ベトナム映画祭2018 『目を閉じれば夏が見える』(暁)

映画祭シーズンが終わって一段落したら、なんと帯状疱疹になってしまい、眼精疲労がひどく2週間以上原稿が書けず状態でした。
http://cinemajournal.seesaa.net/article/463241761.html

楽しみにしていたベトナム映画祭ですが、東京フィルメックスと重なっていて、ベトナム映画祭の間には2本しか観ることができなかったけど、そのレポートを。

11月21日(水)
東京フィルメックス2018(11月17日~25日)とベトナム映画祭(11月10日~23日)がバッティングしてしまい、ベトナム映画祭になかなか行けずにいたけど、やっと行くことができた。
13本の上映作品のうち6本は、それまでの映画祭で観たり、公開されていて観たことがあったけど、ベトナムの映画を観る機会というのはなかなかないので、他にも観たかったのだけど、前半は東京国際映画祭が終わった直後でなかなか行けずで、すごく残念だったけど、ベトナム映画祭は結局1日しか行けなかった。
その中で、日本が舞台の作品『目を閉じれば夏が見える』が印象に残った。

『目を閉じれば夏が見える』 
監督:カオ・トゥイ・ニ 2018年製作
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©Soul Catcher Production

北海道東川を舞台に、ベトナムの女性が幼い頃にわかれた父親を探す物語。
日本にいる父からの手紙とともに、ベトナムに送られてきた写真を手がかりに東川にやってきたベトナム女性ハー。東川に向かうバスで、アキラと出会った。しかし、無愛想なアキラは、全然親切ではなくぶっきらぼう。写真教室を開いている。それでもハーはその教室の撮影会に参加しながら、父親探しを兼ねて彼女の父親の跡をたどる。父親から送られてきた写真はどこで撮られた写真かを東川在住の人たちや撮影会に参加している人たちの協力を得ながら探っていくのだが、彼女の父は東川で写真を教えていたらしい。そしてアキラはその教え子だということがわかってくる。そしてハーにはいきつけの写真屋ができ、そこのオーナーとも親しくなってゆく。雪山で撮られた写真は旭岳周辺で撮られた写真だった。しかし父親はすでに他界していた。そして、その写真屋こそ父親とゆかりの地だった。

東川は写真の街として知られる。写真をやっている私もいつか行ってみたいと思っている街。でもずっと勘違いしていて、北海道南部にある街だと思っていたら、旭川や美瑛に近い街だった。美瑛や富良野など、近くに何回も行っていたのに知らずにいた。今度は絶対行ってみよう。
この『目を閉じれば夏が見える』は日本・ベトナムの合作作品。カオ・トゥイ・ニ監督、初の長編作品で、今年(2018年)6月ベトナムで公開され、インディペンデント作品ながらヒットし、大きな反響があったという。
映画上映が終わった後、アキラ役を演じた阿久津貴文さんが登場し、撮影でのエピソードや、ベトナムでの舞台挨拶の話なども話してくれた。そして、本人いわく、実際の僕はアキラのような陰気でイジワルな人物ではありませんと笑いながら語っていた。

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阿久津貴文さん

ベトナムの映画、今までけっこう観てきたけど、ここ数年、ベトナムの発展とともに、娯楽作品が増えてきたなと感じる。以前はベトナム戦争を踏まえた作品だったり、『モン族の少女 パオの物語』や『草原に黄色い花を見つける』のようにベトナムの農山村部を描いた作品が多かったけど、都会の若者を描いた作品や『超人X』のようなスーパーマンだけどゲイなんていう単なるアクションではなく、ちょっとひねった作品なども出てきた。
今年大阪アジアン映画祭で観た『仕立て屋 サイゴンを生きる』などタイムスリップものとかも面白かったし、本来ベトナム現地でヒットしているエンターティメントやアクションなどのベトナム作品も日本で観ることができるようになったなと、この映画祭でのラインナップを見て思った。
今回とても残念だったのは、ダン・ニャット・ミン監督の『焼いてはいけない』を観ることができなかったこと。ダン・ニャット・ミン監督の作品は、これまで『十月になれば』(84)、『河の女』(87)『ニャム』 (95)を観ていて、この監督の作品に興味を持っているので、いつか『焼いてはいけない』を観てみたい。

参照 シネマジャーナルHP

『焼いてはいけない』ダン・ニャット・ミン監督インタビュー
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/461786756.ht

『モン族の少女 パオの物語』ゴー・クアン・ハーイ監督 インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2007/pao/index.html

『草原に黄色い花を見つける』 ヴィクター・ヴー監督 来日会見&インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2017/yellow-flowers/index.html

そういえば前日の11月20日(火)は、東京フィルメックスに行っていて、「そうだ、今回1回も行っていないのでベトナム料理食べよう」と、バインセオサイゴン有楽町で「バインセオセット」を食べたんだけど、21日ベトナム映画祭に行ったら、バインセオサイゴン新宿とのタイアップでバインセオが無料サービスされるというので、この日もバインセオを食べて(笑)、2日も続けて食べてしまった。バインセオというのはベトナムのお好み焼きというような料理で、薄いオムレツの中に海老とか豚肉、もやしなどが入っていて、それをレタスのような葉っぱに巻いて食べる。手で食べないといけないので、手が油だらけになってしまい少々食べにくい。でもさっぱりしていて、大好きなベトナム料理。以前はフォーを食べていたけど、最近はベトナム料理の店に行くと頼むことが多い。

白石さんの記事参照
http://cinemajournal.seesaa.net/article/462899070.html

思えば、このバインセオサイゴン新宿は新宿駅の上のビル(新宿ミロードだったかな?)にあった時に初めて行ったのを思い出した。その後、有楽町店にも通うようになった。その後、新宿店は別の場所に移り、そこにも行ったけど、今はまた駅に近いところになったようだ。
でも一人で入ることが多い私には、有楽町店のほうがセットがあるので入りやすい。このバインセオセットだとフォーもついている。新宿店は数人で入るにはいいけどセットがなくて、一人だといろいろ食べられないのが残念。でも、新宿店は、私がベトナム料理を好きになったきっかけになった店。そういう意味ではおいしいベトナム料理を教えてくれてありがとうと思っている。



東京国際映画祭 イラン映画『冷たい汗』ソヘイル・ベイラギ監督 Q&A  (11月1日)

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(左:通訳のショーレ・ゴルパリアンさん)

アジアの未来 『冷たい汗』
2018年/イラン
監督:ソヘイル・ベイラギ

*物語*
女子フットサルのイラン代表チームの主将をつとめるアフルーズは、自らの活躍でアジア選手権大会の決勝進出を決める。ところが、決戦の地マレーシアへ向かう空港で、夫が出国を認めていないことが発覚し、足止めを食ってしまう。テレビキャスターの夫とは別居中で、夫はこれを機に妻が他国のチームに引き抜かれて国を去ってしまうのではないかと危惧していたのだ。アフルーズは、チームメイトの待つマレーシアに行けるのだろうか・・・
★注)イランでは、女性が出国する場合、既婚者は夫の許可、未婚や離婚した女性は父親(亡くなっている場合は親族の男性)の許可がいる。

1回目の上映は深夜だったのでQ&Aを聴くのを諦め、2回目の上映後のQ&Aを取材しました。
公式レポートが掲載されていないので、遅ればせながらお届けします。
*1回目の10月30日のQ&Aの模様はこちらで

監督:こんにちは。初めて東京に来られて、皆さんと一緒に自分の映画を観ることができてとても嬉しいです。

司会:7年ほど前の実話をもとに作った作品で、今、イランで公開中で大ヒットしているとのことです。

*会場とのQ&A

― 現在公開中とのこと。女性への対応も変化し、かつてはサッカー場に観にいけないという映画も作られました。このような題材で作る上での困難はあったのでしょうか?

監督:
女性がサッカー場に入れないのは、今も同じ状況です。特別に許された女性だけが、先日入ることができました。
フットサルは、女性が選手として活躍しているけれど、服装に規制があります。またイランでは、女性のフットサルを観にいけるのは女性だけです。映画では家族の問題も扱っています。

― 夫が古い価値観を代表するキャラクターです。テレビのパーソナリティをしていますが、番組も古い価値観を表わしているタイトルでした。イランのテレビでは、古い価値観のものを番組が多いのでしょうか? メディアの事情を教えてください。

監督:番組は、実際に似たものがあって、真似して作りました。伝統的なものだけではなくて、新しい雰囲気の番組もあります。本作のキャスターはモダンな格好をしているのに、頭の中は古くて、モダンでもな伝統的でもない中途半端な男になっています。

― サラーム! 半年前に女一人でイランを2週間旅しました。離婚した女性や離婚調停中の女性と話す機会もあって、どんな扱いをされるかを聞くことができました、男性が離婚すると、イランの社会ではどういう扱いをされるのでしょうか?

監督:離婚は他の国と同様の状況だと思います。女性が離婚する時は、独立を求めていて、とても芯が強いです。イランの法律は、全くアンチ女性ではないけれど、男性の肩を持っている部分が多いと思います。女性は自分から離婚したいと思って裁判にかけると男性に有利な場合が多いのが実情です。
女性は単なる遊びの旅行だけでなく、仕事で国外に出る場合も夫の許可が必要なので、そこを変えてほしいと、この映画を作りました。

司会:離婚して女性が非難されるようなことはありますか?

監督:
家族の中で生きている女性の方が自由があるかもしれません。離婚して一人で暮らしている女性が白い目で見られることはないけれど、皆、一人で頑張って生きていこうとしています。イランの女性はとても強いです。

― 主人公が連盟から解雇通告を受けたあと、連盟の部屋の中で女性たちが宗教的な歌を歌っている場面があったのが気になりました。信仰と社会システムの関係をどう描こうとしたのでしょうか?

監督:イランでは、聖人の生誕日を祝ったり、亡くなった日を悼む行事が数多くあります。そのような宗教的行事を役所の中で仕事をやめて行うのはいけないことだと思うので、あえて入れました。
彼女が解雇されて悲しい思いをしているのに、連盟のスタッフの皆が楽しそうにやっているのを見て、さらに孤独を感じます。連盟は自分の第二の家だと思っていたのに、違っていたという思いです。

― 映画を作っている時に、イラン国内で、反発はありませんでしたか?
また、公開後の反応は?


監督:このテーマは検閲官がいろいろ言いたくなるものでしたが、あれこれ口論して、検閲で引っかかったところはほとんどありませんでした。結局、一つ二つの台詞が駄目と言われましたが、大切な台詞ではなかったので削除しました。
映画が出来上がって、公開前にはイスラーム指導省の検閲が入って、テレビや新聞に宣伝を出せないという“静かな検閲”を受けました。口コミやSNSで広めてくれて、お陰さまで、多くの人に観てもらうことができました。人々が映画を守ってくれました。指導省は悔しがっていると思います。

― 夫役の人は、こんな人は死ねばいいというキャラクターでした。女性から観て、あんなに気分の悪くなる男性を男性監督が撮ったのがすごいと思いました。女性を抑圧する理不尽な法律はすぐには変わらないと思うのですが、変えていこうというムーブメントはあるのでしょうか?


監督:幸い、国会の中で議論していて、もうすぐ変わるのではと期待しています。女性議員のコミュニティがあって、電話をくださって、「あなたの映画を観て勇気を貰いました」と言われました。法律が変われば、女性議員の人たちが私の映画に影響を受けて頑張ってくれたのだと嬉しく思います。

司会:あのにくたらしい夫役はとても上手かったですが、プロの役者ですか?

監督:はい、大プロです。この映画に出演しているメインの5人の役者すべてイランの映画祭で賞も貰うような方たちです。

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