第22回東京フィルメックス (2021) ★リモート Q&A 中国映画『永安鎮の物語集』ウェイ・シュージュン監督
会期中の中日となった11月3日、有楽町朝日ホールにて、『永安鎮の物語集』(英題:Ripples of Life 原題:永安镇故事集)が上映されました。同作は、今年のカンヌ映画祭監督週間でワールドプレミア上映された123分の注目作。
中国の映画製作チームが撮影準備のために湖南省の田舎町にやって来たことから巻き起こる物語を3部形式で描く重層的な作品です。
上映後、観客の大きな拍手に包まれ、中国のウェイ・シュージュン監督と、東京フィルメックス ・プログラム・ディレクター神谷 直希氏を繋ぎ、リモート Q&A が始まりました。
神谷氏(以下、Q) :この映画は アクシデントから始まったと聞きましたが、どのような経緯だったのですか?
監督: 別な映画の準備をしていたが、諸般の事情で撮る気がなくなっていました。その時、プロデューサーが1話目の話をしてきたんです。20分話して3話分ができました。
Q: 自身の製作体験は反映されていますか?
監督: 3話の監督と脚本家の逸話以外は殆ど自身の体験です。 監督の性格は自分と違うし、脚本家とは仲が良いですよ。
Q :エンディングのラップが面白かったです。ラップは好きですか?
監督: ラップは好きです。意見の違う闘いを中国武術の背負い投げなどを通して表現してみました。
Q :湖南省をロケ地に選んだ理由は?
監督: 脚本家が湖南省を舞台にしていたので、そこで撮るしかなかったんです。昔は栄えていたが、今は寂れた街。また開発中の土地でもある。映画に適したロケ地でした。
Q :1話目は地元民の目を通した話。 2話3話は映画製作側の話という構成にしたのは?
監督: 脚本で決めていたのは、1話では 地元民が外へ出たがることによる波紋。 2話は地元に帰る女性を主人公に。3話はそれまでの逸話を基にした構成です。
Q :キャスティングの変更は?
監督 :元々決めていた俳優を使いたかったのですが、同意できななくて違約金を払い、新たにキャスティングしました。
Q :監督と 本物の脚本家は初演技ですか?
監督 :初めてでした。
Q :マラドーナについては?
監督 :死んだというニュースを聞き、ファンだったので衝撃を受けました。監督と脚本家の意見衝突という小さなことと、大きなニュースが入り、俯瞰の視点を出したかったのです。
Q :2話で女優の顔に映る水滴が、涙のように見えました。 狙いですか?偶然ですか?
監督: 着想は脚本の段階からありました。 悲しい思いを表現したかったんです。 道を塞ぎ、逆光で撮影しました。そのために バスの人数も制限したんです。温度と湿度の影響で違ってきますから。17回撮ったんです。 効果的な場面になりました。
Q :最後に監督から観客の皆さんへ伝えたいことをお願いします。
監督 :まだ新型コロナウィルスが危うい中、鑑賞に来て頂いて有難うございました。次はリアルで会いたいです。この映画を 友だちにぜひ紹介してください。
【鑑賞を終えて】
発展著しい中国と、取り残された地方、映画製作のリアルな雰囲気を力強く伝えてくれた映画でした。シュージュン監督は俳優だっただけに、撮影現場の混乱や可笑しみ、楽しさを俯瞰の視点で捉えていました。Q&Aでは、親しみ易い童顔ながら、アクシデントなどを語る時の眼差しが鋭く光る瞬間が印象的でした。
(大瀧幸恵)
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