第35回東京国際映画祭は2022年10月24日(月)~11月2日(水)まで日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催。去年、六本木からこちらに上映会場が移ったものの、何か所かに分かれた会場同士が遠くて、映画を観るのにどう移動時間を見込んで、観る作品を決めるか、去年は全然読めず状態だったけど、今年は少し見えてきた。
10月25日(火)
中国映画週間が10月18日(火)に始まり5作品観たあと、東京国際映画祭は25日から参加。東京国際映画祭のプレスパスを中国映画週間で日本橋に通っている間に受け取りに行こうと思ったけど、時間が取れず東京国際が始まってから受け取ることにした。でもやはり事前にもらっておかなくて失敗。25日当日、プレスセンターに行ってから、プレス試写会場のシネスイッチ銀座に行こうと思ったのだけど、有楽町で電車を降り、プレスセンターまで20分もかかってしまった! 途中、写真を撮ったりもしたのもあるけど、以前だったら10分くらいで行ける距離なのに、今の私にはゆっくりしか歩けず、さらにプレスセンターについた時点でもう疲れていた(笑)。プレスセンターからシネスイッチ銀座までも20分くらいかかりそうなので15:40からのプレス試写でのトルコ映画『突然に』はあきらめた。
この調子では、これを観ると、その後にTOHOシネマズシャンテで18:00~観る予定の中国映画『へその緒』に間に合いそうもなかったから。
プレス登録をした後、『へその緒』まで3時間くらいあったので、まず、当日券を買いにシャンテへ行ったけど、映画祭のチケットは有楽町駅前でしか買えなかった。歩くのに時間かかったことを考えると、とても有楽町まで戻る気はしない。ダメ元でパソコンで当日売りを買えないかと、シャンテのチケット売り場の横でパソコンを立ち上げ挑戦してみた。私はネットでチケットを買うのが苦手で、うまくいかないことが多いのでどうなるかと思ったけど、チケットを買うことができた! それにしても上映会場の映画館チケット売り場の横でパソコンを立ち上げネットでチケットを買うというのは笑い話だ。そもそも今回、特にネットでのチケット売りだし当日(10月15日)は、買いたい作品のチケット売りの入口までも入っていけないような状態だった(スタッフ日記参照)。
映画まで2時間以上時間があるので、シャンテの向かいにある椿屋珈琲に入った。階段を登らなくてはならないので迷ったけど、ここのビーフカレーが好きなので頑張って登ったのだけど、あいにくカレーは終わっていてパスタしかなかった。このところ家でもスパゲティで、まだ残りもあるというのにパスタを食べるはめに。椿屋珈琲でパスタを食べるのは初めてかも。季節物ということでボルチーニ入りのパスタにしたけどおいしかった。癖になるかも。
そして、いよいよ映画。この日はシャンテで『へその緒』の鑑賞のみだった。
『へその緒』 原題:臍帯 英題:Cord of Life
監督:喬思雪(チャオ・スーシュエ)
出演:バダマ(母)、イダー(息子アルス)
2022年 中国・内モンゴル モンゴル語
内モンゴル出身でフランスに学んだ女性監督チャオ・スーシュエ、注目のデビュー作。
モンゴル族のミュージシャンの青年は認知症の進む母を引き取り、昔家族で住んでいた故郷の大草原でふたり暮らしを始める。湖のほとりのとても景色の良いところだったけど、お母さんはフラフラと外へ出かけるようになってしまい、息子アルスはしかたなく、母が遠くに行かないように紐(綱?)で結ぶ。これが「へその緒」というタイトルにした所以なんだろうけど、これがモンゴルっぽい。都会ではこういうことは考えられない。
中国タイトルの「臍帯」は「へその緒」で日本語タイトルは直訳ではあるけど、英題の「Cord of Life」(命の紐)が一番、内容に近い気がした。
ミュージシャンの青年が馬頭琴でラップをやっていたのが面白かった。
「母親役以外はすべて、内モンゴルの現地で普段生活されている方たちが俳優として出てくださったので、そこで非常にリアルな内モンゴルでの生活というのを、うまく描くことができたと思います」と、監督は語っていた。
チャオ・スーシュエ監督、リウ・フイさん(プロデューサー)
10月26日(水)
この日は、日赤(日赤武蔵野赤十字病院)での診察があったので、朝9時すぎに家を出る。いつも午後1時頃まで時間がかかるので、この日は映画祭の作品は何時から観ることができるか不確定。結局、13時半頃になってしまったので、武蔵境でランチしてから行くことにした。迷ったけど、ここにも椿屋珈琲があるので、昨日食べられなかったカレーを食べることにした(笑)。2日続けて椿屋珈琲になるとは…。でもおかげで、ずっと食べたかった、ここのカレーを食べることができて満足。
武蔵境から中央線に乗って東京駅、そして有楽町へ。何を観るか映画祭資料をいろいろ広げながら見ていたら、隣に座っていた男性(80歳と言っていた)が、「東京国際映画祭ですか。行ってみたいけど、お薦めの映画ありますか?」と声をかけて来たのだけど、あいにく、まだ『へその緒』しか観ていなかったので、「この作品、モンゴルの高齢者事情が分かってよかったですよ」と言ったら、「昨日の東京新聞で、その作品のことを紹介していました」と、この作品のことを知っていた。なんでもカンボジアに日本語を教えに行ったことがあるというので、アジアの映画をいくつか紹介してみた。チケットをどうやって買ったらいいかとか聞かれたので、映画祭の作品と上映情報を載せた小冊子をあげたかったけど、あいにく、私が興味ある作品に印をつけていたものしかなく、どうしようと思ったけど、私は会場に行ったら、またそれをゲットできると思い、それを渡した。逆に、ほとんどアジア作品に印をつけていたから、参考になったかも。その方は映画祭に行ったかな。
この日は結局、シネスイッチ銀座に行き、プレス試写で『私たちの場所』と『孔雀の嘆き』の2本を観ることができた。
『私たちの場所』 英題:A Place of Our Own
アジアの未来共催:国際交流基金
監督:エクタラ・コレクティブ(製作グループ)
出演:マニーシャー・ソーニー、ムスカーン、アーカーシュ・ジャムラー
2022年 インド ヒンディー語
コロナ禍で職を失ったトランスジェンダーの二人が転居先を探す物語。インドでも性的マイノリティをめぐる不寛容と差別の壁は厚く、家探しは難航する。一人は性的マイノリティのNGO的な事務所?で働いている。勤め先がしっかりあっても、なかなかみつからない。しかし、彼らの仲間は、何かあれば情報を提供したり、協力する人たちもいて、少し安心した。
個人の監督名を冠しない創作集団、エクタラ・コレクティブによる集団製作。
『孔雀の嘆き』 原題:Vihanga Premaya
英題:Peacock Lament
コンペティション部門 最優秀芸術貢献賞
監督:サンジーワ・プシュパクマーラ
出演:アカランカ・プラバシュワーラ、サビータ・ペレラ、ディナラ・プンチヘワ
2022年/スリランカ/イタリア シンハラ語
両親が亡くした19歳の青年アミラは下に四人の弟妹がいて、コロンボにある廃墟ビルの屋上で寝起きしている。一番下は赤ん坊。アミラが働き、すぐ下の弟が下の子たちの面倒を見ているが、毎日毎日食べるだけで精一杯。さらに心臓病の妹の手術のため大金が必要となったアミラは、高給を保証する女性実業家と出会い、弟や妹を施設に預けて働くことに。その仕事は、妊娠したが産むことが出来ない女たちを集め、産んだ子を外国人に養子として斡旋する仕事だった。スリランカの女性たちを助ける仕事ではあるけど違法なこと。この仕事はうまくいくのだろうか。ヒヤヒヤしながら観た。
10月27日(木) 不参加
この日はプレス試写で『1976』(チリ)、『カイマック』(北マケドニア)、『山女』(日本)の3本の予定だったけど、足が痛くあまり歩けそうもなかったので、映画祭へ行くのはあきらめた。このところ、足がむくんだり、痛かったり、息が荒くて歩くのが大変だったりということも多く、前売りチケットはあまり買わないで、当日の状況で映画祭に行き、観る作品を考えるという態勢で映画祭に臨んでいる。特に階段しかない劇場はつらい。
10月28日(金)
前の日、足が痛くてあまり動けなかったので、この日は一般会場での鑑賞を優先した。幸い11:20からのシャンテシネ2で上映の『輝かしき灰』(ベトナム)の当日券が取れた。
『輝かしき灰』 原題:Tro Tàn Rực Rỡ
英題:Glorious Ashes
コンペティション共催:国際交流基金
監督:ブイ・タック・チュエン
出演:レ・コン・ホアン、ジュリエット・バオ・ゴック・ドリン、フオン・アイン・ダオ
2022年ベトナム/フランス/シンガポール(ベトナム語)
ベトナムを代表する作家グエン・ゴック・トゥの小説を、『漂うがごとく』(09)のブイ・タック・チュエン監督が映画化。ベトナム南部のメコン・デルタの村を舞台に3人のヒロインとそれぞれの男性との関係を描く。
貧しい村に住む3人の女性。夫と姑に召使い扱いされるホウ、子どものような夫の世話をするニャン、レイプをされた過去を持つロアン。孤独な彼女たちの暮らしに変化が…。
ブイ・タック・チュエン監督は「ベトナムは家長制度の歴史が長く、家庭では男性が威張っているのですが、ベトナムの女性は強い。強さの魅力がある。原作のストーリー性とラブストーリーに魅了されました。それに加え、地域性にも惹かれました。様々な表情を見せる水の風景も助けになりました」と語っていた。
ブイ・タック・チュエン監督、俳優のレ・コン・ホアン、ジュリエット・バオ・ゴック・ドリン、フオン・アイン・ダオ、ゴー・クアン・トゥと本作プロデューサー
この後はプレス試写会場のシネスイッチ銀座に移動。
シネスイッチ銀座1は地下で階段しかないのでなるべく避けていたのだけど、次の16;35からの『This is What I Remember』はアクタン・アリム・クバト監督作品。どうしても観たかったのでシネスイッチ銀座1へ。
『This is What I Remember』(英題) 原題:Esimde
コンペティション
監督:アクタン・アリム・クバト
出演: アクタン・アリム・クバト、ミルラン・アブディカリコフ、タアライカン・アバゾバ
2022年 キルギス/日本/オランダ/フランス
キルギス語、アラビア語
『馬を放つ』(17)で知られるキルギスを代表する映アクタン・アリム・クバト監督の最新作。ロシアに出稼ぎに行っている間に記憶を失い、20年ぶりにキルギスに戻ってきた父とその家族を描くドラマ。
キルギスの村。クバトは、ロシアに出稼ぎに行20ったまま年間行方不明になっていた父ザールクをみつけて連れ帰る。父はロシアにいる間に記憶を失ない自分のこともわからない。母は夫が亡くなったと思って、村の実力者と再婚している。クバトは父を村のあちこちに連れていくが、記憶は戻らない。「This is What I Remember」とは日本語に訳すと「これが私が覚えているものだ」だが、彼は何かを覚えているのだろうか。
この日は映画友がチケットを取ってくれて、一緒にTOHOシネマズシャンテで21:15からの『消えゆく燈火』(香港)を観る予定だったので、夕食をシャンテ地下の「五穀」という店で一緒に食べる。釜飯など和食系の店で久しぶりに和食を食べた。
今回の映画祭ではシネジャスタッフともこれまで会わず、まして映画祭一般上映の映画友たちとも会えなかったけど、やっと昔からの映画友と一緒に観ることができた。もっとも、このチケットなかなかチケット購買のページになかなか入っていけなくて、この友人が取ってくれた。この作品はチケット買いが集中し、私は入口までしか入れなかったけど、この友人はあとから参加したにも関わらず、チケット購買まで入っていけて、「一緒に買う?」と言ってきてくれた。友はありがたい。
『消えゆく燈火』 原題:燈火闌珊
英題:A Light Never Goes Out
アジアの未来部門
監督:曾憲寧(アナスタシア・ツァン)
出演:シルビア・チャン、サイモン・ヤム、セシリア・チョイ
2022 香港 広東語
腕利きのネオンサイン職人だった夫の死後、失意の妻は夫が10年も前に閉じた工房を訪ねた。そこで夫の弟子だったという若者に会い、やがて夫がやり残したネオン製作の夢を継承しようと決意する。サイモン・ヤムとシルヴィア・チャンの名優コンビが夫婦を演じる。
香港のあのカラフルなネオンサイン。微妙な作りのガラス細工からできていたんだと思った。かつて高校生の頃、化学の実験でガラス細工を習ったことがあったけど、これが原料だったとは。そういえば昔に比べたら香港のネオンサインの派手さはなくなってきていたような気がする。それで亡くなった夫も工房を閉じていたのだろうか。失われていくものへのレクイエムともいえるのかも。
第59回台湾金馬奨で、シルビア・チャンが最優秀主演女優賞受賞したそうです。
©A Light Never Goes Out Limited