第6回グリーンイメージ国際環境映像祭 環境を考える秀作続々 (咲)

2019年2月22日(金)〜24日(日)
会場:日比谷図書文化館コンベンションホール
公式サイト:https://green-image.jp/

2日目、2月23日(土)の午後に上映される4作品を、一足早く試写で見させていただきました。どれも、地球の環境を考えさせてくれる秀作でした。

◆『ナマズとボール(仮題)』Catfish of Balls
ブラジル / 2017 / 5分 / 言語なし
監督:ルイス・ボトッソ & ティアゴ・ベイガ

川で暮らしているナマズ。浮かんでいるバスケットボールを食べようとして、口に詰まらせてしまう・・・
ナマズがとてもカラフルで生き生きしています。でも、ナマズは食べることも、川に潜ることもできなくなってしまいます。
何気なく捨てたものが、川に生きる魚を殺してしまうかもしれないことを子どもたちにわかりやすく描いたアニメーション。

◆『オン・ザ・カバー(仮題)』
On the Cover
イラン / 2018 / 5分 / 言語なし
監督:イェガーネ・モガッダム

野生動物を専門とする写真家が森の中へ入っていくと、動物たちが次々にカメラの前でポーズをとる。彼の撮った写真は、雑誌の表紙を飾る・・・。
テヘラン芸術大学在学中に、動物の絶滅をテーマに描いたアニメーション。
写真家は希少な動物たちをカメラに収めるだけ。絶滅を防ぐにはどうすればいいのか、人々に関心を向けてもらいたいという思いが、短い作品から伝わってきます。
最後、お猿さんが尻尾を振るごとにキャストの名前が出てくるところが可愛い。


◆『世界で最も汚染された川(仮題)』Indonesia, The World’s Most Polluted River
フランス / 2018 / 55分 / 英語・フランス語・インドネシア語
監督:マルタン・ブドット

インドネシア、ジャワ島のチタルム川は世界で最も汚染された川。ワヤン火山の麓の水源は綺麗な湧き水なのに、川沿いにある500もの繊維工場からの排水が、川を都市の下水レベルにまで汚しているのだ。
沿岸の水田では虫を食べる小魚もいなくなり、米の収穫量が激減した。子どもたちの内分泌系に特に影響を与え、5歳までの死亡率が高くなった。事態を憂慮している市民の協力で、チーム「Green Warriors」が長年にわたって行った調査結果を、繊維工場の多くが下請けとなっている世界的な有名企業にも提示する。
問題提起はしているが、企業を訴えるという形ではなく、共に解決策を探るスタンス。
科学者と市民の協力によって完成したこの調査ドキュメンタリーが、チタルム川の水質改善の一助になることを監督は願っている。


◆『黄金の魚 アフリカの魚(仮題)』
Golden Fish, African Fish
セネガル / 2018 / 60分 / フランス語・ウォルフ語
監督:トマ・グラン, ムサ・ジョップ

セネガルの南に位置するカザマンス地方の海沿いの町。漁業が盛んなここには、西アフリカの各地から仕事を求めて労働者や難民がやってきている。内陸のマリ人や、大学を出たけど就職先のないギニアの人など様々だ。男も女も、皆、生きていくために必死で働いている。
映画は、大規模に行われているイワシの燻製産業に焦点を当て、携わる人々の労働環境や、燻製に使う木材の過剰な伐採や煙害などについても言及していく。
イワシの燻製は西アフリカの人々の食糧として重宝されてきたが、最近はペットフードとして世界の市場にも出ているという。
船で網を引きながら歌う男たちの姿が眩しく、また切ない。

★本作、2月23日(土)16:20からの上映後、監督のティーチインが行われる予定です。

その後、17:35~18:35には、トークセッション「「2050年」のアフリカを語る」が行われます。
【出演】
小松原 茂樹さん 国連開発計画(UNDP)アフリカ局 TICAD プログラムアドバイザー
紀谷 昌彦さん 外務省 中東アフリカ局アフリカ部国際協力局参事官アフリカ開発会議TICAD)担当大使
若林 基治さん 独立行政法人国際協力機構アフリカ部次長
清水 貴夫さん 京都精華大学アフリカ・アジア現代文化研究センター設立準備室研究コーディネーター
・総合地球環境学研究所・文化人類学者
【進行】
合田 真さん 日本植物燃料 代表取締役


第6回グリーンイメージ国際環境映像祭の詳細については、下記でご確認ください。
公式サイト:https://green-image.jp/filmfestivals/6th/
シネジャの紹介サイト:http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/463982110.html




中国映画祭「電影2019」

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◆東京:3/6(水)、7(木) 会場:角川シネマ有楽町
◆大阪:3/9(土)、10(日) 会場:梅田ブルク 7

主催:文化庁、公益財団法人ユニジャパン、上海国際影視節有限公司
共催:国際交流基金

【上映作品】
すべてジャパンプレミア!
(超級茉莉(スーパーモーリー)』はワールドプレミア!)

『ペガサス/飛馳人生』 [大阪オープニング作品]
監督:ハン・ハン
出演:シェン・トン、ホアン・ジンユー
2019年2月に公開され中国で大ヒットを記録したレーサー映画。
シネメディア配給で日本公開予定。

『失踪、発見』 [東京オープニング作品]
監督:ルー・ユエ
出演:ヤオ・チェン、マー・イーリー
撮影監督として評価の高いルー・ユエがメガホンを取ったサスペンス映画。
【中国公開:2018年10月5日/第21回上海国際映画祭コンペ部門ノミネート】

『アラ・チャンソ(原題)』
監督:ソンタルジャ
出演:ヨンジョンジャ、ニマソンソン
圧倒的なチベットの風景と、人間の心の内側が丁寧に描かれる。2020年岩波ホールほかにて公開予定。(配給:ムヴィオラ)
【中国公開:2018年10月26日】

『超級茉莉(スーパーモーリー)』
監督:犬童一心
出演:ラン・ヤーイー、大沢たかお
『ゼロの焦点』『猫は抱くもの』などの犬童一心監督が作り上げた中国映画。
【中国公開:2019年初夏予定】

『駐在巡査 宝音』
監督:ヤン・ジン
出演:ボヤンネメフ、バダマー
殺伐としたモンゴルの砂漠の風景を壮大に撮りあげたのは、北野武監督作品などで撮影を務める柳島克己。
【中国公開:2018年12月19日】

『アイランド 一出好戯』
監督:ホアン・ボー
出演:ホアン・ボー、スー・チー
屋久島でロケを敢行。監督・主演は中国版『101回目のプロポーズ』のホアン・ボー。
【中国公開:2018年8月10日】


◆豪華ゲスト、続々来日予定!
○マー・イーリー(『失踪、発見』出演女優)主演作多数の演技派女優!
○ソンタルジャ(『アラ・チャンソ』監督)チベット人監督作として初めて日本で劇場公開された『草原の河』で知られる監督!
他ゲスト調整中!

上映スケジュール、ゲスト情報等、公式サイトで確認を!
https://www.unijapan.org/reference/denei2019.html






イスラーム映画祭4 ★東京★ 上映日程とトークセッション

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イスラーム映画祭4の東京でのスケジュールが発表されました。
★印は、上映後にトークがあります。
トークの詳細は、末尾に掲載しました。

また、上映作品の内容は、こちらをご覧ください。


3/16 (土)
11:00 その手を離さないで
13:10 わたしはヌジューム、10歳で離婚した ★
16:05 気乗りのしない革命家&イエメン:子どもたちと戦争 ★
19:15 僕たちのキックオフ

3/17 (日)
11:00 二番目の妻
13:15 ナイジェリアのスーダンさん ★
16:30 西ベイルート
19:00 幸せのアレンジ

3/18 (月)
11:00 僕たちのキックオフ
13:30 気乗りのしない革命&イエメン:子どもたちと戦争 ★
17:00 乳牛たちのインティファーダ
19:00 その手を離さないで

3/19(火)
11:00 西ベイルート
13:30 わたしはヌジューム、10歳で離婚した  ★
16:30 幸せのアレンジ
19:00 イクロ2 わたしの宇宙

3/20(水)
11:00 ナイジェリアのスーダンさん
13:45 二番目の妻  ★
16:30 その手を離さないで
18:40 気乗りのしない革命家&イエメン:子どもたちと戦争

3/21(木)
11:00 イクロ2 わたしの宇宙
13:10 西ベイルート ★
16:00 判決、ふたつの希望 ★
18:50 乳牛たちのインティファーダ ★

3/22(金)
11:00 幸せのアレンジ
13:15 その手を離さないで ★
16:30 ナイジェリアのスーダンさん
19:00 わたしはヌジューム、10歳で離婚した


【イスラーム映画祭4東京篇TALKSESSION情報】

“Focus on Yemen”では、児童婚や内戦といった、遠い国の話で終わらせてはいけないテーマだけでなく、イエメンという国そのものの魅力にも迫ります。

①3/16(土)13:10 
『わたしはヌジューム、10歳で離婚した』上映後
Focus on Yemen《イエメンだけの問題ではない“児童婚”》
【ゲスト】
マリヤム・アル=クバーティさん(イエメン出身/筑波大学大学院博士課程)
鳥山純子さん(立命館大学准教授/中東ジェンダー学専門)

②3/16(土)16:05  
『気乗りのしない革命家』
『イエメン:子どもたちと戦争』上映後
Focus on Yemen🇾《世界最悪の人道危機~イエメン内戦とそこに生きる人々~》
【ゲスト】
藤目春子さん(認定NPO法人ICAN/外務省NGO相談員)

③3/17(日)13:15
『ナイジェリアのスーダンさん』上映後
《宗教の交差路、南インド・ケーララ州とマラヤーラム語映画》
【ゲスト】
安宅直子さん(編集者/インド映画研究)
※宗教的マイノリティのエスニシティが自然に描かれる事が多い、マラヤーラム語映画の魅力に迫ります。

④3/18(月)13:30 

『気乗りのしない革命家』 『イエメン:子どもたちと戦争』上映後
Focus on Yemen🇾 《紛争地の看護師が見たイエメン内戦》
【ゲスト】
白川優子さん(国境なき医師団)
※ご著書『紛争地の看護師』でも触れられているイエメンで医療支援をされた際のお話をお聞きします。

⑤3/19(火)13:30 
『わたしはヌジューム、10歳で離婚した』上映後
Focus on Yemen《幸福のアラビア~イエメンに暮らして~》
【ゲスト】
和家麻子さん(危機管理コンサルティング会社勤務/2004年~2005年サナア留学)

⑥3/20(水)13:45
『二番目の妻』上映後
《ジェンダー、マイノリティ、社会的テーマと映画祭》
【ゲスト】
松下由美さん(映画プレゼンター/キュレーター)
※昨今はインド映画の通訳としてもご活躍中の松下さんと、映画祭で社会的テーマを掲げる意義について語り合います。

⑦3/21(木)13:10
 
西ベイルート』上映後
《アラブ映画史でたどる中東問題》
【ゲスト】
佐野光子さん(アラブ映画研究者/写真作家)
※レバノン内戦やパレスチナ問題など複雑な中東情勢がわかる映画をご紹介いただきながら、次の『判決、ふたつの希望』にもつながる解説をしていただきます。

⑧3/21(木)16:00

『判決、ふたつの希望』上映後
《ベイルートとレバノン映画の今》
【ゲスト】
佐野光子さん(アラブ映画研究者/写真作家)
※かつてベイルートに住まわれ、 映画祭直前にもレバノンへ行かれる佐野さんに現在の現地の様子もお聞きしながら、レバノン映画の今昔についてお話をいただきます。

⑨3/21(木)18:50
 
乳牛たちのインティファーダ』上映後
《それでも、わたしたちはパレスチナに行く》
【ゲスト】
古居みずえさん(ジャーナリスト/映画監督)
高橋美香さん(写真家)
※パレスチナ取材の同志であるお2人に、現地取材の醍醐味と悦びについて語っていただきます。

⑩3/22(金)13:15
『その手を離さないで』上映後
《中東に関心を寄せる日本の若者たち》
【ゲスト】
山田一竹さん(Stand with Syria Japan代表)
村山木乃実さん(東京外国語大学大学院 博士後期課程)
堀谷加佳留さん(トルコ語実務翻訳者)
※中東に関する活動や研究をされている若いみなさんに、
そのきっかけや想いについてお聞きしたいと思います!




第6回グリーンイメージ国際環境映像祭

第6回グリーンイメージ国際環境映像祭
-映像のまなざし ここから向かう未来-


会期:2019年2月22日(金)~24日(日)

会場:日比谷図書文化館コンベンションホール(東京都千代田区日比谷公園1-4地下1階)

参加:協力費1日1,500円 学生協力費1日1,000円 3日間通し券3,000円 
   中学生以下無料・事前予約不要

主催:グリーンイメージ国際環境映像祭実行委員会
(委員長 佐藤忠男)

世界48の国と地域から応募された163作品の中から2度の審査を通して選ばれたグリーンイメージ賞 受賞10作品を上映、最終日には、グリーンイメージ大賞が決まり、上映されます。
受賞作品上映に加えて、狩猟、東北、アフリカをテーマとした制作者を交えた3つのトークセッションと特別プログラムがあります。

★プログラムの詳細はこちら★
https://green-image.jp/filmfestivals/6th/


スケジュール


◆2月22日(金)
15:00 - 21:20
15:00 流れに抗って(仮題)
Against the Flow
ロシア/ 76分 / 2018年

16:25  おばあちゃん、エコに出会う(仮題)
Greening Grandma
シンガポール / 24分 / 2018年

17:00 全方位から向けられた槍(仮題)
Spears from All Sides
アメリカ / 86分 / 2018年

19:00 坂網猟-人と自然の付き合い方を考える
日本/ 42分 / 2018年

19:55 けもの道 京都いのちの森
The Hunter of Kyoto
京都の市街地と山の境界線で暮らす猟師・千松信也さん。
日本 / 45分/ 2018年

20:40トークセッション
「猟の世界に踏み入れる 今なぜ狩猟なのか?」


◆2月23日(土)11:00 -18:35
11:00 願いと揺らぎ
Tremorings of Hope
日本 / 147分/ 2017年

トークセッション「東北を語る-記録を続けて伝えたいこと」
我妻 和樹さん『願いと揺らぎ』監督
山田 徹さん『新地町の漁師たち』監督

15:00  ナマズとボール(仮題)
Catfish of Balls
ブラジル / 5分/ 2017年
/プロデューサー Producers & 監督 Directors : Luiz BOTOSSO and Thiago VEIGA / 製

15:05  オン・ザ・カバー(仮題)
On the Cove
イラン/ 5分/ 2018年

15:10 世界で最も汚染された川(仮題)
Indonesia, The World's Most Polluted River
フランス/ 55分/ 2018年

16:20 黄金の魚 アフリカの魚(仮題)
Golden Fish, African Fish
セネガル/ 60分/ 2018年
/プロデューサー Producer : Thomas GRAND / 監督 Directors : Thomas GRAND,【上映後トーク】
トマ・グランさん『黄金の魚 アフリカの魚』監督
ムサ・ジョップさん『黄金の魚 アフリカの魚』監督

17:35~18:35トークセッション「「2050年」のアフリカを語る」
【出演】
小松原 茂樹さん 国連開発計画(UNDP)アフリカ局 TICAD プログラムアドバイザー
紀谷 昌彦さん 外務省 中東アフリカ局アフリカ部国際協力局参事官アフリカ開発会議TICAD)担当大使
若林 基治さん 独立行政法人国際協力機構アフリカ部次長
清水 貴夫さん 京都精華大学アフリカ・アジア現代文化研究センター設立準備室研究コーディネーター
・総合地球環境学研究所・文化人類学者
【進行】
合田 真さん 日本植物燃料 代表取締役


◆2月24日(日)
11:00 - 最長16:30
11:00 特別プログラム
「在来馬等の里山での育成を考える
【出演】
岩間 敬さん 馬搬振興会 代表理事
中川 剛さん 木曽馬保存会事務局
塚田 直子さん 馬搬・馬耕研修生
【進行】
尾立 愛子 グリーンイメージ国際環境映像祭実行委員会事務局長

13:00 表彰式
【審査委員】
鵜飼 哲さん 一橋大学大学院言語社会研究科特任教授
岡田 秀則さん 国立映画アーカイブ主任研究員
安川 香澄さん 国立研究開発法人産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター副センター長

【委員長あいさつ】
佐藤 忠男 グリーンイメージ国際環境映像祭実行委員長 / 映画評論家

14:00 グリーンイメージ大賞作品上映


ドイツ映画祭 HORIZONTE2019

ドイツ映画の今がわかる!
最新のドイツ映画から選りすぐりの作品を上映!


期間:2019年3月8日(金)〜3月15日(金)
会場:東京渋谷 ユーロスペース
主催:ゲーテ・インスティトゥート東京
   HP:www.goethe.de/tokyo
助成: German Films
協力:アルバトロス・フィルム/クロックワークス、彩プロ
サイトHP:https://www.goethe.de/ins/jp/ja/kul/sup/hor.html

映画祭チラシpdfはこちら


【上映作品】

『ロミー・シュナイダー~その光と影~』(原題:3 Tage in Quiberon)
1981 年、世界的⼤⼥優ロミー・シュナイダーは、フランス、ブルターニュ地⽅のキブロンで静養のために数週間を過ごしていた。そこに、⻑年の友⼈ヒルデが訪れてくるが、加えてドイツから⻘年記者とカメラマンもやって来る。繊細なスター⼥優と野⼼的ジャーナリストの攻防が始まる。
1981 年のシュテルン誌に掲載された実際のインタビューと、キブロンで撮られた⽩⿊のポートレート写真に基づいて制作された作品。当時の雰囲気を再現した映像に、痛々しいほどに⼈間らしいロミー・シュナイダーが描かれている。⾃⼰顕⽰とメディア搾取、⽣への激しい渇望の狭間で揺れる映画スターの複雑な⼼の内に迫る。本作は 2018 年のドイツ映画賞にて 7 部⾨での受賞に輝いた。
2018 年/ 115 分/ ドイツ語・フランス語、⽇本語字幕つき
監督:エミリ・アテフ
キャスト:マリー・ボイマー、ビルギット・ミニヒマイヤー、ロベルト・グヴィスデク、チャーリー・ヒューブナー、ドニ・ラヴァン

『マニフェスト』(原題:Manifesto)
オスカー⼥優ケイト・ブランシェットが時に教師、また時にホームレスとなり、ポップ・アートからドグマ 95 まで、20 世紀のさまざまな芸術の潮流を作り上げた宣⾔を 13 のエピソードで演じる。映像作家ユリアン・ローゼフェルトによる監督のもと、国や時代、社会的⾝分や性別を越えたキャラクターを⼀⼈で演じきるブランシェットの演技⼒は圧倒的だ。作中、未来派やダダ、フルクサスなど、芸術組織のテキストや、芸術家個⼈の思索を監督が編集、13 のコラージュに再構成した。芸術におけるマニフェストとは、新しいものを⽣み出す可能性と、教義として凝り固まる危険を併せ持つ。この映画は、そのマニフェストのアンビバレントな役割を⾒事に描き出している。
2017 年 / 95 分 / 英語、⽇本語字幕つき
監督:ユリアン・ローゼフェルト
キャスト:ケイト・ブランシェットほか

『キャスティング』(原題:Casting)
初めて監督するテレビ映画にファスビンダーの『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』のリメイク版を選んだ監督のヴェラ。繰り返しオーディションを⾏うが撮影初⽇を前に主役が決まらない。不安を感じ始めるプロデューサーや撮影チームをよそに、ゲルヴィンはそんな状況を歓迎している。オーディションを受けに来る有名⼥優たちの相⼿役として、台詞を合わせることが仕事だからだ。主演男優が突然役を降りることになると、ゲルヴィンはチャンスとばかり⾊めき⽴つ。ヴァッカーバルト監督はファスビンダーの複層的な原作に対応しながら、独⾃の作品世界を作り上げた。鋭い視線で、権⼒や欲望に⽀配された⼈間関係の深淵に切り込み、⾯⽩くも⾟辣にドイツテレビ界のパワーゲームと依存関係に光を当てる。
2017 年 / 91 分 / ドイツ語、⽇本語字幕つき
監督:ニコラス・ヴァッカーバルト
キャスト:アンドレアス・ルスト、ユディット・エンゲル、コリンナ・キルヒホフ

『プチ・ブルの犬』(原題:Selbstkritik eines bürgerlichen Hundes)
⼤志を抱きながらもパッとしない映画監督ユリアンはいくつもの助成申請を却下され、やむをえず農家で収穫作業をすることになる。ユリアンが共産主義の理想を謳うメルヘン映画の主役に⼝説いていたカナダ⼈⼥性カミーレも成り⾏きで同⾏し、ふたりはリンゴ農家にたどり着く。⾁体労働で使い物にならないユリアンを尻⽬に、カミーレはありもしない映画の準備に没頭し、奇跡を信じるホンとサンチョという友達もできる。さらには、アメリカン・ドリームを掲げた模範的労働者や、不思議な僧侶も現れ混乱を深める。
ラードルマイヤー監督の⻑編デビューは、政治的態度を模索する今⽇の若い世代が抱えるジレンマを独特のコメディータッチで描き 2017 年のベルリン国際映画祭で⼤きな反響を得た。
2017 年 / 99 分 / ドイツ語・英語、⽇本語字幕つき
監督:ユリアン・ラードルマイヤー
キャスト:ユリアン・ラードルマイヤー、デラ・キャンベル、キョンテク・イ、ベンヤミン・
フォルティ

『明日吹く風』(原題:Whatever Happens Next)
これまでの⼈⽣を捨ててしまうことはいつだってできる。今すぐにでも。その電⾞から、⾞から、⾃転⾞から降りてどこかに⾏ってしまえばいいのだ。43 歳のパウル・ツァイゼは、普通だったら振り払ってしまうこんな考えをある⽇実⾏に移してしまう。妻、仕事、すべての⾝分と地位を捨てて。気のいい役⽴たずとして⼈にたかりながら放浪するパウル。勝⼿に⼈の⾞に同乗し、呼ばれてもいないパーティーや葬式に参列する。そしてある⽇、少し⾵変わりなネレと出会い恋に落ちる。次第に⾃分のペースにパウルを引き込んでいくネレ。
ユリアン・ペルクセン監督は⻑編デビューとなる本作で、現代の忙しい⽣活から逃れて気ままな暮らしに⾝を置いた時に待ち受ける混乱を、ユーモラスかつメランコリックに描いている。
2018 年 / 97 分 / ドイツ語、⽇本語字幕つき
監督:ユリアン・ペルクセン
キャスト:セバスティアン・ルドルフ、ニルス・ボアマン、エファ・レーバウ、リリト・シ
ュタンゲンベルク

『ソーシャルメディアの“掃除屋”たち』(原題:The Cleaners)
世界規模でデジタルコンテンツ検閲を⾏うマニラの巨⼤な影の産業を追ったドキュメンタリー映画。そこでは、シリコンバレーに委託され、何万⼈というコンテンツ・モデレーターが、フェイスブック、YouTube、ツイッターなどの問題のある投稿を削除している。残酷な表現に継続的に晒される作業は、作業員たちの認識能⼒や⼈格に異常をもたらすが、作業に関わる経験は⼝外厳禁だ。本作はコンテンツ・モデレーターを取り上げながら、フェイクニュースやヘイト・コンテンツがネットを通じて拡散・扇動される様⼦を映し出す。
監督のブロックとリーゼヴィークは、この作品でソーシャルメディアの理想と夢が破れる様を描き出し、その社会への重⼤な影響⼒に警鐘を鳴らす。
2018 年 / 88 分 / 英語・タガログ語、英語・⽇本語字幕つき
監督:ハンス・ブロック、モーリッツ・リーゼヴィーク

『父から息子へ~戦火の国より~』(原題:Of Fathers and Sons)
ベルリン在住のシリア⼈映画監督タラル・デルキ(『それでも僕は帰る 〜シリア 若者たちが求め続けたふるさと〜』)は、本作品の制作にあたりシリア北部の家族に 2 年半にわたり密着した。シリアで活動するアルカイダの関連組織ヌスラ戦線のメンバーを⽗親に持つ⼀家の元に滞在する。客として迎え⼊れられた監督は、戦⽕を⽬の当たりにする⼦供たちの⽣活を⾒つめ、特に⻑男と次男の成⻑を追った。観客はあるイスラム主義者のプライベートな側⾯、息⼦たちをイスラム国家の戦⼠に育て上げようとする⽗親としての側⾯を⽬にする。戦争の残酷さと家庭⽣活の内側とが絡み合う深いヒューマニズムの上に成り⽴ったこのドキュメンタリー映画は、2018 年ドイツ・ドキュメンタリー映画賞をはじめ数々の賞を受賞している。
2017 年 / 99 分 / アラビア語、英語・⽇本語つき
監督:タラル・デルキ

『希望の灯り』(原題: In den Gängen)
旧東ドイツのとある量販店で働き始めたクリスティアンは、その未知の⼩宇宙にそっと降り⽴つ - ⻑い通路、延々と続く商品棚、フォークリフトのシュールなメカニズム。軽い気持ちでクリスティアンの気を惹こうとするマリオンに、クリスティアンは恋をしてしまう。ところが急にマリオンは職場に来なくなり、落ち込むクリスティアンは、かつての惨めな⽣活に引き戻されていく。
ステューバー監督は、壁崩壊から 30 年、旧東ドイツの地⽅で単純労働者として運命を共にする⼈々の⽣活と、その密接な⼈間関係をこれまでとは違った視座から描いた。現実、憧れや夢などが堅実にフレーミングされた映像の中に収められ、量販店の冷たい宇宙は、魔法をかけられたような空間に変貌する。
2018 年 / 125 分 /ドイツ語、⽇本語字幕つき
監督:トーマス・ステューバー
キャスト:フランツ・ロゴフスキ、ザンドラ・ヒュラー、ペーター・クルト
配給(⽇本):彩プロ

『僕たちは希望という名の列車に乗った』(原題:Das schweigende Klassenzimmer)
1956 年、東ドイツの模範的労働者都市スターリンシュタットの⾼校 3 年⽣、テオとクルトは列⾞で訪れた⻄ベルリンの映画館でハンガリー動乱のニュース映像⽬にし、いたく⼼を揺さぶられる。スターリンシュタットに戻ると、⾃由を求め闘ったハンガリーの犠牲者に、授業中、2 分間黙祷することを思いついた。そのことが誰も予測できなかった結果をもたらす。国家権⼒は少年たちの⾏動を反⾰命的⾏為と断罪、⾸謀者の名を挙げるよう詰寄る。卒業を⽬の前に、彼らは将来を⼤きく変える決断に迫られる。
監督・脚本のラース・クラウメは新⼈俳優を起⽤し実⼒派で脇役を固めた。原作となったのはディートリッヒ・ガーストの⾃伝的⼩説『Das schweigende Klassenzimmer』(沈黙の教室)。ドイツ戦後史の⼼に刺さる⼀章。
2017 年 / 111 分 / ドイツ語、⽇本語字幕つき
監督:ラース・クラウメ
キャスト:レオナルド・シャイヒャー、トム・グラメンツ、レーナ・クレンケ
配給(⽇本):アルバトロス・フィルム/クロックワークス

『未来を乗り換えた男』(原題:Transit)
ドイツ軍の迫るパリを逃れ、ゲオルクはマルセイユに辿り着いた。鞄には、迫害の不安に耐え切れず⾃殺した作家ヴァイデルの遺品である原稿と⼿紙、そしてメキシコ⼤使館が発⾏した⼊国許可証を持っている。
港町マルセイユで、ゲオルクはヴァイデルのアイデンティティを盗み、船で渡航する機会を掴み取ろうとする。ある⽇、マリーに出会ったゲオルクは計画の変更を迫られる。『東ベルリンから来た⼥』で知られるペッツォルト監督は、アンナ・ゼーガースが 1941〜42 年、亡命中に執筆した⼩説『トランジット』を原作とし、舞台を現在のマルセイユに移した。⼤戦当時と今の難⺠たちの姿が重なりあい、過去と現在が時空を超えてつながり、全ての物語は、この永久の「トランジット(中継)」地へと集結する。
2018 年 / 101 分 / ドイツ語・フランス語、⽇本語字幕つき
監督:クリスティアン・ペッツォルト
キャスト:フランツ・ロゴフスキ、パウラ・ベーア、ゴーデハルト・ギーゼ
配給(⽇本):アルバトロス・フィルム