第35回東京国際映画祭は2022年10月24日(月)~11月2日(水)まで日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催。去年、六本木からこちらに上映会場が移ったものの、何か所かに分かれた会場同士が遠くて、映画を観るのにどう移動時間を見込んで、観る作品を決めるか、去年は全然読めず状態だったけど、今年は少し見えてきた。
10月25日(火)
中国映画週間が10月18日(火)に始まり5作品観たあと、東京国際映画祭は25日から参加。東京国際映画祭のプレスパスを中国映画週間で日本橋に通っている間に受け取りに行こうと思ったけど、時間が取れず東京国際が始まってから受け取ることにした。でもやはり事前にもらっておかなくて失敗。25日当日、プレスセンターに行ってから、プレス試写会場のシネスイッチ銀座に行こうと思ったのだけど、有楽町で電車を降り、プレスセンターまで20分もかかってしまった! 途中、写真を撮ったりもしたのもあるけど、以前だったら10分くらいで行ける距離なのに、今の私にはゆっくりしか歩けず、さらにプレスセンターについた時点でもう疲れていた(笑)。プレスセンターからシネスイッチ銀座までも20分くらいかかりそうなので15:40からのプレス試写でのトルコ映画『突然に』はあきらめた。
この調子では、これを観ると、その後にTOHOシネマズシャンテで18:00~観る予定の中国映画『へその緒』に間に合いそうもなかったから。
プレス登録をした後、『へその緒』まで3時間くらいあったので、まず、当日券を買いにシャンテへ行ったけど、映画祭のチケットは有楽町駅前でしか買えなかった。歩くのに時間かかったことを考えると、とても有楽町まで戻る気はしない。ダメ元でパソコンで当日売りを買えないかと、シャンテのチケット売り場の横でパソコンを立ち上げ挑戦してみた。私はネットでチケットを買うのが苦手で、うまくいかないことが多いのでどうなるかと思ったけど、チケットを買うことができた! それにしても上映会場の映画館チケット売り場の横でパソコンを立ち上げネットでチケットを買うというのは笑い話だ。そもそも今回、特にネットでのチケット売りだし当日(10月15日)は、買いたい作品のチケット売りの入口までも入っていけないような状態だった(スタッフ日記参照)。
映画まで2時間以上時間があるので、シャンテの向かいにある椿屋珈琲に入った。階段を登らなくてはならないので迷ったけど、ここのビーフカレーが好きなので頑張って登ったのだけど、あいにくカレーは終わっていてパスタしかなかった。このところ家でもスパゲティで、まだ残りもあるというのにパスタを食べるはめに。椿屋珈琲でパスタを食べるのは初めてかも。季節物ということでボルチーニ入りのパスタにしたけどおいしかった。癖になるかも。
そして、いよいよ映画。この日はシャンテで『へその緒』の鑑賞のみだった。
『へその緒』 原題:臍帯 英題:Cord of Life
監督:喬思雪(チャオ・スーシュエ)
出演:バダマ(母)、イダー(息子アルス)
2022年 中国・内モンゴル モンゴル語
内モンゴル出身でフランスに学んだ女性監督チャオ・スーシュエ、注目のデビュー作。
モンゴル族のミュージシャンの青年は認知症の進む母を引き取り、昔家族で住んでいた故郷の大草原でふたり暮らしを始める。湖のほとりのとても景色の良いところだったけど、お母さんはフラフラと外へ出かけるようになってしまい、息子アルスはしかたなく、母が遠くに行かないように紐(綱?)で結ぶ。これが「へその緒」というタイトルにした所以なんだろうけど、これがモンゴルっぽい。都会ではこういうことは考えられない。
中国タイトルの「臍帯」は「へその緒」で日本語タイトルは直訳ではあるけど、英題の「Cord of Life」(命の紐)が一番、内容に近い気がした。
ミュージシャンの青年が馬頭琴でラップをやっていたのが面白かった。
「母親役以外はすべて、内モンゴルの現地で普段生活されている方たちが俳優として出てくださったので、そこで非常にリアルな内モンゴルでの生活というのを、うまく描くことができたと思います」と、監督は語っていた。
チャオ・スーシュエ監督、リウ・フイさん(プロデューサー)
10月26日(水)
この日は、日赤(日赤武蔵野赤十字病院)での診察があったので、朝9時すぎに家を出る。いつも午後1時頃まで時間がかかるので、この日は映画祭の作品は何時から観ることができるか不確定。結局、13時半頃になってしまったので、武蔵境でランチしてから行くことにした。迷ったけど、ここにも椿屋珈琲があるので、昨日食べられなかったカレーを食べることにした(笑)。2日続けて椿屋珈琲になるとは…。でもおかげで、ずっと食べたかった、ここのカレーを食べることができて満足。
武蔵境から中央線に乗って東京駅、そして有楽町へ。何を観るか映画祭資料をいろいろ広げながら見ていたら、隣に座っていた男性(80歳と言っていた)が、「東京国際映画祭ですか。行ってみたいけど、お薦めの映画ありますか?」と声をかけて来たのだけど、あいにく、まだ『へその緒』しか観ていなかったので、「この作品、モンゴルの高齢者事情が分かってよかったですよ」と言ったら、「昨日の東京新聞で、その作品のことを紹介していました」と、この作品のことを知っていた。なんでもカンボジアに日本語を教えに行ったことがあるというので、アジアの映画をいくつか紹介してみた。チケットをどうやって買ったらいいかとか聞かれたので、映画祭の作品と上映情報を載せた小冊子をあげたかったけど、あいにく、私が興味ある作品に印をつけていたものしかなく、どうしようと思ったけど、私は会場に行ったら、またそれをゲットできると思い、それを渡した。逆に、ほとんどアジア作品に印をつけていたから、参考になったかも。その方は映画祭に行ったかな。
この日は結局、シネスイッチ銀座に行き、プレス試写で『私たちの場所』と『孔雀の嘆き』の2本を観ることができた。
『私たちの場所』 英題:A Place of Our Own
アジアの未来共催:国際交流基金
監督:エクタラ・コレクティブ(製作グループ)
出演:マニーシャー・ソーニー、ムスカーン、アーカーシュ・ジャムラー
2022年 インド ヒンディー語
コロナ禍で職を失ったトランスジェンダーの二人が転居先を探す物語。インドでも性的マイノリティをめぐる不寛容と差別の壁は厚く、家探しは難航する。一人は性的マイノリティのNGO的な事務所?で働いている。勤め先がしっかりあっても、なかなかみつからない。しかし、彼らの仲間は、何かあれば情報を提供したり、協力する人たちもいて、少し安心した。
個人の監督名を冠しない創作集団、エクタラ・コレクティブによる集団製作。
『孔雀の嘆き』 原題:Vihanga Premaya
英題:Peacock Lament
コンペティション部門 最優秀芸術貢献賞
監督:サンジーワ・プシュパクマーラ
出演:アカランカ・プラバシュワーラ、サビータ・ペレラ、ディナラ・プンチヘワ
2022年/スリランカ/イタリア シンハラ語
両親が亡くした19歳の青年アミラは下に四人の弟妹がいて、コロンボにある廃墟ビルの屋上で寝起きしている。一番下は赤ん坊。アミラが働き、すぐ下の弟が下の子たちの面倒を見ているが、毎日毎日食べるだけで精一杯。さらに心臓病の妹の手術のため大金が必要となったアミラは、高給を保証する女性実業家と出会い、弟や妹を施設に預けて働くことに。その仕事は、妊娠したが産むことが出来ない女たちを集め、産んだ子を外国人に養子として斡旋する仕事だった。スリランカの女性たちを助ける仕事ではあるけど違法なこと。この仕事はうまくいくのだろうか。ヒヤヒヤしながら観た。
10月27日(木) 不参加
この日はプレス試写で『1976』(チリ)、『カイマック』(北マケドニア)、『山女』(日本)の3本の予定だったけど、足が痛くあまり歩けそうもなかったので、映画祭へ行くのはあきらめた。このところ、足がむくんだり、痛かったり、息が荒くて歩くのが大変だったりということも多く、前売りチケットはあまり買わないで、当日の状況で映画祭に行き、観る作品を考えるという態勢で映画祭に臨んでいる。特に階段しかない劇場はつらい。
10月28日(金)
前の日、足が痛くてあまり動けなかったので、この日は一般会場での鑑賞を優先した。幸い11:20からのシャンテシネ2で上映の『輝かしき灰』(ベトナム)の当日券が取れた。
『輝かしき灰』 原題:Tro Tàn Rực Rỡ
英題:Glorious Ashes
コンペティション共催:国際交流基金
監督:ブイ・タック・チュエン
出演:レ・コン・ホアン、ジュリエット・バオ・ゴック・ドリン、フオン・アイン・ダオ
2022年ベトナム/フランス/シンガポール(ベトナム語)
ベトナムを代表する作家グエン・ゴック・トゥの小説を、『漂うがごとく』(09)のブイ・タック・チュエン監督が映画化。ベトナム南部のメコン・デルタの村を舞台に3人のヒロインとそれぞれの男性との関係を描く。
貧しい村に住む3人の女性。夫と姑に召使い扱いされるホウ、子どものような夫の世話をするニャン、レイプをされた過去を持つロアン。孤独な彼女たちの暮らしに変化が…。
ブイ・タック・チュエン監督は「ベトナムは家長制度の歴史が長く、家庭では男性が威張っているのですが、ベトナムの女性は強い。強さの魅力がある。原作のストーリー性とラブストーリーに魅了されました。それに加え、地域性にも惹かれました。様々な表情を見せる水の風景も助けになりました」と語っていた。
ブイ・タック・チュエン監督、俳優のレ・コン・ホアン、ジュリエット・バオ・ゴック・ドリン、フオン・アイン・ダオ、ゴー・クアン・トゥと本作プロデューサー
この後はプレス試写会場のシネスイッチ銀座に移動。
シネスイッチ銀座1は地下で階段しかないのでなるべく避けていたのだけど、次の16;35からの『This is What I Remember』はアクタン・アリム・クバト監督作品。どうしても観たかったのでシネスイッチ銀座1へ。
『This is What I Remember』(英題) 原題:Esimde
コンペティション
監督:アクタン・アリム・クバト
出演: アクタン・アリム・クバト、ミルラン・アブディカリコフ、タアライカン・アバゾバ
2022年 キルギス/日本/オランダ/フランス
キルギス語、アラビア語
『馬を放つ』(17)で知られるキルギスを代表する映アクタン・アリム・クバト監督の最新作。ロシアに出稼ぎに行っている間に記憶を失い、20年ぶりにキルギスに戻ってきた父とその家族を描くドラマ。
キルギスの村。クバトは、ロシアに出稼ぎに行20ったまま年間行方不明になっていた父ザールクをみつけて連れ帰る。父はロシアにいる間に記憶を失ない自分のこともわからない。母は夫が亡くなったと思って、村の実力者と再婚している。クバトは父を村のあちこちに連れていくが、記憶は戻らない。「This is What I Remember」とは日本語に訳すと「これが私が覚えているものだ」だが、彼は何かを覚えているのだろうか。
この日は映画友がチケットを取ってくれて、一緒にTOHOシネマズシャンテで21:15からの『消えゆく燈火』(香港)を観る予定だったので、夕食をシャンテ地下の「五穀」という店で一緒に食べる。釜飯など和食系の店で久しぶりに和食を食べた。
今回の映画祭ではシネジャスタッフともこれまで会わず、まして映画祭一般上映の映画友たちとも会えなかったけど、やっと昔からの映画友と一緒に観ることができた。もっとも、このチケットなかなかチケット購買のページになかなか入っていけなくて、この友人が取ってくれた。この作品はチケット買いが集中し、私は入口までしか入れなかったけど、この友人はあとから参加したにも関わらず、チケット購買まで入っていけて、「一緒に買う?」と言ってきてくれた。友はありがたい。
『消えゆく燈火』 原題:燈火闌珊
英題:A Light Never Goes Out
アジアの未来部門
監督:曾憲寧(アナスタシア・ツァン)
出演:シルビア・チャン、サイモン・ヤム、セシリア・チョイ
2022 香港 広東語
腕利きのネオンサイン職人だった夫の死後、失意の妻は夫が10年も前に閉じた工房を訪ねた。そこで夫の弟子だったという若者に会い、やがて夫がやり残したネオン製作の夢を継承しようと決意する。サイモン・ヤムとシルヴィア・チャンの名優コンビが夫婦を演じる。
香港のあのカラフルなネオンサイン。微妙な作りのガラス細工からできていたんだと思った。かつて高校生の頃、化学の実験でガラス細工を習ったことがあったけど、これが原料だったとは。そういえば昔に比べたら香港のネオンサインの派手さはなくなってきていたような気がする。それで亡くなった夫も工房を閉じていたのだろうか。失われていくものへのレクイエムともいえるのかも。
第59回台湾金馬奨で、シルビア・チャンが最優秀主演女優賞受賞したそうです。
©A Light Never Goes Out Limited
第23回東京フィルメックス / TOKYO FILMeX 2022 授賞式写真集(暁)
2022年10月29日(土)~11月6日(月)まで行われた第23回東京フィルメックス。11/5(土)に行われた授賞式の写真をまとめました。
◆コンペティション 受賞結果
【最優秀作品賞】
『自叙伝』Autobiography マクバル・ムバラク監督
インドネシア、フランス、シンガポール、ポーランド、フィリピン、ドイツ、カタール / 2022 / 116分
マクバル・ムバラク監督
【審査員特別賞】
『ソウルに帰る』Return to Seoul ダヴィ・シュー監督
ドイツ、フランス、ベルギー、カタール / 2022 / 116分
ダヴィ・シュー監督
【審査員特別賞】
『Next Sohee(英題)』チョン・ジュリ監督
韓国 / 2022 / 138分 配給:ライツキューブ
チョン・ジュリ監督
【スペシャル・メンション】
『ダム』The Dam アリ・チェリ監督
フランス、スーダン、レバノン、ドイツ、セルビア、カタール / 2022 / 80分
アリ・チェリ監督
☆第23回東京フィルメックス コンペティション審査員
リティ・パン ( Rithy PANH / フランス・カンボジア / 映画監督 )
キム・ヒジョン ( KIM Hee-Jung / 韓国 / 映画監督 )
キキ・ファン ( Kiki FUNG / 香港 / 映画プログラマー )
左からリティ・パン、キム・ヒジョン、キキ・ファン
◆観客賞
『遠いところ』A Far Shore 工藤将亮監督
日本 / 2022 / 128分 配給:ラビットハウス
工藤将亮監督
◆学生審査員賞
『地中海熱』Mediterranean Fever マハ・ハジ監督
パレスチナ、ドイツ、フランス、キプロス、カタール / 2022 / 108分
学生審査員:はるおさき(HARUO Saki / 東京藝術大学大学院)、山辺愛咲子(YAMABE Asako / 武蔵野美術大学)、高野志歩(TAKANO Shiho / 立教大学)
タレンツ・トーキョー
◆タレンツ・トーキョー・アワード2022
『Forte』ソン・ヘソン監督(韓国)
ソン・ヘソン監督
◆スペシャル・メンション
『Future Laobans』マウン・サン監督(ミャンマー)
『TROPICAL RAIN, DEATH-SCENTED KISS』
シャルロット・ホン・ビー・ハー監督(シンガポール)
講評を語るリティ・パン 審査員長
司会 神谷直希 東京フィルメックス プログラム・ディレクター
受賞理由など詳細は、こちらで!
https://filmex.jp/2022/program/competition
◆コンペティション 受賞結果
【最優秀作品賞】
『自叙伝』Autobiography マクバル・ムバラク監督
インドネシア、フランス、シンガポール、ポーランド、フィリピン、ドイツ、カタール / 2022 / 116分
マクバル・ムバラク監督
【審査員特別賞】
『ソウルに帰る』Return to Seoul ダヴィ・シュー監督
ドイツ、フランス、ベルギー、カタール / 2022 / 116分
ダヴィ・シュー監督
【審査員特別賞】
『Next Sohee(英題)』チョン・ジュリ監督
韓国 / 2022 / 138分 配給:ライツキューブ
チョン・ジュリ監督
【スペシャル・メンション】
『ダム』The Dam アリ・チェリ監督
フランス、スーダン、レバノン、ドイツ、セルビア、カタール / 2022 / 80分
アリ・チェリ監督
☆第23回東京フィルメックス コンペティション審査員
リティ・パン ( Rithy PANH / フランス・カンボジア / 映画監督 )
キム・ヒジョン ( KIM Hee-Jung / 韓国 / 映画監督 )
キキ・ファン ( Kiki FUNG / 香港 / 映画プログラマー )
左からリティ・パン、キム・ヒジョン、キキ・ファン
◆観客賞
『遠いところ』A Far Shore 工藤将亮監督
日本 / 2022 / 128分 配給:ラビットハウス
工藤将亮監督
◆学生審査員賞
『地中海熱』Mediterranean Fever マハ・ハジ監督
パレスチナ、ドイツ、フランス、キプロス、カタール / 2022 / 108分
学生審査員:はるおさき(HARUO Saki / 東京藝術大学大学院)、山辺愛咲子(YAMABE Asako / 武蔵野美術大学)、高野志歩(TAKANO Shiho / 立教大学)
タレンツ・トーキョー
◆タレンツ・トーキョー・アワード2022
『Forte』ソン・ヘソン監督(韓国)
ソン・ヘソン監督
◆スペシャル・メンション
『Future Laobans』マウン・サン監督(ミャンマー)
『TROPICAL RAIN, DEATH-SCENTED KISS』
シャルロット・ホン・ビー・ハー監督(シンガポール)
講評を語るリティ・パン 審査員長
司会 神谷直希 東京フィルメックス プログラム・ディレクター
受賞理由など詳細は、こちらで!
https://filmex.jp/2022/program/competition
まとめ・写真 宮崎暁美
第35回東京国際映画祭(2022) クロージングセレモニー写真集
『ザ・ビースト』が東京グランプリ・最優秀監督賞・主演男優賞の3冠
第35回東京国際映画祭 クロージングセレモニー 2022年11月2日(水)
10月24日(月)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開幕した第35回東京国際映画祭。11月2日(水)に東京国際フォーラムにてクロージングセレモニー行われました。遅くなりましたが、その時の写真を各部門における各賞の発表・授与、登壇者のコメントともに掲載します。
第35回東京国際映画祭 各賞受賞作品・受賞者
コンペティション部門
★東京グランプリ/東京都知事賞
『ザ・ビースト』(スペイン/フランス)
★審査員特別賞 『第三次世界大戦』(イラン)
★最優秀監督賞
ロドリゴ・ソロゴイェン監督『ザ・ビースト』(スペイン/フランス)
★最優秀女優賞
アリン・クーペンハイム『1976』(チリ/アルゼンチン/カタール)
★最優秀男優賞
ドゥニ・メノーシェ『ザ・ビースト』(スペイン/フランス)
★最優秀芸術貢献賞 『孔雀の嘆き』(スリランカ/イタリア)
観客賞 『窓辺にて』(日本)
アジアの未来
★作品賞 『蝶の命は一日限り』(イラン)
AmazonPrimeVideoテイクワン賞 該当者なし
特別功労賞 野上照代
授賞式写真集
特別功労賞 野上照代
スティーヴン・ウーリー(『生きる LIVING』プロデューサー)、安藤裕康チェアマンと
野上照代さん:ありがとうございます。なんて言ったって95歳(2022年現在)ですからよくもったものです。私は映画が本当に好きだし、映画という表現をここまで続けてきてくれた色々な監督たちに感謝します。いろいろな表現があるけれど、やっぱり映画ほどリアルで具体的で真実に迫るものはない。やはり素晴らしい表現だと思います。ありがとうございました。
野上照代さんは、1950年黒澤明監督の『羅生門』にスクリプターとして参加。その後『生きる』以降の全黒澤作品に、記録、編集、制作助手として参加した。
Amazon Prime Video テイクワン賞 該当者なし
プレゼンター行定勲監督:Amazon Prime Video テイクワン賞の今年の該当作品はありませんでした。私たちプロの立場であっても、映画の企画が生まれ完成するまでというのは奇跡的なものです。完成した作品より消えていった作品の方が多いのが現実です。このAmazon Prime Video テイクワン賞は新人監督に長編映画の企画を実現するチャンスを与えるという夢のような賞です。しかし、それに見合う実力、この人に獲らせたいという想いを今回のファイナリストの作品から見出すことが出来ませんでした。
審査会議では辛辣な意見が飛び交いました。「それぞれの作品には良さがある。しかしそれは世界に繋がっていない。15分という短編には強い作家性が込められるべきだが、それを感じられなかった。どの作品にもイメージの飛躍が我々の想像を超えるものではなかった」。しかし、今はまだ賞に値するものではないが、今回のファイナリストに残ったいつか評価される才能がこの中にいるのではないかと期待したいと思います。
ここ数年、さまざまな短編映画祭の審査委員を務めてきましたが、昨年のテイクワン賞のレベルには正直驚かされました。こんなにも才能のある作家がまだいるのかと。「実力はあるが商業ベースではない若手を見出す」、「世の中をもっと広く意識した作品を作ろう」とする才能をAmazonスタジオが支援をするテイクワン賞にふさわしいのは辛辣な意見を聞いてきた作り手であり、この賞はそれでも作り続けるという作り手にこれから手を差し伸べるべきだと思います。今回の結果を是非、来年のAmazon Prime Video テイクワン賞に繋げていただきたいと切に思います。来年は更なる飛躍をしていただいて、また若い人たちがどんどん応募してきていただけたらと思っています。
アジアの未来作品賞 『蝶の命は一日限り』
モハッマドレザ・ワタンデュースト監督(イラン)
アジアの未来部門審査委員と共に 斉藤綾子、ソーロス・スクム、西澤彰弘
モハッマドレザ・ワタンデュースト監督:この賞をいただき、とても感銘を受けています。今は芸術性の高い映画がいろいろな映画祭で賞を貰ったりしないので、東京国際映画祭は今でも芸術性を大事にする映画、芸術の言葉で一つの物語を語る映画を大事にしてくれることに、私たちは心強さを感じています。私たちは監督として一つの社会問題を、映画の言葉で表現することはとても重要なことであると信じてます。この場を借りて、この賞をイランの大変素晴らしい女性たちに捧げたいと思います。世界の平和、そして戦争がない平和を願って、スピーチを終わりたいと思います。
<コンペティション>
観客賞 『窓辺にて』今泉力哉監督
今泉力哉監督:私の作品は個人的な本当に小さな悩みを題材に恋愛映画をずっと作り続けています。世界には戦争だったり、ジェンダーの問題だったり、さまざまな問題がある中で、私は小さな、本当に小さな取るに足らない悩みとか、個人的な問題を、恋愛を通じてコメディ的な笑いも含めて描こうと思って今まで作り続けています。映画に限らずですが、小説とかそういうものは大きな問題を取り上げてそれについて語るものとしての側面があるけれど、自分は主人公も受動的だったり、自ら行動できなかったりとか、見過ごされるような小さな問題について映画をずっと作り続けています。自分が映画を作ってきて、こうやってこの場に立っているのを嬉しく思いますし、今後も続けていければと思います。ネガティブに捉えるだけではなく、そこにある小さな喜びとか、そういうものを自分なりにできることを考えて行こうと思います。
最優秀芸術貢献賞『孔雀の嘆き』
サンジーワ・プシュパクマーラ監督(スリランカ/イタリア)
『孔雀の嘆き』チーム
サンジーワ・プシュパクマーラ監督:日本の政府・日本のみなさんに大変多くのサポートいただきましたことを心から感謝したいと思います。私たちが困難の間、皆さんから非常に強力なサポートを得ることができました。ありがとうございます。また、私の映画の源となりました妹、兄弟に感謝しています。この映画を全てのスリランカの人に捧げたいと思います。私たちは税金で教育を受けることが出来ました。私はこの映画そのものをスリランカの人々に捧げたいと思います。
最優秀男優賞 ドゥニ・メノーシェ
『ザ・ビースト』(スペイン/フランス)
2019年の観客賞『動物だけが知っている』ドミニク・モル監督の代わりにトロフィを受け取ったドゥニ・メノーシェさん
ドゥニ・メノーシェさん:東京国際映画祭は大好きな映画祭です。賞をいただくことができて光栄です。日本が大好きで日本の文化を素晴らしく思っております。世界中が「日本的」だったらもっと住みやすくなるに違いありません。ですから受賞を大変喜ばしく思っております。残念ながら、今私はモントリオールにいます。また日本に行くことを楽しみしにしていて、いつか日本で映画を作ってみたいです。
最優秀女優賞 アリン・クーペンハイム
『1976』(チリ/アルゼンチン/カタール)
アリン・クーペンハイムさん:このような素晴らしい賞をいただいて大変嬉しく驚くと共に、大変光栄に思っております。映画祭審査委員のみなさん、そしてこの役を私に託してくれたマヌエラ・マルテッリ監督、『1976』の素晴らしいチームの仲間たち、非のうちどころのない愛情に満ちたチームワークに改めてお礼を申し上げます。本当はみなさんと一緒に祝いたいのですが、私は文字通り地球の裏側にいます。とても遠いチリのサンティアゴからみなさんに暖かい抱擁を送ります。あなた方一人一人の幸運を祈ります。
代理でトロフィを受け取った『1976』のマヌエラ・マルテッリ監督
私の作品を上映する機会を与えてくださった東京国際映画祭の皆さまに心から感謝しています。そしてまた、この素晴らしい日本という国、素晴らし日本の皆さまに心から感謝しています。実は10歳の時にこの主演のアリンさんにインタビューする機会があったんです。それで今、彼女がこの作品で賞を獲ったことにとても感激しています。
プレゼンテーター シム・ウンギョン
審査員特別賞『第三次世界大戦』(イラン)
ホウマン・セイエディ監督 代理:出演女優マーサ・ヘジャーズィさん
マーサ・ヘジャーズィさん:残念ながら監督がこの場に来られなかったので、代わりにメッセージを読ませていただきます。日本のために、そして私の幻想のために。この世界は山であり、私たちの行動は呼びかけである。呼びかけは声として入ってくる、声には呼吸がないが、声は聞くことができる。私の声はあなたの元に届くでしょう。私は今、この瞬間みなさんと一緒にいることができません。それは私が望まなかったからではなく、そうせざる得なかったからです。けれど私の声はそこにあります。あなた方と一緒にいられなかったこと、あなた方の文化や伝統に触れられなかったことが、とても悲しいです。しかし私は何年も前からみなさんの声を聞いているのです。俳句を読む度に、村上春樹やカズオ・イシグロの本を開く度に、黒澤映画をみる度に。私は皆さんのことをよく知っています。そしてもうすぐ皆さんに会いに飛んでいきます。世界平和を願い、日本のみなさんに会えることを願い、私たちを受け入れてくれたことに深く感謝の気持ちをお送りします。”
最優秀監督賞 ロドリゴ・ソロゴイェン監督
『ザ・ビースト』(スペイン/フランス)
コンペティション部門東京 グランプリ/東京都知事賞
『ザ・ビースト』
ロドリゴ・ソロゴイェン監督:最優秀監督賞と、東京グランプリ/東京都知事賞の2つの賞をいただき本当に嬉しいです。心より光栄に思います。授賞式に参加できないのは残念ですが、『ザ・ビースト』や映画祭、そして素晴らしい東京という街を楽しんでいただければと思います。どうか皆様、良い夜を。
左から小池百合子東京都知事、ロドリゴ・ソロゴイェン監督に代わって登壇したアルベルト・カレロ・ルゴ ラテン・ビート映画祭プログラミングディレクター、ジュリー・テイモア審査員長。
スペシャルプレゼンター小池百合子東京都知事:今年のコンペティション部門は107の国と地域から、1695本の応募がありました。毎年数多くの新しい才能がここ東京から世界へ羽ばたいていることを大変うれしく思います。映画には人々の心を繋げる大きな力があります。この映画祭を通じて相手の個性や考えを尊重し一人ひとりの夢、希望が育まれることを期待しています。
ジュリー・テイモ審査委員長:『ザ・ビースト』は音楽、撮影、物語、脚本、役者、そして演出も本当にすべてに感動したし、心を動かされるこれこそまさに「映画」だと感じさせてくれる作品でした。最後まで競っていた『第三次世界大戦』は本当にワイルドで、『パラサイト半地下の家族』や『ゲット・アウト』やチャップリンの『独裁者』のような映画で、本当にショックを受けましたし驚かされました。イランでホロコーストの映画が撮影されていて、現場の作業員が無理やり収容所のエキストラにさせられていたり、主人公の男性が困難な状況にある中でヒトラーにさせられたり非常に珍しい映画。ぜひ2本とも配給されてほしいと願っています。私たちは馴染のあるものに慣れてしまっている傾向があるけど、それは問題だと思います。そうではなく自分ではない他の人の人生を経験し歩むことで自分を豊かにしてくれるのが映画だと思います。
安藤裕康映画祭チェアマン:映画祭の来場者が昨年の倍以上になったことを来場者に報告。いろいろな場所でイベントを実施し、映画祭としての存在感、華やかさを表すことができたのではないかと思います。今、日本は国力が弱くなっているのではないかとか、自信をなくしていると言われたりしますが、私は芸術文化に関する限り、まだまだ日本は世界で勝負できると思っております。東京国際映画祭は、映画を通じて世界との架け橋になりたい。これからも飛躍していきたいと締めくくった。
第 35 回東京国際映画祭
開催期間:2022 年 10 月 24 日(月)~11 月 2 日(水)
会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区
公式サイト:www.tiff-jp.net
第35回東京国際映画祭 動員数 <速報値・2日は見込み動員数>
■上映動員数/上映作品本数:59,414人/169本*10日間
(第34回:29,414人/126本*10日間)
■上映本作品における女性監督の比率(男女共同監督作品含む):14.8% (169本中25本)
■その他リアルイベント動員数:50,842人
■ゲスト登壇イベント本数:157件 (昨年:65件、241.5%増)
■海外ゲスト数:104人 (昨年:8人、1300%増)
■共催提携企画動員数:約20,000人
クロージング作品 『生きる LIVING』
スティーヴン・ウーリープロデューサー
脚本のカズオ・イシグロとオリヴァー・ハーマナス監督
主演のビル・ナイ
黒澤明の不朽の名作『生きる』が第二次世界大戦後のイギリスを舞台に蘇る。主演はビル・ナイ。脚本はノーベル賞作家のカズオ・イシグロ。監督はオリヴァー・ハーマナス
103分カラー英語日本語字幕2022年イギリス東宝株式会社
第35回東京国際映画祭 クロージングセレモニー 2022年11月2日(水)
10月24日(月)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開幕した第35回東京国際映画祭。11月2日(水)に東京国際フォーラムにてクロージングセレモニー行われました。遅くなりましたが、その時の写真を各部門における各賞の発表・授与、登壇者のコメントともに掲載します。
第35回東京国際映画祭 各賞受賞作品・受賞者
コンペティション部門
★東京グランプリ/東京都知事賞
『ザ・ビースト』(スペイン/フランス)
★審査員特別賞 『第三次世界大戦』(イラン)
★最優秀監督賞
ロドリゴ・ソロゴイェン監督『ザ・ビースト』(スペイン/フランス)
★最優秀女優賞
アリン・クーペンハイム『1976』(チリ/アルゼンチン/カタール)
★最優秀男優賞
ドゥニ・メノーシェ『ザ・ビースト』(スペイン/フランス)
★最優秀芸術貢献賞 『孔雀の嘆き』(スリランカ/イタリア)
観客賞 『窓辺にて』(日本)
アジアの未来
★作品賞 『蝶の命は一日限り』(イラン)
AmazonPrimeVideoテイクワン賞 該当者なし
特別功労賞 野上照代
授賞式写真集
特別功労賞 野上照代
スティーヴン・ウーリー(『生きる LIVING』プロデューサー)、安藤裕康チェアマンと
野上照代さん:ありがとうございます。なんて言ったって95歳(2022年現在)ですからよくもったものです。私は映画が本当に好きだし、映画という表現をここまで続けてきてくれた色々な監督たちに感謝します。いろいろな表現があるけれど、やっぱり映画ほどリアルで具体的で真実に迫るものはない。やはり素晴らしい表現だと思います。ありがとうございました。
野上照代さんは、1950年黒澤明監督の『羅生門』にスクリプターとして参加。その後『生きる』以降の全黒澤作品に、記録、編集、制作助手として参加した。
Amazon Prime Video テイクワン賞 該当者なし
プレゼンター行定勲監督:Amazon Prime Video テイクワン賞の今年の該当作品はありませんでした。私たちプロの立場であっても、映画の企画が生まれ完成するまでというのは奇跡的なものです。完成した作品より消えていった作品の方が多いのが現実です。このAmazon Prime Video テイクワン賞は新人監督に長編映画の企画を実現するチャンスを与えるという夢のような賞です。しかし、それに見合う実力、この人に獲らせたいという想いを今回のファイナリストの作品から見出すことが出来ませんでした。
審査会議では辛辣な意見が飛び交いました。「それぞれの作品には良さがある。しかしそれは世界に繋がっていない。15分という短編には強い作家性が込められるべきだが、それを感じられなかった。どの作品にもイメージの飛躍が我々の想像を超えるものではなかった」。しかし、今はまだ賞に値するものではないが、今回のファイナリストに残ったいつか評価される才能がこの中にいるのではないかと期待したいと思います。
ここ数年、さまざまな短編映画祭の審査委員を務めてきましたが、昨年のテイクワン賞のレベルには正直驚かされました。こんなにも才能のある作家がまだいるのかと。「実力はあるが商業ベースではない若手を見出す」、「世の中をもっと広く意識した作品を作ろう」とする才能をAmazonスタジオが支援をするテイクワン賞にふさわしいのは辛辣な意見を聞いてきた作り手であり、この賞はそれでも作り続けるという作り手にこれから手を差し伸べるべきだと思います。今回の結果を是非、来年のAmazon Prime Video テイクワン賞に繋げていただきたいと切に思います。来年は更なる飛躍をしていただいて、また若い人たちがどんどん応募してきていただけたらと思っています。
アジアの未来作品賞 『蝶の命は一日限り』
モハッマドレザ・ワタンデュースト監督(イラン)
アジアの未来部門審査委員と共に 斉藤綾子、ソーロス・スクム、西澤彰弘
モハッマドレザ・ワタンデュースト監督:この賞をいただき、とても感銘を受けています。今は芸術性の高い映画がいろいろな映画祭で賞を貰ったりしないので、東京国際映画祭は今でも芸術性を大事にする映画、芸術の言葉で一つの物語を語る映画を大事にしてくれることに、私たちは心強さを感じています。私たちは監督として一つの社会問題を、映画の言葉で表現することはとても重要なことであると信じてます。この場を借りて、この賞をイランの大変素晴らしい女性たちに捧げたいと思います。世界の平和、そして戦争がない平和を願って、スピーチを終わりたいと思います。
<コンペティション>
観客賞 『窓辺にて』今泉力哉監督
今泉力哉監督:私の作品は個人的な本当に小さな悩みを題材に恋愛映画をずっと作り続けています。世界には戦争だったり、ジェンダーの問題だったり、さまざまな問題がある中で、私は小さな、本当に小さな取るに足らない悩みとか、個人的な問題を、恋愛を通じてコメディ的な笑いも含めて描こうと思って今まで作り続けています。映画に限らずですが、小説とかそういうものは大きな問題を取り上げてそれについて語るものとしての側面があるけれど、自分は主人公も受動的だったり、自ら行動できなかったりとか、見過ごされるような小さな問題について映画をずっと作り続けています。自分が映画を作ってきて、こうやってこの場に立っているのを嬉しく思いますし、今後も続けていければと思います。ネガティブに捉えるだけではなく、そこにある小さな喜びとか、そういうものを自分なりにできることを考えて行こうと思います。
最優秀芸術貢献賞『孔雀の嘆き』
サンジーワ・プシュパクマーラ監督(スリランカ/イタリア)
『孔雀の嘆き』チーム
サンジーワ・プシュパクマーラ監督:日本の政府・日本のみなさんに大変多くのサポートいただきましたことを心から感謝したいと思います。私たちが困難の間、皆さんから非常に強力なサポートを得ることができました。ありがとうございます。また、私の映画の源となりました妹、兄弟に感謝しています。この映画を全てのスリランカの人に捧げたいと思います。私たちは税金で教育を受けることが出来ました。私はこの映画そのものをスリランカの人々に捧げたいと思います。
最優秀男優賞 ドゥニ・メノーシェ
『ザ・ビースト』(スペイン/フランス)
2019年の観客賞『動物だけが知っている』ドミニク・モル監督の代わりにトロフィを受け取ったドゥニ・メノーシェさん
ドゥニ・メノーシェさん:東京国際映画祭は大好きな映画祭です。賞をいただくことができて光栄です。日本が大好きで日本の文化を素晴らしく思っております。世界中が「日本的」だったらもっと住みやすくなるに違いありません。ですから受賞を大変喜ばしく思っております。残念ながら、今私はモントリオールにいます。また日本に行くことを楽しみしにしていて、いつか日本で映画を作ってみたいです。
最優秀女優賞 アリン・クーペンハイム
『1976』(チリ/アルゼンチン/カタール)
アリン・クーペンハイムさん:このような素晴らしい賞をいただいて大変嬉しく驚くと共に、大変光栄に思っております。映画祭審査委員のみなさん、そしてこの役を私に託してくれたマヌエラ・マルテッリ監督、『1976』の素晴らしいチームの仲間たち、非のうちどころのない愛情に満ちたチームワークに改めてお礼を申し上げます。本当はみなさんと一緒に祝いたいのですが、私は文字通り地球の裏側にいます。とても遠いチリのサンティアゴからみなさんに暖かい抱擁を送ります。あなた方一人一人の幸運を祈ります。
代理でトロフィを受け取った『1976』のマヌエラ・マルテッリ監督
私の作品を上映する機会を与えてくださった東京国際映画祭の皆さまに心から感謝しています。そしてまた、この素晴らしい日本という国、素晴らし日本の皆さまに心から感謝しています。実は10歳の時にこの主演のアリンさんにインタビューする機会があったんです。それで今、彼女がこの作品で賞を獲ったことにとても感激しています。
プレゼンテーター シム・ウンギョン
審査員特別賞『第三次世界大戦』(イラン)
ホウマン・セイエディ監督 代理:出演女優マーサ・ヘジャーズィさん
マーサ・ヘジャーズィさん:残念ながら監督がこの場に来られなかったので、代わりにメッセージを読ませていただきます。日本のために、そして私の幻想のために。この世界は山であり、私たちの行動は呼びかけである。呼びかけは声として入ってくる、声には呼吸がないが、声は聞くことができる。私の声はあなたの元に届くでしょう。私は今、この瞬間みなさんと一緒にいることができません。それは私が望まなかったからではなく、そうせざる得なかったからです。けれど私の声はそこにあります。あなた方と一緒にいられなかったこと、あなた方の文化や伝統に触れられなかったことが、とても悲しいです。しかし私は何年も前からみなさんの声を聞いているのです。俳句を読む度に、村上春樹やカズオ・イシグロの本を開く度に、黒澤映画をみる度に。私は皆さんのことをよく知っています。そしてもうすぐ皆さんに会いに飛んでいきます。世界平和を願い、日本のみなさんに会えることを願い、私たちを受け入れてくれたことに深く感謝の気持ちをお送りします。”
最優秀監督賞 ロドリゴ・ソロゴイェン監督
『ザ・ビースト』(スペイン/フランス)
コンペティション部門東京 グランプリ/東京都知事賞
『ザ・ビースト』
ロドリゴ・ソロゴイェン監督:最優秀監督賞と、東京グランプリ/東京都知事賞の2つの賞をいただき本当に嬉しいです。心より光栄に思います。授賞式に参加できないのは残念ですが、『ザ・ビースト』や映画祭、そして素晴らしい東京という街を楽しんでいただければと思います。どうか皆様、良い夜を。
左から小池百合子東京都知事、ロドリゴ・ソロゴイェン監督に代わって登壇したアルベルト・カレロ・ルゴ ラテン・ビート映画祭プログラミングディレクター、ジュリー・テイモア審査員長。
スペシャルプレゼンター小池百合子東京都知事:今年のコンペティション部門は107の国と地域から、1695本の応募がありました。毎年数多くの新しい才能がここ東京から世界へ羽ばたいていることを大変うれしく思います。映画には人々の心を繋げる大きな力があります。この映画祭を通じて相手の個性や考えを尊重し一人ひとりの夢、希望が育まれることを期待しています。
ジュリー・テイモ審査委員長:『ザ・ビースト』は音楽、撮影、物語、脚本、役者、そして演出も本当にすべてに感動したし、心を動かされるこれこそまさに「映画」だと感じさせてくれる作品でした。最後まで競っていた『第三次世界大戦』は本当にワイルドで、『パラサイト半地下の家族』や『ゲット・アウト』やチャップリンの『独裁者』のような映画で、本当にショックを受けましたし驚かされました。イランでホロコーストの映画が撮影されていて、現場の作業員が無理やり収容所のエキストラにさせられていたり、主人公の男性が困難な状況にある中でヒトラーにさせられたり非常に珍しい映画。ぜひ2本とも配給されてほしいと願っています。私たちは馴染のあるものに慣れてしまっている傾向があるけど、それは問題だと思います。そうではなく自分ではない他の人の人生を経験し歩むことで自分を豊かにしてくれるのが映画だと思います。
安藤裕康映画祭チェアマン:映画祭の来場者が昨年の倍以上になったことを来場者に報告。いろいろな場所でイベントを実施し、映画祭としての存在感、華やかさを表すことができたのではないかと思います。今、日本は国力が弱くなっているのではないかとか、自信をなくしていると言われたりしますが、私は芸術文化に関する限り、まだまだ日本は世界で勝負できると思っております。東京国際映画祭は、映画を通じて世界との架け橋になりたい。これからも飛躍していきたいと締めくくった。
第 35 回東京国際映画祭
開催期間:2022 年 10 月 24 日(月)~11 月 2 日(水)
会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区
公式サイト:www.tiff-jp.net
第35回東京国際映画祭 動員数 <速報値・2日は見込み動員数>
■上映動員数/上映作品本数:59,414人/169本*10日間
(第34回:29,414人/126本*10日間)
■上映本作品における女性監督の比率(男女共同監督作品含む):14.8% (169本中25本)
■その他リアルイベント動員数:50,842人
■ゲスト登壇イベント本数:157件 (昨年:65件、241.5%増)
■海外ゲスト数:104人 (昨年:8人、1300%増)
■共催提携企画動員数:約20,000人
クロージング作品 『生きる LIVING』
スティーヴン・ウーリープロデューサー
脚本のカズオ・イシグロとオリヴァー・ハーマナス監督
主演のビル・ナイ
黒澤明の不朽の名作『生きる』が第二次世界大戦後のイギリスを舞台に蘇る。主演はビル・ナイ。脚本はノーベル賞作家のカズオ・イシグロ。監督はオリヴァー・ハーマナス
103分カラー英語日本語字幕2022年イギリス東宝株式会社
まとめ・写真 宮崎暁美
フランス映画祭2022 横浜 『フルタイム』 エリック・グラベル監督インタビュー
『フルタイム』 À PLEIN TEMPS
監督:エリック・グラベル
出演:ロール・カラミー、アンヌ・スアレス、ジュヌヴィエーヴ・ムニシュ
2021年/フランス/フランス語/スコープ 2.39:1/87分
*物語*
パリ郊外の田舎町で暮らすジュリーは、離婚して二人の子供たちを育てながら、パリの高級ホテルでハウスキーパーの仕事に就いている。公共交通機関のストが続いていて、仕事場にたどり着くのも大変な日々だ。経済学修士号を持ち、かつて市場調査の仕事をしていたが4年前に会社が倒産。またマーケティングの仕事がしたいとあちこち履歴書を出し、やっと1社から面接の通知をもらう。シフトをなんとか代わってもらって面接に行く。その後、最終面接にこぎつけるが、シフトの代わりが見つからない・・・
(物語のロング・バージョンを末尾に掲載しています。)
監督:エリック・グラベル
20年前からフランスを拠点とするカナダ出身の監督、脚本家。モントリオールで始まった国際映画運動キノに賛同し、多くの短編映画を監督した後、2017年に『クラッシュ・テスト』で長編デビュー。本作『フルタイム』が長編2作目となる。
◎エリック・グラベル監督インタビュー
◆時間に追われながら働く人たちに思いを寄せた
― 目覚ましの音で始まる息もつけないジュリーの一日に、私自身、かつて郊外の家から毎日2時間近くかけて会社に通っていた頃のことを思い出しました。
多くの方の共感を呼ぶのではないかと思います。監督ご自身の経験も、映画の背景になっているのでしょうか?
監督:私自身、パリから1時間半位の舞台になったジュリーの住む田舎町で10数年暮らしています。郊外で暮らす決心をした時には、週に1日か2日、パリに行けばいいからと思っていました。パリに行くうちに、毎日通勤している人たちに気づきました。大変な思いをしているのを感じました。子育てしながらの方も身近にたくさんいたので、そういう人たちのことを映画で描きたいと思いました。私自身は、パリに行く回数を少しずつ減らしていきました。
― ジュリーは、自分に合ったより良い仕事を求めて頑張っています。一方で、子どものためを思って近くのスーパーで働くことも考えます。履歴書に書きかけた経済学修士号を消したところに、諦めのような気持ちを感じました。
監督:履歴書を書いている時に、学歴はあるけれど、スーパーで働くのに経験を満たしていないことに気づいて修士号の学歴を消したのです。どんな仕事も、それ相応のキャリアが必要だということを伝えたかったのです
◆男性にも共感してもらえたのが嬉しい
― 子育てしながら働くのは大変なことだと思います。インタビュー記事で、監督のお父さまがシングルファーザーだったと知りました。お父さまへの思いも込めて作られたのでしょうか?
監督:台本を書いている時には、あまり考えなかったのですが、あとからシングルで子育てをしている人たちに話を聞いてみました。私にはパートナーがいますが、私の住んでいる村にも、シングルで子育てしながら働いていてクタクタになっている人たちが多くいます。この映画を観た人から、自分自身や身近な人の人生のある時期を重ねたといわれることが多かったです。中でも、男性から共感したと言われたのは嬉しかったです。女性ならではの苦しみはあるけれど、男性も同じ悩みを抱えているのだと言われました。
― 人はとかく時間に追われて暮らしているのを感じるのですが、本作を観て、ふっと思ったことがあります。 ジュリーがホテルの新入りのリディアに腕時計をしてという場面がありました。丸く文字が並んだ時計だと、何時まで15分とか、あと何時間とか、はっきりわかります。デジタルが主流になった今、時間に関する感覚が違ってきているような気がするのですが、いかがですか?
監督:メイドさんの仕事にとっては、今も腕時計が必要だということを描きたかったのです。メイドに限らず、アナログの時計は労働には必要だと思います。デジタルの時代になっても、やっていることは変わっていないのですから。
◆日本のハイテクトイレは想像を超えてました!
― チャーチルスイートのヨシダさん、日本の自動洗浄のトイレと、日本人にとっては、ちょっと嬉しい日本の登場でした。監督にとって日本はどんな存在でしょうか?
監督:(すごく笑う) ヨシダさんのことは、すっかり忘れてました。 日本にハイテクトイレがあるのは知っていたし、いろいろ読んではいたのですが、日本には今回初めて来ましたので、真っ先にスーパーハイテクトイレを確認しました。想像を超えました! こんなものが実際にあるのだということを、初めてこの目で確認することができました。すごくおもしろかったです。
ヨシダさんは忘れてましたが、それよりも、部屋を糞尿で滅茶苦茶にしたスコットランドの歌手については、話を聞いたことがあって、インパクトが強くて、映画に入れてみました。スコットランドの方から具体的に誰だ?とよく聞かれます。 映画の中では、「ボビー・サンズ(Bobby Sands),が部屋を汚した」と合言葉で言っています。ボビー・サンズは、アイルランドの政治犯で、刑務所を糞尿で滅茶苦茶にしたと同時に革命で世の中をぐちゃぐちゃにしたので隠語にしているのです。彼については、映画『ハンガー(Hunger)』(2008年、監督:Steve McQueen)で描かれています。
ホテルのメイドさんたちに話を聞いたのですが、部屋を汚されることは日常的によくあることで、現実です。
― 理想の仕事に就ける人は幸せだと思います。いつごろから映画監督になりたいと思っていましたか?
監督:父を見ていて、意に沿わない仕事をしていて、人としてバランスが悪いと子供のころから感じていました。あんな風にはなりたくないなと思っていました。映画監督という仕事を選びましたが、自由に時間を決めることができて、生活リズムもバランスがとれていいので素晴らしい仕事だと思っています。
― 次の映画も楽しみにしています。
監督:今、頑張って作っているところです。
― 今日はありがとうございました。
***★☆★☆★***
最初の挨拶の時に、シネマジャーナルは女性たちで作っていて、特に女性監督や女性の生き方を描いた映画に注目していますとお伝えしたところ、「女性監督じゃなくてすみません」と言われました。前知識なしに映画を観ていると、もしかして監督は女性?と思われる方もいることと思います。女性に限らず、弱者に寄り添った映画でした。
取材:景山咲子
フランス映画祭2022 横浜 公式サイト
12/3(土)『フルタイム』上映後Q&Aレポート
https://unifrance.jp/festival/2022/news/1514/
*物語 ロング・バージョン*
アラームが鳴る。
「朝から350キロの渋滞、公共交通機関 6日目のスト」とのニュースが流れる。
ジュリーは子供たちに大急ぎで朝ご飯を食べさせ、子供たちを預けて、走って列車に飛び乗る。まだ薄暗い町。
人身事故で途中で降ろされ、バスで振り替え輸送。
サン・ラザール駅到着。ホテルに走る途中で銀行から、「住宅ローンが遅れてる」と督促の電話。
同僚の女性に明日4時からのシフト変わってもらう。
診療に行くと言ったが、「面接ね」とお見通し。
「チャーチルスィートにヨシダさんが泊まる」と連絡。
部屋のセッティングが終わって皆でおしゃべりしながらランチ。
「日本の自動洗浄のトイレ、お尻も洗ってくれるって」
「それじゃ私たちの仕事なくなる」
「乾燥機能もついてて、最高よ!」
新人リディア。これまで、三ツ星、四つ星のホテル。 五つ星は初めて。
「腕時計をつけて。携帯は禁止」とリディアに伝えるジュリー。
ヨシダさん到着というのに、リディアが花瓶を落とす。
元夫アレックスの留守電に養育費を入れてと残す。
帰りの交通機関も乱れている。子どもたちに電話すると、騒いでいる。
振り替え輸送でやっと家にたどり着く。
子どもたちが寝て、翌日の面接の準備。
アラーム。子どもたちを預ける。
車で行こうとするも、動かなくて困っていたら、黒人男性に声をかけられる。
村に住む男性。仕事は引退していてパリにデモに行くという。
「元軍人?」
「当たり!」
「確率ね。マーケティングを勉強してたの」
メトロの駅で降ろしてもらうが、メトロが動いてない。 走ってホテルへ。
学生、電車運転士、警察官もスト。
ホテル。
「ボビー・サンズが部屋を汚した」
アイルランドの政治犯 刑務所を糞尿でめちゃくちゃにした人物。
実は、汚したのはスコットランドの歌手。
高圧洗浄機で清掃する。あとから、高級タイルなのにと叱られる。
面接時間が迫る。タクシーを呼ぶが無理といわれる。
ホテルの玄関係のボビーに無理をいって車を頼む。
面接時間に間に合い、なんとか終える。
元夫アレックスに電話。また留守電・「休暇をどうするか相談したい」
翌日、遅刻して、同僚のイネスが一人だったと怒ってる。
昨日の面接官から、最終面接の連絡。
最終面接の時間のシフトを誰も代わってくれない。
リディアにパスを渡して、退勤の時に記録してくれと頼む。
昼休みに2部屋の清掃を済ませ、面接に行く。
最終面接。女性の部長から、4年前に前職を辞めてからのことを聞かれる。
前職は会社が閉鎖だった。子育てに専念したかったのですぐに再就職しなかったと。
(ホテルで働いていることは伝えない)
「以前のポストより下のポストを希望しているのは?」
「前は背伸びしてた」
「調査担当は窮屈では?」
「私のスキルと興味に合ってます」
「残業もあるけど子どもたちは大丈夫?」とあれこれ質問される。
帰り、小型のバンを借りたいのに大型しかない。
息子の誕生日会用に分割で買ったトランポリンの入った箱をおろす。
子どもたちを迎えに行くと、預かっている老婦人から、「近くで働いたら? スーパーに知り合いがいるから紹介する」といわれる。
翌朝、ホテルで上司のシルヴィアから「あなたをかばえば私がクビ。協議解雇にすれば転職活動もできる」と言われる。
とりあえず今回は目をつぶるとシルヴィア。
面接結果、電話するもわからない。
やっと村にたどり着く。
翌日の息子の誕生日パーティのために、暗い中、トランポリンをセットする。
誕生日パーティ。かつて車に乗せてくれた元軍人の黒人。同級生のレオのパパだった。
給湯器を直してもらう。思わずキスしてしまう。
元夫アレックス。また留守電。「もう機械相手に話すのはうんざり。今日は息子の誕生日」とメッセージを入れる。
アレックスから留守電。「国外にいて電話がつながりにくい。帰国したら電話する」と。
アラーム。
ニュース。「朝刊の見出しが状況を物語っている。大惨事、抗議者と暴徒の衝突、車は焼かれ、店は放火。パリで287人逮捕」
車に分乗させてもらってパリへ。
ようやくホテルに着くが、自分のパスをタッチしても入れない。
ついにクビになってしまった。
面接した会社に電話する。合否はもう電話したはずといわれる。
履歴書を作成する。
市場調査担当、経済学修士号と打ったのを消す。
紹介されたスーパーに行き履歴書を渡す。
「レジの経験は?」と聞かれ、「お客の対応はできる」と答えるしかないジュリー。
子どもたちには「少し疲れたから仕事を休むの」と言う。
遊園地に行きたいと娘にせがまれ、「遠いから無理」といいながら子どもたちを連れていく・・・・
インディアンムービーウィーク2022パート2
2022年12月23日(金)〜 2023年1月19日(木)
東京:キネカ大森
https://t.co/cUCNIdCHdr
日本初上映2作品、インディアンムービーウィーク初上映3作品、アンコール上映7作品の計12作品が上映されます。
今年は、6月開催の「パート1」、9月のアンコール作品中心の「リターンズ」に続き、3回目の開催です。
国語が存在せず、地域ごとに公用語が並立する多言語大国インド。その映画産業もまた、言語ごとに幾つにも分かれ、 それぞれが独自の映画的風土をもち、各言語を母語とする観衆から厚い支持を得ています。「インディアンムービー ウィーク2022パート2」では、ヒンディー語作品3本、タミル語作品2本が初上映されます。
スポーツをテーマにしながら対照的な『ボクサーの愛』と『私の夢、父の夢』、男女のポジション逆転のラブコメ『キ&カ 彼女と彼』、荒くれ男の純情を描く『兄貴の嫁取物語』、マルチスター・アクション『ディシューム』。さらに、『マスター 先生が来る!』の一般公開で注目のヴィジャイとヴィジャイ・セードゥパティの出演作など、アンコール上映作7本も見逃せません。
◆日本初上映
『兄貴の嫁取物語』
『私の夢、父の夢』
◆インディアンムービーウィーク初上映
『キ&カ ~彼女と彼~』
『ディシューム』
『ボクサーの愛』
◆アンコール上映作品
『至高の奉仕』
『途中のページが抜けている』
『シャンカラーバラナム 不滅のメロディ(デジタルリマスター版)』
『ジッラ 修羅のシマ』
『ピザ 死霊館へのデリバリー』
『マジック』
『無職の大卒』
『兄貴の嫁取物語』 原題:Veeram 原語タイトル:வர
監督:シヴァ
出演:アジット・クマール、タマンナー、サンダーナム、ナーサル、アトゥル・クルカルニー、プラディープ・ラーワト
音楽:デーヴィ・シュリー・プラサード
2014年/タミル語/160分(暴力シーンあり)
日本初上映/コメディ/アクション
©Vijaya Productions Pvt. Ltd.
カタブツ兄貴の婚活大作戦 マドゥライ地方の村に暮らす暴れ者の5人兄弟。長兄のビナーヤガは腕っぷしが強く、村人たちからも尊敬されていた が、異性関係では超硬派で、女性との付き合いは全くなかった。それぞれの恋人とゴールインしたいのに長兄に言い出せない4人の弟たちは、策略を巡らし、村にやってきた美術修復家の女性コーペルンデビとビナーヤガとの間に恋を芽 ばえさせようとする。しかし彼女の一家は全員が徹底した非暴力主義者だった。「タラ(お頭)」の冠タイトルをつけて呼 ばれるアクションスター、アジット・クマール主演のアクションコメディ。
『私の夢、父の夢』 原題:Kanaa 原語タイトル:கனா
監督:アルンラージャー・カーマラージ
出演:アイシュワリヤー・ラージェーシュ、シヴァカールティケーヤン、サティヤラージ
音楽:ディブ・ニナーン・トーマス
2018年/タミル語/145分
日本初上映/ドラマ/スポーツ
©SK Productions
農村から世界を目指すスポーツウーマン カルール地方の農村に育ったカウシは、父の影響で少女時代からクリケットが大好きで、男子に交じって草クリケットを プレーし、豪速球の投手として一目置かれていた。しかし、成長した彼女を受け入れるチームは地元にはなく、インドの ナショナルチーム入りを目指すことになる。全国から集まった選手たちの中で揉まれるカウシとそれを見守る家族や地 元の人々の奮闘を描き、同時に農民が直面する困難な状況にもスポットライトをあてる。人気俳優シヴァカールティケー ヤンが、タミル語映画界で注目される俳優アイシュワリヤー・ラージェーシュを主演に製作したスポーツドラマ。
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/496420995.html
『キ&カ 彼女と彼』 原題:Ki & Ka 原語タイトル:क एंड का
監督:R ・バールキ
出演:カリーナ・カプール、アルジュン・カプール
ジャヤー・バッチャン、アミターブ・バッチャン(特別出演)
音楽:イライヤラージャー、ヨー・ヨー・ハニーシン、ミート・ブロス
2016年/ヒンディー語/126分
IMW初上映 ロマンス
©Eros Worldwide ©Hope Productions
男女の役割分担を問い直すロマンス キャリアウーマンのキアと、大富豪の御曹司ながら母のような専業主婦になりたいと願うカビールが結婚する。カビール は主夫として完璧に家事をこなし家庭を築く。ビジネスで成功したキアを支える存在としてカビールに注目が集まり、彼 の進歩的な夫婦観が賞讃されるが、キアはそれに嫉妬を覚えるようになる。R・バールキ監督(パッドマン 5億人の女性 を救った男)が撮った、新感覚のロマンチック・コメディ。
『ディシューム』 原題:Dishoom 原語タイトル:ढशूम
監督:ローヒト・ダワン
出演:ジョン・エイブラハム、ヴァルン・ダワン、ジャクリーン・フェルナンデス
音楽:プリータム
2016年/ヒンディー語/124分
IMW初上映/コメディ/アクション
©Eros Worldwide ©H Films ©Nadiadwala Grandson Entertainment
マサラ強めのポリスアクション クリケット国際大会での決勝戦を前に、インド代表チームの強打者が誘拐された。試合開始前に選手を取り戻すた め、外務大臣の指示により警察の特殊部隊員からなる救出チームが秘密裏に結成される。優秀な警察官カビールの配 下となったのは新人ジュナイド。凸凹コンビは与えられた任務を完遂できるのか。人気アクション俳優、ジョン・エイブラ ハムとヴァルン・ダワンが競演のバディ・ムービー。
『ボクサーの愛』 原題:Mukkabaaz 原語タイトル:मुकाबाज़
監督:アヌラーグ・カシャップ
出演:ヴィニート・クマール・シン、ゾーヤー・フセイン、ジミー・シェールギル、ラヴィ・キシャン
2017年/ヒンディー語/155分(暴力シーンあり)
IMW初上映/スポーツ/ロマンス/ドラマ
©Eros Worldwide ©Colour Yellow Productions ©Phantom Films
リアルに描かれる愛と格闘技のドラマ ボクサーを目指すシュラワンは、所属ジムのオーナーであるバガワーンの姪スナイナーに惚れている。しかしバガワー ンはそれを認めずスナイナーを政略結婚させようと考え、さらに自分に逆らったシュラワンを試合から締め出す。諦めな いシュラワンは、信頼できるコーチを得て別の地区からエントリーして大会を目指す。鬼才アヌラーグ・カシャップ監督に よる、ロマンスやカースト問題が折り込まれたスポーツドラマ。
『至高の奉仕』原題:Aramm 原語タイトル:அற
監督:ゴーピ・ナイナール
出演:ナヤンターラ、ラーマチャンドラ・ドゥライラージ、スヌ・ラクシュミ、キッティ
音楽:ジブラーン
2017年/タミル語/120分
アンコール上映/ドラマ
©KJR Studios
官僚の責務を追求する女主人公 タミルナードゥ州北端の僻地の村。その村に住む被差別階級の人々は慢性的な水不足に悩まされていた。乾ききった 大地には井戸掘削を試みて成果が得られず放置された掘削孔がところどころに残る。ある日、4歳の女児ダンシカがそ うした穴の一つに誤って落ちてしまう。子供の胴体程度の直径しかない穴の11メートルの深さに落ちた彼女の救助は難 航する。子供の両親の悲嘆、政治家による妨害、マスコミの狂奔、群衆の騒擾の中で、陣頭指揮に立つ若い女性の行 政長官の奮闘と苦悩を描く。映画賞総ざらいの一作。
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/491250420.html
『途中のページが抜けている』 原題:Naduvula Konjam Pakkatha Kaanom 原語タイトル:நல ெகாச பகத காேணா
監督:バーラージ・ダラニダラン
出演:ヴィジャイ・セードゥパティ、ガーヤトリ、バガヴァティ・ペルマール、ラージクマール、ヴィグネーシュワラン・パラニサーミ
音楽:ヴェード・シャンカル
2012年/タミル語/161分
アンコール上映/コメディ
©Leo Vision
空前の低予算&大爆笑コメディ プレーム、バグス、サラス、バッジは仲のいい4人組。プレームの結婚式の前日に、暇つぶしに草クリケットで遊んでい たところ、プレームは転倒して頭を打ち、一時的な記憶喪失になってしまう。プレームと恋人のダナは、懐疑的な親族を 粘り強く説得して縁組を認めさせ、苦労の末にやっと式を挙げるところまで来ていたのだが、彼はダナのことすら覚えて いない。プレームの症状を明かせば結婚自体がお流れになってしまうかもしれない危機に、3人の友人たちは知恵を 絞って式を挙行しようとする。低予算作品ながら、驚異のヒットとなった作品。
『シャンカラーバラナム 不滅のメロディ』原題:Sankarabharanam 原語タイトル:சகராபரண
監督:K・ヴィシュワナート
出演:J・V・ソーマヤージュル、マンジュ・バールガヴィ、トゥラシ・シヴァマニ、アッル・ラーマリンガイヤ
音楽:K・V・マハーデーヴァン
1979年(2015年リマスター版)/タミル語 /136分
アンコール上映/ドラマ/古典舞踊
©Poornodaya Art Creations
デジタル・リマスターで蘇る古典
南インド古典声楽の巨匠シャンカラ・シャーストリと、彼を崇めるトゥラシ。娼家に生まれたトゥラシは神前の巫女のように シャンカラに仕えたいと望んでいたが、残酷な運命はそれを許さない。二つの純粋な魂の彷徨の道筋を彩る古典音楽と 古典舞踊の饗宴。ひたすらに芸を磨く求道と神への無私の信仰が一つになる圧巻のクライマックス。インド映画の「芸 道もの」の系譜の中で一時代を画し、南インド全域でヒットした、金字塔と言われる名作。2020年に惜しくも世を去った不 世出のプレイバックシンガー、S・P・バーラスブラマニヤムの歌唱もクリア音質で蘇る。 ※2015年にデジタルリマスターされたタミル語吹替版にて上映。
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/491391089.html
『ジッラ 修羅のシマ』原題:Jilla 原語タイトル:ஜிலா
監督:R・T・ネーサン
出演:モーハンラール、ヴィジャイ、カージャル・アグルワール、スーリ、サンパト・ラージ
音楽:D・イマーン
2014年/タミル語/176分/PG12(殺傷・出血の描写あり)
アンコール上映/ドラマ/コメディ/アクション
©Supergood Films
マフィアの右腕が警察官に マドゥライを支配するマフィアの首領シヴァンに育てられ、その右腕として地域を仕切るシャクティのあだ名はジッラ(縄 張り)。ある時シヴァンは、新しく着任した警視総監から犯罪集団の取り締まり強化を宣言される。危機感を感じたシヴァ ンは嫌がるシャクティを、介入抑止のため警察官にさせる。だがそれは、親子断絶の始まりだった。タミル語映画界の人 気俳優、ヴィジャイ(ビギル 勝利のホイッスル)と、〝完璧俳優〟と称されるマラヤーラム語映画界の大スター、モーハ ンラール(ザ・デュオ)が共演。ギャングものでありながら、コメディ満載、ダンスもあり、家族のドラマにほろりとする。京都や鳥取で撮影されたソングシーンが含まれる。
『ピザ 死霊館へのデリバリー』 原題:Pizza 原語タイトル:பசா
監督:カールティク・スッバラージ
出演: ヴィジャイ・セードゥパティ、ラミャ・ナンビーサン、カルナーカラン
音楽:サントーシュ・ナーラーヤナン
2012年/タミル語/128分/G
アンコール上映/ホラー
©Thirukumaran Entertainment
タミル・ニューウェーブのカルト的作品 ピザ配達員のマイケルは幼馴染のアヌと同棲中。都会の片隅でささやかな暮らしを営んでいた。ある夜マイケルがピザ を届けにとある豪邸に赴くと、受取人の女性が途中で消え、不可思議な出来事が立て続けに起こり、彼はそこから逃れ られなくなってしまう。その館では過去に何が起こったのか。一方、少し前に、ピザ店のオーナー宅では、少女への憑依 現象が起こっていた。二つの怪異の間には関係があるのか。2000年代後半のタミル語映画界に興こった「タミル・ニュー ウェーブ」の潮流から生まれた作品の中で、本作はホラー作品としては突出した高評価を得た。他の言語にもリメイクさ れたカルト的な1作。
『マジック』 原題:Mersal 原語タイトル:ெமச
監督:アトリ
出演:ヴィジャイ、サマンタ、S・J・スーリヤー、ニティヤ・メーノーン、カージャル・アグルワール
2017年/ タミル語/ 169分/ R15+(肉体損壊の描写あり)
アンコール上映/スリラー/ダンス
©Sony Music India, ©Sri Thenandal Films
医療をめぐる社会派スリラー チェンナイの低所得者層地域で開業するマーラン医師は、低額で患者を診る人徳者で、国際会議でも表彰される。しか しその周りで医療関係者の不審死が起こり、警察は彼を拘束して尋問する。そこで浮かび上がったのは、ヴェトリという 名の彼と瓜二つの奇術師だった。V・ヴィジャエーンドラ・プラサード(『バジュランギおじさんと、小さな迷子』)が脚本に加 わり、娯楽性がある社会派スリラーに仕上がっている。インディアン・シネマ・ウィーク2018上映の人気作品。
『無職の大卒』 原題:Velaiilla Pattadhari 原語タイトル:ேவைலயலா படதா
監督:ヴェールラージ
出演:ダヌシュ、サムドラカニ、アマラ・ポール、ヴィヴェーク
音楽:アニルド
2014年/タミル語 /133分/G
アンコール上映/ドラマ/ダンス
©Wunderbar Films
今は運なく無職でも、未来は俺たちのもの 大学で土木工学を学んだラグヴァランは、職が見つからず鬱屈している。ようやくチャンスを掴むが、大手建設会社の 御曹司と対決する。インド映画定番の「職のない若者」をダヌシュが好演。「職のない若者」というインド映画の定番テー マを、ダヌシュならではのキレのあるアクションとダンス、恋愛、ファミリー・センティメントで彩った、爽やかで痛快な一 作。初のセルフ・プロデュース作でダヌシュの持ち味が大限に活かされている。