あいち国際女性映画祭に行ってきました2(暁) 『ドリ-ム』『まわる映写機めぐる人生』『世界で一番ゴッホを描いた男』

2018年9月6日(木)

『ドリ-ム』 原題:Hidden Figures
アメリカ/2016年/127分
監督:セオドア・メルフィ
出演:タラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイ、ケビン・コスナー
配給:20世紀フォックス映画

まだまだ知られていない実話を知りたい

去年公開された『ドリーム』、ベストテンに入れた作品だったので、もう一度観てみようと思い参加した。宇宙開発の話は様々な形で伝えられてきたけど、開発に関わった人の中で開発のこととか中心になった人たちのことがほとんどで、ここに出てきた計算係だった女性たちのような、数字や計算に強い黒人女性が、こんなにもたくさんロケット開発のために働いていたということを知った。
宇宙開発計画初期、アメリカとソ連の宇宙開発競争真っ只中の1961年、コンピュータもまだ発達していない時代に、NASAでは優秀な頭脳を持つ黒人女性たちが、ロケットの打ち上げに欠かせない計算手として働いていた。人種差別・女性差別が今よりずっとひどかった時代。その中でも特に優れた3人の黒人女性を中心に偉業と差別との闘いが描かれている。彼女たちの計算能力にびっくりだけど、そういう能力があっても、まだまだ人種差別がひどかった時代(今でもいいとは言いがたいけど)、アメリカ初の有人宇宙飛行を達成するため、彼女たちを含めてたくさんの人たちが働いている様子が描かれていた。

アメリカの「どうだ、アメリカは!すごいだろう」的なサクセスストーリーを描いた作品は嫌いなんだけど、この作品は、その中でもNASAで働いていた黒人女性たちの闘いと活躍が描かれていて、とても興味深かった。
所長はものわかりの良い人のように描かれていたけど、差別している側は言われないと気がつかない。ロケット打ち上げの「ドリーム」はかなえられたけど、公民権運動に大きな影響を与えた、1963年の「ワシントン大行進」でキング牧師があらゆる人種の自由と平等、民主主義を訴え「私には夢がある」と演説した「ドリーム」は未だに達成されていない。


『まわる映写機めぐる人生』

英題:Projecting Film, Projecting Life
日本/2018年/110分
監督:森田惠子
出演:鈴木文夫、荒島晃宏
配給:映像Sプロジェクト

映画を愛する人、必見の作品


『まわる映写機 めぐる人生』は、森田惠子監督の『小さな町の小さな映画館』『旅する映写機』に続く映画にまつわる三部作の完結編。映画が誕生して123年。映写技師、自主上映活動、映画鑑賞会、日本一古い映画館を維持して興行を続ける人たちなど、映すことに心をかたむけた人たちを訪ねたドキュメンタリー。
この作品のHPに、この作品を作ったきっかけが書かれています。
「『まわる映写機 めぐる人生』を作るきっかけは、「川越スカラ座」の『旅する映写機』の初日(2014年5月24日)に、本作に登場する元埼玉大宮東映の支配人であり映写技師だった石川直二さんが訪ねてくださったことでした。
開館前からいらしてくださり、手にしていたのは私も見るのが初めだった黒革の「映写技術者免状」でした。 「初日なら監督さんが来るかもしれないと思ってね」と、体調を心配する奥さまを説得して大宮から駆けつけてくださったのです。上映後のトークでは、急遽、観客の皆さんに博物館級の「映写技術者免状」を見て頂き、お話もしていただきました。その時のお話がとても興味深かったことと、石川さんの表情があまりにも魅力的だったので、これは撮らなければ…と思ったのです。
方針など何もないまま、6月19日にご自宅を訪問し撮影をスタートさせました。その後はいつものことながら、台本もないまま芋づる式の撮影を重ねてゆきました。そして、映写に関わる皆さんのお話を伺いながら、映像が時代ごとにどのような形で使われてきたのか、ということにも関心が深まり学ばせていただきました。」とあります。
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森田惠子監督

森田監督の作品は観たことがなかったけど、タイトルに惹かれて観ることにした。タイトルからは映写技師の人の物語かなと思ったのだけど、映写技師だけでなく、映画の上映活動をしている人や、映画館を続けるためにいろいろ活動している人など、たくさんの映画を愛する人たちが出てきて、映画に対する思いに溢れた作品だった。映画全盛期は掛け持ち上映があり、フィルムを運ぶ専用の人がいたり、上映途中でフィルムが切れた時の応急処置の話など、フィルムの品質が悪かった時代の映写には色々な工夫が必要だったことなど、フィルム上映時のエピソードはとても興味深かった。映画の自主上映をめぐる人たちの交流の話もとても面白かった。また「文化として映画・良い映画を子供たちに見せよう」と、子供たちに社会教育としての映画を届けようと上映会を続けている人たちがいたり、過疎の里山の村での上映会している学生たちがいたりと、様々な形で、映画上映をしている人たちがいるということを知って心強かった。
TVで紹介され、前から行ってみたいと思っていた、日本で一番古い映画館「高田世界館」が出てきて、いつか行ってみたいと思った。そして高野史枝さんが監督した『厨房男子』で撮影を担当した城間典子さんが出てきてびっくり。京都造形芸術大学映画学科を卒業した方で、京都の里山で暮らしながら、手作りの自主上映会を行うところが映されていて、彼女はこういう活動をしているのだと知った。


『世界で一番ゴッホを描いた男』 
原題『中國梵高』
英題:China’s Van Goghs
中国、オランダ/2016年
監督:ユイ・ハイボー、キキ・ティンチー・ユイ
出演:チャオ・シャオヨン
配給:アーク・フィルムズ、スターキャット

模倣から創造へ 最後の展開に拍手

複製画制作で世界の半分以上のシェアを誇る油絵の街、中国南部深圳市大芬(ダーフェン)。出稼ぎでこの街にやって来た趙小勇(チャオ・シャオヨン)は独学で油絵を学び、20年もの間ゴッホの複製画を描き続けてきた。独立し、自らの工房を持ち、弟子もいる生活になったが、絵を描くのも食事も寝るのも全て工房の中。そんな生活の中、ゴッホの複製画なら趙小勇と言われるまでになった。オランダの画商との信頼も得て、交流を続けるうち、いつしか「本物のゴッホの絵を見たい」と思うようになったが、毎日の締め切りに追われる生活の中、その願いはなかなかかなわない。しかし、長年の夢をかなえるため、何人かの仲間と「本物のゴッホの絵」を見る旅行を実行に移す。本物の絵を見ることで、ゴッホの絵に対する想い、絵にかけた想いがわかるのではないか、そして今の自分を見つめ直し、これからの人生や仕事に役立ち、きっと何かを得られるだろうという思いの元、アムステルダムを訪れた。そして得られたものは。
本物のゴッホの絵を見て衝撃を受けた趙小勇は、自分は何をすべきかと考えるようになり、「自分は職人か芸術家か」考えた末、長年離れていた故郷の姿を描き始めた。長年培った絵の技から生まれた作品は見事なもの。

去年、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2017でこの作品が上映された時、観損ね、新宿のシネマカリテでの上映も観ることができず、残念に思っていたら、この映画祭で上映されるということがわかり、この作品を観に行こうと、この映画祭に来た。
ゴッホの複製画に人生を捧げる男と、自身の想いの目覚めを追った感動のドキュメンタリーだった。
劇場公開が決まった。

公式HP『世界で一番ゴッホを描いた男』



















第 31 回東京国際映画祭 ラインナップ発表会 あなたの“観たい”がきっと見つかる!

今年の東京国際映画祭の全部門のラインナップと、各部門審査委員や様々なイベントの魅力を発表する記者会見に参加してきました。
(9月25日(火)午後2時~4時 虎ノ門ヒルズ メインホールにて)

<第 31 回東京国際映画祭 開催概要>

■開催期間:2018 年 10 月 25 日(木)~11 月 3 日(土・祝)
■会場: 六本木ヒルズ、EX シアター六本木(港区)、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場(千代田区)ほか 都内の各劇場及び施設・ホールを使用
■公式サイト:http://www.tiff-jp.net

【ラインナップ発表記者会見】
司会は、お馴染み、映画好きを自認する笠井信輔アナウンサー。

◆久松猛朗フェスティバル・ディレクターより開催の挨拶
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昨年掲げた3つのビジョン
「映画を観る喜びの共有」
「映画人たちの交流の促進」
「映画の未来の開拓」
を、さらに充実させて、これまで映画祭に足を運んだことのないような人にも参加してもらえるようなイベントを打ち出したことを強調しました。
*今年は六本木ヒルズだけでなく、日比谷ミッドタウン 日比谷ステップ広場でも、野外上映やイベントが繰り広げられます。

◆映画祭アンバサダー 女優・松岡茉優(まつおかまゆ)さん登壇
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司会の笠井さんから、「アンバサダーに選ばれたお気持ちは?」と聞かれ、「まずは、私でいいんですか?と言いました。去年、東京ジェムストーン賞を貰ってすぐに、いいルートで来てるなと思いました」と率直に答える松岡茉優さん。
去年、『勝手にふるえてろ』が観客賞を受賞して、もう一度クライマックスで上映され、たまたま撮影が早く終わって観ることができ、会場の熱気を感じて感激したと語る松岡さん。
『万引き家族』でカンヌに行った感想を聞かれ、「カンヌは、ほんとに凄い。でも、at homeさは、東京国際映画祭も負けてないです」と、称えることも忘れません。さらに、亡くなられた樹木希林さんの思い出を聞かれ、「たくさんたくさんの思い出は宝物です。悲しいという思いはあまりなくて、一度、映画の中でお別れしていて、樹木希林さんと同じ時代に生まれたことを誇りに思って、生で樹木さんを観た世代の人間として次の世代に記憶を渡したい」と語りました。

◆オープニング&GALAスクリーニング&クロージング作品の発表
オープニング作品:『アリー/ スター誕生』
GALAスクリーニング上映: 『人魚の眠る家』
クロージング作品:『GODZILLA 星を喰う者』
 (クロージングの11月3日は、ゴジラ生誕の日)

【ラインナップ発表】
◆コンペティション部門
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審査委員長:ブリランテ・メンドーサ監督(『キナタイ マニラ・アンダーグラウンド』『ローサは密告された』)
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審査員:
ブライアン・バークさん(J・J・エイブラムス作品や『ミッション:インポッシブル』シリーズのプロデューサー)
タラーネ・アリドゥースティさん(『セールスマン』主演女優)
スタンリー・クワン監督(『ルージュ』『フルムーン・イン・ニューヨーク』)
南果歩さん(『海炭市叙景』『家族X』『わが母の記』など)

プログラミング・ディレクター 矢田部吉彦氏より、109の国と地域、1829本の応募の中から選ばれた16作品について、欧州、北欧、東欧、北米、中南米、中東、中央アジア、東アジア、そして日本と、地域順に台本も見ず、一気に解説されました。
最後の最後、日本映画『半世界』のところで、主演女優さんの名前をど忘れ。笠井さんが「池脇千鶴さん!」と助け舟を出しました。
今年は作家性の強い作品を重視したけれど、表現方法はバラエティーに富んでいるとのこと。それにしても矢田部さんのよどみない解説を聞くと、どの作品も観たくなります。

続いて、コンペティション部門の日本作品『愛がなんだ』の今泉力哉(いまいずみりきや)監督と主演女優 岸井ゆきさん、そして『半世界』の阪本順治監督がゲストとして登壇しました。

『半世界』阪本順治監督
2006 年の『魂萌え!』(たまもえ)以来、12 年ぶりのコンぺ出品。
「旅が苦手で、荷造りしないで参加できる東京国際映画祭は大好きです。もうすぐ60 歳、監督になって30年目。コンペに選ばれて、本当に光栄です。華やかな場所は苦手で、レッドカーペットを歩くとなると身構えてしまいますが、意外とはしゃいてしまいます」と、シャイに語りました。
炭焼き職人役に稲垣吾郎さんを起用。「土の匂いのする役が似合うのではと思っていましたが、淡々と炭を焼く土着な人間が実は似合うと確信しました」

『愛がなんだ』
今泉力哉監督:東京国際映画祭には、観客として、そして日本スプラッシュ部門などで携わってきましたが、メインのコンペで他の国の作品と並んで上映されるのが嬉しいです。
やっとたどりついて、どう観ていただけるかが楽しみです。

岸井ゆきさん(ダメ恋愛映画の主人公テルコ役):.演じてる時は全然ダメと思ってなくて、マモルに向かっていく勇気を観てくれという勢いでした。最近スクリーンで観たのですが、やっぱりダメダメで、テルコの肩を持って応援しちゃいたくなりました。

◆「アジアの未来」部門 
プログラミング・ディレクター 石坂健治氏より、創設6年目となる本部門について解説。初期のヤングシネマ部門の精神を継ぐ部門で、監督作品3本までの未来を担う監督の作品が対象。
小さな世界、小さな声、少数民族、LGBT、MeToo的なテーマのものが集まりましたが、社会派の深刻なものというだけでなく、コメディー、スポーツなどバラエティー豊かな作品群。
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◆「日本映画スプラッシュ」部門
本部門に監督賞が追加され、審査員が発表されました。

矢田部吉彦氏より、今年は特に新人監督の作品が多いとコメントありました。
中でも、特別上映される『21世紀の女の子』は、新進気鋭の15名の女性監督による短編オムニバス。注目したいです。

続いて、下記各部門の内容が紹介されました。
*特別招待作品

*「ワールド・フォーカス」部門
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*「Japan Now」部門
*「CROSSCUT ASIA」部門
5年目となる国際交流基金アジアセンター提供の部門。今年は、音楽にちなんだ映画9本を上映。
*「アジア三面鏡 第2弾」
*「ユース」部門
*「日本映画クラシック」部門

◆アニメーション特集 『アニメーション監督 湯浅政明の世界」
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湯浅政明(ゆあさまさあき)監督がスーツ姿で登壇。「今日はスーツなので、トレードマークの帽子は被ってこなかった」と第一声。「来年は自分だといいなと思ってましたが、格が違うと。特集に選ばれて、大変光栄です」

上記のほか、ぜひ参加したい魅力的な企画
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このあと、今年の東京国際映画祭全体への質疑応答の時間が設けられ、最後にゲストの方たちのフォトセッションでお開きとなりました。
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今年も多彩な東京国際映画祭。
あなたの“観たい”を、ぜひ見つけて、存分に楽しんでください。

各部門の詳細や、チケット購入については、公式サイトで!


ジョージア[グルジア]映画祭 コーカサスの風

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期間:2018年10月13日(土)~26日(金)
主催:岩波ホール、ジョージア国立フィルムセンター
後援:在日ジョージア大使館

コーカサス山脈の南に位置する国ジョージア(グルジア)に映画が誕生して今年で110年。
その間、1918年にロシア帝国から独立、その後、ソ連邦に70年間組み込まれたが、1991年に独立を回復。ソ連時代も含め、自らの民族文化を取り入れた映画を作り続けてきたジョージア。
『放浪の画家ピロスマニ』『落葉』『祈り 三部作』『みかんの丘』『とうもろこしの島』『花咲くころ』・・・数々のジョージアの名作を上映してきた岩波ホールで、この度、サイレント映画の伝説的名作から、ソ連時代を経て現代にいたるまで、未公開作品を中心に一挙上映するジョージア映画祭が開かれます。

◆上映作品
『デデの愛』https://www.iwanami-hall.com/topics/fes/1972
『他人の家』https://www.iwanami-hall.com/topics/fes/1966
『少年スサ/ダンサー』https://www.iwanami-hall.com/topics/fes/1968
『微笑んで』https://www.iwanami-hall.com/topics/fes/1970
『大いなる緑の谷』https://www.iwanami-hall.com/topics/fes/1964
『ケトとコテ』https://www.iwanami-hall.com/topics/fes/1957
『少女デドゥナ/メイダン世界のへそ』https://www.iwanami-hall.com/topics/fes/1959
『私のお祖母さん/スヴァネティの塩』https://www.iwanami-hall.com/topics/fes/1962
『あぶない母さん』https://www.iwanami-hall.com/topics/fes/1954
『放浪の画家ピロスマニ』https://www.iwanami-hall.com/topics/fes/1952
  シネジャ作品紹介 http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/430621488.html
『陽の当たる町』https://www.iwanami-hall.com/topics/fes/1949
『ヒブラ村』https://www.iwanami-hall.com/topics/fes/1987
『告白』https://www.iwanami-hall.com/topics/fes/1928
『ブラインド・デート』https://www.iwanami-hall.com/topics/fes/1947
   2013年の東京国際映画祭で上映
~写真で綴る東京国際映画祭~(2013/10/27)に記事と写真あり。
http://www.cinemajournal.net/special/2013/tiff26pics/index.html

短編映画
『映像』偶数日の11:00の回、本編上映前に上映。
『西暦2015年』奇数日の11:00の回、本編上映前に上映。

詳細は、岩波ホールのサイトで! https://www.iwanami-hall.com/






台湾映画祭2018 @福岡・アジア美術館8階 あじびホール

アジアフォーカス・福岡国際映画祭関連企画として、台湾映画祭が開催中です。

開催日:9月13日(木)~9月18日(火)①10:30~②13:30~③16:30~
会場:あじびホール(福岡・アジア美術館8階)

上映作品 (4作品とも九州初上映)
◆私を月に連れてって 2017年(105分)
◆淡水河の奇跡 2016年(109分)
◆川流の島 2017年(97分)
◆心の故郷~ある湾生の歩んできた道~ 2018年(150分)

『心の故郷~ある湾生の歩んできた道』林雅行監督インタビューを、シネマジャーナルに掲載しています。
http://www.cinemajournal.net/special/2018/kokoro/index.html
戦前、日本統治下の台湾(1985年から1945年の50年間)で生まれ育った日本人(湾生)を巡るドキュメンタリー。


★上映スケジュール等 詳細は下記で確認ください。
http://faam.city.fukuoka.lg.jp/event/detail/700

あいち国際女性映画祭に行ってきました1(暁) 『リメンバー・ミー』『梅の木の俳句』

9月4日~8日まであいち国際女性映画祭に参加しました。

2018年9月4日(火) なんなんてこったの1日目

9月5~9日に開催された「あいち国際女性映画祭2018」、今年は4日の記者会見から出ようと4日の朝10時半頃、新幹線「のぞみ」で東京駅を出た。台風上陸が間近に迫っていたので、昼頃に名古屋着ならなんとか間に合うだろうと思って出たんだけど、列車は途中からゆっくりになり11時55分に浜松駅で新幹線は止まってしまった。それから22時頃まで動かず状態。幸い駅に停車していたのだけど、臨時停車でホームには接していなくて、隣に止まっている「ひかり」と「のぞみ」の間に梯子を渡し、「ひかり」を経由してホームに出ることができた。長時間車両の椅子に座っていたけど、少しは外に出ることができたのが不幸中の幸いだった。でも、台風が日本海側に出て通過したら動くのかと思ったら、架線が切れたとのことで、結局10時間近く浜松駅に留まることになった。やっと22時頃動いたけど、止まり止りで、結局名古屋には夜中0時頃着。すでにその時間では、泊まる予定のウイルあいちの宿泊所には入れず、新幹線ホテルに泊まることになった。こんな状態で少し疲れたけどそれでもなんとか名古屋にたどり着くことができた。朝、始発前の5時頃には起こされて、あとは名古屋駅の新幹線待合室で7時頃まで寝て、朝食を食べてからウイルあいちに向かったけど、なんとも大変な幕開けでした。

9月5日(水)

名古屋駅構内で、名古屋名物の小倉アンのモーニングセットで朝食。そして映画祭会場のウイルあいちへ。午後3時からでないと宿泊受付はできないというので、傘や大荷物を持ったまま映画祭会場へ。今回、3日間ウイルあいちに泊まれることになったのはいいのだけど、毎日違う部屋になってしまった。当初、和室しか取れずそこで3連泊の予定だったけど、間際になって洋室の空きが出て、洋室にを変更してもらったら毎日部屋が変わるはめになってしまったというわけ。それでも会場のそばに泊まることができるというのは大変ありがたい。10時からウイルホールで上映される『リメンバー・ミー』へ。

『リメンバー・ミー』
中国/2017年
監督:彭小蓮(ポン・シャオレン)
出演
黄宗英(ファン・ゾンイン)本人
阿偉:賈一平(ジャ・イーピン)
彩雲:馮文娟(フォン・ウェンジュン)

上海と映画への想いに溢れた作品だった

伝統的な中国オペラで活躍している女優彩雲は、映画スターになることを夢見て、田舎の村から上海にやってきて、幼馴染の阿偉(アーウエイ)が暮らしている古い家に転がりこんだ。阿偉は撮影監督になることを夢見て、ドキュメンタリー作品を撮っている女性監督の元でカメラマンの仕事をしている。その作品は1930年代に中国で活躍していた趙丹(チャオ・タン)と妻で女優でもある黄宗英(ファン・ゾンイン)のことを扱っているのか、現在も存命の黄宗英に取材するシーンが出てくる。そして趙丹出演作の『カラスと雀』『街角の天使』のシーンも流れる。
阿偉が住んでいるのは上海の古い街、石庫門の今にも取り壊わされそうな古い家。阿偉の家に趙丹が出演する昔の映画フィルムがたくさんあるので、住んでいるところは、昔映画館だったところなのかもしれないと思ったけど、後で監督に確認したらそうではないと答えていた。
そのフィルムを見て映画に想いを馳せる阿偉と、そのフィルムを見てその作品のシーンを演じることを思いつく彩雲。彩雲が映画のいくつかのシーンを同じように演じ、阿偉が撮影。それをネットにアップ。それを見て彩雲に映画出演の声がかかった。
古い映画人へのオマージュと近代的なネットによる映像アップという状況。商業映画とインディペンデント映画。現在の、北京と上海の映画事情と香港との関わり。古い上海と現代の上海。壊されていく古い街の向こうには近代的な高層ビルが見える。そんな対比が描かれる。
彩雲は北京での撮影に向かうが、阿偉は上海に残って仕事をする道を選ぶ。映画への夢を追いかける二人だけど、何を見つけることができるのだろう。
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彭小蓮監督

彭小蓮監督の故郷上海への愛と、壊されてゆく古い古民家への思い入れ、忘れられている趙丹や黄宗英など古き良き中国映画を若い人にぜひ知ってもらいたいという思い、若い映画人を目指す二人へのエールに満ちた作品だった。
中国で作った字幕がひどかったけど、せめて上映前に観客に字幕の件を断ったほうがよかったのではと思った。以前、東京でも中国映画週間でそういうことがあり、観客が離れていったことがあったのでちょっと心配。こちらは日本人ボランティアが参加し、今はちゃんとした字幕での上映が続いている。


『梅の木の俳句』
イタリア・日本/2016年
監督:ムージャ・マライーニ・メレヒ
撮影監督:マウラ・モラレス・バーグマン
編集:レティツィア・カウドゥッロ
音楽:坂本龍一

同盟国イタリア人が日本で強制収容されていたことに驚き


イタリアの著名な文化人類学者&東洋学者であり、写真家、登山家でもあったフォスコ・マライーニ(1912-2004)は、1938年研究のため家族とともに来日。しかし、第二次世界大戦下の1943年、イタリア休戦協定後、ファシズム政権への宣誓を拒否したため、イタリア人とはいえ敵性外国人として家族(妻トパツィア・アッリアータと三人の幼い娘ダーチャ、ユキ、トニ)とともに名古屋の施設に強制収容され、1945年8月15日まで過酷な経験を強いられた。
70年の時を経て、フォスコの孫であるムージャ・マライーニ・メレヒ(トニの娘)監督は、祖父母一家の足跡と家族の記憶を辿り、東京、名古屋、フィレンツェなどの地を訪れ、自分の家族の過去の記録を作品にした。
名古屋での天白寮という収容所での生活は、監視の警察官たちによるいじめや搾取を受けたという。規律に定められた食料配給も奪われ、ゴミ溜めを掘り起こして食料を探したほどだった。飢餓状態になり、父親は決死の抗議をしたり、日本人にとっては耳の痛い話が続く。名古屋空襲で天白の収容所が消失し、その後は石野村(現 豊田市東広瀬町)にある広済寺に移り、終戦まで暮らした。
祖母と母が語ってこなかった家族の歴史に向き合い、祖母や母親、伯母で作家のダーチャ・マライーニへのインタビューを実現させ、当時の写真や映像も取り入れた。

第2次世界大戦の時、日本の同盟国であるイタリア人なのに敵性外国人として日本の収容所に強制収容された人がいたとは驚きだった。
そして、こんな過酷な日本での生活をしたにもかかわらずフォスコ・マライーニは、戦後、世界中に日本文化を伝え、ヨーロッパの日本文化研究の礎を築いたという。アイヌ研究や舳倉島の海女に関する本も出している。1953年に再来日し、日本各地を巡って記録映画を撮影。1970年の大阪万博ではイタリア館広報部ディレクター、イタリアでの日本研究学会の会長職を勤め、日本、イタリア間の文化・学術交流に貢献した人ということを知った。 2013年には「フォスコ・マライーニ賞」というのが創設され、日本語によるイタリアに関する優れた著作の中から選ばれるという。日本でのイタリア文化への理解と関心を促進することを目的として創設された賞らしい。
長女のダーチャ・マライーニは小説家・劇作家・詩人で、主にフェミニズムや反ファシズムをテーマにした作品で知られ、ノーベル賞候補に何度もなっているそう。ムージャ・マライーニ・メレヒ監督の母トニも詩人・作家とのことで、文化人一家に育った監督だからこその作品かも。