至高の奉仕 ★インディアンムービーウィーク2022リターンズ

至高の奉仕  原題:Aramm  原語題:அறம்
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©KJR Studios

★インディアンムービーウィーク2022リターンズにて日本初上映。

監督:ゴーピ・ナイナール
出演:ナヤンターラ(『ビギル 勝利のホイッスル』『ジョンとレジナの物語』『俺だって極道さ』)、ラーマチャンドラ・ドゥライラージ(『ジガルタンダ』)、スヌ・ラクシュミ、キッティ
音楽:ジブラーン
2017年 / タミル語/ 120分

タミルナードゥ州北部。この地域では慢性的に水不足が続いているが、給水車が向かうのは、ホテルや高層マンション。僻地の村に住む被差別階級の人々のもとに水は届かず抗議していると聞いて、行政長官の女性マディダヴァニが村に向かう。抗議活動で道を塞ぐ人々に、「通学や病院に行く人もいるので解散して通してあげて」と諭す行政長官に、「水があれば私だって子どもを学校に行かせたい」「水不足で乾いて死んでいく」「地下水くみ上げで水不足に」と、口々に訴える村人たち。
そんな折、プレンドラとスマティ夫婦の4歳になる娘ダンシカの姿が見えなくなる。井戸掘削を試みるも水が出なくて、そのまま放置されていた細い穴に落ちているのが見つかる。大人が入ることはできない。縄にくくったスマホを穴に下ろし、深さ11メートルのところにいるとわかる。ダンシカの映像も声も届くが、だんだん意識が朦朧としてくるのもわかる。救急車も消防車もなかなか到着しない。村人やマスコミが周りで騒ぎ立てる。下したロープにつかまり、ダンシカは必死で途中まで上がるが、力尽きて28メートルのところまで落ちてしまう。地区の政治家からは、「賠償金を渡せば遺族は子供の死は忘れる」との暴言も吐かれる。行政長官としては、なんとか助けたい・・・

物語は、女性の行政長官マディダヴァニが、上司に辞任したいと申し出たのを考え直すように言われるところから始まります。マディダヴァニは、掘削した穴を塞がないで放置した県議バーランを逮捕させたことで、問題になっていることがだんだんわかります。そのことを大臣に話してとりなしてもらえというのが、どうやら上司の意向。
マディダヴァニは、一生懸命勉強して、試験に受かって、奉仕の夢を持って行政長官の座に着任したのに、政治家に振り回されて市民のために働けないことを嘆くのです。
「民主主義は政府機構でなく、同胞である市民に敬意を払う姿勢である」という憲法起草者アンベードカルの言葉をマディダヴァニは引用します。世の中、このような考えの官僚ばかりだったら・・・と思ってしまいます。いえ、そも、政治家も市民のことを考えるべき。
マディダヴァニは行政長官になってみて、男たちの間でありのままの女でいるのが難しいことも悟ります。男社会にはびこった権力主義や拝金主義を感じます。

冒頭、村からほど近い海辺で、人工衛星ロケット打ち上げ準備が進んでいることが報じられます。女児が穴に落ちた事故が起こって、テレビの討論番組で、都市と村の差についてや、宇宙開発を進める一方で、インドでは水資源調査がまともに行われていないことが語られます。井戸掘削をして、水が出なかった穴が塞がれていないことは多々あって、これまでに400人近い子どもが穴に落ちて亡くなったとのこと。映画の最後に、新聞記事やニュース映像が次々出てきて、悲しくなりました。蓋をすれば済む話なのに、それすら出来ないとは、なんと自分勝手なのでしょう・・・ 
穴に落ちたダンシカは果たして助かるのかとハラハラしながらも、権力者の身勝手さに、憤慨し、どこの社会でも起こり得ることと思いました。(咲)


☆行政長官を演じた主演のナヤンターラについて:
1984年生まれ。両親はケーララ人キリスト教徒。モデルを経て俳優となる。2003年に映画デビューし、南インドのマラヤーラム語、タミル語、テルグ語、カンナダ語作品に出演。「レディ・スーパスター」とも呼ばれ、南インド映画界のトップ女性俳優のひとり。インディアンムービーウィークでは、出演作品『永遠の絆』『まばたかない瞳 バンガロール連続誘拐殺人』『俺だって極道さ』『ジョンとレジナの物語』『ビギル 勝利のホイッスル』が紹介されています。

※行政長官について
州政府から県長官(District Magistrate または District Collector)が任命され、県内自治体間で紛争が発生した際の調整等を担当する。県長官は当該県における州政府の代表者として、全ての行政分野について州政府が有する決定権限等を単独で行使できる。インドの地方行政における枢要なポストとして、通常、インド行政職(IAS)の上級官僚が配置される。〟
(出典:インドの地方自治/ 財団法人自治体国際化協会 2007年10月発行 )


『至高の奉仕』作品トリヴィア/ インディアンムービーウィーク2022
https://note.com/india_film/n/n33350031d8dc
*インディアンムービーウィーク主催のSPACEBOXさんによる詳細解説です。



インディアンムービーウィーク2022リターンズ
開催日程:2022年9月9日(金)〜 10月6日(木)
上映劇場:東京:キネカ大森
チケット料金:1,900円(税込)均一
主催:SPACEBOX
公式サイト:https://imwjapan.com/
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/490900805.html