東京フィルメックス 『ある女優の不在』 主演女優ベーナズ・ジャファリさんQ&A(11/24)

映画製作を禁止されているパナヒ監督からの依頼に東京に行くことを条件に即決
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特別招待作品
『ある女優の不在』  原題:Se rokh 英題3 faces
監督:ジャファル・パナヒ
出演:ベーナズ・ジャファリ、ジャファル・パナヒ、マルズィエ・レザイ

*物語*

人気女優ベーナズ・ジャファリのもとに、見知らぬ少女から悲痛な動画メッセージがパナヒ監督経由で届く。女優を志して芸術大学に合格したのに家族に反対され自殺を図るというのだ。ベーナズはパナヒ監督の運転する車で、少女マルズィエの住む北西部アゼルバイジャン州のサラン村を目指す。山間のじぐざぐ道で結婚式に出会い、誰かが自殺した気配はない。マルズィエの家を探しあてるが、3日前から家に戻らないと母親が困り果てていた。芸人に対する偏見が根強い村で、弟も姉が女優になることに猛反対で荒れ狂っている。
やがて、マルズィエが町外れで暮らす革命前に活躍した女優シャールザードのところに身を寄せているのを知る・・・

◎Q&A 
11月24日(土) 21:15からの上映後
TOHOシネマズ日比谷スクリーン12にて

ゲスト:ベーナズ・ジャファリさん
司会:市山尚三東京フィルメックス・ディレクター
通訳:ショーレ・ゴルパリアンさん

市山:今回はベーナズさんに来ていただいて、ほんとに嬉しく思います。その理由はなぜかというと、第1回東京フィルメックスのオープニング作品に上映されたサミラ・マフマルバフ監督の『ブラックボード 背負う人』は、ベーナズさんが主演だったのです。その時はサミラしか呼んでなくて、申し訳なかったのですが、20年後に20回目の記念の会にベーナズさんを日本にお呼びすることができて、ほんとに嬉しく思っております。

ベーナズ:ご挨拶申しあげます。実は日本に来ることは昔からの夢で、今回夢が叶って、日本にいることをとても嬉しく思っております。日本は私にとって太陽の国です。神様がくれた機会に感謝しています。

*客席とのQ&A
― ジャファル・パナヒ監督の映画を観ていると、どこまでが作りもので、どこまでがドキュメンタリーなのか、いつもわからなくて不思議な思いで観ています。今回の映画の中で、山間の道でのクラクションのくだりであるとか、墓の穴を掘って、自分の終の棲家だといって寝ているおばあさんだとか、どこまでが作りものなのでしょうか?

ベーナズ:この映画の場合、すべての内容が脚本に書かれていました。完璧な脚本を持って撮影場所に行きました。アゼルバイジャン州の小さな村で、村それぞれに特別なやり方や伝統があって、それにあわせて多少変えることもありましたが、基本は脚本に書かれた通りに撮りました。例えば、村の中で目の見えないお爺さんに会うと、それにあわせて少し変えたりしていました。
夜、私が歩いていて、お爺さんと中庭で話す場面があるのですが、そのお爺さんは村の小さな舞台で宗教的な劇をしている人でした。パナヒ監督は彼らと話して、うまく入れ込みながら撮影を進めていました。

― 割礼の儀式で、割礼した皮をどこに埋めるかでその男の子の運命が決まるというのは、どこでもある話なのか、その村の話なのか、それとも監督が作ってしまった話なのでしょうか?

ベーナズ:割礼の皮を大事な場所に埋めるという話は、その村の人たちが信じてやっていることなのですが、村だけでなく、ほかでもやっていると聞いたことがあります。親は子どもの幸せを願っているので、そのための儀式の一つです。どこでも、親は子どもの幸せを願って、何かやりたいと思うものだと思います。

― 電話を村の下にかけに行くという女優さんを、パナヒ監督は僕は眠いからといって一人で行かせます。イランに行ったことがあるので、夜、女性が一人で歩いても安全だということは知っているのですが・・・

ベーナズ:その村は、パナヒ監督が小さい時に育った村なので、あちこちに親戚がいて、最初に村に入った時も皆さんに歓迎されました。夜遅く一人で歩いても安心さがありました。映像から村人の優しさが伝わってきたと思います。パナヒ監督も安心して撮影に臨むことができたと思います。

― 女の子を家に送り届ける時に、こういうことは女性の方が得意だから僕は車で待っているという場面がありました。イランではそれが普通なのでしょうか?

ベーナズ:私は監督じゃないのでわからないのですが、弟が出て来て、窓ガラスを割ったりするのは映画として必要だったから入れたのだと思います。
今度、監督に聞いてみようと思います。

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― 3代の女性の物語で、革命前に活躍していた女優さん、現在活躍している女優さん、そしてこれから女優になろうとする少女が出てきます。田舎なので、様々な偏見もあると思うのですが、時代の違いで、イランの社会が見る目が違うということはあるのでしょうか?

ベーナズ:3世代の女優を描いていますが、いろいろな時代の伝統や社会の決まりを説明するためだと思います。

― 演じることは、とてもパーソナルな感情に基づくことだと思います。ある少女を助けなければいけないという、女優が持つ公的な立場も描いていました。感情についての表現でパナヒ監督といろいろとやりとりがあったと思います。ご自身の意見を通されたようなことがあれば教えてください。

ベーナズ:実際、1回もめたことがありました。彼女が自殺してないとわかって、殴るシーンがあるのですが、パナヒ監督からはほどほどにしてくださいと言われてました。手加減して殴ったのですが、撮影が終わって帰る時に、どうも納得がいかないと監督に言いました。わざわざ撮影を抜けてまで心配して村にやって来たのに嘘だとわかれば、私だったら、彼女を殺すか、もっときつく殴ると言いました。監督は、わかったので、明日撮り直すけど、彼女には伝えません、好きにやってくださいと言われました。翌日4時までしか撮影できなかったのですが、私がすごく怒って殴ったら、彼女は事前に聞いてなかったから、すごくびっくりして逆切れして、暴言を吐いて攻撃してきたので、これはとても使えないと監督はカットを出しました。彼女はもうテヘランに戻ると暴れ出していて、これは映画のためだったよと話して、私も映画のために騙されたことがあると彼女に話して、3回目を撮りました。

市山:最後のひとことをお願いします。

ベーナズ:
パナヒ監督から出演依頼を貰った時に、私を必ず東京に行かせてくださいと言って承諾しました。カンヌに出品される時に、電話があってカンヌに行ってと言われ、カンヌはどうでもいいから東京に行かせてくださいと言ったら、監督から、カンヌだよ、アホかと言われました。ほんとに東京に行きたかったので、こうして東京に来られたのが嬉しくて、ギフトを貰ったような気持ちです。

市山: 『ある女優の不在』は12月13日(金)からヒューマントラストシネマ渋谷他で公開されます。皆さん、どうぞ皆さんよろしくお願いします。
本日はありがとうございました。


★このQ&Aの前に、ベーナズ・ジャファリさんにインタビューの時間をいただきました。
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報告:景山咲子