SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018『ザ・ラスト・ス―ツ (仮題)』監督Q&A(7/16)

『ザ・ラスト・ス―ツ (仮題)』
2017年/スペイン、アルゼンチン
監督:パブロ・ソラルス
出演:ミゲル・アンヘル・ソラ、アンヘラ・モリーナ、ナタリア・ベルベケ、フリア・ベールホルド、オルガ・ボラス

*ストーリー*
ブエノスアイレスで仕立て屋を営んできたアブラム。88歳となり右足は不自由だ。娘たちは彼を老人ホームに入れることを決め、家も売ってしまった。明日は老人ホームに入るという夜、アブラムはそっと抜け出し、故郷ポーランドを目指す。戦争中、ユダヤである自分を匿ってくれた親友に、彼のために仕立てたスーツを届けるという約束を果たしにいくのだ。
知人に切符の手配を頼むが、すぐに飛べるのはスペインのマドリード行き。そこからはフランス、ドイツを経由してポーランドに列車で行けるという。ドイツの地は踏みたくないアブラム。行く先々で手助けしてもらいながら、ついにポーランドに着く・・・

◆パブロ・ソラルス監督Q&A

7月16日(月・祝)11時からの上映が終わり、感動覚めやらぬ観客の前にパブロ・ソラルス監督が登壇し、Q&Aが行われました。
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司会(長谷川さん):1日以上かけて、いらっしゃった監督、どうぞ!

監督: ブエノ! 多くの方に初回のラストス―ツをご覧いただきまして、ありがとうございます。この映画は、私の長い間の夢が実現したものです。最初の脚本を書いたのは、2004年です。私の祖父へのオマージュです。地球の反対側から、素晴らしい文化の国にやってきて、私の映画を観ていただけるのは、感動です。

司会:ホロコ―ストを扱った映画は多いですが、ユーモアに包まれ、ロードムービーの形をとって、エンタメの要素もあります。このようなスタイルをとったのは?

監督:私の父方の祖父へのオマージュでもありますが、ロードムービーは愛されているスタイル。私の一作目もそうでした。ホロコ―ストの過去のことでなく、今の世界に生きる人々の話。地球を半周して、友人にス―ツを届けます。当時は私が今生きているのと真逆の時代。今は破壊の時代ではなく、再構築の時代です。軽いタッチでユーモアを交えるスタイルがいいと思いました。

*会場との質疑応答
― 最初の飛行機で会ったミュージシャンの男性が個人的には好きです。もっと出番があればと思いました。手助けする3人の女性のキャラクタ―が、それぞれ魅力的でした。(と、若い女性が涙ぐみながら語りました)

監督:感動していただき、ありがとうございます。ミュージシャンのレオは私も大好きな人物です。3人の女性の設定は、私自身が脚本を書いていながら、あとから観客として映画を観て、なぜあのような設定にしたのかと驚きました。3人の女性に助けられるわけですが、恐らく個人的な思いが3人の女性のキャラクターに反映したのだと思います。

―(男性)年間150本位映画を観ていますが、本作はほんとうに感動しました。もしこの場に配給の方がいましたら、ぜひ公開してほしいです。ホロコーストを扱っているけれど、現代のこととして考えてほしいとおっしゃっていました。でも、過去にユダヤ人にどんなことがあったかを考えてほしいと思います。過去の知識として持つのでなく、感情として受け止めてほしいと思います。ドイツ人だけでなく、人類皆が認識すべきだと思います。

監督:はい! もちろん! 
実は日本で配給が決まっていて、この場に配給の方もいらっしゃいます。繊細な目で観て、映画の配給を決めてくださったことに感謝申しあげます。(★彩プロ配給で、2018年12月頃、シネスイッチ銀座で公開予定。邦題未定)
今、お話くださったビジョンに同意します。現在もホロコーストと同様のことが繰り返されています。生き延びた子孫の一人として語り継ぐ必要があると思っています。ほかの人々の文化や国を下に見る傾向も続いています。再び起きる可能性があります。

ここで、どうしても話しておきたいことがあります。
主人公アブラムを演じた役者ミゲル・アンヘル・ソラさんは、私が11歳の時からファンの方です。主人公の設定より、25歳くらい若いのですが、撮影に臨むときには2時間くらいかけてメイクアップをほどこして老けて見えるようにしていました。歩き方なども研究してくださいました。彼の素晴らしい演技で、この作品が出来たことを皆さんにぜひお伝えしたいです。

― (男性)主人公がユダヤ人で、ドイツの地を踏みたくないと言っていたのが、踏むことができるようになります。73年経ちますが、ユダヤ人のドイツ人に対する感情は良い方向にいっているのでしょうか?

監督:一つ言えることは、国全体や、ある文化を一括りに言えないということです。
祖父は今96歳。1969年にドイツに行かなければならなくなったとき、絶対、ドイツの土は踏みたくないと言ったのを、この映画に入れ込みました。祖父は、この1月に映画を観てくれて、劇場から出てきて私を抱きしめてくれました。ドイツの地を踏ませたくないというシーンがよかったと褒めてくれました。そして、もしドイツで上映されることになれば、一緒にドイツに行くとも言ってくれました。

司会:残念ですが、最後の質問になってしまいました。
(大勢から手があがり、監督も嬉しそう。でも、指名せずに、ご自身で語り始めました)

監督:1975年、私が5歳の時に祖父に「ポーランド人なの?」と聞いたら、黙ってしまいました。父から、絶対、ポーランドの名前を出しちゃいけないと言われました。それが、この映画の原点です。
映画は文化の懸け橋の役割もあると思います。

名残りを惜しみながらQ&Aは終了しました。

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会場のロビーでフォトセッション。
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オフィシャルの撮影が終わったあと、熱心な観客とのふれあいが続きました。

7月17日、都内でパブロ・ソラルス監督にインタビューの時間をいただきました。
ポーランドのことを一切口にしなかったお祖父さまのことや、作品に込めた思いを、たっぷりとお伺いしました。
後日、報告します。  景山咲子

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★『ザ・ラスト・スーツ(仮題)』は、7月19日(木)17時から多目的ホール、7月21日(土)21時からMOVIX川口で上映されます。19日の回には上映後にQ&Aも行われ、パブロ・ソラルス監督が再登壇する予定です。

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018 デイリーニュース 
http://skipcity-dcf.jp/news/dailynews/20180716_dairy14.html

ベトナム映画祭2018

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https://motion-gallery.net/projects/vietnam_ff/updates/19833
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クラウドファンディング締め切りがせまってきました。(白)

日越国交樹立45周年記念 【ベトナム映画祭2018】

会期:2018年9月1日(土)から9月9日(日)までの9日間
会場:横浜シネマ・ジャック&ベティ
主催:ベトナム映画祭 2018 実行委員会
https://www.facebook.com/vietnamff2018/
上映作品
新旧10数作品を順次発表の予定

『ベトナムを懐(おも)う』(英題:Hello Vietnam)グエン・クアン・ズン監督
1995年のニューヨーク。祖父トゥーはベトナムの農村で生まれ育ち、幼馴染と結婚し、つましく暮らしてきた。妻の遺言で、アメリカに渡った息子グェンの元にやってくるが、一緒に住むことは叶わずに老人ホームに入居する。たった一人の孫娘タムはアメリカ生まれで、習慣・価値観の全く違うトゥーに懐いてはくれない。妻の命日にホームを抜け出したトゥーは、親友のナムを誘い二人だけで伝統的な供養をする。そして、トゥーを怖がっていたタムの本心を初めて聞くことになった。

ベトナム人家族3世代の故郷への思いを綴った作品。トゥーが思い出すのは、緑深く陽光が降りそそぐ故郷。今は暗い空から雪が舞うニューヨークに住んでいます。この対比に望郷の思いが伝わってきます。トゥーの胸の中にある故郷はいつも美しく輝き、味わったはずの苦労は時間が薄めてくれています。
孫娘のタムにとってベトナムは見知らぬ外国に過ぎません。祖父がよかれと思って説明し、押し付ける習慣もいやでたまりません。
真ん中の世代のグェンが、父と娘タムの間の大きな溝を埋める役割、架け橋にならなければいけないのに、と疑問が浮かびます。グェンには忘れてしまいたいほどの理由がありました。タムがあまりに頑なに祖父を拒否するのも不思議でしたが、これも後でわかります。タムのボーイフレンドがごく普通に接するのが救いでした。
世代間の思いが理解されず、すれ違ってしまうのは現代でも起き得ること。まず「何故?」と相手を知ろうとすること、自分の心を開くことですよね。(白)


『漂うがごとく』(原題: Choi voi 英題:Adrift)ブイ・タク・チュエン監督
ハノイに住む通訳のズエンは、2歳年下のタクシー運転手ハイと出会って3ヶ月でスピード結婚をした。披露宴でハンは酔いつぶれ、ズエンは初夜に1人で眠るはめになる。義母は息子をズエンに盗られた気がして、世話を焼きたがる。それから何日も、ハイは仕事に疲れて帰っては子どものように眠るだけだった。ズエンは友だちのカムに頼まれて、彼女のボーイフレンドのトーを訪ねていくが、家に着いたとたん、ズエンはトーに襲われてしまう。

現代のハノイが舞台。じっとりとした空気と街の暑さが感じられる作品。出てくる男たちが皆どこかダメです。支える女たちも決して満足しているわけではなく、愛情を求めて漂っています。すれ違う新婚の夫婦、祖父母の秘められた過去、闘鶏に夢中の父としっかり者の娘、危険な男と引き寄せられる女たち・・・それぞれのカップルがハノイの街で息づいていました。繊細な東洋とハイカラな西洋が混ざり合ったような街です。
薬草の蒸し風呂に入るカムとズエン、布越しのシルエットが官能的。母親が自分のために刺繍した花嫁衣裳をズエンに贈ったカム、彼女が愛したのはトーではなく、ズエン?説明が少ない分想像が拡がりました。
第66回ヴェネツィア国際映画祭の国際批評家連盟賞を受賞。


『フェアリー・オブ・キングダム』(原題: TAM CAM 英題:THE UNTOLD STORY)ゴ・タイン・バン監督
『The Rebel 反逆者』(原題:Dong mau anh hung 英題:The Rebel)チャーリー・グエン監督
『Đừng đốt(焼いてはいけない)』ダン・ニャット・ミン監督
『草原に黄色い花を見つける』ヴィクター・ヴー監督
『ニンホアの家』(原題:A House in Ninh Hoa)フィリップ・ヴィトマン監督
『目を閉じれば夏が見える』(原題:Nhắm Mắt Thấy Mùa Hè 英題:Summer in Closed Eyes)Cao Thuy Nhi監督
『モン族の少女 パオの物語』ゴー・クアン・ハーイ監督

(白)

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018

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期間:2018年7月13日(金)~7月22日(日) 10日間
会場:SKIPシティ 映像ホール/多目的ホールほか〔埼玉県川口市上青木3-12-63〕
MOVIX川口〔埼玉県川口市並木元町1-79 アリオ川口3F〕
主 催:埼玉県、川口市、SKIPシティ国際映画祭実行委員会、特定非営利活動法人さいたま映像ボランティアの会
共 催:MOVIX川口

公式サイト:http://www.skipcity-dcf.jp/index.html

デジタルシネマの新しい才能を発掘する目的で2004年にスタートした「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」も15回目を迎えました。思えば、発足当時は、まだフィルムが主流の時代でした。あっという間にデジタルの時代になりましたが、この映画祭が若手クリエーター育成の場として益々発展することを願っています。

15周年の節目の年、様々な特集が組まれています。
会期中にはSKIPシティ夏祭りも開催されて、お子様も一緒に楽しめる映画祭です。
臨時保育サービスもあります。(事前予約制)

SKIPシティへのアクセス:http://www.skipcity-dcf.jp/access.html
映画祭期間中は、JR川口駅東口より無料直行バスがあって、楽々会場に行けます。(所要約12分)
今年は、川口駅からのほか、SR鳩ヶ谷駅からも期間中の土日祝のみですが無料シャトルバスが運行されます。

◆オープニング上映
『君がまた走り出すとき』
川口に住む、ある市民ランナーの実話が導く再生ストーリー。
監督:中泉裕矢
出演:寛一郎 山下リオ 菜葉菜 辻本祐樹 綱島恵里香 安居剣一郎・長谷川初範 浅田美代子・松原智恵子

◆国際コンペティション
『ダーリンの憂い』(デンマーク・スウェーデン)
監督:ビアギッテ・スターモス

『ブリス、マイ・スウィート・ホーム』(フィリピン・韓国)
監督:ナウルズ・パギドポン

『最後の息子』(韓国)
監督:シン・ドンソク

『ザ・ラスト・スーツ(仮題)』(スペイン・アルゼンチン)
監督:パブロ・ソラルス

『スポットライト』(ロシア)
監督:キリル・プレトニョフ

『ナンシー』(アメリカ)
監督:クリスティーナ・チョウ

『彼女はひとり』(日本)
監督:中川奈月

『ザ・スワン』(アイスランド・ドイツ・エストニア)
監督:アウサ・ベルガ・ヒョールレーフズドッテル

『あの木が邪魔で』(アイスランド・デンマーク・ポーランド・ドイツ)
監督:ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン

『招かれざる者』(コソボ・オランダ)
監督:エドン・リズヴァノリ


◆国内コンペティション 長編部門
『あの群青の向こうへ』
監督:廣賢一郎

『キュクロプス』
監督:大庭功睦

『情操家族』
監督:竹林宏之

『岬の兄妹』
監督:片山慎三

◆国内コンペティション 短編部門 

◆15周年特別企画「飛翔する監督たち from SAITAMA」
埼玉出身の監督の中から石井裕也、入江悠、沖田修一、𠮷田恵輔の4人にスポットを当て、彼らの話題作を特集上映。

◆15周年特別企画「名匠たちの軌跡」 入場無料(当日各回先着順)
『A.K. ドキュメント黒澤明』(フランス・日本)
監督:クリス・マルケル

『映画が時代を写す時-侯孝賢とエドワード・ヤン』(日本)
監督:是枝裕和

『ドキュメンタリー:映画監督ミヒャエル・ハネケ』(オーストリア・フランス)
監督:イブ・モンマユール

◆15周年特別企画「怪盗グルーシリーズ一挙上映」 (日本語吹替版)
『怪盗グルーの月泥棒』(アメリカ)
監督:ピエール・コフィン、クリス・ルノー

『怪盗グルーのミニオン危機一発』(アメリカ)
監督:ピエール・コフィン、クリス・ルノー

『怪盗グルーのミニオン大脱走』(アメリカ)
監督:ピエール・コフィン、カイル・バルダ

◆バリアフリー上映 (日本語字幕+音声ガイド/UDCast方式上映)
『8年越しの花嫁 奇跡の実話』
監督:瀬々敬久
配給:松竹