第38回東京国際映画祭 ウィメンズ・エンパワーメント・ラウンドテーブル「女性映画祭の力」(暁)

2025年11月3日 東京ミッドタウン日比谷 BACE Q

昨年、 東京国際映画祭の中にウィメンズ・エンパワーメント部門ができ、女性監督の作品が7作品上映され、シンポジウム「女性監督は歩き続ける」が開催されたが、今年(第38回東京国際映画祭2025)も7作品が上映され、シンポジウム「トーク “ハー・ゲイズ”」と「女性映画祭の力」が行われた。
そのうち参加した「女性映画祭の力」についてレポートします。

まず、今年のウィメンズ・エンパワーメント部門の上映作品から。
移住、初恋、障害、児童労働、戦争と亡命、創造と母性の間で繰り広げられる内なる葛藤などを描いた女性監督作品がスペイン、香港、トルコ、エジプト、チベット系カナダ人コミュニティ、そして日本から集結しました。

★ウィメンズ・エンパワーメント 上映作品およびプログラム★

◆100 サンセット  
監督:クンサン・キロン
トロントのパークデール地区に住むチベット系カナダ人の若い女性が、共同住宅での生活のなかで新たな生き方を模索する過程を描く。トロント映画祭で上映。

◆藍反射
監督:野本 梢
排卵障害という突然の診断に、当たり前だったはずの未来が揺らぐ。そして自分でもよくわからないまま、友人や恋人との間に少しずつ溝ができていく。

◆シネマ・ジャジレー  原題:Cinema Jazireh
監督:ギョズデ・クラル
タリバン政権下のアフガニスタン。家族を殺された母親が、行方不明の息子を捜すために男装して旅する姿を通し、抑圧的な社会で力強く生きる人々を描く作品。

◆ハッピー・バースデイ 原題:Happy Birthday
監督:サラ・ゴーヘル
カイロに暮らす少女が母親の雇い主の娘の誕生会のために奮闘する姿を通し、社会階級の問題を投げかける作品。トライベッカ映画祭で最優秀作品賞を受賞。

◆私はネヴェンカ 原題:Soy Nevenka
監督:イシアル・ボジャイン
スペインのポンフェラーダで起きた、市長による性的ハラスメント事件を正面から描いた作品。『エル・スール』(83)等に出演したイシアル・ボジャインの監督作。

◆佐藤さんと佐藤さん
監督:天野千尋
恋人のとき惹かれていた魅力が、夫婦となり、すれ違いの原因になる瞬間。些細な違和感が積もっていき、日常ににじみ出す。別れまでの15年間を描く。

◆私の愛のかたち 原題:像我這樣的愛情
監督:タム・ワイチン[譚惠貞]
障がい者のための性的サービスを提供する団体を訪れた脳性麻痺の女性が経験する精神的、身体的解放を描いた作品。フィッシュ・リウがヒロインを熱演。

★エンパワーメント・ラウンドテーブル「女性映画祭の力」
女性映画祭の歴史や、東アジアが連帯する上での歴史との向き合い方についても議論された。第一部では同志社大学教授でクィア・スタディーズや映画・視覚文化研究を専門とする菅野優香さんが、女性映画祭の歴史について解説。第2部では台湾と韓国の女性映画祭のスタッフと、日本からはあいち国際女性映画祭のスタッフが参加して各映画祭の成り立ちと映画祭の運営、そして女性映画祭の意義について語られた。

●女性映画祭の歴史について
同志社大学教授でクィア・スタディーズや映画・視覚文化研究を専門とする菅野優香さんが、女性映画祭の歴史について解説した。




第38回東京国際映画2025観て歩き(暁)

今年(2025)の東京国際映画祭の期間は10月27日(月)~11月5日(水)。シネマジャーナルHPの更新日が日曜日だったので、いろいろ作業が残っていて27日(月)はパスにして、28日から映画祭にでかけた。1日ぐらい休息日と思ったけど、観たい作品が目白押しだったので、結局あとは全日参加。でも1日1本や2本の日もあって、効率は悪かったかも。あとで思い返したら無理しても27日に行き『母なる大地』を観ればよかったと後悔。結局この作品を観ることができず、ファン・ビンビンにも会えなかった。
 いつも一般上映とプレス上映を組み合わせて観ているけど、今年も競争率の高いチケットはゲットできず、購入できた作品1本と、当日購入したチケットで何本か観ることができた。プレス試写はシネスイッチ銀座で上映されるので、地下の劇場は高齢者になって階段がつらくなった私としてはパスしたいところだけど、いくつか観たい作品があり、結局5作品位は観に行った。そのたびに、そこにいるスタッフの方に荷物を持っていただいたのでありがとうございました。
それでも、今年はヒューリックホール東京やヒューマントラストシネマ有楽町でのプレス上映もあり、ありがたかった。それに映画はやはり観客と一緒に観るのが嬉しい。六本木の時と違って、あっち行ったりこっち来たりでけっこう移動に時間がかかったけど。それでも中華圏を中心に17本の作品を観ることができた。ウイメンズ・エンパワメント部門の作品も3本観ることができたし、今年もシンポジウムに参加することができた。その中からいくつか感想を書きます。
まずは、チケットが抽選になり、『She Has No Name』と『風林火山』のチケットに挑戦。『She Has No Name』は獲得できた。この作品から。

『She Has No Name』原題『酱园弄』 中国
ガラ・セレクション 上海国際映画祭推薦

プロデューサー/監督:陳可(ピーター・チャン)
脚本:シャン・ヤン、ジャン・フォン、シー・リン、パン・イーラン
撮影監督:ジェイク・ポロック
美術:スン・リー
衣装:ドラ・ン
編集:ウィリアム・チョン、ジャン・イーボー
音楽:ユー・フェイ、ナタリー・ホルト
キャスト
章子怡(チャン・ツィイー)、ライ・チァイン

チャン・ツィイーの鬼気迫る演技が印象に残る作品でした。
舞台は1940年代。日本占領下の上海で実際に起こった殺人事件にインスパイアされた作品だそう。ジャン・ジョウは夫を殺害し、遺体を切断した容疑で逮捕され、警察による尋問と虐待に耐え、無罪を証明しようとする。女性の権利が著しく認められていなかった時代、夫のDVにさらされながら生きていた彼女の人生が描かれる。戦後の混乱の中、大きく変わる激動の時代を生き延び、彼女は新中国になってどんな人生を歩むのかというところまでが描かれる。上映後の監督の話では、これは前半の映画で、このあと2時間半の後編映画があり、彼女はこのあと2006年まで生きるのだそう。
途中でイプセンの『人形の家』の舞台が挿入されるが、これはジャン・ジョウの境遇を彷彿とさせる目的なのだろう。夫に支配されていた主人公ノラが夫と決別する姿が重なる。それにしてもチャン・ツィイーの傷だらけの汚れ役、ほんとにチャン・ツィイーなの?と思うくらい迫真の演技だった。
力のあるものとないもの、警察=権力の手段、構造は、今の時代も変わっていないということも暗示している。
個人の人生が激動の時代のなかで、どう変わっていくのかを描いている。
2024年のカンヌ映画祭で上映された後、ウィリアム・チョンによる全面的な再編集を経て、本年の上海映画祭のオープニングを飾ったバージョンが上映されたという。

監督 ピーター・チャン [陳可辛] 公式HPより
1997年の恋愛映画『ラヴソング』で世界的注目を浴び、これまでに香港金像奨、金馬奨、中国金鶏奨で最優秀監督賞を受賞。その他の代表作には、『愛という名のもとに』(91)、『君さえいれば/金枝玉葉』(94)、『ウィンター・ソング』(05)、『ウォーロード/男たちの誓い』(07)、『アメリカン・ドリーム・イン・チャイナ』(13)、『最愛の子』(14)などがあり、合計で400のノミネートを受け、233の映画賞を受賞している。

94分カラー北京語英語、日本語字幕2025年中国

『春の木』 原題『春樹』 中国 コンペティション
チャン・リュル監督が最優秀監督賞、ワン・チュアンジュンが最優秀男優賞を受賞している。

スタッフ
監督/脚本:張律(チャン・リュル)
プロデューサー:ポン・ジン
脚本:リウ・シューイー
撮影監督:ピャオ・ソンリー
照明:ワン・ウェンユー
編集:リウ・シンジュー
音響:ワン・ラン
衣装:リャン・ジェンアル
美術:ジェン・イーツァン
キャスト
白百何(バイ・バイホー)、王傳君(ワン・チュアンジュン)、劉丹(リウ・ダン)、彭瑾)ポン・ジン)

四川省峨眉撮影所の古いスタジオが取り壊されると聞き、ここを使って撮影することにしたという。
原題は『春樹』で、主人公の名前。成功することができなかった女優春樹が四川省の故郷に戻り、その挫折から立ち直ろうとする姿が描かれる。
春樹はオーディションに受かり、映画の主役に抜擢されるが、成都出身なのに監督が求める成都弁が話せないということで出演をあきらめ、女優をやめ成都に帰省する。故郷で彼女はかつて演劇を教わった峨眉撮影所の張老師(先生)を訪ねる。実は、かつて張老師から「俳優は全国に伝わる普通話を話せなくてはならない」と指導を受け、地元の方言を使わずにいるうち、成都弁をしゃべれなくなってしまっていた。訪ねた張老師はアルツハイマーにかかっていた。世話をするため上海から来ている息子冬冬に出会う。冬冬は「母は普通にしゃべっている時とそうでない時がある」といい、認知症が出ている時とそうでないときの違いもわかりにくい。冬冬は、単身、成都で仕事をする母から上海の祖父母宅に預けられ、上海弁の中て育ってきた。大きな動きはないが、映画はこの3人を中心に語られていく。
成都弁を話せない春樹、上海から峨眉撮影所に来て普通語を奨励している張老師、上海語の冬冬、そして、成都弁の春樹の母。ある意味、中国の多彩な方言を巡る話でもある。
かつて多くの映画を製作してきた四川峨眉撮影所の古いスタジオが取り壊される前の、最後の姿がカメラに収められている。
『キムチを売る女』(05)、『柳川』(21)などで知られ、中国と韓国で活躍するチャン・リュル(中国語読みではチャン・リュー)が中国で撮影した最新作。監督は東京フィルメックスで作品が上映され、来日したことがある。
プロデューサーは張老師役のポン・ジン。彼女は日本に3年ほど派遣されていたことがあると語っていた。主演は『モンスター・ハント(原題:捉妖記)』シリーズで知られるバイ・バイホー。中国第5世代を代表する監督で、現在はプロデューサーとして活躍している黄建新(ホアン・ジェンシン)も出演している。

監督 張律(チャン・リュル)
1962年、中国・延辺朝鮮族自治州生まれ。2001年、初監督作品『11歳』がヴェネチア映画祭短編コンペティション部門に入選。『キムチを売る女』(05)はカンヌ映画祭批評家週間でプレミア上映され、釜山国際映画祭でACID賞とニューカレンツ賞を受賞した。その他の代表作には『風と砂と女』(07)、『慶州 ヒョンとユニ』(14)、『白塔の光』(23)がある。

122分カラー北京語英語、日本語字幕2025年中国

『飛行家』 原題『飞行家』中国
コンペティション
監督/脚本:鵬飛(ポンフェイ)
脚本:シュー・イージョウ、シュアン・シュエタオ
撮影監督:リュー・ソンイエ
美術監督:リウ・チン
チーフ・プロデューサー:レン・シャオイー、マー・シャン
プロデューサー:ツァイ・ミンヤン、ソン・ズージェン
エグゼクティブ・プロデューサー:シュアン・シュエタオ、ワン・ホンウェイ
キャスト
ジャン・チーミン、リー・シュエチン、ドン・バオシー、ジャン・ウー、ドン・ズージェン

1970年代から現在に至る時代を背景に、空を飛ぶ夢にとりつかれた男をユーモア感たっぷりに描く作品。
中国東北地方に暮らす平凡な労働者リー・ミンチーは、自作の飛行装置で空を飛ぶという夢を追いかけているが、実験は失敗続き。恋人の父に会った時もパラシュート降下を計画していたが、成功すれば結婚後も飛行を続けてよいが、失敗したら飛ばないと約束させられる。パラシュート降下は突然の隕石落下で失敗。その後の降下を断「念して結婚。しかし、飛ぶ夢をあきらめきれないミンチーは、交通渋滞を回避するため、上空を移動する「空を飛ぶ車?」を考えたが実験に失敗し、その場にいた妻の弟(北京大学の受験を目指していた)が巻き込まれてケガをしてしまった。自暴自棄になり生活が荒れてしまった弟を心配したミンチーと妻は廃工場を買い取りダンスホールの経営を始めた。宣伝のために飛ばした熱気球が宣伝になりダンスホールは成功するが、弟は一緒にやることを嫌がり、妻子を残して北京に行ってしまった。子どものいないミンチー夫妻は残された甥のフォンを息子のようにかわいがった。弟は北京で借金を作り故郷に帰ってきたが、その借金のためにダンスホールは取られてしまった。さらに甥のフォンが重い心臓病であることがわかり、手術代に10万元が必要ということがわかり、そのお金が必要になった。そして彼は、このお金を得るために、また飛ぶことに挑戦!
2023年東京国際映画祭で上映された『平原のモーセ』の原作者シュアン・シュエタオの小説を『再会の奈良』(20)のポンフェイが映画化。シュアン・シュエタオは第37回東京国際映画祭(2024)で最優秀芸術貢献賞受賞した『わが友アンドレ』の原作者でもある。撮影も『わが友アンドレ』の撮影を担当したリュー・ソンイエ。

来日した監督、原作・脚本、主人公たちは下記のように語っています。映画祭HPより
主人公を演じたジャン・チーミンは「理想を抱いた人がどこへ向かうか、どう生きるか。それがこの物語の核です。この映画は一人の男の夢と時代の軌跡を重ねた物語です。夢は大きくなくていい。根を張り、行き先を持つことが大切だと思います」
ポン・フェイ監督「どんな夢も、持つ人は美しい。たとえ無謀に見えても、忘れてしまっても、また一歩を踏み出してほしい」
シュアン・シュエタオ「僕たちは一つ一つのシーンに、観客の感情を思いながら取り組みました。現実的でありながら美しい。それを実現するのは簡単ではありません。昨日、日本の作家の友人から「観終わって、生きる意欲が湧いた」とメッセージをもらいました。その言葉で、この映画を作って本当に良かったと思いました」

監督 ポンフェイ [鹏飞]
1982年、中国・北京生まれ。パリの国際映像音響学院の映画専攻を卒業。主な監督作は、『再会の奈良』(20)、『ライスフラワーの香り』(17)、“Underground Fragrance”(15)。

118分カラー北京語英語、日本語字幕2025年中国

『私の愛のかたち』 原題『像我這樣的愛情』香港
ウィメンズ・エンパワーメント

監督/脚本/編集オペレーター:譚惠貞(タム・ワイチン)
プロデューサー:スタンリー・クワン、キャサリン・クワン
チーフ・プロデューサー:ジェイソン・シウ
編集:ウィリアム・チョン
編集オペレーター:ライ・クワントン
撮影監督:リー・カムポー
美術/衣装:チョン・シウホン
作曲:ケルヴィン・ユン
キャスト
フィッシュ・リウ、カルロス・チャン、アリス・ラウ、ケイト・ヨン、ポリー・ラウ

脳性麻痺の若い女性ムイは、身の回りの世話は母親に頼ってはいるものの、家に閉じこもってばかりではない。電動車いすに乗って時には障害者仲間だけでなく健常者も一緒と行動をして、飲み会にも出かける、とても活動的な女性。絵を描くのが好きで、その絵が認められ始めて、経済的にも生活できる状態のよう。障害者の男性の友人ときわどい話もする。
そんな中、その友人から障害者を対象に性的サービスを提供するボランティア団体があることを聞き、そこを訪ね、ケンに出会う。この出会いは彼女の人生を大きく変えるが、ケンは彼女に対して心を開こうとしない。最初は迷惑そうだったケンだったが、次第に心を開きムイ親しくなる。しかし、その道は、まだまだ、大きな壁がある。
マレーシア出身で、香港映画界で活躍する女優フィッシュ・リウがヒロインを熱演。スタンリー・クワンがプロデューサーを務めている。

監督 タム・ワイチン [譚惠貞]
1984年、香港生まれ。脚本家、監督として活躍。香港城市大学クリエイティブメディア学部卒業。映画制作を学ぶ前に、作家として多数の小説を発表している。

登壇ゲスト(予定):Q&A:タム・ワイチン(監督)、フィッシュ・リウ(俳優)、カルロス・チャン(俳優)

105分カラー広東語英語、日本語字幕 2025年香港

第1回 あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル(ANIAFF)

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期日:12月12日(金)~17日(水)
会場:ミッドランドスクエアシネマ1
 109シネマズ名古屋
 名古屋コンベンションホール
 ウインクあいちホール
公式サイト: https://aniaff.com/

上映作品
=コンペティション= 11本

『ダンデライオンズ・オデッセイ』原題:Planètes
フランス/ベルギー/2025 
監督:瀬戸桃子

『無名の人生』原題:無名の人生
日本/2025 
監督:鈴木竜也

『ひゃくえむ。』原題:ひゃくえむ。
日本/2025 
監督:岩井澤健治

『ホウセンカ』原題:ホウセンカ
日本/2025 
監督:木下麦

『燃比娃(ランビーワ) -炎の物語-』原題:燃比娃 Ran Bi Wa
中国/2025 
監督:ウェンユー・リー

『ニムエンダジュ』原題:Nimuendajú
ブラジル/2025 
監督:タニア・アナヤ

『タイトルつけてよ、マヤ』原題:Maya, donne-moi un titre
フランス/ 
監督:ミシェル・ゴンドリー

『エンドレス・クッキー』原題:Endless Cookie
カナダ/2024 
監督:セス・スクライヴァー、ピーター・スクライヴァー/カナダ

『オリビアとゆれる心』原題:L'Olívia i el terratrèmol invisible
ベルギー/スイス/スペイン/中国/フランス/2025
監督:イレネ・イボラ

『スペースタイム・クロニクルズ』原題:Spacetime Chronicles
イタリア/2025
監督:ステファノ・ベルテッリ

『死は存在しない』原題:La mort n'existe pas
カナダ/フランス/2025
監督:フェリックス・デフュール=ラペリエール

=授賞作品=

金鯱賞
『エンドレス・クッキー』原題:Endless Cookie
カナダ/2024 
銀鯱賞
『燃比娃(ランビーワ) -炎の物語-』原題:燃比娃 Ran Bi Wa
監督:ウェンユー・リー/中国
赤鯱賞(観客投票)
『ひゃくえむ。』
監督:岩井澤健治/日本

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=特集上映=
ディレクター・フォーカス 細田守監督特集
初期作品から現在まで11本。村上隆のコンセプトを映像化したのはネット公開されていないレアなものでしたが、時間が合わず。
ほかの作品は公開時からほぼ鑑賞済み
2009年の『サマーウォーズ』で主人公の声をあてた神木隆之介さんがサプライズゲストとして花束を持って登場。「当時は16歳、今は32歳になりました」と神木さん。「大きくなったね」と、とっても嬉しそうな細田監督でした。

スタジオ・フォーカス特集
コマ撮りアニメーションのスタジオ、「ライカ」の長編特集です。公開当時観られなかったものを楽しみにして、とてもいい上映環境で堪能しました。観客が少なかったのが惜しい!こんなに面白いのにもったいない!

『コララインとボタンの魔女』(2009)
『パラノーマン ブライス・ホローの謎』(2012)
『ボックストロール』(2014)
『クボ 二本の弦の秘密』(2016)
『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』(2019)

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授賞式に海外のお二人からはビデオメッセージが届きました。
中央が『ひゃくえむ。』岩井澤健治監督
短い準備期間だったのにも関わらず、良い作品が集まりました。回を重ねるごとに観客数が伸びてゆくことを願うばかりです。(白)

東京国際映画祭 アジアの未来 『一つの夜と三つの夏』Q&A報告 (咲)

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一つの夜と三つの夏   原題:一个夜晚与三个夏天  英題:Linka Linka
監督・脚本:カンドゥルン
出演:ツェリン・ヤンキ、ツェキィ・メトック、デチェン・バンゾム、タンサン・ラモ
2025年/中国/チベット語・中国語/100分/カラー

作品解説 : サムギは幼なじみのラモとの苦い思い出についての映画を撮るため、故郷のラサへ戻ってきた。ずっと心の奥底に抱えてきた記憶が甦るなか、突然現れたラモとの再会が静かな波紋を広げていく。

故ペマ・ツェテン(『雪豹』/ TIFF2023グランプリ)、ソンタルジャ(『草原の河』/TIFF2015「ワールド・フォーカス」部門)らに先導され、『一人と四人』(TIFF2021「コ ペティション」部門)のジグメ・ティンレーなど新鋭も台頭するチベット映画界からまたひとり、注目の女性監督カンドゥルンが登場。映画作りを志す主人公の現在と幼少期が行き来する抒情的な本作でデビューを果たした。
ちなみに今年の当部門においてイランの『遥か東の中心で』とともに「映画制作をテーマにした映画」である。(公式サイトより)

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故郷・チベットのラサに戻ってきた若い女性サムギ。かつて幼なじみの家に遊びに行った時に、こっそり持ち帰った財布のことがずっと心の傷になっていて、そのことをテーマに映画を撮るのが目的で帰ってきたのですが、突然の幼なじみとの再会・・・ 娘を見守る父親の思いも描かれていました。甘酸っぱい青春の物語。

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カンドゥルン (岗珍)
1995年、チベット・ラサ生まれ。脚本家、監督。ラサの若者世代やサブカルチャーコミュニティを繊細なタッチで描く作風で知られる。短編映画“Orlo with Karma”は2025年西寧FIRST青年映画祭、バンクーバー国際映画祭に入選。本作が長編デビュー作である。


11月3日(月・祝) 上映後16:15~16:45 Q&A  シャンテ スクリーン1 
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登壇:カンドゥルン(監督/脚本)、ツェリン・ヤンキ(俳優)、ツェリン・トゥンドゥプ(俳優)
司会:石坂健治氏
 
監督:お招きいただきありがとうございます。
本日、客席には二人のプロデューサーとカメラマンも来ています。(その場で立ってくださる)

石坂:今年のアジアの未来チームの中で一番若くて、平均年齢20代です。前日のQ&Aで出たことをお話しておきます。Linka Linkaという英語タイトルですが、「リンカ」は劇中にも出てきましたが、強いて訳せば「ピクニック」「レクリエーション」に近いということです。チベットでは夏が短いので、大切にその習慣を大切にしていますというお話しがありました。進学については、2割くらいの成績のいい人が、チベット外に行くそうです。
男性のツェリンさんですが、最初は妹さんが出演する予定だったのが、都合が悪くなってツェリンさんが出演することになり、役も男性に変わったということでした。

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*会場から*
― チベット色があまり出てなかったのですが、あえて抑えたのでしょうか? それとも、それが今の日常でしょうか?

監督:特に調整はしていません。あくまで自分が見た今の姿です。そのままの様子を描こうと思いました。チベットに行ったことのない方は、草原と山しかないと思われるかもしれません。ラサでは若い人も普通に暮らしています。小学校を卒業して、内地に進学する者も、夏休みにはラサに戻ります。しばらく離れていると、変わっていて、なかなか慣れないこともあります。今の若者そのものを映し出しています。

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― 幼い頃の記憶が入れ子の構造で入りますが、参考にした監督や作品はありますか?

監督:アリガトウゴザイマス。私は映画の勉強をする前から、日本映画を観ていて、特に小津安二郎監督から2つの影響を受けています。美学的なものや音楽についてです。この映画で使われているラサの地元の音楽や、ラサの色々な光景が、ものすごく静かな感じがするのですが、その中に非常に情熱的な何かが秘められています。
もう1つ小津安二郎の映画から学んだのは、父親と娘の関係です。私自身も父親との関係に関する描写にこだわりました。日本の若手監督では、三宅唱監督、濱口竜介監督、欧米の監督たちからもいろいろな影響を受けました。

石坂:映画は北京の大学で学んだのでしょうか?

監督:学部生の時には、コマーシャルの勉強をしました。大学院の時には、中国伝媒大学で映画の制作を学びました。

― 映画の中で、二人の役者さんが、最初の2020年の若い頃と、その後の大人になった場面では、少し背が伸びていました。撮影期間が長い作品では、役者の演技や身長だけでなく、景色も変わってしまうと思いますが、どんな工夫をされましたか?

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監督:2020年から2023年と、3年の撮影間隔がありました。まず、この場を借りて2人の役者に感謝したいと思います。幼少期を演じた2人の子役もいるのですが、この2人の子役がよく似ていることに、皆さん映画を観て気付いたと思います。子役の2人は撮影時、ちょうど小学校を卒業して中学生になるところでした。私たちと同じように、内地の中学校に進学しました。3年後には身長も大きくなっていました。最初に撮影した子供時代には、映画のことがよく分かっていなかったのですが、3年後には、役について、真面目に聞いてくるようになりました。

石坂:役作りについて、俳優のお二人それぞれお聞かせください。

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ヤンキ:私の役柄は映画監督です。私自身、クリエイターとして活動しているのですが、本物の監督の隣で一緒にキャスティングについて考えながら現場に臨みました。ラサには女性のクリエイターは少ないのです。たくさんの人が応募に来ましたが、誰を見ても監督が気に入る人がいなくて、私が子役と似ていると、私にオファーが来ました。芝居をしたこともなくて、プレッシャーを感じて、断ろうと思ったのですが、監督の熱意をみて、引き受けました。
演技をする時はいろんなことを考えました。自分自身の経験と似ているところがあって、そういう部分は割とスムーズにいきました。時には客観的に役柄を見て、監督とも議論しました。
一番好きなシーンは、ラモと一緒に車に乗って高速道路を走るシーンです。狭い空間の中で、感情をいかに表現できるのかを役者は問われます。運転を勉強し始めたばかりだったので、高速でスピードを出すのは、実は怖かったです。撮影の方が、「保険をかけているので、安心してください」とおっしゃってくださって、ほっとして演技に集中できました。

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トゥンドゥプ:私も初めて演技に挑戦しました。監督と大の親友で、役柄と似たところがあります。私も12歳の時に上海に進学しました。図書館でよく勉強しました。まだ12歳でしたが、老後はどうなるんだろうと考えていました。映画の中で自分のことを記録できるといいなと思いました。
冒頭のシーンで、私の演じたラモはちょっと酔っぱらっていますが、それも自分に近いと感じます。彼女に手紙を書くシーンは、小さい時、友達に手紙を書いたときのことを思い出しながら演じました。
私が初めて上海に行った時には、上海は大都会で、地下鉄でよく迷いました。この映画をご覧になって、今のチベットのニュージェネレーションである若い人たちがどういう風に暮らしていているかをご覧いただけたかと思います。でも将来のことは誰にも分かりません。未来は運命に委ねることが一番だと思います。


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40年程前に訪れたラサの街には、まだ高層の建物はなかったのですが、すっかり街の様相が変わっていました。それでも、川沿いの道はかつての雰囲気でちょっとほっとしました。
今、チベットでは、小学校を卒業すると、2割くらいの成績上位者はチベット外の北京や上海などに進学することを知りました。この物語も監督自身の親元を離れて都会で勉強し、故郷に帰ってきた時の経験がもとになっています。
それほどまでに漢民族化は進んでいるのだという思いがよぎりました。
報告:景山咲子



東京国際映画祭 アジアの未来『ノアの娘』Q&A報告 (咲) 

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ノアの娘  原題:dokhtare nooh  英題:Noah's Daughter
監督 : アミルレザ・ジャラライアン
出演:カティ・サレキ エブラヒム・アジジ アリ・モサッファ ナズ・シャデマン マータブ・アミン
2025年/イラン/ペルシア語/80分/カラー

若い女性がイラン南部の静かな島にキャンプを張り、周囲の静寂に浸っている。彼女は海辺で年配の女性と穏やかで親密な会話を交わし、過去、未来、そして指先ひとつで人間の脈を聴く静かな技術について語り合う。また、若い男性と生と死について短くも興味深い対話交わす。やがて彼女は荷物をまとめてテヘランへと帰っていく。
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海辺のテントで寝泊まりするひとりの女性というシンプルな設定のもと、大きな出来事は何も起こらず、静寂が支配する美しい海辺の風景に女性の心象を託して進行する新感覚イラン映画。エンジニアの道から映画界に進んだ ジャラライアン監督は、南部の海岸と大都市テヘランをめぐる本作について、「沈黙、触覚、不在によって形づくられた物語」であると語っている。 (公式サイトより)

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アミルレザ・ジャラライア
1986年、イラン・カズヴィン生まれ。経験の詩的 側面を探求する作風の映画監督、脚本家。アミール・ キャビール工科大学で材料工学の修士号を取得したが、映画と文学への情熱によって映画制作の道に転身した。


11月4日(火)
(16:30-17:50 映画上映)@TOHOシネマズ シャンテ スクリーン1 
上映後 Q&A
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登壇:アミルレザ・ジャラライアン(監督/脚本/プロデューサー)、カティ・サレキ(俳優)
司会: 石坂健治氏  通訳:ショーレ・ゴルパリアンさん

監督:2回目の上映。ありがとうございます。

カティ・サレキ:皆さんとご一緒に映画を観ることができて嬉しかったです。

石坂:タイトルについて、お伺いします。ノアは、旧約聖書のノアですね?

監督:そうですね。旧約聖書のノアをイメージしました。寓話の中でも、ノアには3人の息子がいたと書かれています。もし、ノアに娘がいて、預言者になっていたら、とても静かで、人の話を聞く人だろうとイメージしました。

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*会場から*
ー 洞くつが出てきましたが… また、彼女が脈をとる意味は?

監督:預言者が洞くつの中で祈りを捧げたという話がありますので、ファンタジー的に使いました。脈をとるのは、生から死にいくような意味合いです。

石坂:主人公の女性をどういう人物だとして、役を演じたのですか?

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カティ・サレキ:普通の人たちに対して何か力を持っていて、人とコミュニケーションを取る人物ですので、人間対自然を描かないといけないと心がけました。

石坂:監督はキャラクターについて、どのように考えていましたか?

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監督:特別なものでなく、普通の人物。死後の世界にいるともいえるのですが、歩いたり、ご飯を食べたり、普通のことをします。
人が亡くなると、墓石には、
〇〇〇〇来ました・・・・
〇〇〇〇逝きました・・・・
と書いてあります。
人はこの世に来て、この世から去るのです。

― 説明なしで、手掛かりは、年配の女性と、キャンプをしている男性。最後、テヘランに戻りますが、主人公の女性は現状で終わろうとしています。監督が訴えたいメッセージがあったのか、それとも、観客にゆだねているのか?

監督:解釈の通りです。

― 哲学的な映画で、疑問だらけです。何かを感じ取る映画かなと思いました。観客にどのように感じ取ってほしいのか、何を学び取ってほしいのか・・・

監督:映画は、普通情報があるものですが、この映画では、一つの空間の中で彷徨えばいい。何か起こるのを待っていても、何も起こらない。観終わって、今は何も思わなくても、明日以降に何か思い出していただければ嬉しいです。

― 謎めいた映画でした。最後、女性の前で男性がパフォーマンスをして、女性のアップで終わります。

監督:このキャラクターについてですが、男性は浜辺に二人で行くと、「吸う?」と女性に言いますが、彼女は断ります。音楽が鳴って踊りだした彼は、もう現れることがありません。

― 主人公の女性は、普通の女性とおっしゃいましたが、奇数の話など印象的でした。あの母親らしき人と主人公は、ずっと何かを探している風に感じました。

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石坂:残念ながら時間が来ました。お二人から最後に一言ずつお願いします。

監督:日本で上映されて嬉しいです。日本の観客は素晴らしいです。

カティ・サレキ:彼女は混乱している都会の町から、静かな島にやってきました。自分の内面の声を聞くために。鳥の声や島の音を聴くと、内面の声が聞こえてくるのではないかと思います。私たちの人生は、こうして流れていくのではないでしょうか。今のこの一瞬を大事にしたいと思います。

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この映画、2度観たのですが、彼女は何者なのか? 時折会う年配女性は母親なのか? という疑問は結局解けませんでした。上映後のQ&Aで、会場からも、私の頭の中にあるような疑問についての質問が続出しました。
監督や女優さんの言葉を聞いて、フィーリングで味わっていいのだと、なんとなく納得しました。
主人公の女性は、ラジオの詩の朗読の時間を毎日楽しみにしていて、そこはやはりイラン人らしいと思いました。
あ~ 哲学的な映画でした。
報告:景山咲子



◆公式サイトに掲載されている下記の記事もご参考に!
11/1(土)Q&A『ノアの娘』
「映画が一つの国だとしたら、その国にはたくさんの浜辺があると思っています。」
https://2025.tiff-jp.net/news/ja/?p=68384

公式インタビュー『ノアの娘』
「僕にとって映画はテーマではなく、状況や空間が大事なのです」
https://2025.tiff-jp.net/news/ja/?p=68162