第3回新潟国際アニメーション映画祭 受賞結果

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公式サイト:https://niigata-iaff.net/


コンペティション
グランプリ
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(C)藤本タツキ/集英社 (C)2024「ルックバック」製作委員会
『ルックバック』英題:Look Back
監督:押山清高 Kiyotaka Oshiyama

傾奇賞
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(C)2024 ARENAMEDIA PTY LTD, FILMFEST LIMITED AND SCREEN AUSTRALIA
『かたつむりのメモワール』原題:Memoir of a Snail
監督:アダム・エリオット Adam Elliot

境界賞
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『バレンティス』原題:Balentes 
監督:ジョヴァンニ・コロンブ Giovanni Columbu

奨励賞
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『ぺーパーカット:インディー作家の僕の人生』
監督:エリック・パワー Eric Power

イスラーム映画祭10 『怒れるシーラ』(ブルキナファソの女性監督が訴えるサヘル危機)

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『怒れるシーラ』 原題:Sira
監督:アポリーヌ・トラオレ / Apolline Traoré
2023年/ブルキナファソ=セネガル=フランス=ドイツ/122分/フラニ語、モシ語、フランス語、英語  字幕:日本語、英語
予告編: https://youtu.be/ZrxWYOaZQOw?si=mBQUFQM1nGQn_Hme
日本初公開

首都ワガドゥグでアフリカ最大の映画祭フェスパコが開かれている、日本ではなかなか観る機会のないブルキナファソの映画。 
砂漠を渡り、キリスト教徒の婚約者家族のもとへ向かう途中イスラム過激派に襲撃され、家族と尊厳を奪われたフラニ人(サヘルで暮らす遊牧民族)女性の生きるための闘いと復讐の物語。
不安定な情勢が続く、日本ではまったく報道されない“サヘル危機”の実情を織り込みながら、無力な犠牲者としか見なされない現地の女性たちをエンパワメントしています。
(藤本さんからの案内文)

★トーク
2/22(土)17:30上映後
【テーマ】 《ブルキナファソの女性監督が世界に訴える、“サヘル危機”とは?》
【ゲスト】 岩崎有一さん ジャーナリスト

ブルキナファソの女性監督が世界に訴える サヘル危機とは?

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監督はアメリカで映画の勉強をし、ブルキナファソに2008年に戻って、撮り続けている。

サヘル危機とは?
岩崎有一さん: フリーのジャーナリスト
2013年~16年、サヘル危機 ブルキナファソとマリで取材。
2017年に入って、ここにいては危ないと言われ、隣国に。

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サハラの南がサヘル。 
サヘル:8か国にまたがる
マリ北部紛争からサヘル危機に

昔々、アフリカに国境がなかったころ、トゥアレグ族が暮らしていた。
フランスは、その存在を考慮せずに植民地を手放した結果、彼らの暮らす地区を分断する形で国が出来た。

リビア: カダフィは反体制派に殺された(米国など)
トゥアレグの人たちが傭兵としてリビアに出稼ぎに行っていた。彼らが武装して各国に戻った。

アルジェリア国内に暮らすアルジェリアのアルカーイダが、マリの武装組織と組む。
トゥアレグと相いれない考え。
アルジェリアのジハーディストによって、マリ全土が混乱。さらにサヘル全域におよぶ

イスラーム映画祭1で上映した『禁じられた歌声』は、マリ北部がジハーディストに掌握された時の話。

ブルキナファソ:2015年、アルカーイダによるテロが首都ワガドゥクで起こり、それから南部にも広がった。

サヘル危機による避難民 200万人いるといわれる。

ジハーディストは恐怖を効率的に使用。
男たちは皆殺し。
女性は殺さず乱暴する。
苦しみを持って生き続ける人がいるほうがジハーディストには都合がいい。

マリで、2016年、トゥンブクトゥをめざして北上するが、たどり着けなかった。
途中の町で軍人が殺され、庶民は殺されず、夫や両親の目の前で女性が暴力を振るわれることも多々あった。町を破壊。病院、学校、役所、自動車部品工場などのほか、シンボル的なものも破壊された。

食事、大皿を大勢で囲んで手で食べる
“ピリピリ” すごく辛い唐辛子
口にした唐辛子を背中に塗る →拷問的行為

ジハーディストといっても、様々な集団。
スウェーデン ウプサラ大学の研究所にジハーディストに関するサイト。
マリ 30勢力
ブルキナファソ 4勢力

フラニ: サヘルで幅広く暮らす遊牧民族
なぜ迫害されるのか?
遊牧しているフリをして、テロリストを匿っているという噂。

政府のケアが及ばないところで、庶民をケアして歓迎されている。
テロではなくビジネス

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フラニに対する非難は不当なもの。
民族どうしの問題は話し合って解決してきた
男だけで決めるな! (と、シーラの母)

サヘル危機はどうやって収束するのか?
誰に聞いても「わからない」

トゥアレグ: フランスの責任
ブルキナファソ1国で解決できるものでない。
トーゴとベナンでもジハーディストの攻撃が始まった。
格差から生まれる絶望。

ブルキナファソ: 宗教的な問題も民族的な問題もなかった。
金が出てから問題が起こった。

サヘル危機は、もっと一般に知られるべき。

最後、シーラが赤ちゃんを殺さなかったのは、ジハーディストへの赦し?

東京アニメアワードフェスティバル2025 受賞結果

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長編アニメーション
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©Urban Sales. All Rights Reserved.
グランプリ
『ボートインザガーデン』
英題:A Boat in the Garden
監督:ジャン=フランソワ・ラギオニ
製作国:ルクセンブルク フランス
※東京都知事賞

優秀賞
『クラリスの夢』
英題:Clarice’s Dream
監督:グト・ビカルホ、フェルナンド・グティエレス
製作国:ブラジル

短編アニメーション
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©Chicken Fruit Ltd. All Rights Reserved
グランプリ
『一人ぼっちの洗濯』
英題:Loneliness & Laundry
監督:ジョニー・イブソン
製作国:イギリス
※東京都知事賞

優秀賞
『クマと鳥』
英題:The Bear and the Bird
監督:マリー・コドリー
製作国:フランス

豊島区長賞
『ピエトラ』
英題:Pietra
監督:シンシア・レヴィタン
製作国:スペイン ポルトガル ポーランド ブラジル リトアニア

学生賞
『ヨビとアマリ』
英題:Yobi and Amari: Story of Spares
監督:比留間 未桜
製作国:日本

◆TAAF2025 アニメ オブ ザ イヤー部門受賞作
作品賞
劇場映画部門『ルックバック』
TVシリーズ部門『葬送のフリーレン』
個人賞
原作・脚本部門 吉野弘幸
監督・演出部門 押山 清高
アニメーター部門 谷田部 透湖
美術・色彩・映像部門 市岡 茉衣
音響・パフォーマンス部門 Evan Call

アニメファン賞
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』


◆「東京アニメアワードフェスティバル(TAAF)」
youtube公式チャンネル
https://www.youtube.com/c/TokyoAnimeAwardFestival

イスラーム映画祭10 名古屋編 上映スケジュールとトーク情報

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2025年3月29日(土)~4月4日(金)
※4/1(火)休館/6日間12回上映 
会場:ナゴヤキネマ・ノイ  https://nk-neu.com/

オンラインチケット販売:上映の10日前から
https://nkneu.sboticket.net/

劇場窓口:オープン時間より販売開始 (各作品 上映10日前より)

★トークのない回も、イスラーム映画祭主宰 藤本高之さんによるミニ解説があります。

☆各映画の内容につきましては、公式サイトをご覧ください。
http://islamicff.com/index.html

☆名古屋編 チラシ http://islamicff.com/pdf/iff10_nagoya.pdf


◆上映スケジュール◆
3/29(土)
16時35分『モーグル・モーグリ』

18時40分『怒れるシーラ』
★上映後、ジャーナリスト・岩崎有一さんによるオンライン解説
《ブルキナファソの女性監督が世界に訴える、“サヘル危機”とは?》
東京でのトーク報告

3/30(日)
16時35分『さよなら、ジュリア』(スーダン)
★上映後 防衛大学校准教授・丸山大介さん解説
《なぜ「さよなら、南スーダン」になったのか? ―歴史に翻弄されたスーダン人の今と未来》
東京でのトーク報告

19時50分『ラナー、占領下の花嫁』(占領下のパレスチナ)

3/31(月)
16時35分『シリンの結婚』(ドイツのトルコ系移民)
★上映後、ドイツ映画研究者、渋谷哲也さんによる解説
《トルコ系移民とドイツ社会 ―映画がもたらした危険な騒動》
東京でのトーク報告

19時50分『チュニスの切り裂き男(シャッラート)』(チュニジア)

4/2(水)
16時35分『イチジクの樹の下で』(チュニジア)

19時『ハリーマの道』(ボスニア・ヘルツェゴビナ)
東京でのトーク報告

4/3(木)
16時35分『母たちの村』(西アフリカ 女子割礼を巡る物語)
東京でのトーク報告

19時15分『カシミール 冬の裏側』

4/4(金)
16時35分『ギャベ』

18時15分『神に誓って』
★上映後、本作の日本公開にご尽力され、2022年に逝去されたウルドゥー語文学者の麻田豊先生による2015年本作上映時の解説を、ご遺族の許諾のもと動画にてお送りします。


☆こちらもご参照いただければ幸いです。
2025年イスラーム映画祭10 ★開催概要★  (シネジャ映画祭報告)
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/509109203.html

イスラーム映画祭10 『母たちの村』 (西アフリカ 女子割礼を巡る物語)

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『母たちの村』 原題:Moolaade
監督:ウスマン・センベーヌ / Ousmane Sembene
2003年/セネガル=ブルキナファソ=モロッコ=チュニジア=カメルーン=フランス/125分/バンバラ語、フランス語  字幕:日本語
予告編: https://youtu.be/aXjE0nIJsbQ?si=mkc_1oM0WOnKlqYe

2006年に今はなき岩波ホールで公開された、「アフリカ映画の父」と呼ばれるセネガルの名匠ウスマン・センベーヌ監督の遺作。19年ぶりにリバイバル上映。
ある日シレ家の第二夫人コレのもとに、4人の少女が割礼から逃げてきます。
割礼が原因で二度も死産し、ようやく生まれた娘には割礼させなかったコレは、少女たちを“モーラーデ(保護)”しますが…。
今もアフリカを中心に世界各地に残る”女性性器切除(FGM/C)”廃絶を願いつつ、二つの伝統的慣習を対比させた見事な作品です。
(藤本さんからの案内文)

◆ストーリー 
西アフリカの小さな村。 シレ家の第二夫人コレは、第一夫人ハジャトゥ、第三夫人アリマや子どもたちと暮らしている。
ある日、太鼓の音で少女たち6人が割礼を前にいなくなったと知らされる。 そのうちの4人がコレの元にやってくる。 コレが自分の娘の割礼を拒否していたのを知って、「保護」を求めて来たのだ。 コレは家の入り口に縄をかけ「モーラーデ(弱いものを保護すること)」を宣言する。 始めたものが終わるというまで、この聖域には立ち入ることができない。 少女たちはこの中にいる限り安全なのだ。 しかし割礼師や少女たちの母親が談判にやってくる。 割礼は古くからの風習で、受けないものは不浄で結婚できないとされている。 コレは割礼のおかげで難産し、2度も子供を死なせていた。 3度目は帝王切開でやっと産むことができ、この娘の割礼を拒否し続けているのだ。

女たちが頭上に水がめを載せて、モスクの前を歩いていく。 木のくいがいっぱい飛び出たモスクは、世界遺産に指定されているマリ共和国トンブクトゥのモスクと同じタイプの、西アフリカでよく見られる日干し煉瓦で造られたスーダン様式。 のどかな風景だが、水汲みという重労働が女たちに課せられていて、一夫多妻は労働力確保のためかと思いたくなる。 本来、イスラームが一人の男に4人まで妻を娶ることを認めたのは、イスラーム初期の聖戦で男たちが数多く戦死したための方策であったはずだ。 イスラームが各地に伝播するうちに解釈が違っていたり、本来の宗教の教義と、その土地の因習が交じり合い、あたかもそれがイスラームの定めであるかのように扱われていたりしていることは実に多い。
本作では女子割礼が神の定めたこととして、村の長老たちは絶対的権力をもって執り行っている。 しかしある日、女たちはラジオを聴いていて、「メッカに巡礼している女たちは割礼していない」という指導者の言葉を耳にする。 ラジオを取り上げ焼き払う長老たち。 けれども、指導者の言葉というお墨付きを得た女たちは、女子割礼廃止に向けて立ち上がる。 エンディングに高らかに唄われる歌の歌詞「割礼のことは書かれていない」とは、もちろん、「コーランに書かれていない」という意味。 女子割礼に苦しむ女たちに、安心して反対運動を起こしなさいとエールをおくっているようである。

本作には、女たちだけでなく、悪しき因習から立ち上がろうとする男たちも描かれている。 パリ帰りの村長の息子、長兄の命令で妻に鞭を振るいつつも妻に理解を示す夫…。 男も女も共に意識を変えていかなければ社会は変らないことを訴えているのであろう。
もう一人、際立った登場人物が「兵士」と呼ばれている商人の男。 普段、村人相手に暴利をむさぼる商売をしているが、割礼廃止に立ち上がった村の女たちの味方をする。 そのために長老たちによって葬りさられるのだが、この男、国連平和軍に従軍していた折りに、高官が給料をピンはねしていることを口外したために刑務所送りとなった経験があるという人物だ。 監督はアフリカの伝統社会に一石を投げているだけでなく、国際社会に向けても、ぴりりと批判の言葉を発していて、喝采をおくりたい。(咲)

☆2006年公開当時のシネジャ作品紹介より抜粋 


★トーク
2/20(木)18:55上映後
【テーマ】 《女性性器切除(FGM / C)は誰のため? ― 「宗教」と「開発」二つのナラティブをめぐって》
【ゲスト】 嶺崎寛子さん 成蹊大学文学部 教授 
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専門は、エジプト。2000年から約5年、エジプトで文化人類的な調査を行った。
西アフリカは専門外で、先月初めて西アフリカのガーナに調査に行った。
エジプトは、FGM/C率の非常に高い地域。
FGM/C 割礼は、地域によって違う。儀礼も中身も意味も違う。
FGM/Cは、欧米によって、排除しないといけない遅れた有害な文化的慣行として扱われてきた。
イスラームに基づいた習慣と信じている人もいるが、エジプトのキリスト教徒もしている。
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「女子割礼」と、現地では普通にいう。廃絶運動をしている人たちによって、1990年代に、FGM/Cという言い方になった。“cutting”という言葉は、言い過ぎだと思う。

ヴェールが強制されるのは、おかしい。自分の意志で被るのは、抑圧ではない。
女子割礼に関しても同じ。

『母たちの村』は、多層的、寓話的。
女子割礼をめぐる立場は多様。性別、経験、教育程度、権力関係などが影響している。
映画の中では、「あの儀式」といっている。
フランス帰りのエリートである村長の息子が保守的。
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一方で、欧米的価値観では批判の対象である一夫多妻が、この映画では女性同士の連帯として肯定的に描かれている点が興味深い。

女子割礼、元々はアフリカの文化、

映画の中の割礼を施す女性たち。どこかからやってきて、割礼でお金を得ている。
別の仕事を作らないと排除できない。
宗教に基づくものなら、やめるのは簡単。
スーダンでは、FGM/C廃絶会議。男性たち、「俺たちの大事な文化」

ヴェールにしても割礼にしても、当事者の気持ちを考えて語るべき。

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トークの中で、WHOが定めるFGM/Cの4分類についても、具体的に図解付きで解説してくださいました。
実に明快かつ詳細な解説でした。

報告:景山咲子