東京国際映画祭 『第三次世界大戦』 主演女優マーサ・ヘジャーズィさんインタビュー (咲)

コンペティション部門 審査委員特別賞
『第三次世界大戦』
原題:Jang-e Jahani Sevom 英題:World War III  
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監督:ホウマン・セイエディ
出演:モーセン・タナバンデ、マーサ・ヘジャーズィ、ネダ・ジェブレイリ
2022年/イラン/ペルシャ語/107分/カラー

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©Houman Seyedi

映画の撮影現場で日雇いで働いていた男シャキーブは、エキストラから、さらにヒトラー役に抜擢される。地震で妻子を亡くしたシャキーブにとって、唯一の慰みだった聾唖の売春婦ラーダンを、撮影現場のヒトラー邸に匿うことになる・・・
(★物語の詳細は、インタビューの後に掲載しています)

◎主演女優マーサ・ヘジャーズィさんインタビュー

10月31日(月) 18時25分からのQ&A付上映の前にお時間をいただきました。
(Q&Aは、末尾に掲載しています)
通訳: ショーレ・ゴルパリアンさん

◆4か月かけて手話をマスター
― たまたま撮影現場で働いていたシャキーブが、いきなりエキストラとして強制収容所のユダヤ人になってガス室でシャワーを浴びせられ、さらにヒトラー役に抜擢されるという話に大笑いでした。 マーサさんは、どのようにしてラーダン役に選ばれたのでしょうか? 

マーサ:オーディションがありました。私の年齢位のあまり顔を知られていない役者を探しているとのことでした。最初は演じてみるというテストはなくて、監督といろいろ話しただけでした。やってくれれば嬉しいといわれました。

― 手話がもともとできたことが決め手だったのでしょうか?

マーサ: 手話はまったくできませんでした。人生の中で苦労したことは? といった質問を監督から受けました。 どれくらい役に近づけるかを確かめたかったのではないかと思います。 トレイナーのもとで手話を習い始めて、時々、監督が覗きにきました。 撮影の1週間前まで、やってもらうかどうかわからないと言われていましたが、それでもいいと手話を習い続けました。
(注: 監督から最初に貰った台本は、自分のパートだけのもので、セリフは書いてあって、実は手話だとは思わなかったと、この後のQ&Aで明かしています。)

― 言葉を発することができない役のご苦労は?

マーサ: 台詞なしで表現するのは難しいです。オーバーアクトにならないようにしました。手話を使っている人に見えないといけないので、少しでも近づけるよう、映画を観たり、実際に手話を使っている方に会ってみたりしました。身体のどこかが不自由だと、どこか別の場所が強くなるものだとわかりました。部屋の中でピアノを弾くシーンで、シャキープが先に外からの光に気が付くと台本に書いてありましたが、耳の聴こえない役の私の方が視覚が鋭くて、先に気が付くのではないかと監督に言って、変更してもらいました。

― ラーダンが隠れていた撮影セットのヒトラーの家が燃やされて、ラーダンの生死がわかりません。焼け跡からは彼女の腕輪が出てきました。 脚本を読まれた時に、どのような結末を予想しましたか?

マーサ:最初にもらったシナリオは、自分の出るパートだけでしたので、どうなるのかわからなくて、ドキドキしました。映画を観る方たちと同じように、生きていてほしいと思いました。ラーダンは彼を騙そうとしたのではなく、誠実な彼に惚れたのだと思います。


◆イランの撮影現場が垣間見れる映画
― 映画の撮影現場を映し出した映画で、イランではこういう風に映画を作るのだと興味深かったです。

マーサ: 撮影現場そのものですね。

― スタッフやキャストが一緒に食事をしている場面は、実際のもの?
 
マーサ:まさにそうです! 実際に、この映画のスタッフとキャストが一緒に食事をしている場面そのものです。ただ、エキストラが地べたに座って食事していたのは、監督の演出で、ほんとはエキストラの人たちも一緒にテーブルを囲んで食べていました。

― ロケ地は、茶畑がみえましたが、ギーラーン州でしょうか?

マーサ: 撮影をしたのはギーラーン州のフーマンです。

― フーマンといえば、クルーチェ(胡桃の入った焼き菓子)ですね! 友達がいて行ったことがあります。懐かしいです。

マーサ:映画に出てきたホテルに皆泊まっていました。私も懐かしいです。

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◆俳優でもあるセイエディ監督
― ヒトラーの話が終わったら、次は、サッダーム・フセインの話。世界には今も独裁者が次々に出ています。ホウマン・セイエディ監督は、ベネチアから帰ってきてパスポートを取り上げられたと聞いています。日本に来られなかった監督から、東京での上映にあたって、どんなメッセージを預かってきましたか?

マーサ:特にメッセージは託されませんでした。ただ、監督がパスポートを取り上げられたのは、ベネチアから戻ってきた時ではなくて、その後の抗議デモが始まってからのことです。 監督というのは独裁者になりがちですが、セイエディ監督は、穏やかな方です。

― ホウマン・セイエディ監督は、俳優としても活躍されています。マーサさんが出演された『The Pig』のマニ・ハギギ監督も俳優でもあります。マーサさんから見て、俳優経験のある監督の良い点は?

マーサ:演技経験のある監督の場合、ベテランの役者にとってはやりにくいこともあるのかもしれませんが、私は経験が浅いので、細かく演技指導してもらえてよかったです。
シャキープ役のタナバンデさんは、監督もしたことがあるので、セイエディ監督とどうだったのかわからないのですが、一緒のミーティングの時に、「この方がいいのでは?」と言った時に、受け入れられることもありました。


◆両親は医者になるのを期待していた
― マーサさんのインスタグラムにずっと女優になりたいと思っていたと書かれていました。いつごろから女優になりたいと思っていましたか?

マーサ:小さい時に女優になりたいと思ったけれど、実は勉強がすごくよく出来て、親は医者になってほしいと期待している雰囲気でした。高校を終える18歳頃まではすごく勉強しましたけれど、やっぱり女優になりたいと思って、演劇の塾に通い始めました。

― 憧れている女優さんは?

マーサ:メリル・ストリープです。


◆短編映画を製作中!
― 映画の中で、Neda Jebraeiliさんが演じていた助監督ザーレが、かっこよかったです。あのように、実際、女性も映画の現場で活躍している方が多いのでしょうか?

マーサ: はい、とてもたくさんいます。

― マーサさんも、いつか映画を作りたいと思っていますか?

マーサ:もちろんです! 実は脚本も書いたりしています。短編はいくつか具体的に準備しています。

― マーサさんの作った映画をいつか観られることを楽しみにしています。 今日はどうもありがとうございました。

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取材:景山咲子


*物語*  ロングバージョン
シャキーブは、地震で妻子を失い、知り合いの雑貨屋で寝泊まりして日雇いで暮らしている。時折、町外れの売春宿で聾唖のラーダンに相手をしてもらうのが、ささやかな楽しみだ。
ある日、日雇いの現場に行くと、泥まみれになりながら鉄条網を張ったり、小屋を作らされたりする。映画の撮影現場だった。電気もない小屋に泊まり込みで見張りをし、昼間は、雑用と厨房の手伝いをすることになる。
撮影現場で作業をしていると、いきなり囚人服を着ろと渡される。追い立てられて狭い部屋に入れられ、上からシャワーを浴びせられる。第二次世界大戦中の強制収容所のガス室だった! 
ヒトラー役が発作を起こし病院に運ばれる。シャキーブは監督からヒトラー役に抜擢される。髪を切り、髭を整え、メイクをして、シャキーブはヒトラーに変身する。セリフはあとから被せるから、1,2,3と数えていればいいと言われる。夜も、電気のつくヒトラーの赤い屋根の邸宅に泊まることになる。
そんな折、ラーダンから、売春宿でドラッグを打たれたので逃げ出したいと連絡が来る。近くの茶畑に迎えに行き、赤い家に案内する。昼間の撮影中、ラーダンは床下に隠れることにする。
売春宿のファルシードが訪ねてきて、ラーダンを知らないかと聞かれる。
否定するが、結局、匿っているのを知られ、1億5千万トマーンを要求される。
ラーダンから、金の腕輪を売って足しにしてと言われるが、シャキーブは断り、母が緊急手術することになったと、プロデューサーから前借する。ファルシードに金を渡しに行って戻ってくると、撮影現場から火が出ている。赤い邸宅を爆破している!!!
ラーダンに電話するが出ない・・・

シャキーブは、母親が聾唖だった為、手話ができます。地震で妻子を亡くしますが、その時に不在だったために義兄はシャキーブが妻子を置いて逃げたと思っていて、墓参りもさせてもらえないでいます。その寂しさを埋めてくれていたのが、ラーダンでした。
雑貨屋の友人からは、「知らない女と寝るような危険なとこに行くな。ばれたらあそこは放火される」と注意されます。「相手にするのは一人だけ」と答えるシャキーブ。
ラーダンも、手話で話せるシャキーブには心を開いている様子。
匿ってもらっているうちに、一緒に暮らしたい、子どもも欲しいというくらい、打ち解けていきます。シャキーブも若いラーダンからそう言われて、心の隙間が埋まっていく思いなのです。
赤い家のセットを燃やすことは言われたはずなのに、シャキーブは心ここにあらずで、聞きそびれていたのでした。 火をつける前に、家にいる者は出るように伝えたと言われますが、ラーダンは聞こえないのです。
けれども、売春宿のファルシードからは、ラーダンは売春宿に戻っている、お前は騙されたと言われます。さて、ラーダンは無事生きているのでしょうか・・・
(日本で公開されるかもしれないので、話はここまでで!)


◎Q&A
10月31日18時25分からの上映後

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登壇ゲスト:マーサ・ヘジャーズィ(俳優)
司会:石坂健治(東京国際映画祭「アジアの風」部門ディレクター/日本映画大学教授).
通訳: ショーレ・ゴルパリアンさん

石坂:2回目のQ&Aです。

マーサ:コンバンハ。 サラーム! ここにいられることがとても嬉しいです。1回目は、観客の皆さんと一緒に映画を観れて嬉しかったです。今日は一緒にみられませんでしたが、今こうして一緒にいるのが嬉しいです。
監督から先ほどメッセージをいただきました。「東京国際映画祭に行って、皆さんと一緒に映画を観たかったのですが、自分の選んだ道ではなく、イランから出ることができなかったのです」

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ホウマン・セイエディ監督 ©Houman Seyedi


石坂:臨場感のある作品でした。手話の役作りはどのようにされましたか? また、台本はどのように渡されたのでしょうか? 

マーサ:監督から自分のパートの台本しか最初は貰っていませんでした。セリフは書いてあって、手話とは思いませんでした。本読みも何度か監督とやりました。途中から監督が少しずつ役について説明してくれて、手話だとわかりました。撮影前に4カ月、トレーナーについて手話を学びました。やっとすべてのセリフを手話でできるようになりました。

石坂:全体像は、最初はわからなくて、だんだんわかって理解するという、監督の演出方法だったのですね。

マーサ:まさにそうです。自分とシャキープのやりとりの部分しか貰ってなくて、外の世界がどうなっているか全く知りませんでした。最後の方になって脚本をもらって全体がわかりました。


◆会場より
―(男性)素晴らしい映画をありがとうございます。男ならではの質問ですが、髭を生やしているシャキープと、髭のないシャキープ、どちらが好きですか? 私にとって髭を剃るのはとても大変なのです。

マーサ:(笑う)シャキープにとっては髭を剃るのが大変だっただけじゃなくて、髭を剃ってしまい、ヒトラーのような古いスタイルの髭を付けなくてはいけないので、大変な役でした。

―(男性)この映画は非道徳的なテーマを取り扱っていると思うのですが、演技をするに当たって気をつけたことや、監督と話し合って、こういう方向性にしたいと考えたことはありましたか?

マーサ:撮影に入る前に監督とたくさん話しました。アンネ・フランクというユダヤ人をイメージしてくださいと言われました。ラーダンがどういう背景や考えをもっているのか? なぜ今の自分の生活から逃げたいのかを話してくれました。役柄を理解した上で、撮影が始まりました。もう一つ、セットがすべて出来て、撮影を始める前に、監督は「5分下さい」と言って、もう一度、私のキャラクターの深いところを話してくれて、お陰で心構えができました。

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―(男性) ポスターは映画の印象を裏切るもので、もだえ苦しむ感じしか受けません。そういう映画ではないので、日本で公開するなら、イメージが悪いので変えた方がいいと監督に伝えてください。
主人公は、女性の金のブレスレットを見て、錯乱状態で最後の行動に出るに至ったのでしょうか? 
大きな疑問が残るのは、綺麗な聾唖の若い女性が、3人でも4人でも子供を産んでもいいと言ってましたが、あのような中年の男性と合わないです。監督はどういう意図で二人を組み合わせたのでしょうか?


マーサ:(また笑う) ポスターのことは必ず監督に伝えます。
シャキープは家が燃えているのを見て、彼女があそこで死んでいると信じていたのですが、ブレスレットが最後の留めになりました。それで、行動に出たのです。
シャキープとラーダンが似合うかどうかですが、彼女は今の泥沼から出たいと、最初はシャキープを頼ろうとしただけだったのですが、だんだん、彼の優しさに惚れました。顔や姿は関係ないのです。

石坂:時間が来てしまいました。最後に一言お願いします。

マーサ: 皆さんともっと話したかったのに、時間が来てしまい残念です。映画について、もっとお話ししたかったのですが、ご質問やコメントは興味深いものでした。日本で公開できましたら、またその時に私だけでなく、ほかのキャストも来てお話しできれば嬉しいです。

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★会場の男性たちからの質問は、マーサさんも苦笑するしかないものでしたが、マーサさん、上手に交わして答えていました。
1回目のQ&Aの時にも、「イランの人たちは、ヒトラーを知っていますか?という質問が出て呆れたのよ」と、ショーレさんより聞かされていたのでした。 もっと撮影現場のことなどを話したいとおっしゃっていたのでした。



報告:景山咲子



公式インタビュー
イランの風刺劇『第三次世界大戦』、ろうあ役のヒロインは4カ月かけ手話習得
https://2022.tiff-jp.net/news/ja/?p=60491



東京国際映画祭 トルコ映画『突然に』Q&A報告 (咲)

アジアの未来 『突然に』
原題:Aniden 英題:Suddenly 

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監督:メリサ・オネル
出演:デフネ・カヤラル、オネル・エルカン、シェリフ・エロル
2022年/トルコ/トルコ語/115分/カラー

*物語*
夫と一緒に30年ぶりにドイツのハンブルグからイスタンブルに帰ってきたレイハン。突然、嗅覚障害に襲われた彼女はショックを受け、海辺の昔暮らしていた町を訪れる。幼馴染の女性からムール貝を買うが、彼女はレイハンだと気が付かない。夫は、生のムール貝の匂いがよくて美味しいと言い、ハンブルグに帰りたくなくなりそうだという。
長い間、離れて暮らしていた母との確執は、なかなか解けない。レイハンは黙って母のもとを離れ、亡き祖母の遺した家に住み、ホテルで働き始める。そこで彼女は盲目の教師やホテルに長期滞在している人と知り合う。ようやく抑圧されていた気持ちを表に出せるようになる・・・

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イスタンブルの町がどんよりしていて、レイハンの気持ちを表しているようでした。
レイハンは足を引きずって歩いているのですが、その理由は、小さい頃のイスタンブルでの出来事にありました。かつて、アイススケートをしていたレイハン。てっきりアイススケートでの事故と思ったのですが違いました。

◆Q&A
10月26日(水)14:55からの上映後

登壇ゲスト:メリサ・オネル(監督/プロデューサー/脚本)、フェリデ・チチェキオウル(脚本)、メルイェム・ヤヴズ (撮影監督)
司会:石坂健治(東京国際映画祭「アジアの風」部門ディレクター/日本映画大学教授).

監督(メリサ・オネル):お招きくださり、ありがとうございます。チーム全員、興奮しています。トルコから遠く離れた地で、どのように受け取られたかを感じることができて嬉しいです。どのように心に届けることができるかを考えております。

脚本(フェリデ・チチェキオウル):日本にいながら、ホームベースから遠く離れた感じがしません。お互い議論し、互いを否定することもあれば違いを認めあうこともある形で映画を作りました。東京に来て、静かな形で皆様と繋がっている気がします。イスタンブルは賑やかでうるさい町です。ここ東京では静けさを感じて、ほっとしています。

撮影監督(メルイェム・ヤヴズ) :メルハバ。ここに来られて表現のしようがないほど嬉しく思っております。3年前に脚本を読んだ瞬間から、私の心に染み入るものがありました。一人の人間として撮影監督として携わることができて嬉しく思っております。

石坂:チームのほとんどが女性だそうですね。
(注:来日したのも女性3人ですが、女性の多い製作チームだったそうです。プロデューサーは産休で来られなかったとのこと。その他、アート・ディレクター、照明、助監督も女性)
『突然に』というタイトルは、どのような思を込めてつけたのですか?

監督:自分の人生を変えようと決心する時、計画を立てたわけでもなく、主人公は突然決心します。人生において、真実というのは、突然訪れるのではないかと思います。勇気のいることです。突然、ちゃんと生きようと決心します。このタイトルはどうだろうと相談しました。タイトルから重さを排除したかったのです。チームで話して、このタイトルでいいのではということになりました。


*会場から*
―(男性)美しくて、興味深い作品でした。音響にこだわられていました。環境音や生活音がとても気になりました。

監督:ありがとうございます。音響は映画の中でとても大切な部分だと考えて作りましたので、嬉しいコメントです。主人公がイスタンブルの町を歩きまわりながら、自分を探す物語です。私たちが懐かしく思うイスタンブルを描きたいと思いました。音を通してイスタンブルを知っていきます。イスタンブルに命を吹き込むにはビジュアルだけでなく音も大切だと思いました。感情を感じていただくのに音は大事です。ロケはトルコとドイツの両方で行いましたので、環境音も両方で録音する必要がありました。

―(女性)体験に一部重なるところがあって、映画を観ていい経験ができました。  
監督に伺います。主人公は事故にあって、ドイツとトルコに分かれて家族が暮らしています。トルコとドイツは関係が深いと思います。ドイツという場所、ドイツ語で吹き込んだ場面もありました。ドイツがこの作品にどのような効果を与えたのでしょうか?


監督:答えになるかどうかですが、レイハンは自分の記憶を嗅覚を通じて繋げようとします。嗅覚を失っていて、故郷を喪失したともいえます。自分の身体も失ってしまった感じなのです。ドイツが象徴するのは、自分を失ったほかの場所です。皆でドイツに行きましたが、母はドイツに父とレイハンを置いたまま帰りました。レイハンは、トルコに戻り、人生を取り戻そうとしますが、既に30年経っています。

脚本:映画には出てきませんが、皆で話し合ったことがあります。ドイツのような寒冷地にあるところでは匂いもあまりありません。イスタンブルから離れたレイハンは嗅覚を失ってしまいます。イスタンブルに戻って町と繋がろうとするのですが、うまくいきません。一度、故郷を去った者にとって、必ずしも故郷は待ってくれているところではありません。

―(男性)テーマになっている女性の心理は理解できているかどうか自信はないのですが、レイハンはどうなるのかはらはらしながら見ました。この物語は、いつ頃発想して、どれくらいの期間で書かれたのでしょうか? スケートのシーンが出てきたときに、スケートで傷害を起こしたのだと思ったのですが、そうではなかったことにも驚きました。

脚本:監督と3回目の仕事でした。共に旅をしている感じです。いろいろ探って、一歩ずつ共にストーリーを作っていきました。コロナの前でしたが、嗅覚を失うことを思いつきました。コープロデューサーにお会いしたら、急に嗅覚を失ったことがあるとお話しされました。そのころ、私がたまたま足を怪我をしていて、どこにも行けない状態でしたので、この物語を思いつきました。共に航海する形で作りました。 監督は映画を感じる人、私は言葉の人間で口数が多いです。

石坂:撮影監督としては、室内もあれば海辺もあります。撮影が大変だったと思うのですが、どんなところに気をつけられたのでしょうか?

撮影監督:シナリオを読んだ時に、ずいぶん旅することになると思いました。楽しいことで光栄でした。様々な音や色が出てきます。 ボートの場面から始まって一つの長い旅になると思いました。監督や撮影チームや俳優の皆さんと話し合うプロセスは素晴らしいものでした。レイハンが公園に行ったり、窓を開けたり、様々なドアを開けていく物語で、そのたびに自分も開けていく感じでした。いろいろなことがありました。音も重要でしたし、最後には嗅覚にたどりつきました。

報告:景山咲子


Q&A動画
https://youtu.be/eGNomSK2U24


◆公式インタビュー
「観ている人が、それまでずっと止めていた息を吐き出す表現ができればと」ーー第35回東京国際映画祭アジアの未来部門出品作品『突然に』メリサ・オネルイ監督、フェリデ・チチェキオウル(脚本)インタビュー
https://2022.tiff-jp.net/news/ja/?p=60542


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東京国際映画祭 『クローブとカーネーション』 Q&A報告 (咲) 

アジアの未来
『クローブとカーネーション』
原題:bir tutam karanfil  英題:Cloves & Carnations
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『葬送のカーネーション』のタイトルで公開されます!
2024年1月12日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBIS GARDEN CINEMA ほか全国順次公開
公式サイト:https://cloves-carnations.com/


監督:ベキル・ビュルビュル Bekir Bülbül
出演:シャム・ゼイダンŞam Zeydan (少女ハリメ)
   デミル・パルスジャンDemir Parscan (おじいさんムサ) 

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©FilmCode

冬の南東アナトリア。
太鼓の音と銃の音。小雪の舞う中、白い馬に赤いベールの花嫁が乗っている。
踊る人たち。料理が振舞われる。
ラジオからは、「今朝、難民が国境を越えようとして亡くなった」というニュースが流れている。
年老いた難民の老人ムサは孫娘ハリメを連れ、亡き妻の遺体の入った質素な棺桶を引きながら国境をめざしている。
質素な棺を荷台からおろすムサ。手伝ってくれた人に「シュクラン」とアラビア語でお礼をいう。
孫娘ハリメはトルコ語が出来て、肝心な話の時には通訳してくれる。
孫娘と二人で棺を引いて荒れた大地を行く。
なかなか乗せてくれる車はない・・・  言葉の通じない地で、手助けしてくれる人もいる。
トラクターに乗せてもらう。
棺はまずいといわれ、ハリメはモスクから段ボールを貰ってきておばあさんを入れる。
国境近くまでいくというトラックに乗せてもらう。
ハヴァという老婆。「人生は短いの。死は別世界に行くこと」とハリメに語る
グローブの絵が描かれた箱に入ったキャンディをもらう。
ムサ キャンディを嬉しそうに口にする。
グローブは歯の痛みを和らげるのよといわれる。
国境近くのチェックポイントで捕まり、牢屋に入れられてしまう。
「死体は国境を越えられない」と言われ、ムサはここで死体を埋葬すると断念する。
アラビア語の書かれた緑の布に覆われた棺に入れた遺体を埋葬する。
ハリメ、おばあさんの墓に赤いカーネーションを添える。
故郷に埋めてあげたいと鉄条網の向こうを眺めるムサ・・・・

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©FilmCode


『クローブとカーネーション』Q&A
2022年10月28日(金)15:00からの上映後

登壇ゲスト:ベキル・ビュルビュル(監督/脚本/編集)、ハリル・カルダス(プロデューサー)
司会:石坂健治(東京国際映画祭「アジアの風」部門ディレクター/日本映画大学教授).
通訳:野中恵子さん

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石坂:初上映を観客席でご覧になりました。

監督(ベキル・ビュルビュル):メルハバ。とてもワクワクして興奮しています。世界の一つの端からやってきて、映画を共有することができ、とても嬉しいです。4年前に祖父を亡くしたことや、新聞で読んだことをもとに、妻と一緒に発展させて映画にしました。私の祖父もいつも生まれ故郷に行って死にたいと思っていました。私の最初に作ったドキュメンタリー『ブルグルの水車』も、老人と死に関するものでした。私の父も自分の土地に行って死にたいと言っていました。そうした老人たちの心の中の不安や心配を取り上げて、ストーリーを作り上げました。

プロデューサー(ハリル・カルダス):今日はワールドプレミアの私たちの映画をご覧いただきありがとうございました。

石坂:文化的背景、政治的背景、言葉がトルコ語と地元の言葉が出てきますので、そのあたりを簡単に教えてください。

監督:私たちの国には難民が多くいます。私たちの地区にも大勢いて、難民から見た物語を考えました。新聞で読んだニュースももとにしています。亡くなった親族を故郷に連れ帰りたいと行く途中で捕まってしまった方もいました。なぜ人々は自分の国や土地に戻りたいのか、その努力をなぜするのだろうか。元々のところに戻るために私たちはあるのだろうかと考えて、難民をベースにした物語を考えました。

石坂:シリア難民でしょうか?

監督:そうですが、シリア難民だけでなく、今、私たちの国には、アフガニスタン、ウクライナ、ロシアなどたくさんの難民の方がいます。それを明らかに示そうとしたわけではありません。政治的な材料にしようとは思っていませんでした。世界中の難民について、他の国でも同じことがいえるということをテーマにしたいと思ったのです。

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©FilmCode


*会場から*
―(男性)ラストに近いシーンで、警察に捕まっている時、少女がミルクをもらいますが、飲まずに落としてしまいました。印象的だったのですが、あのシーンの意味は?

監督:ミルクと子供は、二つとも純粋さの象徴です。世界中どこでも同じです。難民になって警察に捕まってしまうという状況では、純粋さが失われてしまいます。

―(女性)お棺を見続ける映画を初めて観ました。ロードムービーというとキラキラして未来があるのに、どうなるのだろうとドキドキしました。監督として、これだけは持って帰ってほしいというメッセージがありましたら教えてください。

監督:内面のことを問いただすことを考えて作り上げた映画でした。旅というのは自分の精神と一つになっているものです。私たちは母体から生まれ子どもになり、成長して老人となり、やがて亡くなります。その旅路でもあります。自分たちが持っている身体というのは、運ばなければならない義務があります。これをロードムービーに結び付けました。

―(男性)とても役者の表現が素晴らしかったです。キャスティングと現場でどのような演出を心がけていたのか教えてください。

プロデューサー:キャスティングには長い時間をかけました。とても大変でした。撮影前に撮影地区に行き、シリア人の難民を見つけました。他にも、いろいろな人物を見つけました。少女役のシャム・ゼイダンは、あの地区に住んでいるシリア人です。小学校でトルコ語を学んでいます。長い間、接してみて、彼女の俳優性も見出しました。おじいさん役は、マイナス20度のところで演じることのできる人を探すのが大変でした。デミル・パルスジャンさんは70代で、彼の手振りや、ちょっとした表情が素晴らしかったので、彼なら出来ると信じて採用しました。

石坂:本作は出来上がったばかりですが、彼らは完成作品をまだ観ていないのでしょうか?

監督:はい、まだです。

石坂:観る機会があるといいですね。

監督:トルコでのプレミアの時に観ることができると思っています。

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報告:景山咲子



イスラーム映画祭8 (2023年開催)早くもラインナップ発表!

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早くも日程が決まり、ラインナップも発表されました。
私にとって、一番楽しみな映画祭です。
藤本高之さん、ありがとうございます!
継続は力なり

渋谷ユーロスペース 2023年2年18日(土)~24日(金)
名古屋シネマテーク 2023年3月25日(土)~ 31日(金)
神戸・元町映画館 2023年4月29日(土)~5月5日(金)

http://islamicff.com/index.html

上映作品:
劇場初公開 1本
日本初公開 3本
イスラーム映画祭的名画座セレクト 6本
映画祭アンコール 4本
の計14作品。

☆イスラーム映画祭主宰 藤本高之さんの言葉☆
今回は、2023年で1948年のイスラエル建国による“ナクバ(大災厄)”から75年を迎えるにあたり、あらためて「パレスチナ」を取り上げます。

また今年はフランス映画の特集上映が続いている流れを受け(便乗して)、イスラーム映画祭でもフランスの「マグリブ移民とその第二世代」をテーマにした小特集を組みます。

そして今回は“イスラーム映画祭的名画座セレクト”として、過去に国内で一般公開されながらも未ソフト化の作品をリバイバルする他、ソフト化はされていても劇場での上映権が切れている作品や、国内の他の映画祭で上映されたきり埋もれたままになっているレアものを権利を再取得したうえでお目にかけます。 

【イスラーム映画祭8上映作品①】
《ガッサーン・カナファーニー没後50年特別上映》

『太陽の男たち』原題:Al-Makhdu'un 英題:The Dupes
監督:タウフィーク・サーレフ / Tewfik Saleh
1972年 シリア 107分
言語:アラビア語
字幕:日本語、英語(with English Subtitles)
★劇場初公開

1972年にベイルートで爆殺されたパレスチナ難民の作家、ガッサーン・カナファーニー(1936-72)の代表作映画化にして、“アラブ映画史における最重要作”の1本。

ヨルダンからイラクのバスラにやって来た3人のパレスチナ難民。彼らは金を稼ぐため、同じ難民の男が運転する給水車の空のタンクに潜み、クウェートへの密入国に挑む。しかし、
太陽に熱されたタンク内にいられるのはほんの数分…。

原作との違いにパレスチナをめぐる70年代の状況も垣間見える歴史的名作。

これまでにアラブ文化協会の上映会などで、3回観ていますが、いずれもスクリーンが小さかったので、大きな画面で観られるのは嬉しいです。
金満クウェートの役人たちと、密入国するしかないパレスチナの人たちとの対比が強烈です。忘れられない一作。(咲)


【イスラーム映画祭8上映作品②】
『マリアムと犬ども』原題:Aala Kaf Ifrit 英題:Beauty and the Dogs
監督:カウサル・ビン・ハニーヤ / Kaouther Ben Hania
2017年 チュニジア=仏=スウェーデン=ノルウェー=レバノン他 100分
言語:アラビア語
字幕:日本語、英語(with English Subtitles)
★日本初公開

予告篇
https://youtu.be/LoWiB6Bj-v8

2021年に『皮膚を売った男』で日本に初めて紹介されたカウサル・ビン・ハニーヤ監督作。
“アラブの春”と呼ばれたチュニジア革命後の2012年に実際に起きた警察官による性暴行事件をモチーフにした作品。
元となった事件は、イスラム主義政党はじめ様々な政治勢力が乱立する民衆革命後の混乱期に起き、社会を揺るがせました。
しかし監督は本作を日本を含む世界に共通の問題として描いています。
※本作には性暴力を間接的に描いたシーンがあり、被害者が二次加害を受けるシーンも頻出いたします。 ご注意ください。


【イスラーム映画祭8上映作品③】
『陽の届かない場所で』原題:Au-Delà De L'ombre 英題:Upon the Shadow
監督:ナダー・マズニー・ハファイヤズ / Nada Mezni Hafaiedh
2017年 チュニジア=フランス 80分
言語:アラビア語
字幕:日本語、英語(with English Subtitles)
予告篇
https://youtu.be/qDZFvq1sYK0
★日本初公開

サウジアラビア生まれのチュニジア人、日本では初めて紹介されるナダー・マズニー・ハファイヤズ監督作。
人権活動家アミーナ・サブウィと、チュニジアの性的少数者コミュニティを描いたドキュメンタリー映画。
アミーナ・サブウィはウクライナ発祥のフェミニズム団体フェメンの元メンバー。
映画は、彼女が家族や地域から追い出されたゲイやトランスの人々と一つ屋根の下に暮らす様子を捉え、チュニジアのムスリム社会における性的マイノリティの苦悩を描きます。

*イスラーム映画祭7で上映した『ジハード・フォー・ラブ』の流れでラインアップした作品。


フランスのマグリブ移民とその第二世代をテーマにフランス映画の小特集

【イスラーム映画祭8上映作品④】
『ファーティマの詩(うた)』原題・英題:Fatima
2015年 フランス=カナダ 78分
監督:フィリップ・フォコン / Philippe Faucon
言語:フランス語、アラビア語
字幕:日本語、英語(with English Subtitles)
予告篇
https://www.youtube.com/watch?v=eHM9rSskaqw
★日本初公開

パリ同時多発テロから3ヵ月後の2016年セザール賞で最優秀作品賞を受賞した、フィリップ・フォコン監督作。
清掃の仕事をしながら2人の娘を育てるアルジェリア移民の女性とその娘たちの日常を通じ、フランス社会における移民の置かれた状況と希望を浮かび上がらせます。
欧州にイスラム過激主義の暴力が吹き荒れる中で、ムスリム移民の実直さと困難を描く本作が高く評価された事には大きな意義がありました。


【イスラーム映画祭8上映作品⑤】
『エグザイル 愛より強い旅』原題:Exils 英題:Exiles
監督:トニー・ガトリフ / Tony Gatlif
2005年 フランス103分
言語:フランス語、アラビア語、スペイン語
字幕:日本語、英語(with English Subtitles)

予告篇
https://youtu.be/PULCeco2lRQ

*2005年 劇場公開
シネジャ作品紹介『愛より強い旅』
ロマン・デュリス(フランス映画祭2022 オープニング作品『EIFFEL(原題)』主演)
ルブナ・アザバル(『ビバ!アルジェリア』)

フランス移民映画小特集2本目
*イスラーム映画祭的名画座セレクト①

日本でも人気のあるアルジェリア出身でロマのルーツも持つトニー・ガトリフ監督作。
ガトリフ監督の自伝的要素も強い本作は、ともにアルジェリアルーツのカップルがアイデンティティを求めてパリからアルジェを目指す物語。
フランス→スペイン→モロッコ→アルジェリアと続く旅をスーフィー音楽等を基にした、督自身による楽曲の数々が彩ります。
*国内未ソフト化です。

ビートのきいた刺激的なテクノ音楽、哀愁漂う中に力強さのあるフラメンコ、民族楽器とテクノを融合させて移民の心情を歌い上げるライ、そして、神との一体をはかるためのスーフィー(イスラーム神秘主義)音楽と、本作は音楽を巡る旅でもあります。 アルジェの町で、素肌を隠せと強要されて被っていたスカーフとコートを脱ぎ放ったナイマが、スーフィー音楽にあわせてトランス状態に陥っていくラストは圧巻。 ただし、本来のスーフィーの儀式に使用する三拍子系ではなく二拍子系リズムに変えてあり、監督のオリジナル。  (咲)


【イスラーム映画祭8上映作品⑥】
『キャラメル』原題:Sukkar Banat 英題:Caramel
監督:ナディーン・ラバキー / Nadine Labaki
2007年 フランス=レバノン96分
言語:アラビア語、フランス語
字幕:日本語のみ
予告篇
https://youtu.be/PvbHOhzJarU

*イスラーム映画祭的名画座セレクト② 
*2009年 劇場公開

2019年に『存在のない子供たち』http://cineja-film-report.seesaa.net/article/467923288.htmlがヒットしたナディーン・ラバキー監督の長篇デビュー作、ムスリムとキリスト教徒がともに暮らすベイルートのヘアサロンに集う、様々な愛の悩みやセクシュアリティを抱えた女性たちのドラマを美しい映像と音楽が彩ります。
レバノン内戦(1975〜91)をあえて題材から外し、中東映画は元よりアラブ女性のイメージを覆した本作はその登場自体が革命的なものでした。

なお、今回のリバイバルのため上映素材を新規作成するにあたり、公開当時に日本語翻訳をされた故・太田直子さんのご遺族の許諾を得て字幕を二次流用させていただきました。
お酒とタバコが大好きだったという太田さんの軽みとユーモアのある字幕も併せてお楽しみください。

アラビア語の原題『Sukkar Banatスッカル・バナート』は、女の子たちの砂糖の意味。スッカル・ナバート(氷砂糖)をもじったそうです。中東では砂糖と水とレモン汁を煮詰めてキャラメル状にしたもので無駄毛を処理する伝統があります。美容院を舞台にした物語で、この「キャラメル」が、重要な場面で使われています。詳細はこちらでどうぞ!(咲)
シネジャ作品紹介『キャラメル』 



【イスラーム映画祭8上映作品⑦】
『そこにとどまる人々』原題:Mayyel Ya Ghzayyel 英題:Those Who Remain
監督:エリアーン・ラヘブ / Eliane Raheb
2016年 レバノン=UAE 95分
言語:アラビア語
字幕:日本語、英語(with English Subtitles)
予告篇
https://vimeo.com/193056744

*イスラーム映画祭的名画座セレクト③

山形国際ドキュメンタリー映画祭の常連でもあるレバノンのエリアーン・ラヘブ監督作。
『キャラメル』など、“宗教のモザイク国家”と呼ばれるレバノンで作られた映画の背景を紐解くテクストとしても有益な作品です。
キリスト教徒のハイカルは、かつてはムスリムと隣同士で暮らしていた村でりんごや羊を育て、昔ながらの日常を送っている…。
シリア国境に近いレバノン北部の村に住む主人公が、長びく宗派間の諍いや、シリア危機によって村が変容しながらも、昔と変わらない生活を黙々と続ける姿に多くを考えさせられます。

*『ミゲルの戦争』(YIDFF2021)監督作品。


【イスラーム映画祭8上映作品⑧】
『キャプテン アブ・ラエド』原題・英題:Captain Abu Raed
監督:アミン・マルタカ / Amin Matalqa
2007年 ヨルダン=アメリカ 102分
言語:アラビア語
字幕:日本語、英語(with English Subtitles)
予告篇
https://youtu.be/sNMNp8-VhMg

*イスラーム映画祭的名画座セレクト④

日本ではSKIPシティ国際Dシネマ映画祭とNHKアジア・フィルム・フェスティバルで上映された他、BSでわずかながら放送されただけの知る人ぞ知るアラブ映画の良作。
イスラーム映画祭初のヨルダン映画。

妻を亡くして国際空港の清掃員をしながら孤独に生きていた主人公が、ひょんなきっかけで近所の子どもたちにパイロットと間違われる事から始まる物語。
少量で足るを知り、誰とも等しく接し、弱い者には手を差し伸べる。
実直な主人公の生き様と首都アンマンの風情が胸に沁み入る珠玉のドラマです。

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2008で鑑賞し、印象深い1作。
老人と子供たちの触れ合いを軸に、家庭内暴力問題も折り込んだ普遍的な物語。アミン・マタルカ監督が、テロや戦争のイメージを払拭したいと語られたのですが、アンマンの町の魅力もたっぷりと描かれていました。(咲)

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アミン・マルタカ監督 SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2008の折に来日(撮影:景山咲子)


【イスラーム映画祭8上映作品⑨】
『午後の五時』原題:Panj É Asr 英題:At Five in the Afternoon
監督:サミラ・マフマルバフ / Samira Makhmalbaf
2003年 イラン=フランス101分
言語:ダリ語、英語
字幕:日本語、英語(with English Subtitles)
予告篇
https://vimeo.com/140703409

*イスラーム映画祭的名画座セレクト⑤

今年のイスラーム映画祭7で上映した『子供の情景』のハナ・マフマルバフ監督の姉、サミラ・マフマルバフ監督2003年の作品。
第一次タリバン政権崩壊後のアフガニスタンで撮影され、日本では2004年に劇場公開された。
映画は、将来アフガニスタンの大統領になりたいと思っている女性を主人公に、タリバン政権崩壊後の現地の混乱と人々の様子を描きます。
20年前の作品にもかかわらず、まるで今のアフガニスタン情勢を予見していたかのような内容に驚くばかり。本作も国内未ソフト化です。
再びアフガン音楽ライブも行います。

2004年に姉妹そろって来日した時の懐かしいレポートです。
『午後の5時』についても詳しく書いています。
今、サミラとハナは、どうしているのでしょう・・・(咲)

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サミラ・マフマルバフ監督&ハナ・マフマルバフ監督来日記者会見
サミラ・マフマルバフ監督トークショー&『午後の五時』上映会

http://www.cinemajournal.net/special/2004/samira_hana/index.html



【イスラーム映画祭8上映作品⑩】
『わたしのバンドゥビ』原題:Bandhobi
監督:シン・ドンイル / Dong-il Shin
2009年 韓国 107分
言語:韓国語、ベンガル語
字幕:日本語のみ(without English Subtitles)

予告篇
https://youtu.be/PcL2n1n6mgw

*イスラーム映画祭的名画座セレクト⑥

かつて『ソウルのバングラデシュ人』の邦題で映画祭上映され、その後『僕たちはバンドゥビ』の題でソフト化されたものの現在は廃盤。それを新訳・再改題してリバイバルいたします。
バンドゥビとは、ベンガル語で“(女性の)友だち”。
一人の女子高生とバングラデシュからのムスリム移民の交流のドラマが、日本にも通じる格差や移民をめぐる問題を描きます。
深刻なテーマを扱いつつも「広い世界に目を向けよう」という若者へのメッセージも込められた、こちらも知る人ぞ知る韓国映画の良作です。

【真!韓国映画祭2011】で上映された折の紹介文(咲)
17歳の女子高生ミンソ。シングルマザーの母親はカラオケ店の経営と恋人の世話で忙しくミンソのことをかまってくれない。夏休み、ミンソは英語塾に通おうとアルバイトを始めるが、なかなか資金が貯まらない。そんなある日、バスで隣の席に座ったバングラデシュから出稼ぎに来ているカリムのポケットからこぼれ落ちた財布を持ち逃げする。気づいて追いかけてきた彼が警察に突き出すというが、ミンソは願いを一つ聞くからチャラにしてくれと提案する。カリムは、前職場の社長宅に1年分の未払い給料を請求しに一緒に行ってくれと頼む・・・・

【韓国映画ショーケース2009】で『バンドゥビ』という原題で上映されましたが、バンドゥビとはベンガル語で友達のこと。ミンソとカリムはこんな風に出会ったけれど、だんだんと打ち解けていきます。ミンソとカリムの人種、性別、宗教の違いを超えての友情が爽やか。カリムと同じバングラデシュから出稼ぎに来ている人たちがお互い支えあって暮らしている姿も微笑ましい。一方、ミンソが英語塾の白人教師にカリムを紹介したときのカリムを見下げたような態度に、ミンソはふっと疑問を持ちます。母親の恋人も、「あの男と付き合うのは危険では?」と偏見丸出し。また、日本でもよく問題になる不法滞在の外国人に対する経営者の不当な扱いや出入国管理局の容赦ない態度は、韓国でも同じだなと思いました。カリムの語る「友達を笑わせることのできる者は天国へ行ける」というイスラームの教えに、共生のヒントがありそうです。(咲)




【イスラーム映画祭8アンコール①】
『私たちはどこに行くの?』 原題:Maintenant On Va Où? 英題:Where Do We Go Now?
監督:ナディーン・ラバキー
2011年 フランス=レバノン他 102分
言語:アラビア語、ロシア語、英語
字幕:日本語、英語(with English subtitles)
予告篇
https://www.youtube.com/watch?v=-Te9c2jReOg

『キャラメル』のリバイバルに合わせ、日本では劇場一般公開されなかったナディーン・ラバキー監督の長篇第2作、『私たちはどこに行くの?』を再び上映します。
本作もまた、『キャラメル』とはひと味違ったパワフルで魅力的な女性たちのドラマです。
ラバキー監督のこの2本を一度に観られるまたとない機会をぜひ。
★イスラーム映画祭2&5で上映


【イスラーム映画祭8アンコール②】
『長い旅』 原題:Le Grand Voyage 英題:The Great Journey
監督:イスマエル・フェルーキ / Ismaël Ferroukhi
2004年 フランス=モロッコ他108分
言語:フランス語、アラビア語他
字幕:日本語、英語(with English subtitles)
予告篇 https://youtu.be/3-22cObhUgQ
★イスラーム映画祭2015&6で上映

『ファーティマの詩(うた)』『エグザイル 愛より強い旅』に続くフランス“移民”映画小特集のもう1本として、『長い旅』を再び上映します。
フランスからサウジアラビアまで7ヵ国をまたぐ長大なロードムービーにして、本作はイスラーム最大の聖地マッカでの撮影が許された史上初めての長篇劇映画です。 お観逃しなく。


【イスラーム映画祭8アンコール③】
『ソフィアの願い』 原題・英題:Sofia
監督:マルヤム・ビンムバーラク / Meryem Benm'Barek
2018年 フランス=カタール=ベルギー=モロッコ 85分
言語:フランス語、アラビア語
字幕:日本語、英語(with English subtitles)
予告篇 https://youtu.be/BBdWdhyg0RE
★イスラーム映画祭7で上映
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/485878168.html

前回の7で最も物議を醸した、カウサル・ビン・ハニーヤ監督と並び今にマグリブを代表する監督となるに違いない、マルヤム・ビンムバーラク監督の『ソフィアの願い』を再び上映します。
ひねりの利いた脚本によって、ジェンダーや家父長制に覆い隠されたモロッコの社会格差を炙り出す意欲作です。


【イスラーム映画祭8アンコール④】
『ガザを飛ぶブタ』 原題:Le Cochon De Gaza 英題:When Pigs Have Wings
監督:シルヴァン・エスティバル / Sylvain Estibal
2010年 フランス=ドイツ=ベルギー 99分
言語:アラビア語、ヘブライ語、英語
字幕:日本語のみ
予告篇
https://youtu.be/vkzjPGKqEY0
★イスラーム映画祭2015で上映

『太陽の男たち』の劇場初公開に合わせ、2015年の映画祭初回に上映した『ガザを飛ぶブタ』を再び上映します。 (名古屋と神戸では初公開)
パレスチナ難民をテーマに重く描いた50年前のモノクロの名画と、ポップに描いた現代のファンタジーコメディの競演はかなりレアです。

2011年の第24回東京国際映画祭で観客賞を受賞した作品。
『ガザを飛ぶブタ』のタイトルだけで惹かれ、観てさらに気に入った作品でした。
パレスチナ人の猟師がイスラーム教徒にとって不浄なブタを釣り上げてしまい困惑していたら、入植地にいるユダヤ人がブタを有効利用していると聞きつけて売り込みにいくという物語。ユダヤでもブタは不浄なもの。どう利用しているの?と、その発想だけで可笑しい。『迷子の警察音楽隊』で実直な音楽隊長が印象的だったサッソン・ガーベイが、ブタに羊の毛皮をかぶせて歩く姿がなんとも可愛いです。パレスチナ人の家の屋上は、イスラエル兵の見張り台に貸していて、居間でテレビドラマを観ているパレスチナ人の奥さんの脇にイスラエル兵が立って一緒に楽しむ場面もあって微笑ましいです。
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シルヴァン・エスティバル監督と主演女優ミリアム・テカイアさん。 (撮影:景山咲子)
ミリアムさんはチュニジア出身。ユダヤ人役ですが、実はムスリマ。監督とはプライベートでもパートナー。とてもラブリーなカップルでした。




東京フィルメックス 鑑賞作品短評です (咲)

東京フィルメックスの行動記録を書くのがすっかり遅くなりました。
東京国際映画祭と重複・連続しての開催、やっぱりしんどかったです・・・
実際、集客率にも響いたと感じました。


10月29日(土)
☆14:50 - 16:55 東京フィルメックス 開会式+ 『ノー・ベアーズ』(パナヒ監督/イラン)
トルコ・イスタンブルを舞台に、ヨーロッパに出国を試みるイラン人夫婦を描いた作品を、トルコ国境に近い村に滞在して、リモートで指示を出すパナヒ監督。自由を求める人たちの姿が、この7月に収監されてしまったパナヒ監督の思いに重なりました。
(本作については、公開が決まっていますので、公開前に詳しく紹介したいと思います。)


11月2日(水)
フィルメックスを優先して、東京国際映画祭クロージングの取材は暁さんにお任せ。
イラン映画が2本とも受賞したので、クロージングの取材に行きたかったです・・・
(同時期開催がうらめしい・・・と、しつこい?)

★12:15 - 14:07『地中海熱』 ☆学生審査員賞
監督:マハ・ハジ
パレスチナ、ドイツ、フランス、キプロス、カタール / 2022 / 108分

上映前にマハ・ハジ監督のビデオメッセージ。(女性監督でした!)

イスラエルのハイファで暮らすパレスチナ人のワリード。小説家を目指して、銀行を辞め家にいる。娘ヌールと息子シャムスの学校への送り迎えはワリードの役目。ある日、学校からシャムスが腹痛を訴えていると呼び出される。病院の女医から「地中海熱」だと診断される。隣に越してきた男ジャラールと出会いは悪かったが、いつしか親しい関係になる・・・
シャムスが毎週火曜日に具合が悪くなると娘から聞かされ、ワリードが息子に問うと、火曜日の地理の先生が、エルサレムはイスラエルの首都だというので、パレスチナの首都だと言い返したところ笑われたというのです。「地理も歴史もパパが先生に教えてやる」といきまくワリード・・・

カンヌ映画祭「ある視点」部門でプレミア上映。最優秀脚本賞受賞。


★15:10 - 16:55『ダム』 ☆スペシャル・メンション
監督:アリ・チェリ
フランス、スーダン、レバノン、ドイツ、セルビア、カタール / 2022 / 80分/
ナイル川のダムのほとりの村で、泥と水でレンガを作る男。夜になると、沙漠で不思議な泥の建造物を作っている・・・。
30年近く独裁体制を敷いてきたオマル・アル=バシール大統領に対する国民の抗議運動が盛んになった2019年頃が舞台。
主人公の眼力が鋭く、ちょっと不思議な物語でした。
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アリ・チェリ監督

★18:00 - 20:42『Next Sohee(英題)』 ☆審査員特別賞
監督:チョン・ジュリ
韓国 / 2022 / 138分 / 配給:株式会社ライツキューブ

女子高生のソヒは、学校の推薦でコールセンターの実習生として働き始めるが、自殺してしまう。労働環境や、推薦した学校にも問題があったのではと刑事が調べ始める・・・
少女が自殺した後、ペ・ドゥナ演じる刑事が登場。ちょっとぶっきらぼうだけど、少女の気持ちに寄り添おうとする姿がよかったです。
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上映後のQ&Aにチョン・ジュリ監督が登壇。ペ・ドゥナに演じてほしいと願いながら脚本を書いたと明かしました。
カンヌ映画祭批評家週間クロージング上映作品。


11月3日(木・祝)
★10:15 - 13:07『石門』
監督:ホアン・ジー&大塚竜治
日本 / 2022 / 148分/

20歳のリンは、彼から学費を出してもらってフライトアテンダントの学校に通っていたが、予期せず妊娠してしまう。子供を持つことも中絶も望まなかったリンは、診療所で死産の医療訴訟に巻き込まれている両親を助けるために、自分の赤ん坊を提供することにする・・・
ヴェネチア映画祭ヴェニス・デイズ部門でワールドプレミア上映。
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ホアン・ジー監督&大塚竜治監督

両親役は、ホワン・ジーさんのほんとのご両親。家族ぐるみで作られた映画です。今回は、都会が舞台で、前作とはまた違った雰囲気の中で女性の思いが語られていて、とても心に沁みました。

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『フーリッシュ・バード』(2017年)がアジア・フォーカス福岡映画祭で上映された折に、サイン会のテーブルの端っこでお絵かきしていた小さなお嬢ちゃんが、かなり成長されました。Q&Aで、ホアン・ジーさんが、娘になぜ産んだかと聞かれ、その答えを映画にしたと語り、舞台の裾に娘の千尋さんが一瞬登場しました。カメラが間に合わず、その姿を撮ることができなかったのですが、上映後、ロビーで大塚さんと千尋さんのツーショットを撮ることができました。5年ぶりの再会でした。



★14:10 - 17:09『同じ下着を着るふたりの女(原題)』
監督:キム・セイン ( KIM Se-in )
韓国 / 2021 / 140分 / 配給:Foggy
2021年10月に初上映された釜山映画祭でニューカレンツ賞を受賞。

シングルマザーの母親スギョンは、娘イジョンにいつも高圧的な態度だ。温和なイジョンは口では反発しないが、恨みが溜まっている・・・
母スギョンは、これでもかという位、暴力的な言葉を娘に浴びせます。演じた女優さん、凄い!
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キム・セイン監督の長編デビュー作。
上映後、キム・セイン監督、イジョンの友人役チョン・ボラムさん、撮影監督のムン・ミョンファンさんが登壇し、Q&Aが行われました。


11月4日(金)
★10:10 - 12:00『自叙伝』 ☆最優秀作品賞
監督:マクバル・ムバラク
インドネシア、フランス、シンガポール、ポーランド、フィリピン、ドイツ、カタール / 2022 / 116分
ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映。国際映画批評家連盟賞受賞。

1990年代の軍事独裁体制下のインドネシア。
18歳の青年ラキブは、刑務所に入っている父に代わって、邸宅の管理をしている。主の元将軍プルナが突然帰ってくる。プルナは地元の首長選挙に立候補し、ラキブは選挙運動を手伝うことになる・・・
独裁体制下の張りつめた空気感にぞくぞくしました。


★13:00 - 14:56『ホテル』
監督:ワン・シャオシュアイ
香港 / 2022 / 112分
コロナの感染が始まった2020年の春。タイ、チェンマイのホテルに足止めされた宿泊客たち。ソヴァは20歳の誕生日をこのホテルで迎えるべく母と共に来ていた。外出を禁じられ、中庭のプールで泳いでいたソヴァは、中年男性と言葉を交わすようになる・・・

『在りし日の歌』のワン・シャオシュアイ監督が実際に2020年の旧正月を過ごしたホテルを舞台に描いた人間模様。
トロント映画祭でワールドプレミア上映。


★15:50 - 17:50『ソウルに帰る』☆審査員特別賞
監督:ダヴィ・シュー
ドイツ、フランス、ベルギー、カタール / 2022 / 116分 /
韓国で生まれ、フランスで養父母に育てられた25歳のフレディ。彼女は初めて韓国に降り立ち、実の両親を探し始める・・・
カンヌ映画祭「ある視点」部門で上映


★18:50 - 20:43『アーノルドは模範生』
監督:ソラヨス・プラパパン
タイ、シンガポール、フランス、オランダ、フィリピン / 2022
国際数学オリンピックでメダルを獲得し、学校より「模範生」の表彰を受けたアーノルド。ある日、彼は大学入試で学生のカンニングを助ける地下ビジネスに加担してしまう。
ソラヨス・プラパパンの長編デビュー作。
ロカルノ映画祭新進監督コンペティション部門でワールドプレミア上映
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上映後にソラヨス・プラパパン監督が登壇。Q&Aが行われました。
主人公アーノルド役は、タイ語と英語を流暢に話せることが条件で、キャスティングは難航。やっと見つけたのは演技経験のない青年。ヌーボーとした雰囲気が面白いアーノルドだったのですが、演技の勉強はするなと指示して撮影に臨んだそうです。

*****

コンペティション9作品のうち、観客賞を受賞した日本映画『遠いところ』を除く8作品を観ることができました。ほぼ納得の受賞結果でした。『石門』にも賞が欲しかったです。