恐らく1990年代から気になっていた山形国際ドキュメンタリー映画祭。
今回、念願叶って、初めて現地で参加しました。
25年程前に、確か神田の日本家屋の木の床に座って、イラン映画を鑑賞した後、大鍋の芋煮を囲んでの、山ドキ風の懇親会に参加したことがあって、いつか山形に行きたいと思っていました。
2013年の 「それぞれの「アラブの春」だったか、2015年の 「アラブをみる――ほどけゆく世界を生きるために」の特集があった時には、東京での記者会見に参加しました。
プログラム・コーディネーターの加藤初代さん(写真:右端)が、中東関係を担当されていて、2017年には 「政治と映画:パレスティナ・レバノン70s-80s」の特集。
それでも山形まで出向かなかったのは、9月中旬にアジアフォーカス福岡国際映画祭に毎年出かけていて、懐具合と、あまり親を一人に出来ないという事情でした。
翌年、「ドキュメンタリー・ドリーム・ショー—山形in東京」で、気になる作品の多くが観られるという安心感があったからかもしれません。
それでも、2019年には、「リアリティとリアリズム:イラン60s-80s」の特集が組まれ、これは行かなくては!と、初めて予定を組んだのですが、台風に阻まれて、山形は夢と消えました。貴重なイラン革命前のイラン映画を観損ねてしまいました。今も台風が恨めしいです。
前回の2021年、コロナ禍でオープニングとクロージング以外は、オンラインでの開催でした。
たくさんの作品を観ることが出来ましたが、やっぱり山形で観たい!と思ったのでした。
そして、今年。
アジアフォーカス・福岡国際映画祭は、2020年の第30回で終了、父も昨年8月に旅立ってしまい、やっと山形に行くことができました。
日程を迷ったのですが、クロージングでハナ・マフマルバフの『リスト』が上映されるので、最終日までいることにして、5日のオープニングは諦め、6日に出発。
以下、鑑賞作品を含めた山ドキの覚書です。 気になる作品については、別に詳しく報告することにします。
10月6日(金)
東京8:56発の新幹線つばさ129号で、山形11:37着。 駅から徒歩3分程のホテルニュー最上屋に荷物を預けて、[アズ七日町4階]山形市中央公民館大会議室に設置された事務局にプレスパスを受け取りに。 ホテルから歩いて15分ほどでした。山形駅から七日町の中央公民館までは、結構遠いと聞いていたからか、案外、楽勝でした。雨だとバスに乗りたくなるかもですが、歩きで大丈夫そうと確信。
この日、1本目の上映会場は、「フォーラム山形」。 山形駅方面に戻る途中にあるのですが、初めての道はちょっと不安。 もう一つのメイン会場である市民会館を通り過ぎて、フォーラム山形へ。
13:30-14:39 フォーラム山形5
◆『ホーム・ストーリー』
監督:ニダール・アル・ディブス
シリア、エジプト/2021/69分
ダマスカスの家で娘の成長を撮り続けていた記録が、内戦でエジプトからさらにノルウェーに逃れた監督一家の貴重な故郷の思い出に。 いつまでも落ち着かないシリアのことを憂いました。
17:40-20:00 中央公民館
◆『ホワット・アバウト・チャイナ?』
監督:トリン・T・ミンハ
アメリカ、中国/2022/135分
ベトナム人である監督が、1993、94年に中国南東部で撮影した伝統建築の映像に、詩や歌、水墨画を重ね、自分史などを一人称の声で綴った抒情溢れる作品。
最初に出てきた福建省の客家の円形土楼は、1993年に撮影したもので、私が訪ねたのが、それより少し前。懐かしい映像でした。会場でのQAのあと、さらに別の場所で続きのQA。監督に今はどうなっているか聞いたら、中国政府が綺麗に修復して、人を住まわせて観光地にしてるのだとか。ちょっと興ざめです。
別会場のQAで会った知人が、毎回、山ドキに来ていて、七日町ワシントンホテルでの新・香味庵クラブに連れていってくださいました。
10月7日(土)
土日は、ホテルニュー最上屋が満室で、すぐ近くの「おかざわ」に荷物を預けに。 ここは、名古屋のミッキーさんお気に入りの宿。
10:10-11:31 フォーラム山形3
『確かめたい春の出会』
監督:タイムール・ブーロス
レバノン、ポルトガル、ハンガリー/2022/25分
リスボンで暮らすレバノン人の監督。レバノンにいる父が癌に罹り、ベイルートで手に入らないという薬を探す・・・ 離れた穏やかな町で、故郷を思う気持ちが静かに伝わってくる作品でした。
『ベイルートの失われた心と夢』
監督:マーヤ・アブドゥル=マラク
フランス/2023/36分
ベイルートで暮らす3人の人たちの夢。2020年8月4日のベイルート港爆発事故の衝撃が皆の心に深く宿る。監督にとっても忘れられない悪夢。
13:00-13:44 山形クリエィティブシティセンター
風景x映画 映像で山形ルネッサンス
『山形×和菓子 ~未来を彩る伝統文化~』
制作:BAQSAN株式会社
日本/2022/27分
ふうき豆、板かりんとう、練り切り、のし梅・・・ 山形の伝統ある和菓子の数々。新しい形で発展を遂げている姿も。
『鍛 ―刀匠 上林恒平の道―』
監督:長岡宏昭
日本/2023/12分
山形でただ一人の刀鍛冶・上林恒平氏の日本刀作りに挑戦し続ける姿に迫った作品。
実は、上林恒平氏の奥さまである恵美子さんとは、20代の頃に角館のユースホステルで知り合った仲。会場は、元小学校。恵美ちゃんから定員30名なので、早めに行ったほうがいいといわれ12時過ぎに到着。12時半には、すでに15人ほどが並び、椅子を会場いっぱいに入れて50席にするも、入れなかった人が続出。シネジャの千絵さんも入れずでした。
15時から、クリエィティブシティセンターの上映会場で、「日本酒&和菓子 おふるまい」が行われました。美しい練り切りと日本酒、意外と合う組み合わせ♪
16:30-19:59 市民会館 大ホール
『不安定な対象 2』
監督:ダニエル・アイゼンバーグ
アメリカ/2022/204分
ドイツ、フランス、トルコの工場での製造工程を「持続的観察」の手法によって徹底的に記録する実験的ドキュメンタリー。 もともと、19:10からの映画を観るために途中で出る予定だったのですが、3か国の工場を順に映しだすものとわかり、一番観たいトルコの部分は観れないことが判明。淡々とした映像にも、ちょっと耐えられなくて、10分程で退出。名古屋のミッキーさんは、最前列でかぶりつき。一睡もせずに見守ったとのこと。
17:40-18:54 フォーラム山形3
『わが理想の国』
監督:ノウシーン・ハーン
インド/2023/74分
2019年に可決されたインド市民権改正法に基づく国民登録簿からイスラム教徒が外されたことに抗議する女性たち。監督はムスリマである自身のアイデンティティも見つめなおす。
9日に観る予定だったのですが、『不安定な対象 2』を退出したので、急きょ観ることに。
力強い作品で、監督のQ&Aを聴きたかったのですが、次のお目当ての上映が始まるので諦めました。
市民賞を受賞! 10月11日、表彰式が終わった直後に、大きなこけしを抱えたノウシーン・ハーン監督とお話することができました。
「着ているサリーの色も、抗議を込めた色なのよ」と。
19:10-20:32 市民会館 小ホール
『これからご覧いただく作品は』
監督:マキシム・マルティノ
フランス/2023/11分
映画の冒頭で掲げられる断り書きを次々に映し出した作品。この冒頭のひとことで、その映画への期待が高まることもありますよね。でも、本作に集められた前置きは、脅しに近いものもあって、身構えてしまうようなものが多かったように思います。だからこそ、本編が観たくなる??
『イーストウッド』
監督:アリーレザー・ラスーリーネジャード
イラン/2021/71分
古い新聞に大きく掲載されたクリント・イーストウッドがケルマーン州のシールジャンを訪れたという写真に触発され、シールジャンに赴く監督。こんな沙漠の町をイーストウッドが訪れた?? ヘルメットを被った監督が、真相を探る・・・
今回の山形で上映された唯一のイラン映画。イランっぽくて笑えました。字幕を担当したのが、大学後輩の山本久美子さん。彼女のまわりのイランを知らない人からは、今ヒトツな評判だったらしいです。いや~面白かったです。 タイトルから、イラン映画とは気がつかなかった人もいるようで残念!
10月8日(日)
10:10-11:13 フォーラム山形3
『壊された囁き』
監督:アミール・マスウード・ソヘイリー、アミール・アーサール・ソヘイリー
シリア、イラン/2023/63分
シリア内戦で荒れたムハルデの町で、爆撃で壊れた楽器を修理する画家の老人。彼の生徒たちが弾き手を探して町を歩く。
上映後、アミール・アーサール・ソヘイリー監督が登壇。映画はアラビア語でしたが、Q&Aは、ペルシア語で行われました。
Q&Aが終わって、監督に声をかけ、「映画の中でしばしば出てきた古代からシリアの人たちの心の支えになってきたバール神は、イラン人にとってのゾロアスター教のアフラマズダのようなもの?」と伺ったら、まさにそうと。イスラームが入ってくる前からの伝統は、シリアでも根強いことを知りました。
12:30-14:10 フォーラム山形5
『石が語るまで』
監督:キム・ギョンマン
韓国/2022/100分
1948年、済州島4・3事件で無実の罪で投獄された女性たちが、70年の時を経て、当時の凄惨な経験を語る。
上映後のQ&Aで、全編、済州の自然と共に証言のみが綴られ、当時の写真や記事を使わなかったことを問われ、「写真や記事を使うとそれが真実であると捉えられるので、自然に事件に接するような形をとりました」と監督。70年もの間、口にすることも出来なかった彼女たちの深い苦しみに涙。
14:50-16:23 フォーラム山形3
『ルオルオの青春』
監督:洛洛(ルオルオ)
中国/2023/93分
父や孫の世話をしながら、10代の頃の日記を捲り語るルオルオ。毛沢東の肖像画が表紙のぼろぼろになった日記。びっしりと綴られた綺麗な文字。文革の頃の様子が伝わってきて興味津々。
一方、コロナ禍で、ルオルオは中国全土の仲間たちとオンラインで繋がっている。
17:20-18:25 フォーラム山形3
『ナイト・ウォーク』
監督:ソン・グヨン
韓国/2023/65分
山際の静かな夜の住宅街。月明りの町の風景に、イラストと詩が重なる。音がまったくない静寂に包まれた作品。
お腹が空いていたのと、次に観る予定の『列車が消えた日』を疲れた時に観ない方がいいと聞いていたので、静寂に耐え切れず、10分で退出。(忍耐強くないのです・・・)
月カフェという素敵なお店を見つけ、美味しい食事で生き返りました。
19:30-20:43 フォーラム山形3
『列車が消えた日』
監督:沈蕊蘭(シェン・ルイラン)
中国、シンガポール/2022/73分
列車乗務員の仕事を辞め、僧侶になると決めた男が列車に乗って向かった先は・・・
列車が出てきたのは最後のほう。むしろチベット仏教のお寺などが出てきて、シンガポールの映画と勘違いしていたのですが、舞台は中国。タイトルから思い描いていたものと全く違いました。
上映後のQ&Aでは、4人中3人が中国語で質問。中国の人たちにとって、注目の作品だったようです。
10月9日(月)
再び、ホテルニュー最上屋へ。
ミッキーさんと千絵さんと、昨日見つけた月カフェでモーニング。暁美さんは起きられず・・・でした。
3人で、この日何を観るか相談。できるだけ違う作品を観て紹介したいという次第。
私は午前中観る予定だった『わが理想の国』を7日に観てしまったので、『三人の女たち』を観ようかなと思っていたのですが、千絵さんが観るというので、『キムズ・ビデオ』を観ることに。
10:00-11:28市民会館 小ホール
『キムズ・ビデオ』
監督:デイヴィッド・レッドモン、アシュレイ・セイビン
アメリカ/2022/88分
かつてニューヨークにあった韓国移民のキム・・ヨンマンが経営するビデオ・レンタル店。2008年、時代の趨勢から店を閉めることにしたキム氏。55,000本もの貴重なコレクションを、入札結果、イタリアのシチリア島サレミという小さな村に譲る。観光活性化で映画祭も開くと言っていたが、監督たちが現地に行ってみると、当時の市長は国政に転出し、ビデオは環境の悪いところに放置されていた・・・
滅法、面白い作品で、拾い物でした。
12:50から韓国の『私はトンボ』を観るつもりでいたのですが、気が変わってミャンマーの作品を観ることに。
12:20-13:31 フォーラム山形5
『負け戦でも』
監督:匿名
ミャンマー/2023/23分
生まれ育った町、ヤンゴン。2021年2月。すべての自由がなくなった。軍が権力を握り、未来も奪われた・・・
『鳥が飛び立つとき』
監督:匿名
ミャンマー/2021/28分
軍事クーデーターの起こる前日、自分の未来が変わることも知らずにはしゃぐ姿が映し出される。
そして,一変。長編映画を撮る予定だったが、今の状況を世界に発信したいと、ありのままの自分たちを映し出す。いつか軽やかに飛び立てるようにと願って。
15:10-16:40 フォーラム山形3
『またたく光』
監督:アヌパマ・スリーニヴァサン、アニルバン・ダッタ
インド/2023/90分
ミャンマー国境に近いナガのトラ村。バプテスト派のキリスト教徒の多い村だ。ようやく電気が引かれると知り、監督二人は何度も村を訪れるが、今年のクリスマスにも間に合いそうにない・・・
政治的辺境の地に、電気は人々の生活や人生に何をもたらすのか。
ベンガル出身のアニルバン・ダッタ監督と、タミル出身のアヌパマ・スリーニヴァサン監督。
二人の共通語はヒンディー語と英語。
17:00-18:43 市民会館 大ホール
『東部戦線』
監督:ヴィタリー・マンスキー、イェウヘン・ティタレンコ
ラトビア、ウクライナ、チェコ、アメリカ/2023/98分
監督の一人イェウヘン・ティタレンコは、ウクライナ東部戦線に救護隊員として赴く。激しい戦闘の合間に、くつろいで語らう兵士たち。時にジョークも飛ぶ。
『またたく光』の監督お二人とロビーで話していたため、15分遅れで入場。見始めた時の映像は、湖のそばで寝そべっておしゃべりする兵士たちの姿でした。 その後に展開する身体も吹っ飛ぶ戦闘シーン。現実を突きつけられました。上映後、ロビーでQ&Aが行われました。席が足りず、立っている人も大勢いましたが、皆、立ち去らず熱心に監督の話に聞き入りました。
合間合間に、仲間たちとくつろぐ姿を映したのは、ロシアと戦っているのは、ウクライナの普通の人たちであることを見せたかったからと語っていたのが印象に残りました。
19:50-20:28 市民会館 大ホール
『言葉の力』
監督:ジャン=リュック・ゴダール
フランス/1988/25分
『郵便配達は二度ベルを鳴らす』に書かれる不倫と殺人をめぐる会話を、電話越しに口するひと組の男女。そしてもうひと組の男女が、ボードレールによって仏訳されたことでも名高いエドガー・アラン・ポーの『言葉の力』を、台詞にして対話する・・・
二つの物語を交互に行ったり来たり見せる手法。ただただクラクラ。
『火の娘たち』
監督:ペドロ・コスタ
ポルトガル/2023/8分
カーボ・ヴェルデのフォゴ火山噴火で離散した3人の若い姉妹。3人それぞれが歌い憂う姿が横長にワイドに並ぶ画面が、一転してスタンダードサイズに変わり、噴火で被災した家から人々が飛び出してくる姿を映し出します。一瞬にして変わる画面に、いったいこれは?と驚かされました。
ペドロ・コスタ監督の意向で、『言葉の力』『火の娘たち』の順で上映され、上映後には、クリス・フジワラさんの解説。通訳は藤原敏史さん。 解説は高尚過ぎて、私にはとてもついていけませんでしたが、『火の娘たち』は驚きの映像で、観ることができたのを幸せに思いました。
(*今年の東京フィルメックスでも上映されます。)
10月10日(火)
10:10-13:19 中央公民館
『紫の家の物語』
監督:アッバース・ファーディル
レバノン、イラク、フランス/2022/184分
レバノン南部の緑豊かな丘の上にある淡い紫色の家。監督と、画家の妻がここで暮らしたコロナ禍の2年間を。3部構成で静かに映し出した作品。リビングに置かれたパソコンの画面には、小津安二郎やタルコフスキーなどの映画が静かに流れていると思ったら、2020年に起きた港湾の大爆発事故、反政府デモ、さらにウクライナ戦争のニュース映像も映し出されます。
キリスト教の教会とモスクが並んで立ち、村の誰かが亡くなると、拡声器でアナウンスされます。奥さまが移民の子供たちに絵を教えていて、多様な人々が共生していることが伺われます。
アッバース・ファーディル監督はイラクのバビロン生まれで、フランスで映画を学んだ方。会場でのQ&Aのあと、4階で続きのQ&Aが行われました。移動中に、監督にアラビア語で挨拶したら、とても喜んでくださいました。もっとも挨拶以上には話は続かず・・・なのですが。 笑顔が素敵で、とても穏やかな方でした。
14:45-16:25 中央公民館
『何も知らない夜』
監督:パヤル・カパーリヤー
インド、フランス/2021/100分
公立大学の学生寮の片隅で、映画を学ぶ学生のL(エル)が恋人へあてた手紙が見つかった。Lの恋愛はカースト制に阻まれたことが綴られていた。映画は、さらに2016年に起こった政府への抗議運動、極右政党とヒンドゥー至上主義者による学生運動の弾圧事件を映し出す・・・
モノクロームの映像に、手紙を朗読する女性の静かな声が重なり、今の政権下で暮らす低カーストの人たちの息苦しさを感じました。『わが理想の国』では、ヒンドゥー至上主義の政権下で差別されるイスラーム教徒の憤りが描かれていましたが、ヒンドゥー至上主義とは、すなわち、カースト制度もきっちり守ることなのだと気づきました。ヒンドゥー教徒であっても、低カーストや、カースト外のダリットにとっては、差別的な暮らしを強いられるということなのだと。モディ政権はいつまで続くのでしょう・・・
この日の夕食は、山形の友人たちと、郷土料理の美味しいお店でいただきました。これは、ほんの序の口。
10月11日(水)
17:00からのクロージングまで時間があるので、仙台の友人が車で湯殿山や月山の麓に連れていってくださいました。私のために榎木孝明さんが出演した映画『いしゃ先生』のロケ地にも案内してくれました。こちらは別に報告します。
17:00~ 中央公民館
表彰式
表彰式の模様はこちらでご覧ください!
女性監督が圧倒的に多かったです。
引き続き、クロージング上映
『リスト』
監督:ハナ・マフマルバフ
イギリス/2023/65分
2021年8月、アフガニスタンでタリバンが突如復権。身の危険に晒された多くの芸術家、映画人たちを出国させようと奮闘するモフセン・マフマルバフ監督とその一家。ロンドンの自宅から電話とパソコンを駆使して奔走する。脱出させるべき文化人たちの「リスト」を壁に張り出すが、脱出用の飛行機に乗せられる人数には限りがある。さらに絞り込んだリストを出してほしいといわれる・・・
マフマルバフ一家も、イランからパリを経てロンドンに逃れている身。必死になって、国外脱出を手助けしようとする一家の姿を、末娘ハナが映し出しています。「おじいちゃん、おばあちゃん」のまわりをうろつく幼い子どもたちは、サミラの子でしょうか? ハナの兄メイサムも、おじさんになったなぁ~と、マフマルバフ一家の今に感慨深いものがありました。
この日の夜は、中央公民館近くの七日町ワシントンホテル泊。
10月12日(木)
受賞作品の上映日。昨日の表彰式の前に、もしかして観ていない作品が受賞するかも・・・と、山形19:31発のつばさのチケットを購入。 観ていなくて、観たい作品が午前中と夕方にあって、合間に山形の街歩きを楽しむことができました。
10:10-11:54 中央公民館
『ある映画のための覚書』
監督:イグナシオ・アグエロ
チリ、フランス/2022/104分
19世紀、先住民族マプチェの土地アラウカニアが、チリに占領される。鉄道が敷設されることになり、技師としてギュスターヴ・ヴェルニオリーがベルギーから赴任した。監督は、彼の日記を基に俳優を配して足跡を辿り、往時の冒険を回想する。
植民地化により踏みにじられていくマプチェ族のコミュニティ。こうした横暴が世界各地で起こってきたことに思いがよぎりました。
16:55-18:00 中央公民館
『訪問、秘密の庭』
監督:イレーネ・M・ボレゴ
スペイン、ポルトガル/2022/65分
スペイン有数の画家のひとりであったイサベル・サンタロは、1980年代以降、芸術の表舞台から姿を消した。彼女の姪である監督は、現在では家族との付き合いも断ち隠遁生活を送る彼女の住まいを訪ねる・・・
猫と暮らす白髪の年老いた女性。アトリエのドアを閉ざし、彼女の作品を見せてはくれないのです。前衛芸術だったらしく、頑固そうな風貌から、さて、どんな作風だったのだろうと思い巡らしました。
ずっと無言の彼女を映していたのですが、語り始めた声がドスがきいて、迫力がありました。人を寄せ付けない頑固さも感じました。過去にどんな経験をしたのだろうとも想像しました。
山ドキ最後に、壮絶なものを観たという思いです。
ゆっくりどこかで夕食をいただきたいところでしたが、追加のお土産を物色しているうちに時間切れ。19:31発のつばさで帰宅。
7日間の滞在で、短編も含めて、25本鑑賞。充実の山形でした。
景山咲子
★Facebook写真集: 山形国際ドキュメンタリー映画祭2023
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