9月16日 10:05 福岡空港着。ホテルに荷物を預けて、櫛田神社にお参りして、キャナルシティの会場へ。今年のアジアフォーカス最初の映画は、ベトナム映画 『仕立て屋 サイゴンを生きる』。といっても、最後の20分だけ拝見。伝統的なアオザイをモダンな布地で現代に蘇らせた華麗なファッションショーのエンディング。上映後のグエン・ケイ監督が登壇するQ&Aだけでも聴ければと思っていた次第。 引篭もりだったヒロインの物語は、11月の東京でのベトナム映画祭で観ることに。
10月には大阪でのベトナム映画祭で上映されます。
http://www.cinenouveau.com/sakuhin/vietnam2018/vietnam2018.html#top
大阪 シネ・ヌーヴォでの上映日程:
10月13日(土)18:50~、10月19日(金)16:50~
『仕立て屋 サイゴンを生きる』
2017年/ベトナム/100分
監督 : チャン・ビュー・ロック、グエン・ケイ
1969年のサイゴン。9代続いた仕立て屋の娘ニュイはアオザイ作りには興味を示さず、伝統を継承する母親の方針に反発。突然、2017年のホーチミンにタイムスリップした彼女は、首を吊ろうとしていた年老いた自分自身に対面する。服飾業界を舞台に展開するポップなファッション・ファンタジー。
◆9月16日(日)上映後のQ&A
ゲスト:グエン・ケイ監督 司会:高橋 哲也氏
司会:監督は脚本も担当されました。アオザイをテーマに映画を作ろうとしたきっかけは?
監督:まずは、福岡の皆様、ありがとうございます。
アオザイをテーマに選んだのは、プロデューサーから若い人が伝統的なものを好まない傾向があって、アオザイも着なくなっているので、アオザイを着たくなるような映画を作ろうと言われたのが発端です。アオザイはクールだと思えるようなものをと。
司会:ヒロインのニュイのお母さん役を演じたのが、プロデューサーのゴー・タイン・ヴァンさんですね。2016年のアジアフォーカスのベトナム大特集で上映した『ロスト・ドラゴン』(ゴー・クオン監督、2015年)の女優さんで、有名な方です。
*会場より*
― 60~70年代の実写の映像が使われていて、CGより良いアイディアでした。布地を切るハサミの音にもこだわりを感じました。ベトナムで公開されたときには反響があってアオザイがブームになったのではないでしょうか?
監督:そうなんです。嬉しいことに、若い人たちが注目してくれました。110万枚チケットが売れました。(注:2017年興行収入第3位) テト(旧正月)の時には、大勢の若い人たちがアオザイを着て町を歩いてくれて嬉しかったです。今や、アオザイ大好きとも言ってくれました。
― この物語にはモデルがあるのでしょうか?
監督:モデルのお店があったわけではありません。映画を撮り始めた時、私自身も女優さんと一緒にアオザイの作り方を学びました。この42年間のベトナムの変化で、昔ながらのアオザイを作っているお店は、もう1~2軒しかありません。今のお店は昔の作り方ではないのです。かつて作っていた人たちを訪ねて、当時の話を聞きました。戦争もあって、昔のものはなくなったり、消されたりしているので、当時の姿を皆で再現しようと頑張りました。
― 伝統を巡る親子の対立で、普遍的なテーマでした。ヒロインの現代的なファッションも含めて、とても気を使われたと思います。
監督:好運だったのは、ファッションの専門家も手助けしてくださいました。トイ・グエンさんはスポンサーにもなってくれて、アオザイをすべて提供してくださいました。ニュイの服もすべてトイ・グエン製です。一方、有名デザイナーのヘレンの服は、イッセイミヤケ、バレンシアガーなどすべて外国製です。ヘレンは新しいものを象徴しています。
― 現代と比べるのが、1960年代なのはなぜですか? ベトナムの人にとって、60年代はどういう意味を持つのでしょうか?
監督:韓国と同様、ベトナムも南北に分かれていた時代がありました。南はアメリカの文化の影響を受けていました。南の中心サイゴンでは、60年代は戦争中にもかかわらずタイムラグなくアメリカ文化に追いついていました。1975年に南北統一し、南部の人は外国に移住する人が多くて、私の家族も私と母だけがベトナムに残りました。60年代は、懐かしく輝かしい時代です。映画で善意で60年代を描くということで、サポートしてもらえました。政治的なメッセージは、あまり盛り込んでいませんが、女性監督ですので、ファッションに注目しました。
司会:2015年の福岡アジア文化賞で、ベトナムの女性ファッションデザイナーのミン・ハンさんが芸術・文化賞を受賞されました。
監督:ミン・ハンさんからは、どれだけアオザイを愛しているかを学びました。福岡が彼女にアジア文化賞を差し上げてくださって嬉しいです。
― ベトナム語がとても美しかったです。時代が変わっても、何が大事かを教えてくれる映画でした。次回作は?
監督:ベトナム語が美しいとおっしゃってくださって嬉しいです。昔と今の価値は違ってきています。谷崎潤一郎の「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」をバイブルにしているのですが、芸術家は感じたものを作品にするのに文化や時代のボーダーはありません。
次回作は、ベトナムのショウビズの暗闇を覗くというテーマで作っています。「スキャンダル」のシリーズです。次の次のテーマは、ベトナムのご飯「タムタム」についてです。また、3部作の一つとして、建築をテーマにホイアンやフエの建物を描く予定です。
司会:最後にひとこと!
監督:福岡には初めてまいりましたが、とても住みやすそうで素晴らしい町ですね。
司会:本日は、ありがとうございました。
終了後、会場の外でサイン会が開かれました。