いよいよ10月5日から開催される山形国際ドキュメンタリー映画祭2023。
中東、アフリカ、インドに関連する映画を私の備忘録として集めました。
公式サイト:https://www.yidff.jp/2023/2023.html
★印 監督登壇予定
◆インターナショナル・コンペティション
交差する声 Crossing Voices
監督:ラファエル・グリゼー、ブーバ・トゥーレ
フランス、ドイツ、マリ/2022/123分
西アフリカ・マリの人々と大地が経験してきた近現代史を見つめる、一当事者による力強い記録。
10月7日(土)10:10-12:18 中央公民館
10月8日(日)15:40-17:48 市民会館大ホール
何も知らない夜 A Night of Knowing Nothing
監督:パヤル・カパーリヤー
インド、フランス/2021/100分
恋愛の破局の背後にあるカースト制、2016年の政府への抗議運動、極右政党とヒンドゥー至上主義者による学生運動の弾圧事件。
10月6日(金)19:10-20:50 市民会館大ホール
10月10日(火)14:45-16:25 中央公民館
紫の家の物語 Tales of the Purple House
監督:アッバース・ファーディル
レバノン、イラク、フランス/2022/184分
映画作家と、画家であるその妻が、コロナ禍の二年間をレバノン南部にある紫の家で暮らした記録。
10月6日(金)10:15-13:19 市民会館大ホール ★
10月10日(火)10:10-13:19 中央公民館 ★
不安定な対象 2 The Unstable Object II
監督:ダニエル・アイゼンバーグ
アメリカ/2022/204分
ドイツにあるオットーボック社の義肢製造工場、南フランスにある高級革手袋縫製アトリエ、トルコにあるレアルコム社のジーンズ工場での製造工程を「持続的観察」の手法によって徹底的に記録する実験的ドキュメンタリー。
10月6日(金)10:10-13:39 中央公民館 ★
10月7日(土)16:30-19:59 市民会館大ホール ★
◆アジア千波万波
壊された囁き Broken Whispers
監督:アミール・マスウード・ソヘイリー、アミール・アーサール・ソヘイリー
シリア、イラン/2023/63分
創作に疲れた画家の老人は瓦礫から壊れた楽器を見つけ修理する。
10月8日(日)10:109-11:13 フォーラム山形3★
10月7日(土)16:40-17:43 フォーラム山形5 ★
確かめたい春の出会い Encounters on an Uncertain Spring
監督:タイムール・ブーロス
レバノン、ポルトガル、ハンガリー/2022/25分
リスボンで父の薬を探すレバノン人の監督が、中古のビデオカメラを手に入れ、徒然なる旅路で出会う人々、言葉、 哲学。
ベイルートの失われた心と夢 A Lost Heart and Other Dreams of Beirut
監督:マーヤ・アブドゥル=マラク
フランス/2023/36分
平穏な街、海岸、廃墟、通りのあちらこちらに、死者の思念が宿る、ベイルートの日常。
『確かめたい春の出会い』『ベイルートの失われた心と夢』2本同時上映
10月7日(土)10:10-11:31 フォーラム山形3 ★
10月9日(月)14:30-15:51 フォーラム山形5 ★
ホーム・ストーリー Homemade Stories
監督:ニダール・アル・ディブス
シリア、エジプト/2021/69分
住人の帰りを待つダマスカスの我が家、そして、カイロの廃墟となった映画館の物語。
10月6日(金)13:30-14:39 フォーラム山形5 ★
10月7日(土)20:00-21:09 フォーラム山形3 ★
またたく光 Flickering Lights
監督:アヌパマ・スリーニヴァサン、アニルバン・ダッタ
インド/2023/90分
10月8日(日)17:30-19:00 フォーラム山形5 ★
10月9日(月)15:10-18:40 フォーラム山形3 ★
我が理想の国 Land of My Dreams
監督::ノウシーン・ハーン
インド/2023/74分
イスラム教徒を迫害するインド市民権改正法(CAA)への抗議デモ。監督はムスリム女性としての自身のアイデンティティを見つめる。
10月7日(土)17:40-18:54 フォーラム山形3 ★
10月9日(月)10:00-11:14 フォーラム山形5 ★
◆二重の影 3:映画を運ぶ人々
快楽機械の設計図ブルー プリント
監督:アミット・ダッタ/インド/2023/10分
10月6日(金)17:10-18:38 市民会館 小ホール
イーストウッド
監督:アリーレザー・ラスーリーネジャード/イラン/2021/71分
10月7日(土)19:10-20:32
*『これからご覧になる映画は』監督:マキシム・マルティノ/フランス/2023/11分と同時上映
◆特別招待作品
リスト *クロージング上映作品
監督:ハナ・マフマルバフ/イギリス/2023/65分
10月11日(水)17:00~ 表彰式 山形市中央公民館ホール(6F)
*入場無料
あいち国際女性映画祭2023 総集編
2023年9月14日合同記者会見にて(ウイルあいち大会議室)
左から『ツアーガイド』クァク・ウンミ監督、『毒親(ドクチン)』キム・スイン監督、チャン・ソヒ(俳優)、カン・アンナ(俳優)、『修験ルネッサンス』田中千世子監督、『1%の風景』吉田夕日監督
28回目になる「あいち国際女性映画祭」が2023年9月15日(金)~18日(月・祝)に名古屋市で開催され、映画は「ウィルあいち」と「ミッドランドスクエアシネマ」で上映されました。いつもはメイン会場になるウイルあいちのホールが改築中のため、ウイルあいちでは「大会議室」での上映、多くの作品が「ミッドランドスクエアシネマ」での上映になりました。
1996年から始まったあいち国際女性映画祭は、国内外で活躍する女性監督の作品を中心に上映されてきましたが、近年は男性監督の作品でも、女性の生き方や、女性が抱える問題などを提起した作品も上映され、男女共同参画社会の実現に向けて、女性の生き方や女性と男性の相互理解を進めるための様々な作品を上映してきました。映画上映後のゲストトークなどを通じて社会のあり方、国際交流や難民の問題などについて考えるきっかけも提案しています。
今年は、性被害を訴える「Me Too運動」などに焦点を当てた特別企画もあり、この運動のきっかけになった記者たちを描いた『SHE SAID /シ~・セッド その名を暴け』も上映されました。また、1960年代に公開された『鉄腕アトム』の3作品が上映され、鉄腕アトムの声を担当した清水マリさんも来場されるということで、チケットが完売したようです。
今年は初公開を含む計37作品が上映され、コロナ禍(2020~2022)で呼べなかった海外の女性監督や俳優など、4年ぶりに海外からのゲストも登場し、映画祭前日の14日はウイルあいち大会議室での記者会見も行われ、監督や俳優らが作品に込めた思いを語りました。
作品を選定した木全純治ディレクターが注目した作品は3作品。2014年、ロシアのクリミア併合で練習場を失ったウクライナのパラリンピックチームを追ったレシア・コルドーネッツ監督の『プッシング・バウンダリー』、内戦中のシリアで避難を迫られる家族の姿を少女を通して描いたスダデ・カーダン監督の『ヌズーフ/魂、水、人々の移動』、対立関係にあるレバノンとイスラエルの女性2人が二人で旅に出ることになったミハル・ボガニム監督の『テルアビブ・ベイルート』。「国の大きな混乱で最も被害を受けるのは、弱い立場の人たち。そこに鋭い視線を向けている」と評していました。
チャン・ソヒ『毒親(ドクチン)』出演
カン・アンナ『毒親(ドクチン)』出演
国内招待作品、海外招待作品、フィルム・コンペティション作品など、普段観る機会の少ない作品が上映されました。
三島有紀子監督(『しあわせのパン』『ぶどうのなみだ』)の『東京組曲2020』は、「コロナ禍で何を感じているのかが忘れられる前に映像に残しておこう」と、緊急事態宣言下の2020年、20名の役者たちが賛同し、各自で日常を撮影したものを三島監督が群像劇風に仕立てました。
また、映画祭のオープニングには韓国のクァク・ウンミ監督による『ツアーガイド』が上映されました。韓国に亡命した脱北者の主人公が、中国で身につけた中国語を活かして通訳ガイドの仕事に就き、仕事のノウハウを身に着け、韓国での生活にとけ込めるまでの大変さが描かれます。脱北者に対する差別などもあり、韓国と中国の関係が悪化し中国からの観光客が激減したりと苦難に直面する主人公が描かれました。
キム・スイン監督(韓国)の『毒親(ドクチン)』は、集団自殺した3人のうちの一人、模範的な生徒と思われていた高校生のユリがなぜ死んだのかを描きます。警察は自殺とみますが、ユリの母親はそれを認めず、ユリに関わる友人や教師に原因があるのではないかと思い込み、捜査を錯乱させます。シェン・ユー監督(中国)による『兎たちの暴走』は、中国四川省の工業都市を舞台に母娘の絡み合う感情が引き起こした事件を描いた作品でした。
田中千世子監督の『修験ルネッサンス』は、高木亮英導師の率いる修験者たちと一般参加者、さらに熊野修験復活を支えた新宮山彦ぐるーぷを中心とするサポーターたちの活動を追った作品です。吉田夕日監督の『1%の風景』は99%のお産が医療施設で行われている現在、1%の選択をした助産所や自宅での出産を希望する女性達4人のお産と、それを支える助産師さんたちを記録したドキュメンタリーで11月11日より一般公開されます 。
映画祭の締めくくりは、傅天余(フー・ティエンユー)監督(台湾)による『本日公休』。常連客を大切に昔ながらの理髪店を40年営む主人公。遠方に住む顧客が病床にあることを知り、「本日公休」の札を下げ、道具を持って車を運転し出向こうとするが、道中、いろいろなことに遭遇。そして顧客のところにやっとたどりつき、髪を整えることができたのですが、そこに至る話の数々があり感動的な作品でした。『客途秋恨』で知られる陸小芬ルー・シャオフェンが、約20年ぶりに映画への復帰を果たした作品。
最後にこれを観て、とてもさわやかな気分で帰宅しました。
授賞式は9月17日に、ウイルあいち大会議室で行われました。
コンペティション受賞者
●グランプリ
【アニメーション部門】
『きつねつき』(日本) 監督:藤井七海
【実写部門】
『The Banners』(韓国) 監督:ユン・ヘソン
●観客賞
【アニメーション部門】
『きつねつき』(日本) 監督:藤井七海
【実写部門】(得票同数、2作品)
『The Banners』(韓国) 監督:ユン・ヘソン
『Double Role』(日本) 監督:川西薫
<審査委員特別賞>
『Double Role』(日本) 監督:川西薫
コンペ審査委員
左から 審査委員長 奥田瑛二(俳優・映画監督)、木全純治(映画祭ディレクター)、佐藤久美(映画祭イベントディレクター)、ショーレ・ゴルパリアン(映画プロデューサー)、李相美(Sang Sang Blocks代表取締役)
映画祭公式HP
撮影・まとめ 宮崎暁美
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