世界の秀作アニメーション 2022 秋編

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2022年9月13日(火)~9月25日(日)
会場:東京都写真美術館ホール
公式サイト:https://www.riskit.jp/worldanimation

世界の秀作アニメーションを一堂に集めた映画祭「世界の秀作アニメーション 2022 秋編」が開催されます。
紛争下の悲惨さを描いた『FLEE フリー』、『アンネ・フランクと旅する日記』など、今見るべき作品がセレクトされています。
また、3000を超える企業ロゴが登場するアニメでアカデミー賞短編アニメーション賞受賞したことで知られるフランスの制作会社オトードミニットを特集。その『LOGORAMA』をはじめ、一昨年この世を去ったオランダのアーティストROSTOの遺作『THEE WRECKERS』、新作『Unicorn Wars』の公開が待たれるスペインの鬼才アルベルト・バスケスの短編集などの限定公開もラインナップされています。


◆上映作品◆

A『浜辺のルイーズ』
B『FLEE フリー』
C『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』
D『アンネ・フランクと旅する日記』
E『整形水』
F『明るいほうへ』
G『雄獅少年 少年とそらを舞う獅子』
H『白蛇:縁起』
I 『カラミティ』
J『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』
K『ホフマニアダ ホフマンの物語』
L『マロナの幻想的な物語り』
M『ミューン 月の守護者の伝説』
N★ オトードミニット特集1
→アルベルト・バスケス特集
『Sangre de Unicornio』『DECORADO』『Homeless Home』
→Autour de minuit短編集
 『Bavure』『Ghost Cell』『Empty Places』『LOGORAMA』
O★ オトードミニット特集2 ROSTO追悼
 『THEE WRECKERS』+『Evrything is Different,nothing has changed』
★は限定・先行公開

至高の奉仕 ★インディアンムービーウィーク2022リターンズ

至高の奉仕  原題:Aramm  原語題:அறம்
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©KJR Studios

★インディアンムービーウィーク2022リターンズにて日本初上映。

監督:ゴーピ・ナイナール
出演:ナヤンターラ(『ビギル 勝利のホイッスル』『ジョンとレジナの物語』『俺だって極道さ』)、ラーマチャンドラ・ドゥライラージ(『ジガルタンダ』)、スヌ・ラクシュミ、キッティ
音楽:ジブラーン
2017年 / タミル語/ 120分

タミルナードゥ州北部。この地域では慢性的に水不足が続いているが、給水車が向かうのは、ホテルや高層マンション。僻地の村に住む被差別階級の人々のもとに水は届かず抗議していると聞いて、行政長官の女性マディダヴァニが村に向かう。抗議活動で道を塞ぐ人々に、「通学や病院に行く人もいるので解散して通してあげて」と諭す行政長官に、「水があれば私だって子どもを学校に行かせたい」「水不足で乾いて死んでいく」「地下水くみ上げで水不足に」と、口々に訴える村人たち。
そんな折、プレンドラとスマティ夫婦の4歳になる娘ダンシカの姿が見えなくなる。井戸掘削を試みるも水が出なくて、そのまま放置されていた細い穴に落ちているのが見つかる。大人が入ることはできない。縄にくくったスマホを穴に下ろし、深さ11メートルのところにいるとわかる。ダンシカの映像も声も届くが、だんだん意識が朦朧としてくるのもわかる。救急車も消防車もなかなか到着しない。村人やマスコミが周りで騒ぎ立てる。下したロープにつかまり、ダンシカは必死で途中まで上がるが、力尽きて28メートルのところまで落ちてしまう。地区の政治家からは、「賠償金を渡せば遺族は子供の死は忘れる」との暴言も吐かれる。行政長官としては、なんとか助けたい・・・

物語は、女性の行政長官マディダヴァニが、上司に辞任したいと申し出たのを考え直すように言われるところから始まります。マディダヴァニは、掘削した穴を塞がないで放置した県議バーランを逮捕させたことで、問題になっていることがだんだんわかります。そのことを大臣に話してとりなしてもらえというのが、どうやら上司の意向。
マディダヴァニは、一生懸命勉強して、試験に受かって、奉仕の夢を持って行政長官の座に着任したのに、政治家に振り回されて市民のために働けないことを嘆くのです。
「民主主義は政府機構でなく、同胞である市民に敬意を払う姿勢である」という憲法起草者アンベードカルの言葉をマディダヴァニは引用します。世の中、このような考えの官僚ばかりだったら・・・と思ってしまいます。いえ、そも、政治家も市民のことを考えるべき。
マディダヴァニは行政長官になってみて、男たちの間でありのままの女でいるのが難しいことも悟ります。男社会にはびこった権力主義や拝金主義を感じます。

冒頭、村からほど近い海辺で、人工衛星ロケット打ち上げ準備が進んでいることが報じられます。女児が穴に落ちた事故が起こって、テレビの討論番組で、都市と村の差についてや、宇宙開発を進める一方で、インドでは水資源調査がまともに行われていないことが語られます。井戸掘削をして、水が出なかった穴が塞がれていないことは多々あって、これまでに400人近い子どもが穴に落ちて亡くなったとのこと。映画の最後に、新聞記事やニュース映像が次々出てきて、悲しくなりました。蓋をすれば済む話なのに、それすら出来ないとは、なんと自分勝手なのでしょう・・・ 
穴に落ちたダンシカは果たして助かるのかとハラハラしながらも、権力者の身勝手さに、憤慨し、どこの社会でも起こり得ることと思いました。(咲)


☆行政長官を演じた主演のナヤンターラについて:
1984年生まれ。両親はケーララ人キリスト教徒。モデルを経て俳優となる。2003年に映画デビューし、南インドのマラヤーラム語、タミル語、テルグ語、カンナダ語作品に出演。「レディ・スーパスター」とも呼ばれ、南インド映画界のトップ女性俳優のひとり。インディアンムービーウィークでは、出演作品『永遠の絆』『まばたかない瞳 バンガロール連続誘拐殺人』『俺だって極道さ』『ジョンとレジナの物語』『ビギル 勝利のホイッスル』が紹介されています。

※行政長官について
州政府から県長官(District Magistrate または District Collector)が任命され、県内自治体間で紛争が発生した際の調整等を担当する。県長官は当該県における州政府の代表者として、全ての行政分野について州政府が有する決定権限等を単独で行使できる。インドの地方行政における枢要なポストとして、通常、インド行政職(IAS)の上級官僚が配置される。〟
(出典:インドの地方自治/ 財団法人自治体国際化協会 2007年10月発行 )


『至高の奉仕』作品トリヴィア/ インディアンムービーウィーク2022
https://note.com/india_film/n/n33350031d8dc
*インディアンムービーウィーク主催のSPACEBOXさんによる詳細解説です。



インディアンムービーウィーク2022リターンズ
開催日程:2022年9月9日(金)〜 10月6日(木)
上映劇場:東京:キネカ大森
チケット料金:1,900円(税込)均一
主催:SPACEBOX
公式サイト:https://imwjapan.com/
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/490900805.html



「Asian Film Joint 2022|場に宿るもの」@福岡

アジアフォーカス・福岡国際映画祭が2020年の第30回で終了してしまい、寂しく思っていましたら、昨年2021年、「Asian Film Joint」というプロジェクトが発足していました。
映画を通じて福岡とアジアの関わりを継続・発展させていくことを目的としたもの。特にアジアフォーカス・福岡国際映画祭が30年にわたって育んだ「アジア映画人たちとのネットワーク」と「フィルムアーカイヴに収蔵されたアジアの名作映画」を今後も福岡の映画資産として活用し続けられるよう、映画の上映企画やフォーラムを実施するとのことで、また福岡に行くきっかけになりそうで嬉しいです。


『Asian Film Joint 2022|場に宿るもの』

会期:2022年10月21日(金)~29日(土)
会場:福岡市総合図書館 映像ホール・シネラ(福岡市早良区百道浜3-7-1)
観覧料:1,000円(1回券)、4,500円(フリーパス券)
主催: Asian Film Joint 2022実行委員会(三声舎・LOVE FM)
協力:福岡市総合図書館、クリエイティブ福岡推進協議会
公式サイト:http://asianfilmjoint.com/ 


プログラム①〈風景〉に宿るもの|飯岡幸子
『ヒノサト』Hinosato
(2002|日本|43分)監督:飯岡幸子
『春原さんのうた』Haruhara-san’s Recorder
(2021|日本|120分)監督:杉田協士
10/23(日)15:00(上映終了後トーク実施予定)、10/26(水)18:30


プログラム② 王国(あるいはその家について)|草野なつか
『王国(あるいはその家について)』Domains 
(2018|日本|150分)監督:草野なつか
10/22(土)18:00(上映終了後トーク実施予定)、10/28(金)15:00


プログラム③ 都市開発と映画|タイ
《日本初公開》『ココナッツの見える部屋から』 A Room with a Coconut View
(2018|タイ|29分)監督:トゥンラポップ・セーンジャルーン
《日本初公開》『スカラ座』Scala 
(2022|タイ|65分)監督:アナンチャ・ティタナット
10/21(金)18:30、10/27(木)15:00


プログラム④ 都市開発と映画|シンガポール
《日本初公開》『セントーサ、地球最後の日』 A Man Trembles 
(2021|シンガポール|23分)監督:マーク・チュア、ラム・リーシュエン
《日本初公開》『{鳥のうた}緑のかげ』
{if your bait can sing the wild one will come} Like Shadows Through Leaves 
(2021|シンガポール・フィンランド|28分)監督:ルーシー・デイヴィス
《九州初上映》『チョンバル・ソシアル・クラブ』Tiong Bahru Social Club
(2020|シンガポール|88分)監督:タン・ビーティアム
10/22(土) 15:00 、10/28(金) 18:30


プログラム⑤ 関係しなおし | グエン・チン・ティ
「風景シリーズ #1」 Landscape Series #1
(2013-14|ベトナム|5分)監督:グエン・チン・ティ
《日本初公開》「世界認識の方法」 How to Improve the World
(2021|ベトナム|47分)監督:グエン・チン・ティ
《日本初公開》「世界認識の方法」 How to Improve the World
(2021|ベトナム|47分)監督:グエン・チン・ティ
10/23(日) 11:00、10/27(木) 18:30


プログラム⑥ ポスト・アジアフォーカス2022|神保慶政
《日本初公開》『オン・ザ・ゼロ・ライン 赤道の上で』On the Zero Line
(2022|イラン・シンガポール・日本|76分)監督:神保慶政、メールダッド・ガファルザデー
「憧れ」 Here and Here
(2017|韓国|19分)監督:神保慶政
10/22(土)11:00(上映終了後トーク実施予定)、10/26(水)15:00


プログラム⑦ フィルムアーカイヴ
《日本初上映》『アーカイブ・タイム』 Archiving Time
(2019|台湾|63分)監督:ルー・ユエンチー
10/21(金)15:00 、10/29(土)15:00(上映終了後トーク実施予定)


プログラム⑧ フィルムアーカイヴ | 特別上映
『空山霊雨〈デジタル修復版〉』 Raining in the Mountain
(1979|台湾・香港|121分)監督:キン・フー
10/29(土) 18:00


◆世界視聴覚遺産の日 特別イベント
日時: 2022年10月29日(土)
11:00〜 福岡市フィルムアーカイヴ 施設見学ツアー (限定先着30名/要申込み※)
15:00〜 『アーカイブ・タイム』上映
     *上映終了後、《國家電影及視聽文化中心》とのオンライントーク(予定)
18:00〜『空山霊雨〈デジタル修復版〉』上映



【関連プログラム】
アジア・シネマ・アンソロジー × Asian Film Joint 2022

会期:2022年10月15日(土)ー20日(木)
会場:福岡市総合図書館 映像ホール・シネラ(福岡市早良区百道浜3-7-1)
観覧料: 600円(大人)/500円(大学生・高校生)/400円(中学生・小学生)

AsianFilmJoint 2022 セレクト
『昨夜、あなたが微笑んでいた』 Last Night I Saw You Smiling
監督:ニアン・カヴィッチ (2019年|カンボジア・フランス|81分)
10/15(土) 11:00、10/19(水) 11:00

飯岡幸子 セレクト
「スケッチ・オブ・Peking」 On the Beat
監督:ニン・イン(1995年|中国|100分)
10/16(日)11:00 、10/20(木)14:00

草野なつか セレクト
「青いマンゴー」Raw Mango
監督:アモール・パーレーカル(1999|インド|97分)
10/16(日)14:00 、10/20(木)11:00


☆「アジア・シネマ・アンソロジー(10/10〜20)」
http://www.cinela.com/gaiyou_20221010.html