いた戯曲を、自ら映画化したワンシチュエーション・ドラマ、『私は今も、密かに煙草を吸っている』も初公開いたします。

さらに今回は、フランスの都市郊外(バンリュー)に暮らす移民ルーツの若者たちの実態を、モノクロのシャープな映像で描いて本国公開時(1995年)に一大センセーションを巻き起こし、日本でも1996年に公開され話題となったフランス映画のエポックメイキング、『憎しみ』を28年ぶりに劇場リバイバル。(東京・神戸のみ)

歴史大作からヘビーな社会派ドラマ、移民をテーマにした子ども映画やコメディまで、9年続く企画としての連続性と、“今、世界で起きているのに忘れられている事”も意識しつつ、多彩な12作品を揃えました。

気鋭の研究者やジャーナリストを迎えて毎回好評を博している上映後のトークセッションも、東京では過去最多の11回を予定しております。


◆イスラーム映画祭9上映作品◆

【イスラーム映画祭9上映作品①】
『炎のアンダルシア』 ★26年ぶりの劇場リバイバル
原題:Al-Massir 英題:Destiny
監督:ユースフ・シャヒーン / Youssef Chahine
1997年/エジプト=フランス/135分/アラビア語・フランス語
知る人ぞ知る巨匠、故ユースフ・シャヒーン監督(1926-2008)作。中世に実在した大哲学者イブン・ルシュド(ラテン名:アヴェロエス)が主人公の歴史大作。
時は12世紀末、ムワッヒド朝カリフ・マンスール治世下のアンダルス(スペイン南部)。世には権力を背に偏狭なイスラム主義が蔓延し始め、信仰と理性の両立を説くアヴェロエスの哲学書にも焚書の危機が迫ります…。
20世紀末のエジプト社会を反映しつつ現代にも通じる普遍的なテーマを謳った、エンターテインメント要素も満載の壮大な作品。
予告篇 https://www.youtube.com/watch?v=lusJxBk8ha4

☆東京上映日
3/17(日) 12:00 

3/24(日)15:05
上映後トーク
【テーマ】《思想には翼がある ―12世紀アンダルスより21世紀への伝言》
【ゲスト】金子冬実さん(東京外国語大学非常勤講師)


【イスラーム映画祭9上映作品②】
『私は今も、密かに煙草を吸っている』★日本初公開
原題:À mon âge je me cache encore pour fumer
英題:I Still Hide to Smoke
監督:ライハーナ / Rayhana
2016年/フランス=ギリシャ=アルジェリア/90分/アラビア語・仏語
予告篇 https://youtu.be/DWdFgxJHTjQ
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全編ほぼ“ハマム”を舞台にした、抑圧下の女性たちを描く人間ドラマです。
アルジェリア軍とイスラム過激主義勢力による内戦が激化していた1995年。
ハマムは女性たちにとって、唯一自由に話せる場所でした…。
監督のライハーナはアルジェリアの俳優兼演出家で、90年代末にフランスへ亡命。
2009年に本作の元となる戯曲をフランス語で上演しています。
ハマムのシーンはギリシャにて、女性のスタッフのみで撮影されました。

☆東京上映日
3/16土 12:35 
3/24日 20:40



【イスラーム映画祭9上映作品③】
『アユニ/私の目、愛しい人』
原題・英題:Ayouni
監督:ヤスミーン・フッダ / Yasmin Fedda
2020年/シリア=イギリス/74分/アラビア語・英語・イタリア語
予告篇 https://youtu.be/mS7aS_5YNp8
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シリアのアサド政権下で続く人道犯罪、“強制失踪”の被害者家族を追った深淵なるドキュメンタリー映画。
2013年にラッカで強制失踪したイタリア人神父の妹と、2015年にダマスカスで強制失踪したシリア人男性のパートナーが、それぞれに最愛の人の消息を求めて活動する様子を6年にわたり撮影しています。
失踪者の数は10万人以上…。 その数の一人ひとりに掛け替えのない愛と人生がある事を教えてくれる作品です。

☆東京上映日
3/16土 10:00 
上映後トーク
【テーマ】《特集:14年目のシリア革命①― 震災後のシリア北西部と革命の現在地》
【ゲスト】山崎やよいさん(アラビア語通訳/「イブラ・ワ・ハイト」発起人/ NPO法人Stand with Syria Japan監事)

3/23土 17:50
上映後トーク
【テーマ】《特集:14年目のシリア革命②― 「革命前のシリアは平和だった」言説のまやかし》
【ゲスト】黒井文太郎さん(軍事ジャーナリスト)


【イスラーム映画祭9上映作品④】
『ファルハ』
原題・英題:Farha
監督:ダリン・J・サラム / Darin J. Sallam
2021年/ヨルダン=スウェーデン=サウジアラビア/92分/アラビア語・ヘブライ語・英語
予告篇https://youtu.be/2UT6Zw4-Yg0
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パレスチナにルーツを持つヨルダン出身のダリン・J・サラム監督作。
1948年、イスラエルによるパレスチナの民族浄化、“ナクバ(アラビア語で“大災厄”)”を目撃する少女の物語です。
映画は、ナクバでシリアに逃れ、サラム監督の母親に自身の経験を語ったというパレスチナ女性の物語に基づいており、主人公ファルハの体験は、イスラエル建国の1ヵ月前に起きた
“デイル・ヤーシーン村の虐殺”を彷彿とさせます。
本作はNetflixで配信された際、イスラエル政府の大きな反発を招きました。(つまり、イスラエルによるパレスチナの民族浄化はホロコーストと同じく歴史的な事実だからです)


★SKIPシティ国際Dシネマ映画祭『ファルハ』 1948年のパレスチナ 少女が隙間から覗いた惨劇 (咲)  
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ダリン・J・サラム監督 Q&Aも掲載しています。
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/489961622.html


☆東京上映日
3/17日 14:45

上映後トーク
【テーマ】《ホロコーストとナクバ―起源の暴力と暴力の起源》
【ゲスト】岡真理さん(京都大学名誉教授、早稲田大学大学院文学研究科教授/アラブ文学者)


【イスラーム映画祭9上映作品⑤】
『戦禍の下で』
原題:Sous les Bombes 英題:Under the Bombs
監督:フィリップ・アラクティンジ / Philippe Aractingi
2007年 フランス=レバノン=イギリス/93分/アラビア語・英語・フランス語
予告篇https://youtu.be/jwtEWdsVgZc

2006年に起きたイスラエルによる第二次レバノン戦争後、1年足らずのうちに撮影された、まるでドキュメンタリーと見紛う戦禍の傷痕をたどるドラマです。
この戦争は現地では7月戦争と呼ばれます。 妹と息子の消息を探すシーア派ムスリム女性と、彼女に雇われたタクシー運転手のレバノン南部をたどるフィクションが、やがて実際の被災地や被災者の声をたどるドキュメンタリーの役割をなしてゆくのです。
瓦礫の山と化した現地の様子は現在のガザとも重なります。

☆東京上映日
3/17日 17:50 

上映後トーク
【テーマ】《我々は映像で闘う ―2006年第二次レバノン戦争とレバノン映画人》
【ゲスト】佐野光子さん(アラブ映画研究者)

3/23土 20:30

ヨーロッパの移民映画小特集1
【イスラーム映画祭9上映作品⑥】
『憎しみ』
原題:La Haine  英題:Hate
監督:マチュー・カソヴィッツ / Mathieu Kassovitz
1995年/フランス/98分/フランス語
予告篇https://youtu.be/MjEVNWNhA1o?si=PaaZzGX5cvZseuYl

<郊外(バンリュー)映画>の隆盛はここから始まった!
フランス映画のエポックメイキング、マチュー・カソヴィッツ監督作『憎しみ』を28年ぶりに劇場リバイバルします。
かったるい日々を生きるユダヤ系のヴィンス、アラブ系のサイード、サブサハラ・アフリカ系のユベール。 暴動が起きたカオスな街で、警官が紛失した拳銃を拾った3人の24時間…。
都市郊外(バンリュー)に住む移民ルーツの若者たちの実態を描いた本作は、公開当時本国で賛否両論の一大センセーションを巻き起こしました。

★東京上映日
3/23土 12:00

上映後トーク
【テーマ】《「郊外(バンリュー)」から声をあげる ―フランスの移民事情とラップ・フランセ》
【ゲスト】陣野俊史さん(ライター/『魂の声をあげる 現代史としてのラップ・フランセ』『ジダン研究』著者)

ヨーロッパ移民映画小特集2
【イスラーム映画祭9上映作品⑦】
『ハンズ・アップ!』
原題:Les Mains en L'Air  英題:Hands Up
監督:ロマン・グーピル / Romain Goupil
2010年/フランス/92分/フランス語
予告篇https://youtu.be/Ji7ZlzNXpzI

強制送還されそうな非正規滞在のチェチェン人少女を、同級生たちが体を張って守ろうとする子どもたちのレジスタンス映画です。
映画は、主人公ミラナが2067年の未来から2009年の記憶を回想するという形で語られます。本国で公開された2010年はブルカ禁止法が施行された年でもあり、移民社会に対し強硬的だったサルコジ政権下の雰囲気もうかがえます。
しかし、いつの世も子どもたちの世界に、大人が引いた境界線は関係ないのです。

★東京上映日
3/16土 17:45 


3/23土 15:00
上映後トーク
【テーマ】《2023年「暴動」をふり返る― 映画から読み解くフランスの移民事情【復習編】》
【ゲスト】森千香子さん(同志社大学社会学部教授/『排除と抵抗の郊外 フランス〈移民〉集住地域の形成と変容』著者)


ヨーロッパ移民映画小特集3
【イスラーム映画祭9上映作品⑧】
『辛口ソースのハンス一丁』
原題:Einmal Hans mit scharfer Soße 英題:A Spicy Kraut
監督:ブケット・アラクシュ / Buket Alakus
2013年/ドイツ/92分/ドイツ語・トルコ語
予告篇https://youtu.be/SklT3XcHt10

親の祖国と生まれ育った国の価値観に挟まれながら、自身の幸せを探す移民二世の姿を描くコメディ映画です。
妊娠した妹の結婚を、姉が先に結婚すべきという伝統的価値観の親に認めさせるため、主人公ハティジェは偽りの婚約者探しを始めます…。
移民二世に共通するアイデンティティの揺らぎを賑やかかつポジティブに描いて印象は軽快。
『おじいちゃんの里帰り』と同じく、トルコ系の女性監督による作品です。

★東京上映日
3/16土 19:40 

上映後トーク
【テーマ】《「ドイツのアリはいないのか?」 ―トルコ系移民二世の恋愛と家族関係》
【ゲスト】渋谷哲也さん(ドイツ映画研究者/日本大学文理学部教授)

3/23土 10:00


【イスラーム映画祭9上映作品⑨】
『私が女になった日』
原題:Rouzi Ke Zan Shodam  英題:The Day I Became A Woman
監督:マルズィエ・メシュキニ / Marziyeh Meshkiny
2000年/イラン/74分/ペルシャ語
予告篇 https://youtu.be/194rTpQhQF0?si=wjKGO5DPADSNFmzd

『子供の情景』のハナ・マフマルバフ監督、『午後の五時』のサミラ・マフマルバフ監督に続いてマフマルバフ・ファミリーから、マルズィエ・メシュキニ監督作。
チャードルを初めてまとう日を迎えたハッワ。 離婚を望みながら自転車レースに挑むアフー。 かつて華やかな結婚式を夢見ていたフーラ…。
3人の女性を通じて、イランのイスラム社会における女性の置かれた状況が寓話的に描かれます。 女性たちを中心とする政権抗議デモが起きた今こそ観るべき作品を、22年ぶりにリバイバルです。

★2000年 第1回東京フィルメックスで上映された折にマルジェ・メシキニ監督にインタビューした懐かしい作品です。インタビューは、シネマジャーナル52号に掲載。(咲) 

☆東京上映日
3/17日 20:45 


3/24日 10:00
上映後トーク
【テーマ】《それは本当に“反スカーフ”なのか? ―起ちあがったイラン女性たち》
【ゲスト】村山木乃実さん(日本学術振興会特別研究員PD(東京大学))


【イスラーム映画祭9上映作品⑩】
『メークアップ・アーティスト』
原題・英題:Makeup Artist
監督:ジャファール・ナジャフィ / Jafar Najafi
2021年/イラン/76分/ペルシャ語
予告篇https://youtu.be/tfJB_Uis16M?si=MPwH5HYbommpFXHH

メークアップを勉強する大学に通うため、強固な家父長制的価値観を持つ夫や義母と丁々発止の日々を繰り広げる女性を追った、ドキュメンタリー映画です。
本作のポイントの一つは、主人公のミーナたちが少数民族のバフティヤーリー族である事で、イランにおける女性の置かれた状況がわかるとともに彼の国の多民族国家ぶりもうかがえます。 『私が女になった日』から状況は何も変わらずとも、イランの女性たちが確実に前進している事を実感できる作品です。

★山形国際ドキュメンタリー映画祭2019 上映時の感想とジャファール・ナジャフィ監督Q&A
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/483935250.html

☆東京上映日
3/24日 12:35

上映後トーク
【テーマ】《多民族国家イランの魅力と、イランを知るための映画・文学》
【ゲスト】村山木乃実さん(日本学術振興会特別研究員PD(東京大学))


【イスラーム映画祭9上映作品⑪】
『スターリンへの贈り物』
原題:Podarok Stalinu 英題:The Gift to Stalin
監督:ルスタム・アブドゥラシェフ / Rustem Abdrashev
2008年/カザフスタン=ロシア=ポーランド=イスラエル/95分/ロシア語・カザフ語・ヘブライ語
予告篇 https://youtu.be/dTI52pQ-fkY

1949年。スターリンの強制移住策によって中央アジアに送られたユダヤ人少年を、ムスリムの老人やキリスト教徒女性が匿うという物語です。
ユダヤ人、ムスリム、キリスト教徒。 カザフ人、ロシア人、ポーランド人や朝鮮人。
ソ連の圧政下で宗教や民族を超えて身を寄せ合う人々の姿が叙情味豊かに描かれます。
でも、彼らが暮らす土地の近くには、ある実験場があるのでした…。
イスラーム映画祭では久々となる、中央アジア映画の埋もれた逸品です。

★上映日
3/17日 10:00 
3/24日 18:40



【イスラーム映画祭9上映作品⑫】
『ハーミド〜カシミールの少年』
原題・英題:Hamid
監督:エージャーズ・ハーン / Aijaz Khan
2019年/インド/108分/ウルドゥー語・ヒンディー語
予告篇 https://youtu.be/vusgEUBUOE8

その帰属をめぐって1947年の分離独立以降、インドとパキスタンの対立の原因となっているカシミールを舞台にした、無垢なムスリム少年の物語です。
父親が失踪した7歳のハーミドはある日、父を返してもらえるよう神様の数字“786”に電話をかけます。 でも、つながったのは意外な人物でした…。
美しい自然を背景にした物語と少年の純粋さに心打たれる一方で、インド映画がカシミールを描く事、そしてそれを“読み解く”事の難しさも含まれている作品です。

2023年2月18日 東京外国語大学TUFS Cinema上映時の解説はこちらで
http://cineja4bestfilm.seesaa.net/article/494950599.html

★上映日
3/16土 14:40

上映後トーク
【テーマ】《カシミールをめぐるインド映画― 『ロージャー』から『PATHAAN/パターン』まで》
【ゲスト】安宅直子さん(南インド映画研究者)

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リーフレットのダウンロードは、こちらからどうぞ
http://islamicff.com/pdf/iff9_tokyo.pdf