『アジムの母、ロナ』★日本初公開
原題:Rona, Madar-e Azim 英題:Rona, Azim's Mother
監督:ジャムシド・マームディ / Jamshid Mahmoudi
2018年/アフガニスタン=イラン/ペルシャ語、ダリ語/89分
字幕:日本語、英語
予告篇
https://youtu.be/wW7ptD1gB8Q
長年イランで暮らすアフガニスタン難民の家族の物語。
ジャムシド・マームディ監督は1983年にアフガニスタンで生まれ、幼い頃、家族とともにパキスタン経由イランに逃れてきて、イランで育ち、イランの大学で映画を学んだアフガニスタン難民です。
長篇デビュー作『数立方メートルの愛』(2014年)が、東京フィルメックスで上映されています。 イランで暮らすアフガニスタン難民の娘と、イラン人の労働者の青年の淡く切ない恋を描いたものでした。背景には、異国で難民として暮らす人たちの悲哀がずっしり。 監督にインタビューしています。(シネマジャーナル 93号 2015年春発行に掲載)
東京フィルメックス 『数立方メートルの愛』ジャムシド・マームディ監督、ナウィド・マームディ プロデューサーQ&Aは、こちらで!
『アジムの母、ロナ』も、 デビュー作『数立方メートルの愛』と同じく、兄ナウィド・マームディがプロデューサーを務めています。ロナは、兄弟の実際のお母様の名前。 母なる故国を重ね合わせています。
*物語*
テヘランで暮らすアフガニスタン難民のアジム。弟ファルークの一家がドイツに密航することになり、母ロナも一緒に行けるよう手配していたのに、出発前になり弟から母は連れていけないといわれる。アジムが母を引き取るが、ほどなく母が重度の糖尿病だと判明する。子どものいないアジム夫妻は、アジムが夜勤をしていて、アジムの腎臓を移植するとなると、重労働ができなくなり経済的になりゆかなくなる。仕事仲間の伝手で臓器を提供してくれるイラン人を見つけるが、外国人であるアフガニスタン人には移植できないと言われる・・・
アフガニスタンの人たちが、長年暮らしていても、イランではあくまで外国人(よそ者)で、賃金もイラン人より低く、差別されている実態が描かれています。弟ファルーク一家が、よりよい暮らしを夢見て、密航してまでドイツに行くことからも、満足のいく暮らしを送っていないことが思い図られます。
アジムを演じているモフセン・タナバンデは、イラン人で、コメディーが定評の俳優ですが、本作では、母親思いで、重労働の合間にもお祈りを欠かさない敬虔なムスリムのアフガン難民を体現しています。 監督としても活躍していて、2019年の東京国際映画祭 アジアの未来部門で監督作『50人の宣誓』が上映され、来日しています。
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/471578092.html
モーセン・タナバンデ(左)とトルコのレイス・チェリッキ監督(右)
4月1日(金)公開のアスガル・ファルハディ監督作『英雄の証明』にも出演しています。どうぞご注目を!
母ロナを演じているファーテメ・ホセイニは、本作が映画初出演。 日本人にも似た風貌で、アフガニスタンでは少数派のハザラ族。
アフガニスタンのタジク族やハザラ族の話すダリ語は、イランのペルシア語と単語や発音に多少の違いはありますが、文法は同じなので、言葉の不自由がないことからイランに逃れる人が多いようです。アフガニスタンの半数を占めるパシュトゥン族は、国境を隔てて同じ民族の住むパキスタンに逃れる傾向があるのと対照的です。
2/21(月)13:20からの上映後に、ちゃるぱーささん(アフガニスタン音楽ユニット)と寺原太郎さん(インド音楽バーンスリー奏者)による演奏とミニトーク。
映画の内容にも呼応する選曲でした。11世紀のバーバー・ターヘル、14世紀のハーフェズなど、ペルシアの詩人の詩に曲をつけたもので、歌詞の意味も歌う前に説明してくださいました。
昨年8月にターリバーンが再びアフガニスタンを制圧し、音楽も禁止。国立音楽学校の楽器が破壊され、音楽学校の人たちも世界各地に亡命した状況だそうです。
世界中に難民として散らばったアフガニスタンの人たちが、故郷に帰れる日が早くくることを祈るばかりです。
(景山咲子)