東京フィルメックス クロージング作品『天国にちがいない』 リモートQ&A (咲)

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© 2019 RECTANGLE PRODUCTIONS – PALLAS FILM – POSSIBLES MEDIA II – ZEYNO FILM – ZDF – TURKISH RADIO TELEVISION CORPORATION


東京フィルメックス 特別招待作品 
クロージング作品

『天国にちがいない』 原題:It Must Be Heaven
監督:エリア・スレイマン(Elia SULEIMAN)
フランス、カタール、ドイツ、カナダ、トルコ、パレスチナ / 2019 / 102分
配給:アルバトロスフィルム/クロックワークス
公式サイト:https://tengoku-chigainai.com/
★2021年1月29日( 金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開.

新作映画の企画を売り込むため、故郷ナザレからパリ、ニューヨークへと旅に出る映画監督。そんな中、思いがけず故郷との類似点を見つけてしまう。果たして本当の故郷はどこに…? 昨年のカンヌ映画祭でダブル受賞した名匠エリア・スレイマン10年ぶりの傑作。(公式サイトより)

*物語*
ナザレ。
映画監督のES(エリア・スレイマン)が自宅のテラスでくつろいでいると、隣人と名乗る男が悪びれもなく庭のレモンを取っている。声をかけたが、返事がなかったと。
墓参りの帰り、こん棒を持った青年たちに出会う。
車椅子など不要になったものを処分し、ESは旅に出る。

パリの町。
アジア系の男女に「ブリジットさん?」と聞かれる。
首を振ると、お辞儀する二人。日本人だった。
ノートルダム寺院、ルーブル美術館、どこも人がいない。
ホームレスの女性のあとを5人の警官が追う。
黒人の清掃人二人。缶を箒で飛ばして、側溝に入れて遊んでいる。

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戦車が町を行く。軍事パレードだった。花火があがる。
賑わうセーヌ川。
映画会社に企画を持ち込む。
「パレスチナ色が弱い」とフランス語で却下され、何も答えなかったら、英語で「言ったことはおわかりに?」と言われる。

夜のニューヨーク。
タクシーに乗り、運転手に「どこの国から?」と聞かれ、「ナザレ」と答える。
「それは国か?」と運転手。
「パレスチナ人だ」とES。
「パレスチナ人に初めて会った!」とはしゃぐ運転手。
「カラファトのだろ?(アラファトだよ!)ナザレはイエス様の故郷」

皆、大きな銃を持って歩いている。

紅葉が美しい公園。
天使の羽根を付けた女の子を追う警官たち。
バギーを押しながら運動する5人のママたち。

映画学校の講義やアラブ・フォーラムにゲストとして登壇するES。
なんとも居心地が悪い。

映画会社「メタ・フィルム」のロビーで、友人のガエル・ガルシア・ベルナルと一緒に人を待つES。
「パレスチナ出身でコメディを撮ってる。次の作品のテーマは中東の平和」とガエルがプロデューサーに紹介してくれるが、「もう笑えちゃう。またいつか」と、あっさり断られる。ガエルだけが中に入っていく

タロット占い。
「この先、パレスチナはあるのか?」
「必ずやある。ただし我々が生きているうちじゃない」

ナザレに帰ってくる。
オリーブの林。民族衣装の女性が頭に桶を載せている。
クラブで踊る人たち・・・

パレスチナに捧ぐ
父母を偲んで


今回のフィルメックスで、エリア・スレイマン監督特集が組まれ、長編デビュー作『消えゆくものたちの年代記』(1996年)を久しぶりに拝見することができました。
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あれから、4半世紀近く。ご両親は天国に召され、エリア・スレイマンもずいぶん老けて、時の流れを感じました。
パレスチナの置かれた状況は、ますます悪くなっているのに、映画の企画を持ち込んでも却下され、誰にも関心を持ってもらえない現状を突き付けられた思いがしました。

冒頭、「たとえ神様が来ても開けない」という扉を、神父が裏から暴力的に押し入ります。パレスチナの地が蹂躙されていることを象徴したような幕開けです。
映画には、エリア・スレイマンらしいウィットに富んだ場面やエピソードが満載。
ナザレの老人が話す蛇の恩返しの話。
「ハゲタカが蛇を狙っていたので、ハゲタカを撃ったら、蛇がお礼のお辞儀を。
別の日、タイヤがパンク。蛇が空気を入れてパンパンにしてくれた」
情景が目に浮かび、可笑しくて忘れられません。
ニューヨークの公園で、バギーを押しながら運動する5人のママたちの姿も、目に焼き付いています。
そして、所在なく居心地悪そうにアラブ・フォーラムの壇上の隅っこに座るエリア・スレイマン監督。
故郷ナザレで、平穏に暮らせる日が監督の生きているうちに来ることを祈るばかりです。



◎東京フィルメックスでの上映&リモートQ&A
2020年11月7日(土)  17:20からの授賞式終了後 @有楽町朝日ホール

上映後、フランスにいるエリア・スレイマンと、リモートでQ&Aが行われました。

『天国にちがいない』Q&A(リモート)
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登壇:
エリア・スレイマン(監督)
市山 尚三(東京フィルメックス ディレクター)
松下 由美(通訳)
動画 https://youtu.be/bxQbdL-v-S4
下記のうち、★印:動画にはない部分

市山: 前の作品『The Time That Remains(邦題『時の彼方へ』)』から10年。どれ位の期間をかけて準備をされて昨年完成されたのでしょうか?

監督:新しい脚本を手掛けるのに、いつも時間がかかります。生きて、観察して、経験をしたうえで、蓄積をメモに書き溜めて、脚本を書くためのヒントが満ちるまでに時間がかかるんです。私の働き方は時系列的に話が進むという脚本の書き方ではありません。例えば、画家のアトリエで200点くらい作品があって、常に何かしら手を加えているという形で進行しています。10年の間に、キューバでオムニバス映画(『セブン・デイズ・イン・ハバナ』2012年)を撮りました。私の映画のタイプは資金がかかるけど、商業的な回収は難しいです。

― パリで人が少なかったですが、理由があるのでしょうか? どのように撮影を?

監督:皆が聞くけれど、私自身、謎です。どうしてこういう状態が撮れたのか。ここは観光地で人が多いから、他の場所を選んでくださいと言われてました。黙示録的雰囲気の中で撮りたかったので、町の中心で撮ると自分の意思を曲げませんでした。実は、パリ市長オフィスのフィルムコミッションのような許可を出す係の方が私のやってることを理解してくれて、多大な協力をしてくれました。

― スズメが素晴らしい演技をしていますが、CGでしょうか? スズメの演技を待っていたのでしょうか?  

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監督:複雑な仕組みです。一部は3Dで作っています。一部はほんとうのスズメで撮っています。トレーナーが何か月もかけて、20羽をトレーニングして、そのうちの2羽を推薦してくれました。私の依頼した演技をそのうちの1羽がとてもうまく演じてくれたので採用しました。3Dよりリアルなスズメの方が扱いやすかったです。裏話をしますと、現実に基づいています。妻が家族を亡くした孤児のスズメを持ち帰って、置いていたら、私のパソコンにジャンプして乗っかってきたのです。それに触発されて入れた場面です。 

― 初期の作品で「I Put a Spell on You」の歌を使っていましたが、今回も別のシンガーのものを使っていました。この歌に思い入れがあるのでしょうか?

監督:いろいろ音楽を探したのですが、シーンに合うものを150曲くらいの中から、一番合うものを選びました。一番しっくりした曲だったから選んだのです。『D.I.』で使ったのはナターシャ・アトラスのキッチュな雰囲気でした。今回は違うバージョンにしました。

― 日本人が出てくるシーンがありましたが、なぜこのようなシーンを作られたのでしょうか?

監督:まさにあの場所で全く同じことが起きたので、これは絶対映画に入れなくてはと思いました。

― 日本で映画を撮りたいと思いませんか?

監督:私のセンチメンタルな箱を開けてしまいました。私はとても日本を愛してます。妻と2回訪れました。今も日本にいられたらと思います。そして撮りたいところです。お気に入りの国なので、どこにカメラを置いても私の好みぴったりな絵が撮れます。明日にでも呼んでくださったら行きたいです。マスタークラスや取材で何度も言っていて聞き飽きたと思いますが、私が映画を撮り始めたのは、小津監督がいたからです。日本に降り立って最初に小津監督のお墓参りをしました。

― キャスティングをいつもしているジュナ・スレイマンさんはドキュメンタリー作家でもあると思います。監督のご親戚でしょうか?

監督:私の姪です。はい、ドキュメンタリー作家でもあります。パレスチナだけで撮った時は、全面的にキャスティングを担当してくれました。今回は、3か所でしたので、パレスチナ部分を担当してくれました。

― 監督が演じる主人公は、いつも台詞がありません。これには理由があるのでしょうか?

監督:戦略的に自分が出て何も話さないと決めた訳じゃありません。短編を撮り始めたときから、自分で演じてこのようなスタイルでした。自分がカメラの前に立たなければいけないのはわかっていました。非常に個人的なことを綴っていますので。一般的に、私の作品はセミサイレント映画で、音に溢れているけれど、人の話す言葉は少ないです。好みとして、映像の最大の効果を狙うために、人の言葉を最小限にしています。人の言葉に頼らないで作りたいという思いがあります。

― イギリスの作家ジョン・バージャーへの献辞がありましたが、その方への思いは?  

監督:パリで偶然会ったのは、ものすごく前のまだ若い時で、将来何をしたいか決めてないときでした。何がしたいかと聞かれ、映画とぽろっと言いました。その意味を理解せずに伝えたのがきっかけでした。それ以降、彼は守護天使のように見守ってくれていて、彼の影響で本を読んで自分自身を見つめることを始めました。常に応援してくれていて、家族のような関係がずっと続いていました。クリスマスを家族ぐるみで一緒に過ごしたりしました。

― 森の中で遭遇する女性が頭の上に桶のようなものを載せてました。彼女は祈りをささげるような儀式をしていたのでしょうか?  

監督:私の古い記憶から描いたものです。私の生まれたナザレから10キロくらいのところのベドウィンの村から女性がヨーグルトをポットに入れて売りに来ていました。映画でご覧になっていたように、ポットを二つ持ってきていて、一つを置いて、また一つを取りにいってということを繰り返していたのです。このシーンは私の覚えているかつてのパレスチナの情景です。オリーブの林があって、女性がいてという、郷愁に基づいて作られたシーンです。

市山:今までになく、50を超える質問がきていますが最後の質問になってしまいました。何人の方からの質問を選びました。タイトルに込めた思いは? 天国はパレスチナのことと考えていいでしょうか?

監督:天国はパレスチナを指していません。世界全体がパレスチナ化していることを映画で描いています。主人公は天国を探して移動するのですが、世界中どこにも問題がある。グローバル化であったり、すぐに警察が稼働して、どこに行ってもチェックポイントがあるような状態です。天国は理想の場所で、皆が探し求めているのではないでしょうか。グローバル化で問題のない場所は結局ないということですね。

市山:いつか機会があればスレイマン監督を日本にお招きしたいと思います。新しい作品を近いうちに観れることを期待したいと思います。

まとめ:景山咲子




東京フィルメックス『マイルストーン』(インド) リモートQ&A  (咲)

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『マイルストーン』原題:Milestone
監督:アイヴァン・アイル(Ivan AYR)
インド / 2020 / 98分

北インドを舞台に、激しい腰痛に苦しみながら亡くなった妻の家族への賠償金のために働くベテランのトラック運転手の苦悩を描く。デビュー作『ソニ』が高く評価されたアイヴァン・アイルの監督第2作、ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映。
(公式サイトより)
https://filmex.jp/2020/program/competition/fc5

*物語*
トラック運転手として経験の長いガーリブ。デリーにあるトラックセンターで待遇をめぐって荷物の積み込みを行う労働者がストに突入。ガーリブは自ら積み下ろしをしなくてはならず、腰を痛めてしまう。
さらに、ガーリブが頼りにしている相棒の運転手ディルバーグの夜目が利かなくなり辞めるという。トラックセンターの老社長や若社長から、絶大な信頼を置かれているガーリブは、若手育成を託される。若い運転手パーシュがトラックに同乗するようになるが、いつか自分の仕事を取られてしまうのではとガーリブは不安になる。
一方、2年前にやっと娶った妻が自殺してしまい、妻の実家のシッキムから父親と妹がやってきて、賠償金を支払えという。ガーリブは故郷の村落委員会に解決の仲介を頼む・・・

仕事場では、頼りの同僚は仕事ができなくなり、労働者のストもあって負担が重くのしかかっているのに、私生活でもやっと結婚した相手が自殺。散々な目にあっているガーリブの物語。デリーのガーリブの隣人はカシミール出身の家族。亡くなった妻は、ネパールやブータンにも近いシッキム出身。なぜこんな遠いところの人と結婚?という謎は、Q&Aで解けました。
シッキムには20年以上前に行ったことがあって、亡くなった妻の父親や妹の風貌が日本人にも似ているのを懐かしく思いました。監督のいるインド北西部のチャンディーガルにも行ったことがあって、ル・コルビュジエ設計の碁盤の目のような計画都市。インドらしくない無機質な町。こちらはシク教徒の多い地区。ガーリブという主人公の名前からムスリムかなと思っていたら、亡き妻の賠償金の調停のために帰った村は、どうみてもシク教徒の村。第一、ガーリブがムスリムなら結婚するときに婚資金の取り決めをしているはずなので、賠償金の額でもめることはないはず。そんなことを思っていたら、監督とのQ&Aで、ガーリブはシク教徒と判明しました。インド北西部のシク教徒の間で、ムスリムの名前を付けることはよくあることなのだそうです。


上映:
10月31日(土) 21:20- @ヒューマントラストシネマ有楽町 
11月5日(木) 12:50- @TOHOシネマズ シャンテ 

◎Q&A(リモート)
11月5日の『マイルストーン』上映後、監督とのQ&Aがリモートで行われました。
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登壇:
アイヴァン・アイル(監督)
市山 尚三(東京フィルメックス ディレクター)
松下 由美(通訳)
動画:https://youtu.be/i1Ea8Ra9go8
下記のうち、★印:動画にはない部分

市山:インドのチャンディーガルにいる監督とZOOMで繋がっています。さっそくQ&Aを始めます。

監督:大変な時期だからこそ、皆さんが劇場で観てくださったのがなにより嬉しいです。自分もその場にいられたらと思います。日本で観ていただくのが夢でした。日本の巨匠たちから大変影響を受けましたので。

市山:なぜ長距離トラックの運転手を主人公にしたのでしょうか? 日々の生活を描いていますが、なぜこの職業の方を?

監督:まず、トラック運転手はどこにでもいますよね。資本主義を支えているのが運送業の人たち。でも気づいたのですが、移動しているけど、運転手自身は小さなトラックの世界に閉じ込められていて、実は彼らはどこにも行っていません。それは私たち皆にも当てはまることだと思います。自分の人生を操縦する主人公であるのにもかかわらず、小さなところから思うように動かない。その視点から作品を撮ることにしました。

Q:ファーストカットを長いシーンにしたのは? ワンカットにした理由を教えてください。

監督:私は自分の作品をカットのないシークエンスでよく始めます。最初に主人公のいる状況、時と空間をまず観て貰って、360度キャラクターの眼に入るものを観客に共有してもらう目的です。居場所や環境を観る人に確認してもらって、キャラクターの目線で世界を観て、そこから旅を始めるという導入です。

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Q:主人公はムスリムだと思いますが、シッキム出身の奥さんは仏教徒かクリスチャンでしょうか? 二人はどのようにして知り合って結婚したのでしょうか?

監督:主人公の名前はムスリムのものですが、シク教徒です。主人公のガーリブという名前は、インドの19世紀のムスリムの偉大な詩人からつけられています。北インドのシクの人たちは、ムスリム系の名前をよくつけます。
また、亡くなった妻をシッキム出身の女性にしたのは、リサーチでわかったことですが、運転手はなかなか結婚できなくて、仕事で行った先で結婚を持ちかけられ、金を払って妻を娶ることがあるそうです。この映画の主人公の場合はお金を払ったとは特定していませんが、仕事で行った先のシッキムで知り合ったという設定です。彼はクウェートで生まれ育って、その後インドに両親と戻ってきたけれど、よそ者。デリーでも馴染めない。北東のシッキムの人もインドに住んでいながら部外者意識を持っていて、共鳴しあったという設定です。

Q: ガーリブが詩人の名前と説明がありましたが、助手のパーシュも詩人の名前。なぜ二人に詩人の名前を付けたのですか?

監督:気が付いてくださって嬉しいです。インド外ではあまり知られていませんが、インド国内でも、映画を観てなかなか気づいてくれません。詩に触れる機会がないのです。映画の主人公たちも、日々自分の名の背景に気が付いてもらえません。インドの社会で、こういった名前が意味を持たなくなってしまったのは、詩や芸術に価値を見出せない。それを享受する余裕もなくて、生きるのに精一杯なのです。楽しいことを求めるけど、あまりにも困難で詩を書くこともなかなかない。私のペシミストな観方が二人に反映されています。

Q:主人公の腰の痛みが最後に取れ、今度は姉からの電話で若いパーシュが腰痛になったと知ります。監督にとっても腰痛は何かのメタファーなのでしょうか? 

監督:実は腰の痛みが取れるという発想は、映画を煮詰めている終わりのほうで自分に降ってきたものです。ストーリーとして意味はないのですが、こういう形で終えようと思いました。なぜ急に痛みが消えたのか? それが比喩だとしたら、一番近い答えは、ガーリブが罪の意識を克服できたからではないでしょうか。自分でもちゃんとした答えはないのですが。 

Q:ガーリブの部屋にダライ・ラマの写真がありました。奥さんが飾っていたものでしょうか?

監督:亡くなった奥さんの出身地シッキムの大多数は仏教徒で、仏教徒ではない人たちも、ダライ・ラマの写真を伝統的に飾ります。彼の家を仕切っていたのは奥さんだったということを示しています。

Q:日本の監督で特に影響を受けたのは?

監督:一番多くを学んだのは小津監督です。私の映画に対する考えを変えた偉大な監督です。最近では、市川崑の『野火』を観て、映画観が変わりました。黒沢明監督、鈴木清順監督。現役では、是枝監督、黒沢清監督。日本以外では、インドのサタジット・レイ、リッティク・ゴトク監督。ゴトク監督はサタジット・レイに比べると知名度は劣るのですが非常に才能に溢れた監督で影響を受けました。国外ですと、デビッド・リンチ、ジム・ジャームッシュ、イランのジャファール・パナヒと、挙げたらきりがないです。

市山:リッティク・ゴトク監督の特集をかなり以前にフィルメックスでしました。(2007年 第8回東京フィルメックス) しばらく観る機会がないので、また上映できればと思います。
もう時間がありませんので、これを最後の質問にしたいと思います。Q「今、インドで感じている閉塞感や問題点があれば教えてください」

監督:経済的に困窮していて、何を話してもそれがあまりにどこにも垂れこめていて、経済的不安定の中で必死になっています。短期契約の非正規雇用がコロナでどんどんなくなっています。誇張せずに、全くお金が無くなって、親元や兄弟に頼らざるをえなくてストレスを感じている人が多いです。文化、芸術、哲学、教育、健康などについて話す余地が全くないのが現状です。

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最後に皆さんに手を振って終了。

まとめ:景山咲子





フランス映画祭 2020 横浜 中東絡みの作品たち  (咲)

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当初6月に予定されていたフランス映画祭 2020 横浜が、コロナ禍で延期され、12月10日から開催されます。
上映される長編10作品の内、9作品は日本公開が決まっていて、オープニング作品の『ゴッドマザー』のみ、配給未定です。試写の案内をいただき、主役の役柄が「アラビア語通訳」とあったので、これは観なければ!と、飯田橋のアンスティチュ・フランセ東京に駆けつけました。
また、ショートショート フィルムフェスティバル & アジアとのコラボで無料配信される6本の短編の中に中東絡みの作品が2本ありましたので、併せてご紹介します。

フランス映画祭 2020 横浜 公式サイト:https://www.unifrance.jp/festival/2020/


オープニング作品
『ゴッドマザー』 原題:LA DARONNE
監督:ジャン=ポール・サロメ
出演:イザベル・ユペール、イポリット・ジラルド

警察でアラビア語の通訳として働くパシャンス(イザベル・ユペール)。今日も、麻薬捜査班の取り締まりに同行して、通訳を務める。パシャンスの目下の悩みは、介護施設にいる我儘な母親のこと。介護士ハディージャ(*注)の優しさに支えられている日々だ。
ある日、警察の依頼で通話の盗聴をしていて、大麻の密輸事件のドラッグディーラーの一人が、介護士ハディージャの息子だと気づいてしまう。どうしても、その息子を助けたいと、パシャンスは大胆な計画を立てる・・・
(*注:ハディージャは、預言者ムハンマドの最初の妻の名前。介護士がムスリマであることがわかります。)

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「イザベル・ユペール主演の社会派コメディ」のうたい文句通り、まぁハチャメチャなドラッグ密輸組織を揺るがすゴッドマザーの大活劇! 
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大量の大麻樹脂を元手に、パシャンスはドラッグディーラーのちょっと抜けた二人組に取引きを持ちかけ、ヒジャーブ姿でアラブの女に成りきって出かけます。いつしか「ゴッドマザー」と呼ばれるようになるパシャンス。

パシャンス(忍耐)という名前は、ろくでもない父親がつけてくれたらしいのですが、オマーンの首都マスカットにある墓に眠る父を訪ねたあと、パシャンス号と名付けられた船でオマーンの海に乗り出します。思いもかけず、オマーンの美しい風景も楽しめた作品でした。
麻薬を扱う男たち相手の通訳は、わざとわかりにくい方言を使われたりして、大変な仕事であることも垣間見れました。



◎ブリリア ショートショート シアター オンライン配信作品から

◆『音楽家』原題:ペルシア語Navozande, フランス語 le musician
監督:レザ・リアヒ
フランス/14:56/アニメーション/2020
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~引き裂かれた恋人たちはいつまでも想い合う〜
1219年、ペルシア。モンゴル軍の侵攻で、恋人の音楽家と引き裂かれた女性。40年後、宮廷で働く彼女は、盲目の楽師が生き別れた恋人だと気づく・・・
残虐なモンゴルの襲撃、そして華やかな宮廷の宴が、伝統楽器の美しい調べと共に繰り広げらるアニメーション。
ペルシア語を学び始めた時に、「モンゴル軍が来て、焼いて、殺して、破壊して・・・」と順序は忘れましたが、動詞を覚えるのに教わったのを思い出しました。ペルシアにとって、モンゴルの侵攻はそれほど残虐な記憶。それを象徴する15分でした。


◆『思い出たち』 原題:Souvenir Souvenir
監督:Bastien Dubois
フランス/15:10/アニメーション/2020
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~戦争を語ること、知ることの難しさ〜
祖父がアルジェリアから持ち帰ったサソリの標本。この10年、アルジェリア戦争のアニメ映画を作ろうとして、戦争に行った祖父に実態を知りたいと聞くけれど、仲間や狩りの楽しい話ばかり。問い詰めると、招集されて行くしかなかったとポツリ。
実戦で地獄を見た人ほど、戦争経験を話さないのはいずこも同じ。思い出したくない記憶を抱えて生きる人たちに思いを馳せました。


★上記2作品を含めて、6作品を下記のサイトで視聴できます。
配信サイト:ブリリア ショートショート シアター オンライン
特設ページ: https://sst-online.jp/magazine/9184/
配信期間 12/5(土)10:00〜12/18(金)10:00

『真西へ 』(原題:Plein Ouest)監督:アリス・ドゥアール
『アデュー』(原題:Un adieu)監督:マティルド・プロフィ
『ローラとの夜』(原題:La Nuit, tous les chats sont roses)監督: Guillaume Renusson / BSSTO作品
『音楽家』(原題:Navozande, le musicien)監督:レザ・リアヒ
『岸辺』(原題:Rivages)監督:ソフィ・ラシーヌ
『思い出たち』(原題:Souvenir Souvenir)監督:バスティアン・デュボワ


景山咲子

フランス映画祭2020 横浜

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期間:2020年12月10日(木)〜12月13日(日)全4日間
*当初、6月25日(木)〜6月28日(日)に予定されていたものを延期して開催

会場:横浜みなとみらい21地区、イオンシネマみなとみらいほか
主催:ユニフランス
共催:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、横浜市
特別協賛:日産自動車株式会社
公式サイト:https://www.unifrance.jp/festival/2020/

上映作品
オープニング作品
『ゴッドマザー』
監督:ジャン=ポール・サロメ 出演:イザベル・ユペール 
  ★オープニングの本作のみ日本公開未定
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作品内容は、こちらで!


『カラミティ(仮)』
『ハッピー・バースデー 家族のいる時間』
『FUNAN フナン』
『GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生』
『パリの調香師 しあわせの香りを探して』
『MISS(原題)』
『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』
『私は確信する』
『マーメイド・イン・パリ』


◆特別マスタークラス  *SSFF & ASIAとのコラボ企画
フランス映画祭2020 横浜
×
ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 特別マスタークラス

配信日時:12月11日(金)11:00〜12:00 (予定)*生配信
配信URL:https://www.youtube.com/c/フランス映画祭2020横浜
(フランス映画祭2020 横浜公式チャンネル)
テーマ フランスのショートフィルムでみる親と思春期の子の関係
対象作品
『真西へ 』(原題:Plein Ouest)監督:アリス・ドゥアール
『アデュー』(原題:Un adieu)監督:マティルド・プロフィ
『ローラとの夜』(原題:La Nuit, tous les chats sont roses)監督: Guillaume Renusson / BSSTO作品

★ブリリア ショートショートシアター オンラインで6作品配信

上記特別マスタークラスの3作品のほか、下記3作品を無料配信
『音楽家』(原題:Navozande, le musicien)監督:レザ・リアヒ
『岸辺』(原題:Rivages)監督:ソフィ・ラシーヌ
『思い出たち』(原題:Souvenir Souvenir)監督:バスティアン・デュボワ

配信サイト:ブリリア ショートショート シアター オンライン
特設ページ: https://sst-online.jp/magazine/9184/
配信期間:12/5(土)10:00〜12/18(金)10:00

作品内容ほか詳細はこちらで
https://www.unifrance.jp/festival/2020/event/

『音楽家』と『思い出たち』は、こちらもどうぞ!
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/478868949.html